UNREASONABLE   作:斎藤純哉

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第3話 普段

「いやぁ〜、こんなことあるんですねぇ〜! 夢で会った人と現実でも会うなんてー! しかも同じ学校の同じクラス!」

 

「……」

 

「あ、タメでいいのか。にしてもリク、学校と夢じゃ全く印象違うね。夢だと落ち着いてて物静かだけど、現実(こっち)じゃ無口っていうか」

 

「……うるさいな。そっちだって殴りかかってきたくせに」

 

「褒めたのにー。てか仕方ないじゃん、相手もおんなじ夢見てるなんて思わないしさ」

 

「……」

 

「恐竜の街か〜。あの夢で見た恐竜の像、本物かと思ったよ。私はそうでもないけど兄が恐竜大好きでね。『いつか世界三大恐竜博物館制覇するんだ』って夢見ててさ。海外旅行ついでに着いていけたらーって思うんだけど……って、聞いてる?」

 

「福井県立恐竜博物館、中国の自貢恐竜博物館、カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館」

 

「聞いてたか。……なんにせよ、お互いあの夢で死んじゃってるわけだし、もうあんな風な夢を見ることはないだろうね。あー怖かった」

 

「それはない」

 

「──え?」

 

「少なくとも、私は」

 

 ◇

 

 恐竜博物館から程なく離れると、開かれた田園地帯に大きなティラノサウルスの像がある。

 像のそばに佇む私は、大きく口を開けているそれをただ見上げていた。

 

 夢の中、真っ暗闇に照らされているのは像と20台ほどが停められる駐車場だけで、周囲の田んぼは黒一色だった。道路も電灯に照らされてはいるが、闇の中の孤島のように像の周りが映る。

 

 困った。昨日の夢と地続きなのなら私と明日菜の死体でも探そうと思っていたのに。森の中からスタートしていれば、とため息ついでに視線を下ろして、辺りを見回す。

 

 すると、駐車場に人影ひとつ。目を凝らすと、男。白のシャツに紺のジーンズとちょっと肌寒そうな格好をしていた。

 

 彼は私に気づくと、少しよろけた足取りでこちらに近づいてきた。私よりも年上のようだ。ぱさついた髪にひしゃげるように垂れた目つきも相まって、なんだかオタクっぽい。

 

「明晰夢ってやつ?」少しばかり震えた声をしていた。

 

「さあ」

 

 普段なら容赦なく私から殴りかかっているが、遠慮という足枷が私を引き留めていた。もしかしたら危害を加えてこないかもしれないという期待もあるだろう──だが、その男は。

 

「──なら」

 

 一気に距離を詰めてきて、私に抱きつこうとしてきた。

 

「──ッ!」

 

 直後、私の鉄拳が彼の左頬に決まり、彼は像のそばの芝生にひれ伏した。

 

「いっでえ! 夢なのに痛え! 可愛い女の子好き放題できる夢かと思ったのに!」

 

「可愛いとは光栄です。ですが──」

 

 倒れる男の頭に足を乗せ、ズンと地面に押し付ける。

 

「──時代が変わったのでしょうね。夢でもマナーを弁えないと」

 

 危害を加えてこないかも、と期待した私がバカだった。今まで先制攻撃を加えてきたのはある種の防衛本能か何かだったのだろう。

 

 これからもこうしていけば良い──そう思うと、なんだか自分を許せた気がした。

 

「マナーって……お前こそ……暴力……反対……」

 

「え? 聞こえませんよ?」

 

 もう一発加えようか──そう思った時だった。

 

 男が消えた。服ごと。

 

「──えっ」

 

 男が夢から覚めた、ということだろうか? と直感が告げた。しばらく思考がフリーズし、その場から動けない。

 

 とはいえ私がセクハラの被害に遭うことがなくなったわけだし、という安心が私の思考を再起動させてくれた。

 

 消えるとあらば、死体を探しても無駄だろうか──。

 

 ──否。

 

「行こう。暇だし」

 

 そう呟いて、私は歩き出した。博物館までは歩いて30分ほどかかる。

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