添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜   作:鐘楼

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S・バック


デュアルショック

「由衣ちゃん、大丈夫?」

 

 チェックアウトを済ませて、私はフラフラになっている由衣ちゃんを支えながら朝の街を歩いていた。傍らには、上機嫌そうに歩く深白さんもいる。

 

「わたし……もう、ダメかも……希沙音、さま……」

 

 由衣ちゃんは未だに魔法が解けていないみたいで、うわごとのように私の名前を呼びながら、ぼんやりとした瞳で私を見つめたりしている。由衣ちゃんは朝から……というか昨日の途中からこんな調子だった。

 

「様なんて、余所余所しいからいらないよ。もう、深白さんが変なこと言うからじゃないですか!」

「あっはっは。いや~、ついノリで。希沙音の凄まじいというか、恐ろしい才能も知れて……思い返してみるとヤバすぎるな。なんで完璧な言葉責めがスルスル出てくるんだよ。どっから出てきた知識だよ。もはやこえーよ」

「えっ、なんで急に距離開けるんですか?」

 

 楽しそうに笑っていたかと思ったら、いきなり深白さんとの間に溝ができる。なんで……?

 

 と、思っていたらやっぱり揶揄っていたみたいで、深白さんは面白そうに笑って私の肩に触れた。そんな深白さんと夢うつつの由衣ちゃんとで、この街の駅まで向かって解散する……そんな予定だった。

 

「……!」

「え?」

 

 車の走行音。単なる街の雑音だと思っていたそれは段々と近づいてきて、滑らかな制止音となって高級車が私達のすぐ横の路面に停車した。

 

「えっと、これって私達に……深白さん?」

「……」

 

 明らかに私達を意識した車の止め方に、どこか嫌な胸騒ぎを感じて深白さんの方を見る。すると深白さんは、苦虫を噛みつぶしたかのような表情で高級車を見つめていた。その表情の理由を尋ねる前に、車の扉が開いた。

 

「……こんな時間に女人を連れて……一体何をしていたのです、深白?」

最黒(もぐろ)……」

 

 扉の奥から姿を見せたのは、和服姿の美人だった。顔立ちは深白さんによく似ているけれど、身に纏う雰囲気や色合い、かっちりとした服装は深白さんとはまるで真逆。そんな雰囲気じゃなさそうだけど、深白さんと並んだらすごく様になりそうだ。

 

「……最黒こそ、どうしたんだよ。あたしを探してたってわけじゃないだろ」

「もちろん、偶然です。ですが見かけた以上、無視はできません。分かっていますね? 貴女、わたくしの姉なのでしょう?」

「…………」

 

 女性から苦しげに目を逸らした深白さんと、偶然にも目が合う。その表情からは先ほどまでの楽しげな色は抜け落ちていて、休日を終えた大人と遊園地から帰る子供の中間のような、夢から醒めた顔つきだった。

 

「……悪い。希沙音、先に帰っててくれ。由衣も……またな」

「は、はい」

「えぇ……」

 

 深白さんはそう言うと、高級車に乗り込んだ。結局、和服の美人さんは私達に一瞥もくれないまま、深白さんを連れて走り去ってしまった。残された私と由衣ちゃんは、静かに顔を見合わせる。

 

「深白さん、大丈夫かな……それに、あの人は……」

「……少しだけ、聞いたことがあるわ。深白さんの家は少し特殊なんだって……」

「じゃあ、今の人は深白さんのお家の人……」

 

 たしかに、あの人は深白さんを姉と呼んでいた。でもそれにしては含みのある言い方だったし、二人の空気感も私の知る姉妹のそれとはほど遠い。教えてくれるか分からないけど、深白さんに直接関係を聞いてみないことには関係性を推し量るのは難しそうだ。……それにしても。

 

「……あの人、綺麗だったな」

 

 ちょっと悪っぽい深白さんのかっこよさとはまた違う、凛とした佇まいから来る外向きのお姉ちゃんを思わせるかっこよさ。身に纏う着物も、似合っているという次元じゃなく、自然体として完成しているかのように思えるほどの着こなしだった。

 

「わっ。……由衣ちゃん?」

 

 なんて、去ってしまった女性について思いを馳せていると、片腕を包む力がほんの少し強まるのを感じた。見れば、由衣ちゃんが口を尖らせて私の方を見ている。

 

「……わたしは?」

「綺麗だ、って……羨ましかった?」

 

 上目遣いの由衣ちゃんに、思わずそう聞き返す。すると由衣ちゃんは、我に返ったみたいに目を泳がせる。ここは決して譲らずに、私が目を逸らさないままでいると、由衣ちゃんは観念したかのように頬を紅潮させて、俯きがちに頷いた。かわいいと、反射的に呟きそうになったその言葉を呑み込み、贈るための言葉として頭の中で見栄え良くラッピングを試みる。

「張り合わないで。由衣ちゃんはね、深白さんや私のためにおしゃれしてくるところとか、目線は誰よりも素直なところとか……」

「う……ぁ……」

「深白さんにされてる時、私にぎゅーってしがみついてくる姿とか、一番かわいいんだから」

 

 私の言葉に、由衣ちゃんは瞳を潤ませると、真っ赤になった顔を隠すように私の肩にその顔を押し当てた。

 

 やっぱりそういうところがかわいいなー、なんて思いながら駅まで歩いて行って、私達も解散することになった。

 

「それじゃ、またね由衣ちゃん。今日は楽しかったよ」

「わたしも……その、良かった……後戻りできないくらいに……希沙音様と深白様との、セックス……」

「も~、また様付け……ん?」

 

 私が違和感に首を傾げる頃には、由衣ちゃんは既に顔を真っ赤にして逃げるように行ってしまっていた。

 

 ……。

 

 …………。

 

 由衣ちゃん、今「セックス」って言ったよね……。

 

 ……もしかして()()って、『添い寝』じゃない……!?

 

 ついさっきまで、連れ去られていった深白さんのことで悩んでいたはずの私の頭は、突如現れた別の問題に上書きされてしまうのだった。

 




ステータスオープン

松原由衣(まつばら ゆい)
学業成績……………42(
運動神経・体力……34(
エスコート力………18(
フェロモン…………61(
メロみ………………20(
テクニック…………57(
○欲…………………78(

特能
誘い受け 女運× 
備考
1ヒロインと見せかけて長い目で本作を見た場合、多分ラディッツくらいのポジション。
まともな恋人を見つけて幸せになってほしいが多分無理。深白が金欠タイプだったら破滅してた。
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