タクティカル祓魔師短編集byこうはく   作:虹博

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十二部隊長の苦難

 僕のひいお爺さんはシベリアで暮らしていたことがある。いわゆるシベリア抑留を体験した人物だ。僕が成人するまで生き残っており、露助だのアカだのと、その時の不満を酒と共に吐露する人だった。そんなおじいちゃんが言う一番辛かった出来事は常時監視されプライベートがなかったことらしい。小さい頃の僕は、

「仲間が死んだり、ご飯が少なかったりとかは辛くなかったの?」

と聞いたのだが、おじいちゃんは岩のようにゴツゴツとした手で僕の頭を乱雑に撫でながら

「お前も同じになればようわかる、見られてるって辛いんよ。まぁ、お前がそうなるのはお縄の時ぐらいだろうな」

と言って笑いかけてくれていた。お縄になることなんてないし、一生ないな、なんて当時の僕は呆然と思っていた。だが、この世界にはお縄にならなかったとしても、常に銃を向けられる仕事があった。かの有名なトニースタークも経験したものである。

 

 そう、テロリストでの開発者である。

 

と言っても、トニーさんと違って僕は雇われている身であり、給料も出れば休みもある。有給を使って某ネズミーランドに行こうなんて計画を立てるぐらいには余裕があるのだ───後日、申請は却下された───ならば、僕とトニーさん、ひいお爺さんに共通点があるとしたら何だろう。それは明確で、銃である。もっと詳しく言おう、何かがあったら自分に向けられる可能性がある銃を持った怖いお兄さんに常に見張られていることである。まぁ、形式上は護衛なのだが、我が開発隊、の前の旧開発隊は勝手に資金を使い、勝手に勢力を増やし、勝手に暴走し、勝手に烏有先生の腕を吹き飛ばし、離反したらしいので、絶対、護衛ではなく見張りだ。別に僕が勝手にそう言っているわけではなく、(一部のやばい奴を除き)開発隊全員が薄々思っていることである。 

 もしもおじいちゃんが生きているならば僕は言いたい。ひいおじいちゃん、僕、不死原忠司はあなたの気持ちが少しはわかりましたと。

 

 ここでお分かりいただいたと思うのですが、我々新開発隊、───離反しやがった旧開発隊と混ざるかもしれないため、わかりやすく新開発隊と呼称します───は基本的にこのような警戒対象の仲間として扱われます。そうですね、また、いつ勝手に暴走するか、どう、爆散するのか、また、数十万人を転がして、離脱するのか、マッドサイエンティストとして恐れられました。怖がられるだけならまだよかった───ことはないけども───のですが、新開発隊作成当時、上がっていた案として新開発隊の権力や情報の管理を全て部局に任せて、許可がなければプロジェクトを進めること、情報を観覧すること、なんなら、外に出ることすら禁止しようと言う話があがりました。つまり、奴隷です。ミワシ部隊の外部接続型演算脳みそとして飼おうと言う計画が本気で議論されていました。当時、私は登戸研究所の所長をしており、部隊長としての内定をもらっていましたから、会議に参加していたのですが、それはそれは酷い。上記で言ったことはもちろん、旧開発隊の罪を新開発隊に償わせようとか言ってたり、開発隊隊長になる私に、謝罪を要求したり、なんなら最後あたりは感情的になった軍需局のお偉いさんが私に腹切りをしろとか抜かしていました。あぁ、もう最悪、僕が何かをしたわけじゃないのに!! と心の中で叫びました。幸いこうならなかったのは後日の御前会議で烏有先生がこの馬鹿げた提案書を破り捨ててくれたおかげです。あのとき思いましたよ、抱いて、僕、あなたのなめなら初めて捧げられるって、もちろん言っていません。腰の刀で切られそうなので。

 ええと、まぁ、書き直された計画書は───最初のやつと比べて───まともなものでした。監視はついていながらも、労働者として保護されたものというべきか、休みをもらえるだけマシというべきか、とりあえず、月月火水木金金は回避されました。と言っても、月月火水木金土なのだが。

 

 これで安心、ミワシ部隊のために研究をするぞっと息巻いていた私と部隊員にやってきた次の試練は外部からの研究者たちでした。我々、新開発隊……というか、ミワシ部隊はテロリストです。えぇ、テロリストです。これを、憲兵隊なんかに聞かれたら僕は小林多喜二よろしく、冬の凍える日にサンドバックと化すでしょうが、まぁ、これは否定しようのない事実です。

 とまぁ、テロリストということもあって、非人道的な実験ができるんですよ。人体実験はもちろん、細菌兵器も穢化兵器の作成とか、法律に縛られない縁起や、禁域の調査とか、色々と。そしてそれに惹かれる存在もいるわけです、特に境界対策課にいて、くすぶってる奴らっているんですよ。境対課って自由にやっていいように見えて法律に縛られていたり、人が多い都合上、派閥があったりと、めんどくさい。そういうのに疲れた自由を求める研究者が多くミワシ部隊にきます。じゃあ、それがなぜ試練だというのか、よく考えてみてください。

安定した仕事を捨てて人体実験をしたいとかいうやつにまともな奴がいるわけないでしょう。”お前らだって人体実験してんだろ!!”と言われればぐうの音も出ないのですが、ですが、まだ、仕事としてやってる方が健全だと思いませんか? 自らやりたいやつの方が頭おかしいです。

 とまぁ、そんな頭おかしい奴らが、人事局か、それとも他の組織からの推薦か、知り合いの伝手で入るか、いろんな道で入ってくるんですが、そういう奴らって大抵、実績が良いし、頭回るしで、すぐに室長、課長、部長へと上り詰めるのです。だから、私が直接管理する部下となるんです。無理ですよ。直近だと、縁起開発部に女が入っていたな……修復費を考えないバカ……これだから女に力を与えるとすぐ何もかも壊す。クソ。

 

 それが今の新開発隊です。あぁ、僕はいつ、ダモイできるのでしょうか。

 

 

 

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