養育ファミリア メジェド・ファミリア   作:思いついたら書く人

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彼女は小さくても鬼

 神の送還が行われるまでオラリオは時々暴動が起こるとはいえ人々はそこまで怯えた生活をしていなかった。だからこそ子供たちもオラリオの中を歩くなど日常を謳歌出来ていたのだ。

 

 その日、ネフェルとリリルカは2人でカフェを巡ったり、お洋服を見たりといったお出かけをしていた。ネフェルの歳が十となりメジェド・ファミリアによる教育期間に入り、スカウトを受けたアストレア・ファミリアに仮入団しているので久しぶりに2人で楽しみを共有できる機会。そこで彼女達は一角のカフェでのトークに花を咲かせる。

 

「どうですか、アストレア・ファミリアは?ホームに帰って来る度疲れた顔でベットに突っ込んでいますが」

「大変だよー。アリーゼ先輩は優しいんだけどねぇ?輝夜先輩やライラ先輩が厳しくてさぁー」

「あー、確かにあの二人は厳しく指導してきそうですね」

「でも一番厳しいのはアストレア様でさあ!私がサボろうとしたら直に見つけたり、倒れたフリしてたらまだ出来るわよね?って言ってきたりして全然サボらせてくれないんだよ!」

「サボろうとするお姉ちゃんが悪いと思います。アストレア・ファミリアは街の警備もしているんですからお姉ちゃんもしっかりしていないといけないんですよ」

「そうだけどさぁー、ジン団長の稽古の後に第二級との模擬戦はキツいよー」

(それはかなりキツいですね)

 

 そんな会話を二人がしている時に送還の光が昇り、地上では暴動が起こり、ネフェルは周りの状況を確認、リリはテーブルの下に潜り辺りを警戒。

 

「………。」

「何が起きたんですか!?」

「分からない。けど神々が送還されたのは確か。リリはホームに戻って。私はアストレア様の所に行ってこれから起こる事に備えるから」

「は、はい。わかりました。お姉ちゃん気をつけてくださいね」

「大丈夫。私、可愛いから。変身!」

「私は愛し 愛される 愛しき私の愛は何処までも 空からも私の愛を 空にも私の愛を 愛の伝道師(エンジェル)

 

 確かにお姉ちゃんは可愛いけれどそれは関係あるのかな?とリリルカは思いつつ白衣の屋敷へと駆けていき、ネフェルはそれを見届けると空からアストレアの居る星屑の庭へと向かう。

 

 

 けれどリリルカは道中で親とはぐれ泣いている子供を見つけて慰めることとなった。それ自体はさほど問題ではないのだが、問題は慰めている間に足が止まってしまったということと通行の邪魔にならないように路地の方にいたということの二つが問題だった。逃げる機会を失ったのだ。

 しばらくその場にとどまって逃げ出す人達が周りに居なくなった頃にとりあえず子供を連れてホームに戻ろうとしたとき。

 

 別れたはずのネフェルが彼方から吹っ飛んできて石畳の上を削りながら滑って止まった。

 

「は?」

 

 リリルカは目の前の光景が受け止めきれなかった。けれど何度見ても目の前にいるのは自身の尊敬する姉である。現実を受け止めると次は、今すぐ駆け寄って助けてあげなきゃと思うが、それと同時に冷静な自分が子供もいる静かに様子を見るべきだと囁いていた。

 

 どうするべきかリリルカが葛藤している間に状況は変化する。

 未だに立ち上がることの出来ていないネフェルに二人の白と黒の対称的なエルフが歩いて近づいていく。

 

「ねえ、ディナどうしようかしらこの娘」

「どうしようかしら、ヴィナ」

「「可愛いらしいこの娘をもっともっと可愛くお化粧して殺して(あい)あげなきゃ!」」

 

 化粧、愛してあげるという言葉とは裏腹に二人のエルフはネフェルを蹴り、踏みつけ痛めつける。それをリリルカは子供の目と耳を押さえていながら目を逸らせずじっと息を殺して見る事しか出来なくて涙が溢れてくる。

 

 どうすればいいのか。助けたいけど力がない、あんなに良くしてくれた姉が苦しんでいるのに何にも出来ない。姉が顔や腹を重点的に蹴られている。血がダラダラ流れている。何も出来ない。力が無いから。怖いから。勇気が出ない。情けなくて涙ばかり出てくる。そんなもの何の役にも立たないのに。

 

「あら、さっきより何倍も可愛く成ったわね。」

「ほら、私達に感謝の言葉はないのかしら?」

 

「………ふぅ、あーぁー。なに?……わたしの、……かわいさにさぁ…しっと、でも…、してるの?化け物」

 

「「………ぶっ殺す!!!」」

「ヴィナ、殺して。塵すら残さずに。私は逃げられないように磔にするから」

「そこまでしなくてもいいんじゃない?ディナこの娘もう一歩も動けないんだから」

「………。それもそうね」

 

 殺されちゃう。どうしよう。どうしようもない。助けられない。

 

 ………本当にそうだろうか。助けられないのは本当だろうか。いや、違う。助けるんだ。助けられるのはリリだけなんだから。今此処で動けるのは他の誰でもないリリだけなんだから。

 

「いいですか?リリはこれから貴方とは違う所に行かなくてはいけません。だからこの御守りを持ってあちらの方へと走り出してください。この先に行けば誰かが助けてくれます。いいです  ね?」

「うん。うん」

「じゃあ行ってください」

 

 ただ助けたいという思いを胸に抱いてお姉ちゃんの元に走る。ステイタスが刻まれているとはいえレベルは1だし、戦うなんて今まで考えてもいなかった。アビリティは全然育ってない。姉を抱えて走れるのか、そもそも間に合うのかそんな事は考えない。あのエルフ達が殺そうと思えば殺される。そんなの分かってる。分かってるけれどリリルカは姉を助けたい。

 先ほどまでと違って勇気がある。力はない。あの二人をどうする事も出来ない。でも、だとしても姉の前に立って声を出すことが出来る。威嚇して、立ち向かうことが出来る、何より誇れる自慢の妹に成れる。

 

「何?貴方、其処に立って何をする気ですか?」

「(リリ?どうしてこんな所に)」

「私は!リリルカ!この人の自慢の妹です!」

「ふーん?それで何ができるの?ただ立っているだけじゃ何も変わりはしないわよ」

「確かにリリは何も出来ないです。でも、だとしてもそれは貴方達に立ち向かわない理由にならない!」

「そう、じゃあ仲良く死になさい。ヴィナ」

「は~い、ディナ。ディアルヴ・ディース」

 

 明らかな強者による長文詠唱。リリが喰らったら確かに塵すら残さずに消滅してしまうでしょうか。でも、ただ怯えて、姉を見捨てて、隠れて、生き長らえるのよりは何倍もマシに思えたが、リリルカは目を閉じ死を受け入れるなんて事は出来ず向かって来る魔法に対して一縷の望みに賭けて助けを呼ぼうとした。

 

 その瞬間である。

 目の前に迫っていた炎が消し飛びもう一人の姉がいつの間に居たのだ。

 

「ふざけるな」

 

 それは正に修羅鬼と言える様相だけれどもとても頼もしい英雄の姿だった。




『愛の魔法』
ネフェルが変身すると使えるようになる。
魔法と名がついているが「魔法」とは異なるもの。どちらかというと「奇跡」のほうが近い。
自身に向けられた「愛」または自身の向ける「愛」の総量によって様々な奇跡を起こせるようになる。総量であるため一人の愛する人より多くのファンの方が様々な奇跡を起こせる。
愛さえあれば人間は何だってできる。

現在使えるのは、飛翔、各アビリティバフを自身や味方に付与、声を遠く届ける、コンディションの調整。

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