添い寝してもらわないと眠れない女の子in百合猛獣だらけの女子寮 〜案の定美味しく食べられてしまうと思いきや、女たらしの才能に目覚めてしまいます!?〜 作:鐘楼
深白さんと一緒に朝食を食べて、片付けをして、やり方を教えてもらいながら一緒に汚してしまったシーツや下着の洗濯をした後、私達は買い出しに出かけることになった。
「近くのスーパーと、薬局……あと一応コンビニか。料理するなら用も多いだろうし、案内するぜ」
「ありがとうございます、深白さん!」
「ん……あたしもここを留守にするかもしれないし、今のうちにな」
そう言って私の手を握って歩く深白さんは、とても優しい。って、ちょっと待って。
「深白さん、ここを留守にする予定があるんですか!?」
「え……あぁ、うん。女……じゃなくて、友達に呼ばれてそっちに泊まることもあるから。その時はちゃんと連絡する」
そっか……昨日、深白さんは親切に私と添い寝をしてくれたけど、寮を開ける予定があるなら毎日はお願いできない。呼ばれてって話だから、呼び止めるのも悪いし……なにか手を考えないと、私は眠れない……。
「……希沙音?」
「あ、いえ! なんでもないです!」
深白さんに顔を覗き込まれて、私は慌てて首を振る。心配事は増えたけど、それを顔に出すのは案内をしてくれている深白さんにあまりにも失礼だ。気を取り直して、深白さんと街を歩きながら雑談をする。
「そういえば、他の高嶺荘の人たちとはいつ会えるんですか?」
「んー……そうだな、寮監はしばらく顔見せないだろうけど、先輩たち……他の二人の寮生はそのうち顔出すって聞いてる。希沙音の歓迎会なんだと」
「えっ、私のためにですか? ちょっと畏れ多い……どんな方たちなんですか?」
気になって、他の寮生について私が尋ねると、深白さんはなんだか難しい顔を浮かべた。
「一人は……
「えっと、悪魔……?」
「……端的に言えば、優しいお姉さんだ」
「なるほど! 話してみるのが楽しみです」
なんで優しいお姉さんが悪魔になるのかは、よく分からないけれど、怖い人じゃないなら安心だ。私とお姉ちゃんはむしろ私が甘やかす方だったから、包容力のあるお姉さん、という存在がどんな感じなのか気になってくる。
「もう一人は、鬼畜眼鏡先輩……じゃなくて、
「ペット……ですか? 高嶺荘って、ペットOKなんですか?」
「……いや、忘れてくれ。端的に言うと紳士的で賢くて身内には優しい人だ」
「なるほど……? 優しいなら安心です!」
深白さんの紹介は半分くらいよく分からなかったけど、つまりは優しい人たちらしい。会えるのが楽しみだ……なんて雑談をしながらお店を回って、軽く買い物をして、あっという間に私達は寮まで戻ってきた。
「げ……」
「? どうかしましたか?」
深白さんの顔がげんなりとしたのを見て、彼女の視線の先を追う。するとそこには、高嶺荘の前で陣取る、一人の少女がいた。
「由衣……」
「! 深白さん……!」
深白さんが彼女の名前と思しき言葉を口にしたのと、彼女が深白さんを目にして駆け寄ってきたのは、ほとんど同時だった。けれどその表情は対照的で、駆け寄ってきた女の子は嬉しそうなのに、深白さんの方は面倒そうな顔をしている。
「由衣お前……なんでいるんだよ。呼んでねーぞ」
「それは……っ! 二週間も、会えてないから……!」
深白さんは駆け寄ってきた少女を手で制して、聞いたことのない冷たい声色で突き放す。対する少女は、その冷たさに涙を滲ませた。……場違いかなと思いつつも、私は深白さんに彼女のことを尋ねる。
「あの、深白さん。この子は……?」
「松原由衣。せふ……いや。遊び相手だよ、ただの」
「っ……!」
遊び相手……正直言って、二人の関係は遊び友達には見えない。実際、「遊び相手」と言われたその子……由衣ちゃんは、どこか傷ついたように見えた。けれど由衣ちゃんはその傷心の表情を引っ込めると、燃えるような怒りの表情に変わって、睨みつけた。……隣にいた、私のことを。
「っ……! あなた! 調子に乗らないで! 一回、一回深白さんと寝たくらいで……! ちょっと気に入られたくらいで、深白さんもどうせ本気じゃない! わたしの方が、わたしの方がずっと……!」
「おい、由衣! 希沙音は……!」
「うるさい! 深白さんのバカ……!」
そう言って、由衣ちゃんは涙を流して去って行ってしまった。なにやら罵倒されて、置いていかれた私は、まさにぽかーんとした表情をしていると思う。
「……ごめん、希沙音。あいつ、ちょっと面倒でな……」
「……」
深白さんの言葉で、私は我に返る。そして、心の奥底から湧いてくる
「っ! 深白さん、これ! この荷物、お願いします!」
「え、は? おい、ちょっと……はやっ!?」
買い出しの荷物を深白さんに預けて、私は走り出した。
さっきの……由衣ちゃんの涙を見て、動かなければいけないような気がしたから。