表が地球(主人公側)サイド、裏が春雨サイド
ちな、プロヘメ映画見て原作読めてないです。
『拝啓 神楽ちゃん 元気にやってますか?
こちらは相変わらずえいりあんを追ってせわしない日々を送っています。最近は、仕事先の勘違いで宇宙船に一人で射出されて何故か言葉の通じない岩の天人とお友達になって、一緒にアメーバを繁殖させていました。珍しく荒事ではない仕事だったので、新鮮でほっこりしました。
ところで、俺の弟子が近々地球に行くそうです。「師匠の娘さんに挨拶する」といっていたので、鬱陶しい奴ですが相手してあげてください。もし神楽ちゃんがあの白髪にいじめられてたり、あの眼鏡にいやらしい目で見られたりしているのを見つけたら殺していいとも言ってあるので、遠慮なく伝えてください。腐ってもお父さんの弟子なので、それなりに殺れるはずです。それじゃあまたお手紙します。
PS.アイツ最近髪の毛が増えて邪魔だと言っていたので、除草してあげてください。喜ぶと思います(笑)』
*
万事屋の天井が引き裂かれる轟音がとどろいたのは、押し入れにて神楽が届きたての星海坊主からの手紙を読むのと同時だった。また、新八の絶叫が響くのも同時である。
「どうしたネ新八!」
押し入れから飛び出した神楽が見たのは、ずいぶんと採光の良くなって明るい居間――そして真っ二つに割れた銀時の社長テーブル、壁まで飛びのいた新八、そして、もこもこと真っ白い宇宙服に身を包んだ、おそらく人が――居間のど真ん中にひっくり返っていた。仰ぎ見ればぽっかりと穴の開いた天井に、パラシュートのような残骸がひっかかり、風にたなびいていた。
「何やってんだよ新八ィ、メシが爆発したのか? まさかお前まで暗黒物質の創造者になったんじゃ……」
二日酔いで眠りこけていた銀時が、寝間着のまま和室からのそのそと現れた。神楽は恐れることなく宇宙服に近づくと、ヘルメット部分をつんつんとつついた。
「これ空から落ちてきたヨ、きっとシー●ネ!」
「●ータはこんな暴力的な落下してこねーよ、なんだコイツ、てかなんだコレ?」
銀時、新八、神楽が雁首そろって落下してきた宇宙服をのぞき込んだとき、猛烈な速度でソレが上半身を起こして――銀時に高速の頭突きを叩き込んだ。
相変わらず暖かな日差しが差し込んでしまう万事屋。銀時と神楽、新八と宇宙服が向かい合ってソファに腰かけている。宇宙服の高速頭突きで吹っ飛ばされた銀時だけが、頭からずっと流血している。
「アッハッハッハッゴメンネ!なんかパラシュート故障してたっぽい」
当事者の宇宙服は、手荷物らしい一メートルを優に超える巨大なリュックを隣におき、頭部のヘルメットだけ外してヘラッと笑っていた。臙脂に近い深い赤毛に、同色の瞳。アホ毛が一本ひょろんと立っている、十代後半~二十代前半の色白の青年だった。
なんやかんやよく仕事場兼住居を破壊されがちな万事屋、三人はこのくらいのことでは動揺しない。銀時は二日酔いプラス頭突きで痛む頭を押さえながら言った。さすがに機嫌は悪い。
「……てかこの天井どーしてくれんの?風通しのいい涼やかなおうちになっちゃったじゃねーか」
「ウワッ風通しがいいとか涼やかとかはNGワードだぜ。師匠、ハゲ関連の罵倒に敏感だから。宇宙デブリになりたい?」
「どんだけ地獄耳の設定なんだよ、つーか師匠って誰?」
その時、はっと神楽は思い出したように男のアホ毛をつかんだ。
「ア! コイツ多分パピーの弟子アル!手紙に書いてあったヨ」
「いででででで!!そしてどういう文脈で俺は毛をむしられてるワケ!?あ゛あ゛あ゛あ゛チャームポイントのアホ毛があああ」
「アホ毛程度で失われるキャラ立ちなんてない方がマシヨ、お前ごときが個性豊かな夢主が練り歩く二次創作界隈で生き残っていけると思ってんのかァァ!」
「神楽ちゃん初見なのに当たりがキツくない!?」
アホ毛どころかほかの毛もむしらんとする神楽に、流石に新八が間に入った。もしかしたら依頼人の可能性もある――天井破壊して入ってくるあたり、仮にそうであってもロクな依頼人ではない可能性が高いが。
「ちょっと落ち着いて、話が全く進まないし!そもそもどちら様なんですか?坊主さんの弟子?ってことは神楽ちゃんの知り合い?」
「知らないアル」
顎に手をあて、無駄にどや顔で勝ち誇る青年は銀時と新八を交互に見た。「神楽ちゃんだけじゃないぜ。そこのお二人も知っている……天パさんとメガネボーイだろ?」
「完全に見た目だけでつけたあだ名じゃねーか!その辺の見知らぬオッサンでもそれくらい言えるわ!」
「っつかしーな?師匠からの手紙には天パと眼鏡って書いてあったしてっきり本名かと……山田天パとか鈴木眼鏡とかそういうカンジかと」
「んなわけあるかァァ! 坊主さん僕たちの扱い雑!」
「メガネボーイ、坊主もNGワードだ。星間弾道坊主ビームで殺されるぞ。ちなみにハゲ、光もNGだ」
「ビームってなんだよ、頭が光り輝いて打てるようになったのかあのハゲ」
もう完全に面倒くさくなっている銀時は、小指のハナクソを吹き飛ばしながら言った。青年はニヤリと口角を釣り上げて笑う。
「師匠をなめんなよくるくる天パさん、師匠はその気になれば七色に輝いて全身からビームを放ちつつエイリアンをぶっ殺しながら歌って踊れる誰もが目を奪われていく完璧で究極の[[rb:夜兎 > アイドル]]なんだぜ」
「もうそれ夜兎でもなんでもなくてただの怪異ィィ!世界がどんなふうに映ってんの!?つーか話を進めろォ何行毛の話で費やすつもりだ!あんた誰ですか!」
「あ、俺?」
さっきからその話をしてんだよ、と追加でツッコミたい新八を意に介さず、赤毛の青年は「あっついな~」と言いながら、宇宙服をごそごそと脱ぎ捨てた。もこもこの宇宙服で今までわからなかったが、この中では身長・体形は銀時に近い。青地で襟付きの中華服を着て、ズボンの裾は黒いブーツの中に入れていた。
彼は巨大リュックのなかを漁って、巨大な――全長130センチほどの赤い巨大な番傘と、80センチほどの通常男性サイズの黒い番傘の
「俺の名前は
引き続きリュックの奥底を漁る神食は目的のものを見つけたらしく、勢いよく顔を上げてソレを三人の前に突き出した。チョコレートバ―――スニ●ッカーズのような大きさとパッケージに包まれたものが、バラバラとテーブルの上に散らされた。
パッケージの色は茶色、緑色、黄色、赤色、橙色と様々だ。
「何ですかコレ?」
「地球の日本ではお近づきのしるしにお菓子を配り歩く習慣があるんだろ? 急いでたからあんまり凝ったもん用意できなくて悪いが、俺が前の会社で開発したエネルギーバーだ。まあお菓子みたいなもん」
「ヘェ食えんことはないアル。かぼちゃ味?結構濃厚ネ」
「そ、緑色はずんだ味で赤は確かりんご味だったかな」
目にも止まらぬ速さで橙色のエネルギーバーをもぐもぐし始めた神楽であるが、しれっと銀時ももぐもぐしていた。甘いものには目がない。上司と同僚の女の子に対して危機感ゼロだなあと思いつつ、自称お客様を無得にすることも良しとしない常識派の新八も、茶色のバーを手に取り封を切った。
「これなんかは色的にチョコレートですか?」
「うんにゃ、犬のクソ味」
当然のように吐かれた言葉に、新八はかじりかけのバーを景気よく噴出した。
「何でだよォォォォ!!魔法学校のお菓子ィ!?百歩譲ってその味があったとしてもお近づきにしるしにならなくない?!」
「俺だって作りたかったわけじゃねーよ。ただ試作段階で味見してもらったときに、「犬のクソの方がマシ」って言われて頭にきて、「じゃあお前は犬のクソ食ったことあんのかよ」って喧嘩になって「本当の犬のクソ味を教えてやる」って売り言葉に買い言葉で作ってしまった悲しきモンスターなんだ。試作の為に犬のクソまで食う羽目になった。最悪」
「誰も得してねェェ!悲しみしか生まないよ!誰か止めてくれなかったのコレェ!?」
「あとこれ夜兎族の継戦能力向上のために作ったメシだから、1本三万キロカロリーあるから気をつけてな」
「テメェェ!美容の敵みたいなメシ寄こすんじゃねーヨ!」
「毎夜腹が平成狸合戦ぽんぽこになってる奴がいうセリフじゃねーんだよ。……で、お客様、菓子は菓子として、お客様なら出すもんは出してもらわないと」
りんごバーをしっかりとかじりながら、銀時は片手を出した。依頼自体は歓迎だが彼らも万事屋業は仕事である。
一瞬変な顔をした後、やっと思い当たったらしい神食は巨大リュックの中に頭から突っ込むと、ごそごそと何かをつかみ取り――にっこりと笑って、テーブルの上にあるものを無造作に放り投げた。
――日本紙幣の札束を、どさどさと。
*
「というと、アンタも地球に出稼ぎに来たクチかい?」
「いや、俺はうーん……観光かな。ここ数年宇宙の企業で契約社員?な働きをしてたけど、期間が切れてやめたから」
ところ変わってスナックお登勢。長年かぶき町に店を構える、かぶき町にそれなりに暮らしていれば知らない人はいない老舗のスナックだ。店主のお登勢はかぶき町四天王に名を連ねる――本人は全く意に介していないが――人望の厚いママである。
万事屋銀ちゃんの一階にあるこのスナックに、神食墜落時の爆音が響かないはずもなく、なんだいとお登勢は家賃の催促ついでに万事屋へ様子を見に来たところ、この闖入者と出会うことになったのだった。
スナックの開店には少々早い時間だ。しかしとんでもないどや顔で札束を握りしめている銀時に面喰い、まさかコイツついにやらかしたのかと、事情によっては殴りつけねばならないと感じたお登勢は、万事屋+1人をスナックに招き入れてくれたのだ。
カウンターのお登勢に対し、正面で米をむさぼり食う神食とその隣に銀時が座り、向かいのテーブル席の一角に新八と神楽ジュースを飲んでいた。ちなみに従業員の猫耳団地妻キャサリンは買い出しで不在である。
「しかし金があるんならわざわざコイツの家になんか居候しなくても、いいホテルに泊まれるだろう?」
「そうなんだけど、観光するなら地元民の家に泊まったほうが楽しいだろ?あっごはんおかわり、メンドクセーから炊飯器ごとでいいよ。あと牛肉のブルゴーニュ風とかムール貝の入ったアクアパッツアとかない?」
「あるかァァァ洋食屋にでも行けェ!ここはスナックなんだよ!しかも注文が煩せェェ!」
「じゃあ塩で。シンプルイズベストだ」
すでに神楽の食欲で訓練されているお登勢は、あきらめた様子で炊飯器ごとカウンター越しに神食に手渡した。神食はほくほく顔で「地球は米がうまい」とのたまわっている。
「趣向が地味なのか煩いのか極端な奴だね……ちょっと銀時、チャイナ娘に続いてこんな胃袋ブラックホールのチャイナ男住まわせてどうすんだい」
「平気だっつーの、食費は依頼料とは別に自分で出させるって言質は取ったからな」
最近大口の仕事もなく、寂しくなる財布をパチンコでさらに寂しくさせていた銀時にとっては、目の前の大食らいはもはや札束に見えている。もぐもぐに熱心な神食を横目でみつつ、銀時は椅子をくるりと回転させた。
「んで、お前の依頼は、江戸滞在中に万事屋に泊まる、仕事の合間に江戸を観光する、探し人の三つってことで。どんくらい江戸にいるか決めてんのか?」
お客様ということでざっくりと依頼内容を神食に聞いたところ、上記の3つのリクエストが出てきた。ただ最後の探し人についてはかなり曖昧な内容らしく、彼は「太陽みたいな女と月みたいな女」という不安なコメントを残している。
神食はふるふると首を振った。「ん~~今ニートだし決めてねぇ。当分困らない金はあるし……あと、もし万事屋の仕事で入用なら俺も手伝うぜ、暇持て余すのって得意じゃねーし。別にギャラもいらない」
「銀さん、銀さん!」
何やら不安げな顔で、新八は銀時を呼び寄せた。「大丈夫なんですか、あの人! なんかウチに都合がよすぎて不気味なんですけど!それになんで空から落ちてきたのかさっぱりわからないし」
「バッカ新八、ラピュタしかり空から女の子みたいに素敵なモンが落ちてくることも人生にはあるんだよ。お前はその純粋な心を忘れちまったのか?」
「あんた完全に金に目がくらんでるだけ……って神楽ちゃん?」
目が¥になっている銀時と諫める新八の横を、これまでずっと黙っていた神楽が横切り、彼女はそのまま先ほどまで銀時が座っていた椅子に腰かけた。
「お前、宇宙で会社で働いてたって言ってたけど、そんなんでえいりあんはんたーの弟子ができるアルか? 私、パピーからお前の話なんかこれまで一回も聞いたことないし、お前を故郷に連れてきたこともないヨ」
神楽にじぃっと見つめられ、神食は箸を止めた。この中で夜兎という生き物を一番知っている神楽は、目の前の青年が血を纏っていることを察していた。幾多の戦場を生き抜き染み込んで取れることはない、血の匂い。それは隣に座るくらいの至近距離でないと彼女に分からないほど僅かなそれだったが、その微かさがむしろ、意識的に匂いを隠蔽しているようで、どちらにしろ気になったのだ。
しかし、星海坊主の手紙に疑いはない。字もいつもの父の字であり、内容も違和感がなかった。神楽の中でも目の前の男が何者なのか、判断できずにいた。
神食はふと斜め上を見つめたかと思うと、再び箸を動かし始めつつ答えた。
「弟子やってたのは11歳とか12歳からの数年間だから、組織勤めする前なんだ。弟子やる、14くらいで独り立ちしてえいりあんはんたー兼なんでも屋やる、16くらいで会社勤めの順番だ。師匠も宇宙を駆け回るし、俺は俺で組織に入ると色々面倒で、直接最後に会ったのは俺も5年前かな」
昔を思い出すように一人うんうんと頷きつつ、彼はつづける。「あとは文通だ。それに弟子ってのも、俺がストーキングして追いかけまわして押し切ったようなモンだしな。師匠が奥さんや神楽ちゃんをほったらかして、遊んでたわけじゃねーよ」
「……パピーはハゲだけどそこまで適当じゃないアル」
ぼそりとつぶやかれた言葉に、神食は破顔した。「ハハッ、そらそうだ。俺と仕事してたときも師匠、時々洛陽に帰ってたし。あんまり細かい話をする人じゃねえけど、家族がいることはわかるよ」
弟子として一緒に旅をしていた時も、烙陽に帰る星海坊主を、宇宙から何度も見送ったことを思い出す。神食から星海坊主に対して、身の上話を深く聞いたことはない。それでも一緒に宇宙を旅すれば色々な会話をする。家族内で何かしらの問題があり、それでも星海坊主は家族を愛していたであろうことは、少年の彼をしても推測にたやすかった。
宇宙最強にも悩みはあるんだなぁ~と能天気な感想を抱いたのもはるか昔である。
「そんで、俺は家族水入らずを邪魔するほど野暮じゃねえってコト……ところで炊飯器ごとおかわりない?」
「コイツみてたら私もお腹すいてきたアル。私もおかわりヨロシ?卵ある?」
「だ――からここは大人のスナックだっつってんだろーがァァ! 銀時、こいつら連れてファミレスなり定食屋なり行きな!」
お登勢のツッコミ怒声を受けて、万事屋+神食はスナックお登勢を後にすることになった。かぶき町初心者の神食は、物珍しいのかきょろきょろと木造建築の飲食店や、行きかう多種多様な天人を眺めている。
すでに札束を手にしている今、万事屋の夕食はたまには豪華にファミレスとしゃれこんでも構わないのであるが、依頼内容を他人に聞かれたくない依頼人もいる。しかし神食は「聞かれてもいい」と答えたので、ファミレスで話すかということになった。
四人がそのまま歩き出そうとしたところ、神楽が万事屋を指さした。
「オイお前!傘忘れてるアル、取って来いヨ」
万事屋から階下のスナックに移動するだけだったため、神食は持ち物一切を万事屋に置いたままである。日光に弱い夜兎族は、外を出歩く際は日傘を手放さない――が、神食は首を振った。
「夕方だし平気だ。これも訓練。酒弱いやつも酒を飲んでいるうちにそこそこ飲めるようになる法則」
「日焼けは乙女の美容の敵ネ!あと、日光に当たりすぎると皮膚が……ガンガンにデロデロのドロドロになるアル」
「えっ地球の日光、怖すぎ……?」
「皮膚ガンな。あとそんなんにならねーから」
「まあ俺乙女じゃないしな、大丈夫だろ」
「ハァ、しょうがない奴アル。ならお前が持つヨロシ」
神楽は呆れたようにため息をつくと、自分の傘を神食に差し出した。意味がわからない、と首を傾げた神食に、神楽は重ねてため息をついた。
「お前の方が背が高いんだから、お前がさして私を入れるネ」
やっと意図を理解した神食は一瞬目を見開き、そのあと微笑んだ。「ありが「わふん」ギャフン!」
続く言葉は、急に上空から落下してきた巨大なモフモフ――万事屋の番犬、定春によってさえぎられた。見事に下敷きになった神食は、ばたばたともがきつつ自分の上の巨大な犬を見上げて瞠目した。「エッナニコレ狛神ッ?エッ?」
「定春~! アッ、ファミレス定春も入れるカ?」
番犬というのであれば初見の依頼人を踏み潰すのは、役目を果たしているといえなくもない。神食の事は置いておいて、万事屋メンツの会話はそのまま続けられた。
「あっちジェノサンなら盲導犬は入れたと思うよ」
「人生という名の道を導いてる犬だから大丈夫だろ」
「ねえ皆! そこの定春くん?にどくように言ってもらっていい!?」
「わふん!」
話はまとまったのか纏まっていないのか、グダグダなまま、こうして神食のかぶき町ニート生活は始まったのだった。