イギリスがイギリスしてるだけですね。
では本編どうぞ~
時は二月前に戻る。
ロンドン サヴォイホテル
「日本国使節団の皆様、遠路はるばるようこそ、ロンドンへ
今回ワシントン条約事前交渉を担当させていただくアーサー・H・ウィンダムであります。」
「ええ、今回の交渉を担当させていただきます斎藤誠です」
「さて早速本題に入りましょう、おそらくアメリカは我々に相当の譲歩を迫ってくるでしょう。」
「ええ、我々もそうみております。」
「さすが大将、耳が早いですな
われわれ英海軍としてはそのような断固として容認できるものではないという立ち位置であります。
確かに我々は未曽有の大戦によって相当な被害を負いましたがいまだ大英帝国は健在なのであるのです。」
「……まったく同感ですな
しかし“容認できない”と述べるだけでは、主導権は彼らに渡るでしょうな。」
一拍。銀のスプーンがカップに触れ、小さく音を立てる。
「そこでご提案なんですが
『我々で先に内容を決めていきませんか』
「なるほど、彼らの要求を我々、旧大陸人が事前に決めた内容でかき消すわけか、内容はどうする?」
「おそらく彼らは排水量で縛ろうとしてくるでしょうですから。
排水量の定義に乗組員の健康と安全を維持するための設備は人道的面より排水量には換算しないということにしましょう。」
ウィンダム卿は細長い指でティーカップを弄び、薄い唇を吊り上げた。
「人道的ですか。……実によい響きだ。彼らは『正義』や『人道』という言葉に弱い。彼らが自国の水兵の健康を犠牲にしてまで鋼鉄を積み上げたいと言い出せば、世界の笑いものですからな」
「次に彼らは国別の排水量上限を決めてくるでしょう、おそらく国家規模と必要性からしてイギリスとアメリカが同規模、日本がそれより少なめ、仏伊が我が国の半分程度でしょう。」
「それは困るな。彼らも両洋を抑えないといけないのはわかるが、我が国は7つの海のシーレーンを守らねばならんのだぞ」
ウィンダム卿は一度視線を落とし、紙を静かに押さえた。
「ですので仏伊にこの点で色を付け懐柔しましょう。我が国としてはアメリカ90万トン、イギリス100万トン、日本70万トン、仏伊が30万トンを検討しています。」
「100万トンですか。英国の財政には少々毒が回る数字ですが、七つの海を統べる代償としては安いものです。それより日本は大丈夫でしょうか各国かなり経済も回復し国家財政も安定してきたとはいえ英国ですら100万トンがギリギリのラインだぞ70万トンとはいえ日本経済ではかなりきついんじゃないか」
「いえいえ大戦のときの工業改革でそのあたりの基盤は整いましたので。現に英本土でもちらほら安い日本製品を見かけられるようになられたでしょう。」
「ふん、その部分は少し不満だが致し方あるまい
儲けてるのはでは植民地人共ではなくわれらが友邦なのだしな」
「ええ、そちらはおいおい外務省同士の会談で調整しましょう。」
閑話休題
「しかし日本も欲張られましたな、」
「ええ、帝国海軍としましては北海での大損害を補填しなくてはなりませんからな。」
「とりあえず我が国としてはそれで問題ない。」
「懸念点としてはアメリカは平等を求め二つの大洋の防衛の必要性を掲げ最低でも100万トンにしようとしてくるでしょう。」
「いや、それには及ばんよ、なんせ我が国は七つの海を見渡さなくてはならんのですからな」
「おっしゃる通りですな。
ところで我が国が直接動けば、仏伊は『東洋の小国が増長した』と騒ぎ立てるでしょう。しかし、それが『帝国の秩序を守るための英国の命』であれば、彼らは首を縦に振らざるを得ない。
どうでしょう、英国からご提案していただけませんでしょうか。」
「確かにそのとおりですな、海相と相談しましょう。」
「では詳細を詰めていきましょう。」
「そうですな。」
「この部分は~」
「あそこの基準は~」
話は続き夜は更けていく...
というわけで、ワシントン会議の裏側。
表に出る前に、すでにいくつかの“形”は決まっていたようです。
次はワシントン4か国条約に関連する話になりそうですがこちらも紛糾しそうですね。