夜兎男主は神威と河原(概念)で殴り合いたい   作:たたこ

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第1訓裏【春雨】キャラが濃くないと強くなれないんじゃなくて、強くなると同時にキャラが濃くなる

俺は藻武(もぶ)。25歳の夜兎族だ。春雨第七師団――通称春雨の雷槍とも呼ばれる、実行部隊で花形部隊に所属している。春雨は宇宙最大規模の犯罪シンジケートだ。巨大ゆえに入り込むこと自体はそれほど難しくない――が、直接の師団員になるにはハードルがある。俺は親は別の宇宙海賊だったけど死んだ後、末端で薬を売りさばいたり、敵対組織を破壊したりしつつ段階を踏んでここまでやってきた。

夜兎は三大欲求に加え、戦闘を四つ目の本能として持つといわれるくらい好戦的な種族だ。もちろん俺も戦好きであるし、これまで培ってきた力に自負もあった。今は下っ端だが、いつか成り上がってこの第七師団を俺のものにしてやるってな。

もちろんその野望を捨てちゃいない。野望を捨てちゃ男、いや夜兎(ケモノ)が廃るってもんだ。だが、やはり宇宙は広いと痛感した。

 

――つーか、キャラ濃いのばっかなんだけど、第七師団(ここ)

濃ゆくないとと強くなれねぇルールでもあんのかな!?

 

 

 

 

 

 

第七師団戦艦内には、きちんと食堂が存在する。むしろ宇宙戦艦を宇宙戦艦として動かす機能以外で最も金をかけているのはここであるといってもいい。宇宙最強とも噂される夜兎の欠点の一つは、大喰らいであることだろう。燃費が悪いというか、他の種族とは隔絶した身体能力を行使するための代償というか。

そのため、二百人以上を同時収容でき、二十四時間調理員が交代で勤務しておりいつでも好きなだけ食べられる食堂がある。メシ目当てに第七師団に入りたがる夜兎がいてもおかしくないと思う。その代わり、大浴場とか寝床のクオリティは雑魚寝雑魚風呂イモ洗いのレベルだ。ただそうであっても、全然かまわないと思う夜兎も多いだろう。

裏社会ではもてはやされても、日の当たる世界では夜兎は嫌われ者だ。殺しや麻薬――つまり犯罪全般に手を染めずに生きようとすると、そもそも信用がない、差別を受けるで、まともな衣食住すら手に入れられないこともザラだからだ。

かくいう俺も、親が宇宙海賊内(春雨じゃない)で出会ってデキ婚、親は任務で死んだってところだ。でも、アットホームっていうか地元の義賊がちょっと大きくなって宇宙に乗り出したって感じの宇宙海賊内で育ったから、みんな家族みたいなもんだったし、物知りな団員に文字も教えてもらえたな。

俺はつい先日、春雨に敵対する宇宙海賊をせん滅する戦いに出てきたばかりで、明日明後日は確実にオフだ。

宇宙に夜も昼もないが、体内時間を整える為か艦内は二十四時間、朝と夜がある前提の消灯時間になっている。まあ適当な時間に起きてメシを食いまくることとしよう。

団員に女はゼロじゃないが、絶望的に数が少ないし一発ヤらせてくれよと言ってはいどうぞって言ってくれるような女はもちろん絶無だ。こんな男率バカ高のところにいる女はロクなもんじゃない。ちんこもぎ取られそう。

 

 

「藻武」

 

食堂で朝食を食べている時、阿伏兎副団長から声をかけられた。副団長は仕事明けなのか、マントの裾や肩に乗せた傘に血がついたままだった。ケガは一つもないようで、悠々と山盛りのカツカレーを片手に持ち、俺の右隣に腰かけた。

 

「お疲れさまです副団長!」

「こんなん疲れたうちに入らんよ」

 

阿伏兎副団長。第七師団にはもう十年以上所属しているそうだ。夜兎とはいえ常に戦場に行くことになるこの師団の死亡率は高い。つまり長年所属していること自体が「強さ」の証拠だ。

俺から見て、副団長の戦い方は「円転滑脱」って感じだ。抜け漏れ手落ちがない、派手さには欠けるかもしれないが体力を使いすぎてヘバったり、標的を仕留めそこなうこともありえない。まさに歴戦の夜兎。あとで詳しく言うことになるが、ほかの団員へのフォロー力も半端ない。フォローの副団長。フォロ兎さんだ。

あとで話す団長と参謀長のしりぬぐいをしまくっている苦労人の印象があるし実際そうだろうけど、満更でもないようにも見える。これを今話題の地球では「ツンデレ」っていうんだろうか。やれやれおじさんだっけ、忘れちゃった。でも振り回され系に見えてそれを御するのが好きだから、女の趣味を考慮しても絶対夜戦(意味深)ではドS、と言ってたのは参謀長だったかな?

戦闘力的には団長や参謀長の後塵を拝してはいるものの、第七師団という組織を運営するうえでこの人の存在は超重要なんじゃないのかな、と感じる。あの二人だとちょっと収集つかなさそうだし。あと、ウチの金庫番もこの人だ。

 

無精ひげを剃って睡眠不足?を解消すればかなりのイケオジなんじゃないか?と俺は思うが、本人はてんで興味なさそうで勿体ない。夜兎という種族が大好きで、敵対相手に夜兎がいると殺すのが惜しくなるのか少し矛先が鈍る。その点についてはよく団長にどやされているのを見るけど、どうにも治らないみたいだ。

 

「ところでお前、神食見てないか?」

「参謀長?いえ……そういえばしばらく見てない気が」

「そう、今日も神食の部屋に行ったけどいなかったんだよネ~どこで油売ってるのかな」

「あ“――ッ団長ゥゥッ!!」

 

びっくりしすぎて思わず汚い高音で返事をしてしまった。幸い団長は全く気にすることなく、副団長とは逆の、俺左隣に腰かけた。副団長のカレーとくらべて三倍くらいの大きさのカツカレーが、その前に置かれている。

 

神威団長。見た目は一瞬女性のようにすら見える、桃色の髪を三つ編みにした優男だが、弱冠十八歳にして猛者たちの頂点に立つ団長である。実は俺は入団したての頃、「このちっこいのが副団長!?(当時まだ団長じゃなかった)」とナメくさってイキリ倒して「あんたに勝ったら俺が副団長以下略」と啖呵を切って見事グーパン一撃で戦闘不能に追い込まれていた。

俺的には恥だけど「およ?ちょっと力入れたけど死んでないね、コイツ見どころあるよ」と当時副団長は喜んでおり、覚えはめでたくなったんだから世の中わからない。実は当時副団長にいちゃもんつけようとつけまいと殴られる運命であったらしく、新入りは「弱いやつはいらない」との方針でとりあえず一発ぶん殴られる通過儀礼があるとのことだった。生きてれば合格、死んだらそれまで。

俺が言うのもなんだがすごい世界だ。あとから聞いた話だが、団長は実はあの星海坊主の子で、先代団長夜王鳳仙の弟子だとか。夜兎のサラブレッドエリートじゃねーか!

 

戦いぶりはもう筆舌に尽くしがたいんだが、「修羅」「王者」って感じだ。なぜか常に、戦場にあっても笑顔のクセがあるようだけど、強くなることに熱心であることはよくわかる。戦うこと以外をすべてそぎ落とし、己の最強を証明する。死地であればあるほど、そこを超えれば超えるほどより最強に近づくのだと。死地こそが望み。

だからこそ、団長は死地でこそ笑うのだ。

それにあまり奇襲や絡め手を使わず、真正面からの力づくで突破するのが好きでもある。だから王者っぽいのかな。わかりやすいし、まさに鳳仙の弟子とも感じるとベテランの夜兎は言っている。あの有無を言わさない迫力、そこにしびれる憧れるゥ!強さの追及にはかなりストイックで、何が団長をそこまで駆り立てるんだろうな。やっぱエリートだから血が濃いのかな。

任務でもあんまりあれやこれやと作戦を考えたり指示をしたりするタイプではなくて、俺についてこい……ちょっと違うか、気づいたら勝手に一番槍で戦い始めているからそれを団員たちが追いかける感じ。いつも殴り合いをしている参謀長は「カスだけど突破力と牽引力は認めてもいい、カスだけど」と嫌そうにぶつくさ言っている。

そんな感じだから弱い夜兎には冷淡だが(多分、自分が強くなるのに使えないから)、古来からの夜兎らしいといえばその通り。だからこそ、自分より年上で戦歴も長い夜兎たちも、神威団長に従うことを良しとしている。

 

 

「でも、参謀長がいなくなるのって珍しくないですよね? ふらっと戻ってくるんじゃ」

「だと思うけど、これの続きが読みたくて。13巻だけ見つからないんだよ」

 

団長は器用にもカツカレーをほおばりながら、懐に収めていた本を取り出した。参謀長が地球という星から輸入している漫画という本だ。副団長がガクっと頭を抱えた。

 

「漫画はどうでもいいんだよ団長! 開発部の連中が参謀長はどこだってうるさくてなァ……」

 

現在不在の神食参謀長。参謀長という役職はほかの師団には存在しない。なんでも彼のために先代団長鳳仙の勧めで創設したらしく、明確な職掌のない謎役職で参謀っぽいことをしているのかも謎。階位としては阿伏兎副団長と同格の扱いをされている。

参謀長は臙脂に近い赤目赤髪を持つ、精悍な男だ。齢は二十歳。神威団長はあれでも十年近く在団しているのに対し、参謀長は四年くらい――というか実は俺より後輩である。

またしても俺は参謀長が入団して一年くらいで参謀長に就任した時、「なんだこのポッと出」とナメくさってイキリ倒して「あんたに勝ったら俺が参謀長以下略」と啖呵を切ったものの、「じゃあどうぞ」とのらくらとスルーされていたが、ある日参謀長のガーデニングエリアに土足で踏み入ったら「オラオラオラオラ」と一秒間に百六十発ぶん殴られて三日は動けなくなった。団長は「学習しないねお前」とケラケラ笑っていた。

ただこう思ったのは俺だけでもなく、ポッと出の出自不明の夜兎がいきなりどっかりと頭の上に座ったもんだから、参謀長参画時の反感はかなりあった。それも俺に類する形で次次ボコボコにされたり、そもそも初期から神威団長と殴り合っていたこともあって、次第に鎮火したけども。

参謀長は団長たちに比べて謎が多くて、本人も「10歳くらいまでの記憶がパーン!」って言っている上に、星海坊主の弟子、前職えいりあんはんたーくらいしかわからない。変な噂は色々ある、月を砕いた、夜王の隠し子とか。まあ夜王隠し子ネタは、出自不明で腕の立つ夜兎にはみんなが言う第七師団ジョークなんだけど。

 

戦いぶりは、「嵐」「天衣無縫」だな。こちらも戦場では笑顔なんだが、最強を求めるというよりは戦いそのものを楽しんでいる感じ。強ければ強いほど戦うのが楽しくなるし、いろんなことができるようになるから強くなりたいと言っていた。強くなるために強くなるなんて意味わかんねーと言い、団長みたいな突き詰める様子は全くなくてなんだこいつと思っていたけど、任務の後に戦闘の復習を毎回しているしトレーニング嫌いでもないから、口先とは裏腹にこっちも結構ストイックだ。

あとはそう、殺気とか敵意に気づくのがべらぼうに早い。早すぎて敵は自分が攻撃するより早く、参謀長に制圧されていることもある。

団長ほど一番槍に執着はなくて、殿で取りこぼしを拾ったり(殺したり)、遅れた団員のケツを蹴っ飛ばしたりフォローしたりしているのをよく見る。先陣に興味ないのかと聞いたら「それも好きだけど殿も悪くない、バ神威やお前らの築いた屍山血河が見渡せるしな」と今日の晩御飯はカレー、みたいなノリで言っていた。普段すごい根明で優しい(後で話すわ)方なのに、たまに悪党というより悪の総帥みたいなこと言うからビビる。そのうち敵の髑髏で赤ワインカンパーイ!とかしない?

団長は「ブチギレの神食は面白いんだけど、ああ見えて気は長いからなかなかね」と勿体なさそうに言っていた。団長、それ形容は「面白い」で合ってますか?

 

団長が戦闘!メシ!戦闘!であるなら、参謀長は戦闘!メシ!女!って感じで両方とも本能に正直ィ!って感じではあるんだが、参謀長は「弱い=生きてる価値なしとか、窮屈だし脳筋すぎ」という思想も同居しているのが、あの人一番のミステリーだと思う。どこで生えてきたんだろうその思想。あんたさっき敵の髑髏で乾杯してたよな(してない)。

 

任務中に倒れて動けなくなった団員は、誰かに気づかれなければそのまま捨て置かれる。以前から阿伏兎副団長は個人的に行動不能団員の回収を行っていたが、参謀長はこれを制度化して全団員で行うようにした。四肢欠損程度であれば義肢を作って戦線復帰する者がほとんどだが、夜兎でも内臓機能をやられると部位によっては長時間行動不能になり、戦闘能力に支障が出る場合もある。春雨ほどの大組織になると、裏方部門も存在するので希望すればそちらへの担当替えもやってくれる。

 

ほかの種族からすれば「良い」と思われる行いだが、こと夜兎の集団において評価は真っ二つだ。素直に命拾いしたという者もいる一方、戦えなくなった状態で生き残ってしまったことを「恥」とみなすことも多い。古い夜兎であればあるほど、「戦えなくなった夜兎は夜兎ではない」という信念を持つ者が多いのだ。

 

先ほどの神威団長が「古来の夜兎」にウケがいいとすれば、神食参謀長は「最近の夜兎」にウケがいい。ただそういう不満がありながら、参謀長が平然と「弱者を捨てない」を行えるかといえば、本人が団長と同等かそれ以上に強いからだ。

 

最強過激派が団長とすれば、その逆が参謀長。夜兎の血を愛す副団長はその中間。ただ団長と参謀長は仲が悪いかといえば、微妙。しょっちゅう殴り合ってはいる。根本的にポリシーが違いそうだから、かなり険悪な空気になっていることもある。

 

職務上一緒に行動しているのはよく見かけるが、つい先日も食堂でこんな会話をしていた。

 

「この師団においての話だけど――弱者に優しくするルールに、まがりなりにも皆が従っているのは、何よりも強いオマエが強さで強制しているからなんだよ?」

 

団長も参謀長も、食後のプリンを頼んでいた。

もちろん夜兎サイズのバケツプリンだ。参謀長はむ、と口をとがらせて食べる手を止めた。

 

「お前がイヤなら団長権限で止めさせればいいだろ。権限は俺よりお前の方が上のはずだぜ」

「却下するまでもないからさ。どうせ長続きしないよ。でも神食はバカの甘ちゃんだから痛い目みないとわかんないみたいだし。俺の器の大きさに感謝しなヨ」

 

この時点である程度第七師団にいるやつは周囲から避難を始める。雰囲気のピリつきでなんとなく流れを察するのだ。

 

「おーしわかったUNOで白黒つけてやる、表出ろや」

「神食UNO激弱すぎてつまんないよ。いつも思うけどどこから出るのその自信?それより普通に俺と戦ろうよ」

「待て、その理論でいくと俺が勝つと俺は結局力でねじ伏せる行いをしてるし、俺が負けるとお前に負けたってことになって俺の負け確どうワァァ!!」

 

団長がグーでスプーンを握りしめ、そのまま上方から参謀長に拳を振り下ろす。参謀長は器用にバケツプリンの皿を両手で持ったまま後方へ飛び退っていた。その身代わりにテーブルとイスはスプーンが突き刺さり廃棄処分の憂き目である。

 

「ぼやぼやしてると殺しちゃうぞ」団長はひん曲がったスプーンを投げ捨て、テーブルを足蹴にしてとびかかる。

 

「もごもごご上等だァブチコロスバ神威!!」参謀長はプリンを飲み物であるかのように豪速で飲み干し皿を投げ捨てる。

 

「やめてぇぇッ食堂で戦わないでェェ!俺たちの生命線だからァ!」

 

団員の悲鳴は聞こえているのかいないのか――喧嘩が食堂の場合は大体調理員のおじちゃんおばちゃんに怒られて手じまいになることが多い。最強は調理員かもしれない。

 

とまあ、こんな会話が誰でも聞ける食堂でされているのだから、仲はともかく第七師団は「おーぷんで風通しのいい職場」ではあるのかもしれない。

……今思えば、幹部連中はどいつもこいつもタイプが違うけど見てくれがいいな。(今の副団長はもう少しひげ剃ったりすればイケオジだと思うが、昔の写真も見たことがある。イケメンじゃねーか!!)天は二物を与えないんじゃねーのかァ!

 

おっと殺意殺意。

わずか一週間前のことに思いをはせていると、右隣の副団長がおっと手を挙げた。

 

「朽名爺」

「これは団長殿に副団長殿、何か御用ですかな」

「神食を見てねぇか?ここんとこ姿を見なくてな」

「殿下ですか? 見ておりませんが」

 

アンタも知らねえのか、と副団長はガシガシと頭を掻いた。朽名爺と呼ばれた老爺は、片眼鏡に白髪交じりの老夜兎だ。白地の長袍を纏い、右足が義足。夜兎は戦闘で四肢のいずれかを失う者が多いため、義肢の技術が発達している。四肢欠損くらいでは戦線離脱になることは少ない。今日はいつもより元気がない、というか落ち込んでいるように見える。

 

この朽名じいさんは、先代団長鳳仙様の古くからの馴染みで部下だったらしい。参謀長入団までは、吉原と第七師団を往復し、若い団長と阿伏兎をサポートするアドバイザー的な立ち位置だった。鳳仙様がまだ第七師団ひいては春雨に影響を与えたいから送られてきたスパイとか色々な噂はあるが、そもそも二、三カ月のうち一週間だけ来る程度だったのであまり存在感はなかった。だが、参謀長の入団と同時に正式に第七師団付けになり、基本的にこの戦艦で起居するようになった。

 

戦いぶりについては、これまでの三人と比べたら強くない。ただこの爺さんの特色は「気功の達人」であることに尽きる。そもそも気功自体向き不向きが大きく、夜兎でもメジャーな術じゃない。どうやら「自分のエネルギーの使用をコントロールして体を変化させる」とのことで、この爺さんはなんと自分の腕だけムキムキにできたり、若返らせたり、女性(らしい体つき)になったりと変幻自在だというのだ。第七師団の仕事は殺すばかりではなく、要人の警護や潜入捜査もあるため、そういった場面で重宝されている。

またしても俺は爺さんが団長や副団長に慣れなれしいのがムカついて、「なんだこのクソ爺」とナメて襲い掛かったら、気功でムキムキになった腕で通路の端から端まで吹き飛ばされた。団長は「もしかしてそういう趣味なのかな?」とケラケラ笑っていた。

 

問題は――団長と参謀長激推し(推しってなんだ?)らしく、時々発言がものすごくキモくなることくらいか。しかも副団長曰く、爺さんは先代団長もこのノリで推している(だから推しってなんだ?)、しかも最も推しているのは先代団長だという。あの夜王鳳仙の前でも法被を着て「夜王♡支配して♡」の団扇とペンライトを振り回して踊っているのかと思うと、とんでもない命知らずかもしれない。俺が入団した時はまだギリギリ夜王鳳仙が団長で神威団長が副団長だったから、鳳仙と会ったことも会話をしたこともあるんだけど、マジしょんべんちびるわ。雑兵って呼ばれたけど認識してもらえただけ感激だわ。圧で潰れるかと思った、何もされてないけど。

 

「まだどこかに出かけているのでしょう。最近見てなくてわたくしめもつらい」

「せめて行き先を言づけていけってんだあのあんぽんたん」

 

部下たちに示しがつかないだろうが、とあきれ顔の副団長はそういうと一気にカツカレーを掻きこんだ。

 

「神食はネコチャンみたいなもんだからほっとくのが一番いいヨ。漫画、14巻読んじゃおっかな」

「団長、アンタはアンタで元老向けの作戦結果の書類をやってくれませんかね?」

「爺やあとはヨロシク」

「喜んでッ!これはファンサです」

「爺さん、団長を甘やかすのはよしてくれ」

 

マイペースでカレーを食べ続ける団長、団長諸々のしりぬぐいに追われる副団長、仕事の推しつけもファンサと解釈するハッピーなアドバイザー、一団員の俺。

結局不在の参謀長の話は華麗に流されていき、いつもの第七師団の光景に戻った。

 

 

――神威の私室。

朽名を除いた第七師団幹部は全く神食の本気具合に気付いていないが、神威が神食の部屋から勝手にレンタルした漫画に、『退職届』と書かれた封筒が、しおり代わりに挟まっていた。

 

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