戦争なき帝国主義   作:TD75Kwk

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ワシントン会談第二話です。
一体どんな策なんでしょうかねえ


第二話:四対一のテーブル

幣原喜重郎

「今回の会議に際し、事前に日英に仏伊を交えましてこちらで具体的な条約案を起草しお持ちいたしましたので是非ご覧いただきたい。」

 

参加各国に資料が配られる。

 

米「なんだこの内容は‼

居住区や衛生設備を非換算とする提案は理解しかねるな。結果として数千トン規模の“見えない排水量”を許容することになり、設計上の余裕は装甲や復原性にも転用され得る。これは軍縮の精神に反するのではないじゃないか」

 

日「ご懸念は理解しますが乗員の健康と安全は国家の責務であり、これを軍備拡張と同列に扱うのは適切ではありません。

我々は戦力ではなく、彼ら国家に奉仕する軍人を人間としての最低限を守ろうとしているに過ぎません」

 

英「米国が反対するのは、自国の設計にゆとりがないからでは? 我々文明国は、まず人間の尊厳を重んじるのです」

 

伊「粗末な環境で長く戦えるほど、人間は単純ではありません。良い食事と快適で清潔な空間は、兵士を兵士たらしめる基盤なのです。」

 

米「ぐぬぬ…ならばこの『老朽化と人道面』を理由とする無制限の改装を許可するなど、言い換えに過ぎない。

それを軍縮と呼ぶのは、あまりに都合が良すぎるのではないか?」

 

日「都合、ですか。

兵員の安全を確保することが都合なのだとすれば、それは我々の価値観の違いでしょう。

もっとも――その違いがどちらに有利に働くかは、改めて申し上げるまでもありませんが」

 

英「“言い換え”と仰いますが、規定を過度に厳格化すれば、各国は新造に走るしかなくなる。

それによってのエスカレーター条項の成立が最もあなた方にとって“都合の良い結果”ではありませんか?」

 

仏「“意図された増強”と“結果としての変化”を混同されているように見受けられます。

もし両者を同一視されるのであれば、議論そのものの前提を再考する必要があるでしょう」

 

米「ほかにも主力艦のみならず巡洋艦の規定にも重大な問題がある。1万2500トン制限と言いながら、人道枠を除外すれば実質はそれを大きく上回る。

これでは“小型戦艦”の量産を認めるに等しいではないのか」

 

日「荒天時の安全確保や長期航海における健康維持は、戦力の増強ではなく運用の前提条件です。

それを排水量に含めて制限するのであれば、各国は安全性を犠牲にするか、あるいは条約を形骸化させるかの二択を迫られることになります。

――いずれが本会議の望む結果でしょうか」

 

英「巡洋艦は各国の広域に分散して任務に就きます。

そのための居住性や航続力を削ることは、任務の継続性そのものを損なう。

我々が求めているのは贅沢ではなく、持続可能な運用です。

それをもって“戦艦化”と呼ぶのは、いささか単純化が過ぎるのでは?」

 

仏「長期任務における衛生設備は戦力ではなく、艦そのものの維持に必要な機能ですとも、ここは妥協できるポイントではない。」

 

米「空母建造枠の主力艦枠との別設置と廃棄予定の戦艦の空母転換を同時に認めるるとは何ごとか!

無際限に空母を増やす口実になるではないか」

 

日「皆様、条約を順守して所有空母枠以上の建造はされないのでしょう?

なら何の問題もありますまい。」

 

仏「航空機の可能性を否定するものではありません。

しかし、現時点において主力艦のような決定的な役割を担えると判断するにはいささか証拠が不足している。

不確実な前提に基づいて規制を設けるのは、いささか拙速ではないでしょうか」

 

米「もういい 議長!結局のところ、彼ら四カ国が賛成すれば、この“人道”を口実とした拡張がすべて正当化されるのか?

それが本当に、我々の目指す軍縮なのか?」

 

英「多数の見解が一致した際にそれを採用するというのは、民主的手続きの自然な帰結と理解しておりますが?」

 

日「本件については、各国がそれぞれの立場から検討した結果、結論が近似した――ということに尽きるかと存じます」

 

伊「価値観が共有される場では、結論もまた自然と収束するものです」

 

仏「人道という原則に関しては、我々の間に本質的な相違は見出し難い――それだけのことでしょう」

 

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最終的に下記の内容のものが採決された。

1条

各国の主力艦向けアメリカ90万トン、イギリス100万トン、日本70万トン、仏伊が30万トンまでとする。

ただし空母保有枠は各国一律で12万トンとする。

2条

排水量の定義に乗組員の健康と安全を維持するための設備は人道的面より排水量には換算しない。

3条

現有主力艦の改装禁止、ただし老朽化と人道的面に基づく改造と空母への改造は許可される。

4条

現在計画中の建造計画全てを概要のみに絞り開示しそれ以降の戦艦建造を10年に限り禁止する。

5条

4条にて開示された艦艇を建造開始する際は締結国に通知する。

6条

艦齢20年以上の艦艇に限り廃艦とそれに伴う代艦の建造を許可する。

ただし極端な構造的欠陥を保有してる場合は20年未満の場合も廃艦を認める。

7条

艦種区分は以下の通り定義する。

戦艦は備砲を16インチ以下の艦艇とする。

巡洋艦は1万2500トン未満とし備砲は8インチ以下5インチ以上の艦艇とする。

駆逐艦は備砲5インチ以下の艦艇とする。

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議長「以上を持ちまして、今海軍軍縮条約の調整会議を終了いたします。」




すいません、おまたせしました。
ゴールデンウイーク中は戦場に出かけててたのと軍縮条約の制限の調整に苦脳してました。
ひとまず史実より圧倒的優位な海軍軍縮条約になりましたねえ。
これがのちにどう響くのか乞うご期待
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