根本的な設定が違うISの話   作:ねこカヌレ

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3・EOSに慣れよう

初めての生徒会会議の翌日、1年三組はEOSを運用した実践授業を行っていた。

ISのパイロットを育成する学校なのに何故EOSに乗るのかと最初は不満が出たが担任が「EOSをまともに運用出来ないのならISは動かすことも出来ません」と言えばそれに従うしか無かった。グラウンドに並べられたクラスの人数分の訓練用EOSに生徒たちが担任の指示の元乗り込むが・・・

 

「ふんぎぎぎぎいいいいい!!!」

「お・・・重いいいいい!!!」

 

入学試験の時に乗ったISとは違い、EOSには反重力システムやパワーアシストなど操縦者の動きを助ける物は無い。

搭載されたバッテリーも30㎏ほどあり、これでも大幅に改良された方だと事前に説明があったがそれでもその動きにくさや重さに生徒たちは苦戦を強いられている。

中には女子高生が出しちゃいかん声を上げている者もいた。

 

その一方でカルーナにとってEOSは『いつも使ってる手馴れた道具』であった。

カルーナはEOSに接続するとすぐに身体に装着したスーツとの一体感を感じ取った。他の生徒たちが悲鳴のような声を上げて重さに苦戦している中、まるで長年履いてきたブーツを履くように自然に立ち上がったのだ。

 

「え?もう立ってるよ!?」

「早くない!?」

 

クラスメイトたちの驚きの視線を感じながらもカルーナは淡々とした表情でEOSを操縦していく。肩や腕の動きに合わせて機体が滑らかに反応する様子はまるで人間の延長線上にあるようだった。

 

「おや、ロフェルさんは随分と上手ですね」

 

担任が目を見張りながら近づいてきた。

 

「これくらい普通です」

 

他の生徒たちは未だに腰が浮かないまま、または片足だけ上がってしまった状態でじたばたとしている。

 

「そろそろ移動練習に入ります!ロフェルさん、見本になってもらえますか?」

「わかりました」

 

担任の要請に応じてカルーナは一歩前に出るとEOSをゆっくりと前方へ歩ませた。機械的な補助がないにも関わらず、その動作は流れるように美しく、まるで舞踊のように軽やかだ。生徒たちは息を呑んで見守っている。

 

「すごい・・・!」

 

クラスメイトたちから感嘆の声が漏れる。それもそのはず、この段階ではまだまともに歩けている生徒すら一人もいないのだ。

 

「次は右回り旋回!」

 

カルーナは静かに頷くと右足を軸にして回転し始めた。彼女の姿勢制御能力は抜群で、わずかなバランス調整だけでスムーズに360度回転する。

 

「最後に跳躍!」

 

高く飛び上がり着地する。衝撃はほとんど感じられない完璧なフォームで地面に降り立つとそのまま停止ポーズに入った。

 

「皆さん、よく見てください。これが理想的な運用方法です」

「おお・・・っ」

 

生徒たちから称賛と驚愕が入り混じった声が上がる。カルーナは特に自慢げになることもなく淡々と機体から降りた。そこへ数人が近づいてくる。

 

「どうやったらそんなに上手く乗れるの?」

「・・・『仕事』で乗ってるから慣れてるだけ」

「えっ、お仕事で?それって・・・」

 

生徒の一人がより聞き出そうとした所で他の生徒に「ちょっと・・・」と止められる。

クラスメイトの大半はおおよそ理解している。カルーナはナイコアの代表候補生、そしてナイコアは多くの軍事会社で成立している言わば軍事国家、そんな国でEOSを使う仕事となれば・・・すでに想像はつくのだろう。

聞き出そうとした生徒もハッと気が付き、今度は改めて

 

「じゃ、じゃあコツを教えてほしいな!」

「コツ・・・まず重心が大事」

「そうなんだ!ありがとね!」

「うん、頑張って」

 

そう言うと生徒たちはカルーナの周りから離れていった。その後すぐに別の生徒が代わりにやってきてカルーナに質問をする。

入学当初の自己紹介直後とは大違いだ。少し前まで距離を置いていた態度とは打って変わって、笑顔で親しげに接してくる。

カルーナは再び質問攻めに遭いながらも、自分の経験に基づいたアドバイスを与えていく。その的確さと優しさに生徒たちは次第に打ち解けていった。

 

「やっぱり代表候補生って凄いんだね~」

「別に・・・ただ経験があるだけ」

「経験がものを言うってことだよね!私ももっと頑張らないと!」

 

そんな会話ををしつつも授業終了のチャイムが鳴る頃にはほとんどの生徒がEOSを歩行できるまでに動かせるようになっていた。カルーナのおかげもあったかもしれないが各々が自分なりに努力していた結果なのだろう。

そもそもIS学園パイロット育成科は入学倍率が約30倍と国内トップレベルの難関校だ。受験者たちは厳しい選考を突破してきた才能ある若者ばかりであり、潜在能力は決して低くはない。

今回のEOS操作においてもそれは如実に表れている。初めこそ重さや操作性に戸惑っていたものの、適切な指導と励ましを受けながら徐々にコツを掴み始め、授業終了時には全員が基本動作をこなせるようになっていた。

 

「お疲れ様でした。皆さん今日一日で素晴らしい成長を見せてくれました」

 

担任の教師が満足げにクラス全体を見渡す。

 

「特にロフェルさんのデモンストレーションはとても参考になったでしょう。しかし皆さんの中にも素早い飲み込みを見せた方はたくさんいらっしゃいます。この調子でいけば次のステップである模擬戦闘演習も十分に対応できるはずです」

「あの~・・・それでISにはいつ乗れるようになりますか?」

「そうですねえ・・・夏休み前の校外特別実習期間にはデータ取りのために必ず乗ることになりますが日常的にとなると後期に入ってからでしょうか」

「そんなにですか・・・」

 

期待していたよりも長いスパンに残念そうなため息をつく生徒が多いがカルーナはどうでも良かった。むしろここでISを扱うのに必要な基礎を叩き込む期間が長くなるのだから、パイロット育成科としては間違いなくプラス材料である。しかし、だ。

 

「・・・再来週にクラス対抗戦があるので私としては早いうちに慣れておきたいです」

 

そう言いつつカルーナが挙手すると担任も「確かにそうね」と頷く。

 

「じゃあロフェルさんは明日からISによる実技訓練を始めてもらうことにしましょう」

「分かりました」

「それ以外の方は引き続きEOS訓練となりますので、くれぐれも気を緩めないように」

「はい!」

 

こうして再来週のクラス対抗戦に向けてカルーナは一足先にISに搭乗することが決まったのだった。

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