ナイコア共和国は、数十年前に南欧で建国された新興国だ。
国土は狭く、第一・第二産業はほとんど成り立たない。そのため多数の民間軍事会社を誘致し、それを基盤として発展してきた。
そんな国にISの所有資格を与えるべきか――その是非は以前から国連で議論され続けていた。
だがナイコアと密接な関係にある欧州諸国の後押しもあり、このたび正式にIS所有国として承認されるに至る。
そして、その代表候補生としてIS学園へ送り込まれたのがカルーナ・ロフェルであった。
だが幼い時から傭兵の父に付いて戦場で生きて来た彼女にとってこの日本のIS学園はあまりにも退屈過ぎた。
「・・・はあ」
休み時間、自分の席に座ったままカルーナは小さくため息をついた。
彼女にとって意味の無い座学は苦痛以外の何物でも無く、ただただ無駄な時間を過ごしているだけに感じていた。
すると次の授業をつげるチャイムが鳴り、周りのクラスメイトたちが次々と自分の席に着席していくと担任が教室に入って来るなり
「すいません、そう言えばクラス代表のことについて言うのを忘れていました」
「クラス代表・・・ですか?」
生徒の一人がそう聞くと担任は頷き
「クラス代表とは生徒会の開く会議や委員会への出席などを行うクラス長のことです。再来週行われるクラス対抗戦にも参加することになりますので出来れば今決めようと思うのですが・・・」
「先生、クラス対抗戦って何ですか?」
「クラス代表が他のクラス代表とトーナメント形式でISによる模擬戦を行う事です。これは入学時点での各クラスの実力推移を測るのと同時に今後の向上心の材料とする目的があります」
「!」
それに小さく反応を示したのはカルーナであった。つまりクラス代表になれば少なくとも模擬戦をする機会が設けられると言う事なのだから。
「まず立候補する人はいませんか?」と担任が尋ねたところでカルーナが手を上げる。クラス中の視線が彼女に集まった。
「・・・やります」
「ではロフェルさんが最初の立候補ですね。他に誰かいませんか?」
だが他に手が上がる様子が無い、教室を見回した担任がそれを確認し「では三組の代表はロフェルさんに決定ですね」と告げれば拍手の音が控えめに響いた。
と言うのもクラスメイトたちはカルーナが代表候補生であることを前もっての自己紹介で知っており、とりあえず代表候補生なら良いかと言う他人任せな心理も働いていたのだ。
「ではロフェルさん、これから宜しくお願いします」
「わかりました」
そう言いながらカルーナは僅かに笑みを浮かべたのだった。少なくても、退屈にはならなそうだと。
翌日の放課後、カルーナは生徒会室へ向かった。クラス代表として最初の仕事である生徒会への顔合わせを兼ねた会議である。面倒だとは思ったが立候補したのは自分だ、ならクラス代表として最低限のことはしなくてはならない。
「失礼します」
扉を開けると中にはすでに数人の生徒がいた。生徒会室の中央に置かれたよくある会議室の長テーブルには数名の生徒が肩を並べるように座っていた。それぞれが異なる気配を纏っている。
最初に目に入ったのは金髪の生徒だった。背筋を伸ばし優雅に椅子へと腰掛けているその姿はいかにも育ちの良さを感じさせる。
その隣には茶髪をツインテールに縛った生徒がおり、カルーナと目が合うと不自然に視線を逸らす。
それから一つ席を飛ばし、長い水色の髪で眼鏡をかけた生徒がおり、こちらには一切興味無さそうな表情を見せている。
カルーナが1年三組と書かれたプレートの置いてあるツインテールの生徒と眼鏡の生徒の間の席に座った所でお誕生日席に座っていた水色のセミロングの生徒が「これで全員ね」と言う。
「では今年度最初の生徒会議を始めるわよ。改めて、私が生徒会長の更識楯無よ。まず1年一組からそれぞれ自己紹介をお願いするわ」
彼女がそう言うと金髪の生徒が「1年一組代表のセシリア・オルコットですわ」。その隣に座るツインテールの生徒が「1年二組代表の凰鈴音よ」と答える。
「1年三組代表、カルーナ・ロフェル」
カルーナの隣の眼鏡の生徒が「・・・1年四組代表、更識簪・・」と呟くように言った後に2年、3年のクラス代表が続き、最後の3年四組の代表の紹介が終わった所で楯無がうんうんと頷くと
「さて、みんなももう知っているかもしれないけれど、再来週にクラス対抗戦が行われるわ。クラス対抗戦はその名前の通り各クラスの代表が一対一の勝ち抜き戦を行い、優勝者を決める大会よ。そしてもちろん優勝賞品もあるわ。それは――なんと学食デザート半年フリーパス、優勝クラス全員に配布されるわ」
それに鳳鈴音が「クラス全員に半年も?随分と太っ腹ね・・・」とぼやき、カルーナも内心頷く。正直カルーナとしてはそこまで魅力的な報酬ではないが他の女子にとってはまた別なのだろう。現に2、3年生の数名は目を輝かせている。そんな周囲の反応を見つつ楯無はニヤリと口角を上げると
「とはいえ、毎年のように同じことしているからマンネリ化してるのも確かよね。そこで今回はちょっと趣向を変えてみたいのだけどいいかしら?」
「?」
と疑問符を浮かべる一同に対し楯無はこう続けた。
「今年の一年は全員国家の代表候補生でそのうち三人は専用機持ち・・・こんな例は過去に無いほど豪華な顔ぶれなのだから皆で順番に戦っていく総当たり戦なんてどうかしら?」
楯無は得意げに微笑む。
「通常の一回戦負ければ終わりのトーナメント方式ではなくて、全員が何度も戦えるチャンスがある方が面白いと思わない?」
室内にざわめきが広がった。2、3年生は互いに顔を見合わせたり、眉をひそめたりしている。だが1年生の中からは特に異論が出ない。セシリアは唇に指を当て少し考える素振りを見せると「・・・わたくしは構いませんわ」と言い、それに続いて鈴音も「あたしも別にいいけど」と答える。
「・・・四組はどう?」
楯無が簪にそう聞くと彼女はしばらく視線を彷徨わせ、諦めたように「・・・それで良い」と言った。
「それで三組なんだけど・・・」
少し言い淀んだのはカルーナだけ専用機が無いことへの配慮だったがカルーナは「・・・私もそれで良い」と頷いたのだった。
原作との変更点
一組のクラス代表をかけて織斑一夏とセシリア・オルコットが戦い、織斑一夏が一組のクラス代表になる → IS学園に織斑一夏がいないのでセシリア・オルコットが一組の代表になっている