夜兎男主は神威と河原(概念)で殴り合いたい   作:たたこ

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10/11 かぶき町大集会24での無配SS 配ったものと後半がちょっと違う


【小話】眠れない夜は羊じゃなくて兎を数えろ……眠れるかァァ!!

 敵前情報を知ってもいい神食(夢主)と、あんまり知りたくない神威の小話

 

 ★ざっくり設定 春雨時代編

 神食(じんく)(男主・固定名)18歳

 夜兎。春雨第七師団参謀長 赤目赤毛 自由人風味アホの子。

 神威と同じくらいの強さで切磋琢磨中。神威は16歳、団長。

 

 

「眠れないぜ!」

 

 第七師団の私室――幹部には個室が与えられる――にて、春雨第七師団参謀長神食は、ベッドの中で爛爛と目を輝かせていた。原因は明らか、昨日自前の春雨支給タブレットにて配信された、次任務の敵情報である。

 明日実行の、春雨と契約を締結していた資源豊かな惑星を占拠した命知らずな敵対宇宙海賊撃滅戦。

 宇宙最大規模の犯罪シンジケートに至った春雨に喧嘩を売った命知らず。

 件の惑星は宇宙でも辺境に位置しているから見逃されるとでも思ったのだろうか。

 

 とまれかくまれ、撃滅任務に備えて顧問の朽名から敵情報が送られてきた。惑星の情報、軍需施設の情報、それに宇宙海賊擁する強敵の情報。茶吉尼と夜兎をも擁し、中には小耳に挟んだこともある傭兵の名もある。

 

 もうこれは、ワックワクのドッキドキである。

 

 神食は任務でもプライベートでも、戦闘前に敵情報はわかる範囲で調べる方だ。もちろん、参謀長という役職柄、任務をこなす際の人員配置やメンバー選出を考える上で必要である。

 だが、個人的な趣味の領域でも調べる。たいした情報が出ないときもあるが、それはそれ。何がお出しされるかわからない敵さんのリアルタイム対応もスリリングで楽しい。

 今回は情報があるので、勿論しっかり目を通してある。

 

 あとは本番までイメージトレーニング(前戯)で楽しみ放題である。

 ああ来たらこう殺そう、弱点が書いてあるが、きっと本人も知っている、だから逆に敵がそこを攻めると予想してカウンターが来るetc.

 

 昨日から今日にかけてイメトレ(実地)でヒラ団員を千切っちゃ投げ千切っちゃ投げをしていたのだが、また新たなパターン(妄想)を思いついてしまった。精神大興奮。

 

「クソッだめだ! ウォォ!」

 

 神食は羊の計算を諦めてベッドから跳ね起きると、寝間着のゆったり中華服のまま机の引き出しにあるカードキーをひっつかんで部屋を飛び出した。

 

 

 

 幹部の個室同士は近い。神食はノックも何もなくカードキーをかざすと、自動扉が開く時間も惜しがって体を部屋にねじ込んだ。

 目的の相手は、同じく寝間着でベッドの上にて本を読んでいた。

 

「か~~む~~い~~く~~ん! 殴り合おうぜ!」

「お前、人の部屋に入る時はノックくらいしろよ。俺がオナってたらどうするつもり?」

 

 露骨に面倒臭そうな顔をしている神威の反応なんかいざ知らず、神食はその場で生きのいい魚のようにはねまくっている。

 

「そこは夜兎の情けだ、終わるまでは待っててやるぜ。 っていうかお前はノックどころか俺の部屋の扉毎回破壊してるだろがァァ! どの口⁉」

「お前が扉をロックしてるのが悪いんだろ」

「バ神威くんプライバシーってご存じ? ……まあいいや、とにかく訓練室行こうぜ!」

 

 大抵神威が殴りかかる方が普通のため、やたらノリノリな神食を見て、彼は首を傾げたが、すぐに思い至った。

 コイツ、妄想だけじゃ我慢できなくなったな。

 

 神威は任務でもそれ以外でも、強敵と戦う時は前情報を入れたくない。当然強いという評判や、どの程度の強さなのか、特徴特色には興味はある。だが弱点や詳細な戦歴までは知りたくはない。興味がないのではない。

 

 詳細な情報を知って戦いに臨み勝つ、と、相手について何も知らないで戦い勝つ、のであれば、後者の方がより強い。より強くなれると思っているからだ。

 実際の戦闘は何が起こるかわからない。いつも敵情報があるとは限らない。ゆえに、詳細な情報はあったとしてもあえて見ない。

 

 阿伏兎には仕事なんだけどォ⁉と突っ込まれ、神食にはストイックだなぁと感心される。

 神威からすれば神食の方が不思議だ。彼は夜兎でも弱くてもいいじゃん、と他人に言い、口にはしないが最強にさほど興味はない。だが強敵と戦えると知れば数日前から遠足前の子供と化してずっとワクワクしている。

 

(こいつは強敵を楽しみにしているというより、戦闘に恋してるって感じだけど)

 

 神威は読んでいた本を閉じた。「まぁいいか。部下の欲求不満(ストレス)解消に付き合うのも上司の仕事らしいし」

「よっしゃ!」

 

 神食が満面の笑みでガッツポした瞬間、彼らの後からけだるい声が響いた。書類作業でもしていたのか、まだ黒い団服のままの阿伏兎だった。

 幹部の部屋は隣接している。殴り合い、殺し合い開始の不穏なやりとりを聞いて顔を出したのだった。

 神食と神威の殺し合いは日常茶飯事だ。だが殺し合いといってもピンキリだ。じゃれ合いで終わるときもあれば、本気の殺し合いに発展してお互いに脇腹貫通しているわ太もも折れるわ顔面大流血の大惨事までバラエティ豊かだ。

 誰も止められないのでもはやどうしようもないのだが、せめて大型任務の前日は控えろと思う副団長殿だった。

 

「じゃあ、俺のストレスはいつ解消されるんでしょうか団長様に参謀長殿?」

 

 顔を見合わせた神威と神食は、示し合わせたかのようににっこり笑った。

 

「ちょっと歳食った男にストレスはダンディなアクセントって聞いたぜ」

「くたびれたオッサンもオッサンで需要があるって聞いたよ」

 

 その刹那、二人は電光石火の速さで扉、阿伏兎のそばをすり抜けて戦艦の廊下を猛然と駆け抜けていった。

 

「おいコラァ! せめて増やさないでいただけますかァア⁉ 怪我しても明日の任務に支障だすなよォォ!」

 

 阿伏兎の絶叫もむなしく、一時間後に二人とも足の骨を折るなり腕の骨を折るなり顔面血みどろにするなり散々な状態でご帰還なされてため息をつくことになるのであった。勿論訓練室も大惨事だった。

 

 おまけ:神食の眠れないぜ! は神楽ちゃんの「眠れないアル」の顔と大体同じ。

 

 

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