『よう実』ゲーでハーレム目指します   作:m!zu菜

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オレの選択

思えば奇妙な縁だった。

 

始まりはバスの中。

席順に、会長とのいざこざに、退学阻止に試験、、、

さまざまな場面で俺と堀北は関わってきた。

 

あの場所にいた頃では考えられなかったが、少し堀北には何か特別な感情を持っていた。

友愛?親愛?はたまた、ただ俺を否定して欲しいという期待だったのかもしれない。

 

堀北の様子がおかしいのはいつからだったろう。

会長との確執の件は確かに堀北を変えたかもしれないが、もっと、根本的なところで、彼女は何かを抱えているように見えた。

仄暗い劣等感のような何かを。

 

 

数ヶ月がたった今ならわかった。

アイツの、田中の仕業だ。

アイツは女子を手中に収めることを何よりの幸福としている。

今、堀北をターゲットにしているはずだ。

 

4月の中頃、櫛田が堀北と友人になろうとして、敢えなく撃沈した話はクラス内でも有名だ。

聞くところによれば、堀北をカフェに連れ出したのは、田中の差し金だったらしい。

噂の広まり方も妙だった。

櫛田を過剰なまでに持ち上げ、堀北をまるで悪役のように扱う。

 

この前、博士から勧められた本に書いてある言葉を俺は何故か自然に思い出した。

「孤立誘導型、、、。」

なんでも、ヤンデレというものの一種にそういうものがあるらしい。

クラスメイトの評判を操り、自分しか味方がいないと錯覚させ、依存させる。なるほど巧妙な手口だと感心した。

もちろん、田中がそのヤンデレかと言われれば首を傾げざるを得ないが、間違いなくこれに近いことをしている。

 

しかも、自分の手を一切汚さずに。

ホワイトルームでも人心掌握術は多少叩き込まれたが、アイツの手腕には驚きを隠せない。

 

無人島で功績を与えたのも、おそらく計画のうちだろう。

船内での堀北は、すでに重圧によって潰されかけていた。

 

今は軽井沢や龍園クラスの女子にちょっかいを出しているらしいが、そのうちアイツの毒牙は堀北を突き刺すだろう。

 

 

、、、俺は何故堀北にそこまで考えを巡らせているのか。

 

あの頃では出てきもしないだろう思考に、少し思案を止める。

ただの隣人のはずだ。

気に入らないことがあるとコンパスで刺すし、昼ごはんで俺を釣るし。

言葉はキツイし、まともな返事は返ってこない。

 

 

田中は面白いやつだ。

アイツの行動を観察していれば、失った感情を取り戻せるかもしれない。

アイツの言う通り動いていれば、俺ももう少し普通の学生らしくやっていけるかもしれない。

そんな淡い期待から始まった関係だった。

 

実際のところ、喜び、怒り、、、アイツの行動には学ぶべき点が多かった。

俺自身の好奇心のため、アイツの指示に逆らう気はさらさらなかった。

 

 

少なくとも少し前までは。

 

船内で堀北に会った。

病人のような顔をしていた。

実際体調が悪かったのかもしれないが、腐っても無人島試験の大勝利の立役者だ。

クラスメイトを思ってか、はたまた他クラスへの警戒か、表情を緩ませる事はなかった。

 

 

、、、知っているか?田中。

堀北はな、本の趣味が合うと、少し口角をあげるんだ。

授業に真面目に取り組んで、テストには常に全力だ。

兄貴に追いつくため、毎日努力している。

企みがある時露骨に目線を逸らすんだ。

食事をするとき、毎回髪を鬱陶しそうにしてるんだ。

須藤たちの努力が報われたとき、誰よりも嬉しそうに微笑んでいたんだ。

 

 

 

 

決めた。

堀北はお前じゃなく俺が救う。

今もなお、他の女子と遊んでばかりのお前に、やるわけにはいかない。

 

そうと決まれば、行動に移そう。

皮肉にも、アイツのせいでやり方はもう熟知している。

 

予想通り、堀北は1人でデッキに佇んでいた。

話しかけようとして、一瞬怯む。

なんて声をかける?これではまるで、アイツと同じじゃないか。

 

、、、人を味方に引き入れるのに、やり方を拘るような人間じゃないと自負していたんだがな。

 

こちらに気づいた堀北と、取り留めのない言葉を交わす。

違う、そうじゃない。

分かっているだろう?綾小路清隆。

 

好奇心という言葉で、あやふやにするつもりか?

過去を引きずって、この場を逃すつもりなのか?

 

そうだ、きっとこれが、この感情こそ、俺の欲しかった、、、

 

「堀北。」

「、、、なに?」

「、、、もっと、、俺を頼ってくれ。」

 

目を丸くする堀北に構わず、思いの丈をぶつける。

口から漏れ出た言葉は、数日前の俺では考えられないようなものだった。

瞠目する堀北。

単純に驚いたからか、はたまた別の理由か、それはわからないが、堀北には知ってもらう必要がある。

俺の、、、この感情を。

 

「お前が苦しんでいるのはわかっている。俺は、お前の力になりたい。」

「それは、、、Aクラスになるために、ということ?」

「そう、だな。それもあるかもしれないが、、、、堀北個人を、俺は気に入っているんだ。」

「....そう。」

 

言葉を詰まらせて、返答に困っているような顔をする。

、、、はやったか?

急すぎたかもしれない。なにしろ勝手がわからない。

俺にできることは、とにかく伝えることだけだ。

 

「堀北、お前の様子を見て、俺は、、、苦しかったんだ。クラスが前に進んでいく中、お前はずっと劣等感を隠し続けてきた。誰にもそれを知られないようにして。、、、柄じゃないが、心配になったんだ。」

「あなた、に、、、心配されるっ、筋合いは、、、、」

 

そうだ。好奇心じゃない。

きっとこれは、これは、、、

 

「堀北。俺は、、俺は、お前を愛しく思ってる。」

「っ、!、、、」

「お前に、傷ついて欲しくないんだ堀北。俺を...頼ってくれ。」

 

 

 

 

side:堀北鈴音

 

隠してきたつもりだった。

少なくとも、隣の朴念仁にはバレていないと思っていた。

いや、バレたくなかったのかもしれない。

兄さんとの件を見られて、事件でもアドバイスをくれて、、、

これ以上、彼のことを頼るのが嫌だった。

 

きっと、対等でいたかったんだ。

これ以上弱みを見せて、、、彼が、私に情けをかけるのが嫌だった。

同情されて、この心地よい関係が崩れ去ってしまうのが怖かった。

 

認めるのは癪だが、唯一の友人だ。

クラスから邪険にされているのは、なんとなく察していた。

クラスから噂されるのも構わず、私に付き合ってくれていた。

 

田中くんと仲良くなって、遠ざかって行ってしまいそうに見えたけど、彼は変わらず私と関わってくれていた。

心地よかった。

本の話をして、クラスの話をして、試験の話をして。

 

きっと、結局卒業までズルズルとこんなことを続けていくだろう。

そう思っていた。

 

 

無人島試験で、田中くんは自身の功績を私に譲った。

言われずとも分かった、孤立していた私のためだ。

いや、ここまで全て彼の予想通りだろうか。

 

自身の性格に問題がないとは口が裂けても言えないが、私の孤立を促したのは間違いなく彼だ。

田中くんも櫛田さんも、なんとなく好きにはなれない。

 

 

「お前を愛しく思ってる。」

 

 

すぐには言葉が出なかった。

目の前の彼は、私を、私にそんな想いを抱いていたのか。

どうすればいいんだろう。

 

今まで私に告白してきた男は、皆私の見た目に惹かれた人だけだ。

私の人となりを知れば、自然と人は離れていく。

彼は、全部ひっくるめて、私を好いてくれている。

 

しかし、いいのだろうか。

兄さんにも失望されたような私が、クラスに何も貢献できていないこんな私が、誰かから好意を向けられるなんて。

 

 

彼と目が合った。

いつもの無気力な瞳じゃない。

どこか熱を帯びた、不安げに震える目。

 

初めて彼の中に、人間的な感情を見た気がした。

 

 

こんなにも、彼は私を想ってくれているのに。

こんなにも、彼は私に寄り添ってくれているのに。

こんなにも、私は彼のことばかり考えているのに。

 

こんなにも、私は彼のことを想っているのに。

 

 

言葉は自ずから自然と出た。

 

 

「私も、、、あなたを好いているわ。綾小路くん。」

 

 

 

side:綾小路清隆

 

その言葉を聞いて、まず襲ってきたのは安堵感。

なるほど、告白が成功した恋愛小説の主人公はこんな気持ちなのか。

知識と実体験がピッタリとハマった気がした。

次に達成感、そして喜び。

 

どれも、ホワイトルームでは学べなかったことだ。

田中には色々と学ばせてもらった。

堀北を通して、俺はこれからきっと様々なことを学ぶだろう。

その先に、彼女の幸せがあることを願って。

 

 

こんなことを考える日が来るとは思いもしなかった。

 

「堀北、、、いや、鈴音。よかったら、俺と付き合ってほしい。」

「、、! 、、、喜んで。きっ、、清隆、くん。」

 

思わず鈴音を抱きしめる。

腕の中の彼女は、温もりを帯びていて、夏の夜では考えられない、優しい温かさに包まれていた。

躊躇いげに腕を背中に回してくる鈴音になんとも言えない、愛しさが湧き上がってくる。

 

ホワイトルームではついぞ得られなかったものだ。

、、、愛。

俺はきっと、田中にその手本を求めていた。

お前のおかげで欲しかったものは手に入った。

 

田中、、、いや、律。

お前について行ってよかったよ。

少し専門的ではあったが、立派に教科書として役立ってくれた。

お前は1番の友だ。

お前がこれから堀北を狙うというなら、俺は敬意を持って、律。

お前を返り討ちにすると誓おう。

これからも学ばせてもらうぞ、色々とな。

 

 

これはその宣戦布告だ。

 

「鈴音は俺がもらう、文句ないよな?」

 

腕の中で微笑んでいる鈴音。

衝動に駆られ、彼女の唇を奪う。

驚いた顔をするも、すぐに目を閉じてこちらに委ねてくる。

 

心地いい。

関係は変わってしまったが、彼女との時間はこれからも続く。

 

律にも、親父にも、鈴音は奪わせない。

彼女は俺が守る。

やれるものならやってみろ。

 

 

なにしろ俺は、最高傑作らしいからな。

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