ダウナーお姉さん(偽)魔術師は現代世界で帰還した勇者を差し置いて無双する   作:ゆきゆき@ダウナーお姉さん

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Ep.2 ダウナーお姉さん(ダウナーではない)(むしろアッパー)(そもそも男)

 

◇東京———魔術協会

 

 

「俺は……なんでこんなことに……」

『静粛に』

 

 東京の某所、一般人は立ち入るどころかその存在を知ることすら出来ない秘密の機関。

 

 そこで、1人の少年が……まるで裁判所の証言台のような場所に立たされていた。

 

 少年の名前はユウ。異世界より帰還した勇者である———最も、その事実はこの部屋にいる者たちは知らないが。

 

 

 そして、少年を見つめるのは———魔術協会の長。

 

 髭を伸ばした白髪の爺は、その少年の瞳をじっと見つめている。

 

 

 魔術協会の法において、非所属員の異能・魔術の行使は重罪。

 たとえ偶然の発現で、かつ誰かのためだったとしても———死は免れない。

 

 

 老人が、儀礼用の杖を床にコツンと打ち鳴らそうとした……その時。

 

 

 ギィ、と音を立て……大きな鉄扉が開かれた。

 

 

 入ってきたのは、長い茶髪をなびかせる美女——————のように見える男。

 

 

 そう、私である!!!

 

 

「おいおい、私抜きでなーに面白そうなことやってるのさ」

『黙れ、雪宮。お前の立ち入りは許可していない』

「お、お姉さん……!?」

 

 わざとらしくカツンカツンと音を鳴らしつつ、私は部屋の奥へ奥へと歩みを進めていく。

 

 まったく、いくらなんでもこの判決はないだろう。

 いくら私でもドン引きだよこんなん。

 

 

 というかなんでこんな事なってんの?

 

 こういう事にならないように、資料クッソ誤魔化したのに……

 

 

『……用件を言え。わざわざやってきたということは、どうせこの子の助命だろうが……一応、聞いておく』

「あ、そう? じゃあ言うけど、この子助けてくれない? というか問答無用で助けてよ。今の時代でこんなの通ると思うなよ」

「スプラッタお姉さん……!」

『静粛に。そして、そいつはお姉さんではなくお兄さんだ』

「えっ」

 

 あ!?

 黙れやクソジジイ!!!

 

 

「私はダウナーお姉さんだろうがッ!!!」

「???」

 

 これだからお年寄りはさぁ……

 

 

『はぁ……皆、少々待ってくれ。今から雪宮と話をするのでな』

「あの、お、お兄さんってどういう……?」

「ダウナーお姉さんね」

「あ、はい」

 

 

 

 

 

◇魔術協会・談話室

 

 

「いやね? これには深い事情があってだな……」

「どうせ他の協会員が納得しないとかでしょ?」

「ま、まぁそうなんじゃが……」

「そもそも強いから協会の役に立ってもらう、とかそんぐらいの言い訳はできるでしょ?」

「ま、まぁそうなんじゃが……」

 

 リピートやめろ。

 

 

「あの、そもそもここ何なんですか? 俺、そもそもこの世界に帰ってきたの最近なのであんまり分からないんですけど……」

「帰って……きた? どういうことじゃ、まるで帰還モノのWeb小説みたいじゃが」

 

 このジジイラノベ読んでんのかよ。まぁよく考えたらラノベって結構年寄りが読んでたりするのか……?

 

 

「うーん、なんかそう言われるとちょっと嫌な感情湧きますけど……大体そんな感じです。俺は———異世界に召喚されました。そして2年掛けて戻ってきたんです。で、戻って来たら時間は全然経ってなくて……」

「おぉっふ、マジでテンプレじゃのう!」

 

 ラノベジジイが……いったん黙れ!

 

 

「でも、異世界で得た力はそのままだったんです。見た目はこの世界に戻る前に治したんで、ほぼ元のままなんですが……」

「おい雪宮、やっぱ面白そうだからコイツ生かすぞ」

「子供の命で遊ぶな」

 

 なんであの流れから私がツッコミ役に回ってんだよ、お前堅物みたいな雰囲気出してただろ。化けの皮剥がれてきてるぞ。

 

 

「よし、そうと決まれば一旦戻るぞい」

「えー……なんか、釈然としない流れなんだけど」

「今日から魔術協会に新人が入るぞ! まぁブーイングはされるじゃろうが気にするな! がはは!」

 

 その後なんやかんや『こいつは役立つから無罪』というのを薄ーく引き伸ばした内容を30分くらいラノベジジイが喋り倒し、裁判は終わった。

 最初からそうしとけ!

 

 

 

 

 

 

◇再び談話室

 

 

「さて、それじゃあ魔術協会の基本的なルールを私が説明してあげよう。このダウナーお姉さんが、ね……」

「あの、そもそもダウナーお姉さんって……」

「まさかキミはダウナーお姉さんを知らないのか!? いいだろう、私がみっちりねっちょり教え「いや、しないでいいですから」

 

 そうですか……

 

 

「こほん。じゃあ本題に戻ろうか、魔術協会のルールについてだ」

「お願いします。俺もこの世界のこういう……異能? 魔法?はどのレベルなのかよく分からないので」

 

 おっ、そのナチュラル現世魔術見下し嫌いじゃないぞ。

 まぁ実際のところ、ほとんどの魔術師はこの子に勝てないだろうけどね。

 

 前の時も、手を抜いてるなんてレベルじゃないぐらいだったし。

 

 私のダウナーお姉さんアイは誤魔(3回目なので省略)

 

 

「まず第一に、この世界では魔術行使に関してルールがある。魔術協会に断りを入れずに使っちゃダメってことだ……まぁ強かったら無視していいよ」

「いいんだ……」

「ま、キミはまた目をつけられるからやめた方がいいかな」

「分かりました」

 

 物分かりがいい子だねぇ〜!

 

 従順な奴は嫌いじゃないよ。『嫌いじゃない』としか言ってないような気がする……まぁ嫌いじゃないので仕方がない。

 

 

「ま、事後承諾でも大体オッケーだしそんな気にしないでいいのは変わらないさ。わたしから伝えれば100%通るし。それで次の話題、階級についてだね」

「階級……ミスリル級とか?」

「わざとか? まぁどっちでもいいや、ここでは主に(・・)5級、4級、3級、2級、1級の5階級が存在するんだ。5がクソ雑魚で1が凄く強いって感じだね」

 

 ちなむと5級は銃を持った一般人くらい。4級は訓練された兵士数人分。

 

 3級は小隊レベル。2級は建物や区画を制圧してしまえるほどで、1級は街を簡単に制圧できるぐらい。

 

 

「俺は5級スタートですか?」

「うん。みんなここからスタートさ。昇級試験は毎月終わりに開催してるから頑張ってね? ちなみに実技だけだよ」

 

 そう伝えると、小声で『冒険者ギルドを思い出すなぁ』とか呟く勇者のユウくん。

 

 ダウナーお姉さんイヤーは地獄耳なのだ。聞き逃さんぞ!

 

 

「さて、まぁその他のルールは特に無いけど……仕事が割り振られたら基本的にはやらなきゃダメだね。他の人に投げるとか、やむを得ない場合はそういうこともできるけど」

「俺、学校あるんですけど……」

「あぁ、もちろん学校を優先してくれ。サボる言い訳として使ってもいいよ?」

「サボりませんよ……あ、あともう一個質問が」

「なんだい?」

 

 彼は真剣な眼差しで私に向けて口を開く。

 

 

「“魔人”と“魔人教団”がなんなのか教えてください。この世界にもそういう存在って居たんですか?」

「あぁ……なるほど。この世界の魔人はキミが転移していた世界と同質のものだ。実はいるんだよ、この世界にも。それと……魔人教団はそれを勝手に崇めている組織さ」

「勝手に?」

「そう、勝手に。別に魔人だからって人間と変わりはないのにさ、神格化されちゃってるんだよねぇ……バカな子たちだ」

 

 いつか本格的に潰そうかなと思っていたが、どうやらこの子と何かしらのイベントがありそうなので……一旦は様子見かな。

 

 

「ま、こんなとこだね。それじゃ今日はおしまい。ハイ、お疲れ〜解散解散」

「えっ、まだ聞きたいことが」

「私も今用事あるから……聞きたいことがあったらあのおじいちゃんにでも聞いときな?」

「そんなぁ」




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