添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜   作:鐘楼

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無我

 下着を洗濯機に入れて、甘露先輩とお風呂に入る。急遽決まったそのイベントに、少しドキドキしていた私がいたのも事実だ。だけど──

 

「はーい、流すね~」

「お、お願いします」

 

 甘露先輩の指が私の髪を梳きながら、シャワーでシャンプーが洗い流されていく。記憶の限り、お姉ちゃんにもお母さんにもされたことがないくらい丁重に、私は甘露先輩に洗われていた。

 

 ある意味恐ろしい甘露先輩の手練手管を味わった後だったから、ちょっと身構えていたけれど……泡をまとわせ私に触れる甘露先輩の手つきは、ただただ気持ちが良かった……えっと、心地良いっていう意味で!

 

 気分はまるでお姫様……いや、違うかも。愛犬……? 甘露先輩の愛犬なら、まぁ良いかな……あれ、何を考えているんだっけ。

 

「希沙音ちゃん、はい」

「……はい?」

 

 甘露先輩の言葉と、差し出されたシャワーヘッドを見て、私の意識が現実へと引き戻される。

 

「甘露先輩……これは?」

「交代。今度は、希沙音ちゃんがわたしを洗ってほしいな~、って」

「えっ?」

 

 私が……今度は私が、甘露先輩の身体を洗う……?

 

 いや、洗ってもらったんだから、お返しをするのは人として当然だ。でも、私が甘露先輩の身体を洗うって、そもそも人の身体を洗ったこともないのに……。

 

「……洗ってくれないの?」

「や、やります!」

 

 でも、甘露先輩にそんな声で頼まれてしまったら、やらないわけにはいかない。甘露先輩と場所を入れ替わって、ボディソープを泡立てる。緊張を誤魔化すように、半分無意識に手を擦って無意味に泡立て続けてしまう。すると無言のままでいることを不審に思ったのか、甘露先輩から声をかけられる。

 

「希沙音ちゃーん?」

「は、はい!」

 

 私が慌てて返事をすると、鏡越しに見える甘露先輩の表情がおかしそうに緩む。そして次の瞬間、それはいたずらっぽい笑みへと変わった。

 

「言っておくけど……あんまり興奮しちゃだめだよ? 希沙音ちゃんも疲れてるし、これ以上は……ね?」

「ひゃ、ひゃい! がんばります! ……がんばります?」

 

 再び高鳴り始めていた私の心臓に釘を刺すような甘露先輩の言葉に、思わず背筋が伸びる。そんな私の反応までもが気に入ったみたいで、鏡に映る甘露先輩は満面の笑みだ。

 

 いつまでもこうしているわけにはいかないので、意を決して甘露先輩の腰の部分に触れる。

「あっ……」

 

 こういうの、自分だけじゃ洗いにくい背中を重点的にやるものなんだと思うけど……甘露先輩は私の全身を洗ってくれた。つまり、ここでは相手の身体を全部洗ってあげるのが普通。心を無にして、背中の次は脚、そして前へと手を伸ばす。

 

「ちょ……んっ……」

 

 無意識に頼り、心を落ち着かせれば、甘露先輩の柔らかくて心地よい凹も凸も平気だ。そのまま自分の感覚に身を任せて手を動かす、そんな矢先だった。

 

「き、きさねちゃ……ゃっ……!」

「わ、ど、どうしたんですか!?」

 

 途中で甘露先輩の異変に気づいて中断すると、甘露先輩の表情は真っ赤に染まっていた。

 

「希沙音ちゃん……手つき、いやらしすぎだよ~……」

「えぇっ!? ご、ごめんなさい!」

 

 甘露先輩にジト目で責められて、反射的に謝罪の言葉が飛び出る。いやらしいって……!

 

「ぜ、全然そんなつもりは……」

「もう。ほんと、末恐ろしいんだから……わたしの方がその気にさせられちゃうかと思ったよ」

「え、えへへ……ごめんなさい……」

 

 口では謝りながら、私は……顔を赤らめた甘露先輩のことを、とてもかわいいなと思ってしまっていて……気づけば、夢見心地のまま無事に先輩の身体を洗い終えていたのだった。

 

 

「ふ~……」

「あの、甘露先輩」

「なぁに?」

「せっかく広いんですし、こんなに密着しなくても……」

 

 高嶺荘のお風呂は、二人くらいなら十分に脚を伸ばせるくらいには大きい豪華な代物だ。それなのに……私は今、甘露先輩に後ろから抱きしめられるかたちになっていた。

 

「……イヤだった?」

「全然そんなことはないです! むしろ懐かしいくらいです!」

「懐かしい?」

「思えば、ここに来る前はお姉ちゃんと毎日こうしていたな、って」

 

 お姉ちゃんの家のお風呂はこんなに大きくないから、一緒に入ると自然とこの形になるのだ。それでも一緒に入り続けていたのは、それが実家の頃から当たり前だったから。そんなことを思い返してみると、甘露先輩とこうしているのにも安心感を覚えてくる。……背中に感じる胸の厚みは、ちょっと慣れそうにもないけれど。

 

「そうなんだ……こんなにかわいい妹と毎日だなんて、お姉さんが羨ましいわ」

「……世間的には、私の方が羨まれる側だと思いますけどね」

「そうなの?」

「そうですよ。お姉ちゃん、すっごい人気者なんです」

 

 お姉ちゃんが家で私に見せる姿と、外でみんなに見せる姿は全く異なる。なんと言うか……深白さんといばら先輩の中間みたいな? いや、もっとキリッとしてるかも……とにかく、そんなお姉ちゃんだから、人気者だし、自慢のお姉ちゃんだ。

 

「そう……希沙音ちゃんのお姉さんだし、魅力的なのは想像に難くないけど……うーん、とっても気になるけど、お姉さんの話はまた今度にしよっか。早く本題に入らないと、のぼせちゃうから」

「本題……あっ」

 

 ……そうだった。元々、大事な話をじっくりするためにお風呂に誘われたんだった。

 

「それで、本題というのは……?」

「うん。深白ちゃんのこと」

「深白さんの……?」

 

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