添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜   作:鐘楼

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「ここを出ていきなさい」

 いつも通りの、気持ちいい朝だった。

 

 窓から零れ出る朝日に起こされて、カーテンを大きく開ける。

 

「お姉ちゃん、朝だよ~」

「う~ん」

 

 ()()()()()()()()()()()()お姉ちゃんに一言声をかけて、()()()()()()()()を後にする。これからお姉ちゃんの分まで朝ご飯を用意して、洗濯物を取り出して……その後で、お姉ちゃんと一緒に朝ご飯を食べる。

 

 花平(はなひら)希沙音(きさね)、高校一年生の夏。

 

 私は、そんな日常がこれからも続くと信じて疑わなかった。

 

 

「お姉ちゃん、美味しい?」

「……ん。希沙音の料理は最高よ」

 

 寝ぼけ眼で私の作った朝ご飯を口に運ぶお姉ちゃんを見て、思わず笑みがこぼれる。お姉ちゃんに褒めてもらうのも勿論嬉しいけど、人に喜んでもらうこと自体が、私は嬉しい。

 

「良かった~!」

「それで、その……希沙音。話があるの」

 

 だけどそんな時、顔色を変えたお姉ちゃんが深刻そうな声色で私に語りかけてきた。

 

「なあに? お姉ちゃん」

 

 花平久留音(くるね)。三つ年上で、大学生の私のお姉ちゃん。生まれたときからずっと一緒で、離れるなんて想像もできない、大好きなお姉ちゃん。一人暮らしをすると言ったお姉ちゃんに、どうしてもと言ってついてくるくらいは、私に欠かせない存在。

 

 そんなお姉ちゃんの言うことなら、私はなんだって──

 

「──希沙音。ここを出て行きなさい」

「なんで!?」

 

 お姉ちゃんの口から飛び出したのは、目の前が真っ暗になりそうな言葉だった。

 

「わ、私……なにかしちゃった……? お姉ちゃんを怒らせるようなこと……」

 

 私が恐る恐るそう尋ねると、お姉ちゃんは静かに首を横に振った。

 

「いいえ。あなたは何も悪くないわ。むしろよくやってくれてる。ご飯は美味しいし、家事はやってくれるし、朝起こしてくれるし……」

「じゃ、じゃあなんで……」

「だからよ!」

 

 ビシリと、お姉ちゃんが迷いを振り切った真剣な瞳で私を指差す。

 

「このままじゃ、お互いのためにならないの! 自立したくて家を出たのに、これじゃあ私、希沙音なしじゃ生きていけなくなっちゃう……!」

「私は、それでもいいよ……?」

 

 私には、お姉ちゃんの懸念していることが分からなかった。お姉ちゃんが、私がいないとダメな人になっちゃったとして、私とお姉ちゃんはこれからも一緒なんだからなんの問題もない……当たり前に、そう思っていたから。

 

「ダメなのよ、このままじゃ……!」

「ダメじゃ、ないよ……だって、だって私……」

 

 それに……私にも、お姉ちゃんから離れられない理由がある。

 

「お姉ちゃんと一緒じゃなきゃ、眠れないもん!」

 

 そうなのだ。私は、ある出来事があってから一人では眠れなくなってしまった。どうしてもお姉ちゃんが家を空けなければいけない時なんかはお母さんや家の人にお願いしていたけど、それ以外は毎日、お姉ちゃんと一緒のベッドで眠ってきた。

 

 追い出されたりしたら、私はきっと眠ることができない。

 

「それなのよ、希沙音」

「えっ……?」

「あなたももう高校生。いつまでも一人で眠れない、なんて通らないわ。……荒療治が、必要なのよ」

「っ……」

 

 そう諭すお姉ちゃんの厳しい瞳を見て、私は理解する。もう、説得の余地はないんだと。こうなったお姉ちゃんは、とっても頑固だから。

 

「……わかったよ……お姉ちゃん」

「そう……分かってくれてありがとう、希沙音。偉いわね」

 

 そう言って、俯く私を撫でてくれるお姉ちゃん。いつもなら、それだけで晴れやかになる私の心は、曇ったままだ。

 

「でも……お姉ちゃん。家から今の学校までだと、すごく遠いんだけど……」

 

 私たちがほんの四ヶ月前まで住んでいた実家は、ここからかなり遠い場所にある。もしあそこに出戻るのだとしたら、転校も考えなくてはいけなくなる。さすがにそれは……嫌だ。

 

「そこは安心して。もう手は考えてあるから」

「手……?」

 

 お姉ちゃんは自信ありげに微笑むと、一枚の紙を取り出した。そこには、ここからほど近い『女子寮』の情報が載っていた。

 

「『高嶺荘』……?」

「高校生可の女子寮よ。高いし審査も厳しいけど、うちはお金も家柄もあるから」

「家柄って……私達、揃って出てきた不良娘なのに?」

「そこはまぁどうにかしたから、希沙音は心配しなくていいわ」

 

 心配しなくていいって……お姉ちゃんは家だと隙だらけだけど、外だとデキるかっこいい人だ。なにか、私の思いもよらない方法を使ったのだとしてもおかしくない。……待って、「どうにかした」って……まさか。

 

「も、もしかして……もう!?」

「えぇ。手続きは済ませてあるわ。今日、一緒に荷造りをしましょう」

「そ、そんなぁ!? 急すぎるよお姉ちゃん!」

 

 私の知らぬ間に、大分後戻りのできないところまで話は進んでいたらしい。そんなにお姉ちゃんは私を追い出したかったのかと、悲しげにお姉ちゃんを見やると、お姉ちゃんは慌てて手を振りながら頭を下げた。

 

「……そ、それはごめんなさい。つい、切り出すのが遅くなってしまって……。でも、今は夏休みでしょう? 新学期までに寮に慣れておくなら絶好のタイミングよ。ね?」

「う、うん……」

 

 そうして私はお姉ちゃんに促されるまま、『高嶺荘』への入寮を決めるのだった。

 

 

 花平希沙音、十六歳。私の人生を変える日々が、始まる……!

 

 

 

 

 

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