聖闘士星矢 〜13番目の星座〜   作:くまたいよう

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 さて。


シャイナの失いし物

(星矢、甘ちゃんと言えばそれまでだが。流星みたいになったお前の小宇宙はちゃんと温かくて熱い正義の小宇宙だったよ・・・・)

 

 ジャミアンは烏を使って下りた。星矢に技を破られたのがプライドを傷付けたようだが、シャイナは気持ちはわからないでもなかった。

 

 しかし、幾ら聖闘士でもこの高さから女を抱えて飛び降りてはタダでは済むまいとしたが、やはり何かが腑に落ちない一方でシャイナは一安心をしてしまった。銀河戦争に参加したのは姉の行方を探してもらう為だったのは出生上の都合と個人レベルでは納得したし、実際目の当たりにしたら星矢の小宇宙は私利私欲の為の私闘をする者の持てる小宇宙ではなかった。自分が見たくなかった姿は無かったとした時。

 

(な、何っ!?)

 

 崖の下からシャイナは小宇宙を感じた。恐怖は感じない、星矢やジャミアンのものではない。もっとビッグな、もっとグレートな、それすら超越した全宇宙的な小宇宙を感じた。こんな小宇宙を持つ者は黄金聖闘士の中にもいまいとした。

 

 いつの間にか合流したダンテ、カペラ、アルゴルも感じた。まさか女神?とした瞬間。

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!?」

 

 シャイナは下に降りようとした時に凄まじい頭痛を感じた。何とか堪えたのが悲劇の始まりである。

 

「行け・・・・」

 

「シャ、シャイナ?」

 

「行くが良い、貴様等は所詮は生き残れんさ。違うと言うのなら倒して見せろ【天界の大罪人達】をな」

 

 仮面越しでも豹変したとわかるシャイナの下から放たれた眼光に見据えられた三名は何事も無かったように下へ向かう。仮にシャイナがそのまま向かっても同じだったからこうなったのだ。

 

 

 

 

 

 そして、大地に倒れ伏したシャイナは眠っていしまい夢を見た。

 

 

 

 

『何処へ行くんだい?』

 

『ちょっと、人探しを・・・・』

 

『そうか、会えると良いね・・・・』

 

 そう言って、少年を見送ったがシャイナは逃げ出した。あの遺書ですら破壊してしまいたかった程だ。

 

【きみらに『  』を託す】

 

 わかっている。聖闘士は『  』を守る為にあるのだ。だが、その『  』こそ。

 

 

 

 

 その『  』こそ。

 

 

 

 

「何をやっていたんだ貴女は!?」

 

 シャイナは目覚めたら雑兵達に詰め寄られていた。

 

 軽蔑、憎悪、失望。

 

 ジャミアンはまだ確認できないが、カペラ、ダンテ、アルゴルは敗死したらしく遺体を探し当てた者達は泣き崩れていた。彼等もそれなりに人望があり、従者や小間使いにはアルゴル達を慕う者もいた。

 

 そして、戦闘すらした形跡が無いシャイナに尤もな言葉を投げ掛けたのだ。ミスティ達の時とは違う。シャイナとて同胞を思う心はあるので何故か意識を無くして夢を見ていた間に仲間達が殺された等と恥の極みだ。

 

「・・・・アルゴル達の遺体を頼む」

 

「シャ、シャイナさん。噂に聞く鳳凰星座の幻魔拳か何かにやられたんですか?」

 

「そうなら、そうだと言って下さい!シャイナさん!答えて下さい!」

 

 それしか言えない自分への失望とせめてもの望みを向ける者達を背にシャイナは去るしか出来なかった。暫く頭を冷やすべく近くの森に入り、何故こうなったかを考えていた時に再び頭痛に襲われ意識を失ったシャイナは知らない声を聞いた。

 

『シャイナよ、蛇使い座の聖闘士よ』

 

 何者かとも言えず。何故か不鮮明な戦いが何度となく繰り返される光景が広がる。その果てに待ち受けていたのは地上の全てが破壊された光景だった。全てが灰燼と化し、生物の骨が幾つかあるだけの不毛な大地。震えながら真実だと理解してしまう。

 

『見ろシャイナ、これが地上の未来だ。神の怒りにより聖闘士は皆殺しにされ、聖域は焼き尽くされた。地上を守る女神の聖闘士の一人として、このような結末は認められないか?』

 

『そんな、馬鹿な・・・・っ』

 

『だが、お前は未来を変える為にやれる事があるのだ。憎むべきは神話の時代より、この未来に繋がる因子を積み重ねた天界の大罪人【天馬星座の聖闘士】・・・・シャイナよ、天馬星座の聖闘士。星矢を殺すのだ!』

 

『ば、馬鹿な・・・・星矢、は・・・・っ!?』

 

 そして、シャイナの脳が何かに撃ち抜かれた。この時点では黄金聖闘士すら抗えない力ではシャイナに抗う術は無い。気付けば夜になり、シャイナは仮面の下で幽鬼のような表情で星矢の元へ向かった。

 

(星矢、星矢を・・・・私は殺さなけれ、ば)

 

 闇に紛れて辿り着いたのは星矢が入院する病院である。呑気に眠る星矢の元に辿り着いたシャイナは首を落とすべく手刀を振り下ろすが、間一髪で目覚めた星矢に回避されてしまった。星矢は状況を理解したが有りがちな事しか言えない。

 

「シャ、シャイナさん。あんたまだ日本にいたのか?」

 

「・・・・星矢、覚悟!!」

 

 窓から逃げる星矢を追うシャイナの図となり、森の中で追い付かれてしまう。ひたすら攻撃を繰り返すが回避されるのみだ。呼吸を調えるのを見計らって星矢は何故こんな事をすると問うが、シャイナは仮面を外した。

 

「星矢、冥土の土産に教えてやる。神話の時代より聖闘士は女人禁制、だから女はマスクの着用を義務付けられる。マスクの下の素顔を男に見られるのは裸を見られる以上の恥辱なのさ、だから私はお前を殺すか・・・・それとも。いや、あの世へ行け星矢、このサンダークロウでな!」

 

 シャイナが放つのは相手に何万ボルトもの電撃に値する衝撃を与える技だが、全て見切られてしまう。二撃、三撃と放つが掠められもしない。

 

「く、これ程。腕を上げていたのか?」

 

「お、落ち着いてくれシャイナさん。シャイナさん、俺。前から気になっていたんだ!あんた自分が聖闘士って自覚無いんか?」

 

 それはシャイナにとって一番の恥部だ。子供故とするには重い星矢と違って自分が長年放置していた事。

 

 夜襲をした以前にカシオスを残虐振りを容認するシャイナや周囲。どのみちそんな程度をきり抜けられないなら聖闘士にはなり得ないとしたが、星矢には疑問だった。

 

 そもそも入院中の暗殺等は女神の聖闘士は神話の時代から一対一正々堂々が鉄則であるのに御法度中の御法度だ。

 

「う、煩い。私にはもう後は無い。お前達に何度も負けた等と恥の極みさ!」

 

「え、負けたって・・・・シャイナさんが俺にやられた事って流星拳の余波喰らわせたくらいで、負けた事なんてないだろ?」

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。

 

 凄まじいノイズが走る。シャイナは確かに星矢に負けはしていない。ならば何故?そうした時にわかった。自分が今やるべき事は。

 

「星矢、お前を生かしておけないんだ!地上の愛と平和の為にな!死ねぇぇえっ、星矢ああっ!」

 

 そう言って右手でサンダークロウを放つが、紙一重で回避した星矢に手首を掴まれた。その意味がわからないシャイナでは無い。音速2〜5で動く白銀聖闘士が音速1が精々な青銅聖闘士、しかも聖衣を纏わない状態でこうされてしまう等とした時。

 

「か、身体が重い?何故・・・・星矢、私に何をしたんだ?」

 

 悲しげに自分を見る星矢だが、シャイナが纏う聖衣に異変が生じた。シャイナから勝手に離脱して空中で合体してしまう。

 

「な、何故だ・・・・何故だぁぁああああっ」

 

「シャ、シャイナさん。何か可笑しいとは思ってたんだよ。俺が最初聖衣纏った時みたいに小宇宙が全然燃やせてない状態になってたからシャイナさんは聖衣に振り回されたりただの重い鎧になってて全然動きが本来のとは違ってたんだ」

 

 シャイナは呆然とした、仮にも白銀聖闘士の中では最エリートとされた自分がまさかと、だが何故なのだと。振り回されるだけではなく勝手に離脱してしまう等。

 

「シャイナさん・・・・俺さ、何だかわかるんだけど聖衣って女神の為に、地上の平和を守る為に纏うんだ。シャイナさんに何があったか知らないけどさっきまでのシャイナさんはおっかないけど悪い奴じゃなかった時のあんたじゃない」

 

【悪い奴じゃない】

 

 それだけで充足感を得てしまう自分が惨めだった。そして、僅かに残る理性と矜持が次の言葉を聞くべきだとした。

 

「シャイナさんは、卑怯なことしたり様子がおかしいのに悪ぶって・・・・【聖衣に見放された】・・・・もうシャイナさんは聖闘士じゃないんだ」

 

「う、嘘だ・・・・嘘だっ!!私は聖闘士・・・・だ!女でも。白銀聖闘士の・・・・蛇使い座の聖闘士だぁぁああ!!」

 

 シャイナは自分の聖闘士の証だった聖衣を見上げながら慟哭の涙を流していた。そんな自分を悲しげに見詰める星矢の目が悔しくて、何より星矢に掛けて欲しい言葉を無数に浮かべる自分が信じられずにいた。




 不透明な点はさておき、アニメ版のシャイナさんって下手したらこうなったかな引き。第一話の冒頭で起きたのはコレでしたな回。

 原作で星矢が飛び降りた後に何をしてたんだな疑問の私作補完はシャイナさんの異変関連でした。
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