ダウナーお姉さん(偽)魔術師は現代世界で帰還した勇者を差し置いて無双する   作:ゆきゆき@ダウナーお姉さん

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Chapter 2:ダウナーお姉さんは機械にも強いとされている
Ep.9 ダウナーお姉さんとは、過去に囚われず前に進もうとする意志である


 

◇雪宮邸

 

 ダウナーお姉さんは日々のケアも欠かさない。

 まず私は朝にシャワーを浴び、丁寧にスキンケアを行う。これは絶対だ。

 

 戦闘で顔面を何度殴られようと私の美貌が損なわれないのは、ひとえにこの努力の賜物……は嘘で単純に〝昇華〟のおかげだが、まぁ習慣というのは大事なものだ。

 

 髪を乾かし、服を選ぶ。

 

 今日は白いコートにしようか。昨日も白いコートだったがまぁいい、これが一番様になる。

 コート着てるダウナーお姉さんってカッコよくない?

 

 身だしなみを整え終えて、私は外へと出る。

 

 

「さぁ、今日も張り切ってユウ君のストーキングを……ん?」

 

 なんか影が……空から何か降ってきてる?

 

 私はそれを見上げた。

 落下速度はかなり速い。軌道的には……目の前に落ちる。

 

 

 ドォン、という重い衝撃音と共に地面が抉れた。

 土煙が舞い上がり、私のコートに土がかかる。

 

 

「さて、一体何が落ちてきたんだか」

 

 土煙が晴れると、そこには小柄な女の子がうつ伏せで倒れていた。

 

 水色の髪。白を基調とした、どこか機械的な意匠の服。

 その背中には展開されたままの翼のような構造物がついており、その一部が損壊して火花を散らしている。

 

 そして何より目を引くのは、首筋から覗く継ぎ目。

 

 

「美少女ロボットってやつだね」

 

 なんで最近はこう変な事が起こるのか……異世界からの帰還だとかね?

 

 

 ロボットの少女はぴくりとも動かない。

 損壊部位からはまだ火花が出ており、魔力……いや、これは違う。電力で動いている。

 

 私は屈んで、少女の顔を覗き込んだ。

 これは人間と見間違えるほどに精巧に作られている。

 

 しかしその顔のほとんどは破壊されており、内部の構造が丸見えになっていた。

 

 

「えっちかもしれない……」

 

 さて、この子はどうしようか。

 今日はユウ君のストーキングをする予定だったが……ごめんね、ユウ君。お姉さん、この子気になっちゃった……!

 

 

「そうと決まれば早速解析しよう。サキのとこなら出来るかな?」

 

 火華サキ。魔術協会所属、1級の魔術研究家。

 私のトモダチでもある。

 彼女ならば色々と調べられるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

◇火華サキの研究室

 

 

「親方! 空から美少女ロボが!」

「おいおい、そんなことあるわけ……うわ、マジ? ユキちゃん最近変なの拾いすぎじゃない?」

「サキちゃん、この子解析しようよ。ほぼ全壊してるけど……きっと私たちならいける。そう、ダウナーお姉さん2人の力があれば、ね」

「アタシってダウナーお姉さん枠なの? サクラとか狂夜とかじゃない? そういうのってさ……いや、サクラはともかく狂夜はちょっと違うか……?」

 

 私からすると、ダウナーお姉さんとは過去に囚われず前に進もうとする意志である。

 

 その意思を持つ者は皆すべからくダウナーお姉さんなのだ。

 

 

「相変わらず意味分かんねぇこと言ってるねぇ。今日は特に酷いや」

「で、出来そう?」

「あったりまえでしょぉ?」

「なら良かった」

「ところでアストライアの整備……いる?」

「アレを使うタイミングなんてあると思う?」

「そかぁ」

 

 いくつかの解析用魔術が展開され、ボロボロの機械人形のすべてが分析されていく。

 やはりというか、この美少女ロボットは正真正銘『電気』で動いているらしい。

 

 

「おぉう……これもう半壊どころか全壊してるじゃん。アタシでも直せるってレベルじゃないよこれ、そもそも内部構造もアタシすら知らない造りだしさ」

「うーん、基板は半導体と同じ何かを使ってるし、どうやら中枢システムもプログラム的な何かで動いている……ならいけそうかな?」

「まぁ、抜き出せたプログラム……?みたいなやつの書式は全部解析したから、アタシたちで中枢プログラムを作って翻訳してあげれば動かすことは出来るんじゃない?」

 

 なるほどね。

 

 あ、そうだ。そういえば最近魔術とAI掛け合わせて人格作る実験してたし……アレそのまま突っ込めばよくね?

 

 

「ちょっと待ってよユキちゃん、アレぶち込むのは流石にマズいって。あんな悪ふざけの塊みたいな人格インストールしたら絶対面倒なことに……」

「いいじゃん、どうせ元の人格とかデータとか復元できなそうだし」

「それはそうだけどさぁ」

「じゃあ決まりだね」

「決まってない決まってない! ちゃんと話し合おう!?」

 

 サキはそう言いながらも、既に例のプログラムのデータを引っ張り出していた。

 口では反対しているが、手は動いている。これはやはりダウナーお姉さん……!

 

 

「……まぁ、どうせ元のデータは断片しか残ってないし」

「でしょ?」

「でもアタシ、責任とらないからね」

「私もとらない」

「最悪だよ」

 

 

 

 

 

 

 

◇1週間後

 

 作業は思ったより早く進んだ。

 サキの解析魔術と私の……まぁ、適当な補助があれば大抵のことは何とかなる。

 

 やっぱこういうコード的なシステムって、最近はAIにぶん投げれば大体やってくれるからね。そっちはそこまで問題なかった。

 

 

 問題は本体の方だ。知らない技術で動いているから、復元にはかなり苦労した。

 

 別に私たちの世界の技術を使えば修復自体はできる。ただ……そうするよりは元の形で復元したい。知らない技術の宝庫だったし、これを潰してしまうのはやはり勿体無いからね。

 

 

「はーい、それじゃあ起動しちゃおっか!」

 

 私は拍手した。ぱちぱちぱち。

 

 

「コードにエラーは無し、機体にも問題はなし。変換電力は満タン、理論上これでいける……はず! えいやっ」

 

 

 えいやっ、と。私は適当に組んだ起動用の魔術陣をタップした。

 キィィィン、と微かな駆動音がサキの研究室に響く。

 

 放電のバチバチという音が鳴り、少女の背中にある翼のようなパーツが淡く光り始めた。

 

「お、通電した通電した。サキ、モニターの数値はどう?」

「なんか知らないログがいっぱい流れてるよぉ」

「あー、それ私が組んだ人格の初期設定ログだから気にしないで」

「気にするよ普通! なんでステータスに『downer-one-san』とか使ってんの!? 可読性考えなよ!?」

 

 さきのそんな言葉をスルーしていると、手術台の上に寝かされていた少女のまぶたがピクリと動いた。

 ゆっくりと彼女の瞳が開かれる。

 

 虚ろだった瞳に光が灯り、青みがかったレンズが焦点を探るように微かに駆動音を立てた。

 

 少女はガシャン、と少しぎこちない動作で上体を起こすと、私とサキを交互に見つめる。

 

 

『システム・オンライン。全モジュールの正常起動を確認しました』

 

 口から紡がれたのは、無機質でありながらもどこか誇らしげな声だった。

 そして、サキの方を見つめると……

 

 

『へっ』

「おい」

「まあまぁ」

『なんなりとご命令を、アナタにすべてを捧げます』

「ほら、大丈夫そう」

「ほんとか……?」

 

 一瞬人をバカにするような顔が見えた気がしたが、多分気のせいだろう。

 真面目な顔で私の方を見つめる彼女の顔からは、そんなふざけた雰囲気は微塵も感じない。

 

 

「私が雪宮ユキ。で、こっちの赤いのが火華サキ。私たちがキミを直したんだよ」

『理解しました』

 

 水色髪の機械少女はペコリと綺麗にお辞儀をする。

 

 

「なんか、あのふざけたプログラムぶち込んだ割にはまともだね」

「でしょ? 私の天才的な調整とダウナーお姉さんパワーのおかげだね」

 

 私がふふんと胸を張っていると、少女はサキの方を向いて言った。

 

 

『当たり前でしょう? なんてったってこのワタシなんですから! むしろワタシを直せたことを光栄に思うといいですねぇ! はっはっは!!』

「クソが、やっぱりダメじゃないか……! ユキちゃん、今からでも人格モジュール書き換えよう。一般に普及してるAIみたいな性格に直そうよ!」

 

 サキが頭を抱えて叫ぶ。

 まぁまぁ、と私はサキを宥めつつ少女に向き直った。

 

 

「今日からキミの名前は“ドミノ”だ」

『……………………了解しました』

「おいおい、どうしてそんなに不服そうなんだい?」

 

 あっ! こいつ今ため息吐きやがったぞ!

 

 

『はぁ〜〜〜〜! 自律して思考できるワタシの名前はワタシ自身が考え、名付けるべきだと思わないなんて……これだから有機生命ってのは』

「やっぱり人格書き換えようかな」

『……!? な、なーんでもご命令くださいご主人様ァ!! ワタシにすべてお任せあれ!』

 

 

 

 





【主人公について】
この人は自分をダウナーお姉さんだと自称していますが、それはそれとしてかなり男性寄りの考え方をするし、気分によっては自認が男性になることも普通にあります。

あ、それと右上の方からレビューしてくれると本当に喜びます
今までやったことない人とかも、ぜひ……マジでお願い……!
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