添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜 作:鐘楼
「希沙音、来たぞ~」
「あ、どうぞ深白さん!」
なるべく添い寝は深白さんにしてもらう──そんな約束の通りに尋ねてきた深白さんを部屋に招き入れる。深白さんはバンドの方でなにかトラブルがあったみたいだから、急に忙しくなって断られちゃうかなと少し思っていたけど、深白さんはやっぱり優しい。もし来なかったり断られていたらと思うと……たぶん、甘露先輩に頼むところだった。
「来てくれてありがとうございます、深白さん」
「ん。約束だしな……っていうか、あたしが断ったらお前、甘露さんとかいばら先輩に頼むだろ」
「すごい……よく分かりましたね!」
「絶対やめとけよ、ほんとに」
何やら渋そうな顔できっぱりと釘を刺してくる深白さんに、私は思わず聞き返す。
「どうしてですか? 先輩たち二人ともすごく優しそうで、頼んでみるくらいで怒られたりしないと思ったんですけど……」
「断られる心配はしてねーよ……とにかく、可能な限り予定を開けるから添い寝はあたしに頼むこと」
「は、はい」
有無を言わせぬ深白さんの迫力に、私は深掘りもできずに首肯する。そうまでして先輩たちに私の添い寝をさせたがらない理由は分からないけど……深白さんが私のために動いてくれているのは間違いない。やっぱり、最初にこの寮で出会ったのが深白さんで良かった。
「それより、大丈夫だったんですか? なにかトラブルがあったんですよね?」
「あー……大丈夫じゃないけどな。焦っても仕方がないし……ん?」
うなじを掻きながら難しい顔をする深白さんだったけど……その視線が、私の部屋のある一点で留まった。急に顔色を変えた深白さんが気になって、私もその視線を追ってみると……そこには、壁に立てかけられた私の
「あれ……ベース、だよな?」
「そうですけど……それがどうかしました?」
かさばるから迷ったけれど、やっぱりお姉ちゃんとの思い出の品だからと持ってきた六弦ベース。深白さんはあれが気になったらしい。
「……どれくらい弾ける?」
「え? そうですね……最近は触ってないですけど……あっ、弾いた時の動画ならありますよ!」
スマホを操作して、とある映像のデータを映して深白さんに見せる。それは、二年前に行われたお姉ちゃんの学園祭のステージ。経緯はよく知らないけど、急にバンドをやることになったお姉ちゃんが、誰よりも信頼できるからと言ってバンドのメンバーに中学二年生だった私を推薦したのだ。
そのようなことを補足しながら深白さんに動画を見せると、深白さんはすごく集中した様子で私達のライブ映像を見ていた。スマホから鳴る演奏の音に紛れて、深白さんが生唾を呑む込む音が聞こえる。
「……この真ん中のが、希沙音の姉ちゃんか」
「はい! かっこいいですよね。外では誰より人気者の、自慢のお姉ちゃんです」
あの時は、お姉ちゃん目当ての人で体育館が満杯になったっけ。この動画を撮ってくれた友達も大変だったみたいだし、感謝の気持ちでいっぱいだ。やがて動画の再生が終わると、深白さんは特定の部分を何度か繰り返し見てから、やけに真剣な顔で私に向き直った。
「希沙音……この時、どのくらい練習した?」
「え? たしか……話が決まって、お姉ちゃんに楽器を買ってもらったのが本番の二週間くらい前なので……練習はそこから、ですかね?」
「にっ、二週間……!?」
驚愕の表情を浮かべた深白さんは、わなわなと震え始める。急に様子が変わって私が当惑していると、そのうちに深白さんの震えは収まって、代わりに妙に据わった目で私を観察してくる。
「えっと、あの……?」
「……うん、まぁ顔は完璧だよな」
「はい?」
「ちょっと待っててくれ」
突然よく分からないことを言ったかと思えば、深白さんは私の部屋を後にしてしまった。言われたとおり待っていると、深白さんは何やら衣装のようなものを持って戻ってきた。
「それって……?」
「あたしのバンドのステージ衣装。これは予備兼お古だけど……とりあえず着てみてくれ」
「わ、私がですか!?」
「ん」
またも有無を言わせない圧力でハンガーを突き出してくる深白さんから衣装を受け取る。今の深白さんはちょっと怖いけど……実は由衣ちゃんが見せてくれた写真を見たときから、深白さんの衣装は気になっていた。それを試着できるまたとない機会……と考えて、私は衣装に着替えることにした。
「おぉ……! 希沙音、どうだ?」
「うーん……ちょっと胸がきついかもです……」
「あ、そうだよな……少しくらいは調整できると思うけど……長時間は厳しい感じか?」
「やろうと思えば我慢できるくらいですけど……えっと、これなんの話ですか?」
ちょっと試しに着させてもらうくらいに思っていたのが、なぜか長時間着用する前提の話をし始める深白さんに疑問を持ちつつ、気になっていたことを聞いてみる。
「あの、こういうファッション初めてなんですけど……どうですかね? 似合ってますか?」
深白さんのバンドの衣装は、あの時私達が着たTシャツとは全く異なる黒を基調にしたかっこいい衣装で、それなりに露出も多い。そもそも普段着ではないというのもあるだろうけど、今までチャレンジしようとも思わなかった類いの服だ。この部屋に姿見はないので、深白さんに感想を求めてみる。
「そうだな……笑顔控えめで、もうちょっとキリッとした顔できるか?」
「こうですか?」
「…………ビジュ完璧かよ……」
「ありがとうございます?」
聞き慣れない褒め言葉に首を傾げながらお礼を言うと、深白さんは不意に私の手を握り込んだ。
「よし、いける!」
「何がですか??」
「実はな、うちのバンドのベースが飛んで……連絡取れなくなってな。希沙音頼む! 次のライブ、お前が出てくれ!」
「……えぇっ!?」
まさか、今までの会話は全部私が適任か確認するためのもの……!?
いきなりのとんでもない提案に、私は思わず声を上げるのだった。
☆
「いや~、希沙音。引き受けてくれて、ほんとありがとう! 条件に合うピンチヒッター、すぐには見つかりそうになかったからさ……」
「私に務まるかは分からないですけど……深白さんの頼みなら断らないですよ」
結局、私は深白さんの頼みを引き受けることにしたのだった。急な代打なんて私にできるのか不安だったけど、深白さんが「二週間で一からあの仕上がりなら余裕だ」なんて力説するので、その熱意に押されて承諾した……という話を、ベッドの上で深白さんと話していた。
「ライブまでは一週間あるから、それまでに顔合わせと練習……希沙音ならなんとかなるはず……!」
「買ってくれるのは嬉しいですけど、バンドの他の皆さんに相談せずに決めてしまっていいんですか?」
「そりゃ疑問に思われてるだろうけど……全部希沙音のビジュと実力で黙らせる予定だから問題ナシだ!」
楽しそうに語る深白さんを見ていると、私も嬉しくなってくる。その期待に応えられるかは、未だにちょっと不安だけど。
「早速明日希沙音を紹介するから、今日はさっさと休んで──」
「深白さん」
ただの確認なのか、何らかの期待が籠もっているのか。それが自分でも分からないまま、私は深白さんの胸に顔を埋めて呟いた。
「……今日は、シないんですか?」
「……っ」
たった一言で空気が変わるのを、肌で感じた。
\ステータスオープン!/
花平 希沙音(はなひら きさね)
学業成績……………82(A)
運動神経・体力……76(B)
エスコート力………79(B)
フェロモン…………99(S)
メロみ………………77(B)
テクニック…………62(C)
○欲…………………93(S)
特能
変幻自在 恋情不知 褒め○ 甘え上手 世話好き 弱点看破 無知
状態
天才 センス○ 人気者
備考
一人で眠ることと○欲を抑えること以外にできないことはあまりない。