黄昏時の日差しが古風な西洋風遺跡の岩でできた柱を赤く染め、長い影を伸ばしていく。大理石を削ってできた白い階段の先には、この世界観で異質を放っている黒い機体『プロトゼノン』が佇んでいる。
それを見上げるようにナイトメアとパンドラが武器を構え、睨み合っている。
まるで魔王が目の前に現れたような威圧感を覚えてしまう。ついCCMから目を離して顔を上げれば、プロトゼノンとは対照的に浮かない顔をしたジンがいる。
集中しようにも、どこか落ち着きがない様子が伺える。もしかしたらこの会場にいること自体がストレスになって、ジンのメンタルを削ってしまっている……敵ながら辛そうだ。
「川村アミ、悪いが少し下がっていろ」
「え?あなた――」
「安心しろ……活路は作ってやる」
司会者が開始の合図をし、CCMから『バトルスタート』の音声が流れた。
一番最初に飛び出したのはナイトメアだった、大地を強く蹴り込んで前のめりにプロトゼノンに突っ込んでいった。ナイトメアズソウルを構え、素早く飛び上がり懐に入った。
「くらいやがれっ!」
プロトゼノンの反応が一瞬だけ遅れてしまった。その一瞬を狙ったナイトメアに反応ができずに最初の一撃を腹部に食らい、プロトゼノンは後方に下がった。
風間森野との戦いの時よりも本来のスピードに近い、コアパーツは違うままなのに。あのメンテナンスでここまで復活できたことに驚きながら、横目でジンの様子を確認する。
今だCCMに指を添えたまま俯いている。プロトゼノンはただオベロンを握り、攻撃を防ごうとした素振りもないままナイトメアの動きを眺めていた。おかしい、ジンならすぐ反応する筈なのに。
「ジン、どうして……」
「後方!警戒を忘れるな、いつ畳み掛けてくるかなんてわからないぞ!」
ほとんど無抵抗のプロトゼノンにナイトメアは攻撃の手を緩めるつもりはない。ナイトメアズソウルが薙ぎ払い、振り上げといった武器の遠心力を生かした力強く風を切るような攻撃を続ける。
プロトゼノンは倒れてたまるかと必死に踏ん張っているが、その機体は絶えず揺さぶられ重心を失っていく。その隙を狙ったかのようにナイトメアは足元に蛇のように杖を忍ばせ、グッと力を込め思い切り横にずらした。重心を失い、体勢を崩したプロトゼノンが後方に仰け反った。
「……っ!」
「ジン!」
「堕ちたか、殺す価値もない」
軽蔑の目でジンを見下しながら吐き捨てるように呟く、そしてナイトメアが合図が出たと言わんばかりに構えた杖をプロトゼノンに振りかざした。
鉄が裂け、火花が弾けるような鋭い音が会場全体に響き渡っていく。司会者も観客も、私を含めた誰しもが思った。「勝敗はついた」と……。
ボトリと石畳の上になにかが落ちるのに気がついた。ハッと我に返って確認すると、まだ電気を纏ったままのプロトゼノンの左腕だった。
「仙道、なんで……」
片腕を切り落として満足したのか、ナイトメアは杖を下ろしプロトゼノンを見下す。隣の仙道を見ると、少し怒りが収まったのか。肩で息をしながら興奮が冷めることのない中、ただ目の前にいるジンだけに向かって声を張り上げた。
「ククク……片腕落としてやったからこれで対等だろ?これでやっとお前も本気で俺達と戦えるってわけだ!」
バトル中なのにも相変わらずで、またタロットカードを一枚出してジンに突きつける。
「さぁショータイムだ!全力で俺様を殺しにきやがれ!秒殺の皇帝、海道ジン!」
仙道の煽りに反応したのか、はたまた吹っ切れたのか。俯いて動こうとしなかったジンの指が肉眼で確認できないほど素早く動き、片腕だけで悠々とオベロンを振るいナイトメアに重い一撃を食らわせ、後方に吹っ飛ばした。
「フッ、本当に君達は……」
神業や天才なんて言葉じゃ表現できない実力、イノベーターと戦うに当たってバンや私達の前に何度も立ち尽くしてきた。冷たくもギラついた、あの目をしたジンの口がようやく開いた。
「僕を楽しませてくれる!」
自然と口角が上がり、CCMを構え指を動かす。棒立ちのままだったプロトゼノンが、命が戻ったかのように動き出した。
「いいだろう、プロトゼノンの恐ろしさ。お望み通り見せてあげよう」
「……ようやくお目覚めだな、そう安々とやられるとは思うなよ」
「仙道、援護するわ!」
たった一撃で満身創痍になりながらもなんとかナイトメアは立ち上がり、パンドラが守るように間に入った。
オベロンを鈍い音を鳴らしながら振るい、前方の私達に向けてブースターを点火させ一気に距離を詰めてきた。その動きにもはや迷いは感じられない、限界まで研ぎ澄まされた無駄のない操作が、本能という引き金の元に動き出した。
「来るぞ!」
目で追えない位のスピードで横払いをし、パンドラを横に吹っ飛ばしに掛かった。重苦しい
なんとかダメージを減らそうと受け身を取るものの、素早く重い一振りに耐えることはできず飛ばされてしまった。
さらにその勢いを停めないままにナイトメアに連撃を浴びせる。なんとかジンの攻撃を受け流しながら動きに合わせ力を逃がしている、しかし一撃が重い上にジンの猛攻撃は止む様子が一切なかった。
「くそっ!片腕だけで捻り出せるパワーかよ」
悪態をつきながら仙道も操作の手を早めるも、圧倒的なパワーの前に耐え続けられるはずもなく。ついにジンの渾身の横払いに負けてしまう、振り上げた攻撃を受け止めきれず大きくLPが削られている。
最後の仕上げとしてプロトゼノンは鍔迫り合いを仕掛ける、重圧に耐えられないナイトメアは体勢を崩してしまい片膝をついた。
よろけた勢いを利用して、オベロンの角にナイトメアズソウルを引っ掛け遠心力を利用して後方に放り投げた。空中に舞った杖は遠くの地面に突き刺さり、ナイトメアは限界を超えたダメージのせいで、破損した箇所から電気が漏れ出し始めた。
「仙道下がって!もうあなたの機体は――」
「いい!これでいいんだ!」
「なるほど……なにを企んでいるかわからないけど、君は終わりだよ」
無防備になったナイトメアはもう動かない。最後の一撃と言わんばかりに大きくオベロンを振り被り、死の宣告を下すかのように言葉を告げた。
「ありがとう、楽しかった」
「お願い、間に合って――」
渾身の力を込めて振りかざした、パンドラを向かわせようにも距離が離れ過ぎている。絶対に間に合わない……それでも、私は見殺しみたいな真似はしたくない!
誰しもが絶体絶命のピンチと息を飲んだその時、仙道だけはにやりと笑っていた。
「ふ……お優しい真似を」
強者の一撃が振りかかる。だがその刃がナイトメアを捉える直前、仙道はCCMに素早く入力した。するとナイトメアがバネのように弾け、鮮やかなバク転で後ろに跳ねながら距離を取った。
「なに!?」
「嘘、今の反応しちゃうの!?」
中々決着が付かず展開が二転三転しているからか、会場も戦いの行方を静かに見守っている。皆が息を飲み、ジオラマの内部が映し出されているスクリーンに釘付けになっていた。そしてもう誰も、ジンに野次を飛ばす人はいなかった。
渾身の一撃を空振ったオベロンは、自身の重みとパワーで大理石の床に深くめり込み、ジンの機体に一瞬の硬直を生んだ。
「箱の中の魔術師の本気、味わわせてやろう」
再び地面を蹴り、ナイトメアがプロトゼノンに襲いかかる。武器は手元にはない、だがそれだけの理由で攻撃の手を緩めることはしなかった。
胴体、そして顔面へ目にも留まらぬ速さで数発の蹴りを叩き込む!
「……っ、この土壇場で!」
驚愕に目を見開くジンがCCMを操作するのなんかお構いなしに、プロトゼノンの顔面を踏み台に飛び上がり、そのままの勢いで跳躍した。
遠く離れた地面に突き刺さっていた自らの得物、ナイトメアズソウルをすれ違いざまに引き抜き、再び構えを取った。
「さぁご覧あれ!これが魔術師の正真正銘のラストダンスだ、必殺ファンクション!」
仙道のCCMから機械的な音声と共に、あの技名が唸りを上げた。
「アタックファンクション、デスサイズハリケーン」
ナイトメアの目が怪しく光り、その場で舞を披露するかのように回り飛び上がる、黒い竜巻を呼び寄せ目の前のプロトゼノンに向けて放つ。防御の体勢を取りつつ、刃の渦を耐える。パンドラも離れた位置から巻き込まれないように必死に踏ん張る。
「……さて、どうでる?」
ジオラマ内を包んでいた黒い風が徐々に止んでいく。視界がクリアになった一瞬の内に、戦場はまた動いた。
ヒュンと鋭い音がジオラマに響いた。
皆が何事かと目を凝らして観察していると。空中で事切れた人形のように揺れていたナイトメアが見えた。
その胸にオベロンが突き刺さっている。どうやら一瞬の隙を突いて、空中で動かない隙を……ジンは狙ったのだろう。
ボロボロのナイトメアは投槍のように飛んできたオベロンの一撃に、さすがに耐えられなかったのか、もう抵抗もできないまま音を立てて地面に打ち付けられた。その後、青白い光を放ってブレイクオーバーした。
「ほう……やはりそうするよな」
負けた筈なのに悔しがる様子も見せず、平然を装う。ジンは気にする様子もなく、プロトゼノンはオベロンが突き刺さったナイトメアを見た。パンドラがどこにいるかを探したのか、武器の場所を確認したのか。どちらにせよ意識がズレた、この時をずっと待っていた。
「活路は見いだした。いけ、アミ!」
「オッケー、任せなさい!」
プロトゼノンの一瞬の死角から忍び寄り、ガラ空きになった顎に強烈なアッパーが入った。
「そうか……君も諦めず挑んでくれるんだね」
「当たり前でしょ!最後の1秒だって諦めてなるものですか!」
ジンや仙道にはまだ届かない、だけど今だけでも全力でCCMに入力を入れてパンドラの華麗な連撃を繰り出す。
ジャブ、右フック、左ストレート、と繰り出される攻撃に隙はない、無防備なプロトゼノンにダメージを蓄積させていく。
「いい動きだ、アミさん。だけど――」
ダガーを振り回し、一回転を披露したパンドラの攻撃を空中に飛んで躱した。勢いそのままに横たわるナイトメアの元へ着地し、自ら武器であるオベロンを引き抜いた。ジンも同様にずっとチャンスを虎視眈々と狙っていたに違いない。
お互いに距離が空いたが、もう止まらない。パンドラのLPは少ない、プロトゼノンもきっと同じ。ならば次の攻撃で決めなくてはいけない!
「僕をここまで追い詰めるなんて、流石だよ。仙道君!アミさん!」
「褒め言葉としては随分と薄味なのね、でも、ここまで戦えて私も嬉しい!」
緊迫する空気の中、プロトゼノンはオベロンを低く構えている。パンドラもダガーを前屈みに構えた。
「だから僕も、全身全霊でこの技を送るよ」
「私もよ!この勝機、絶対渡さないんだから!」
「「必殺ファンクション!」」
互いのCCMから技名が流れ、プロトゼノンの周りには青いエネルギーが漂い始め。片腕で力強くオベロンを突き立てた、その瞬間。ジオラマ全体が激しく揺れ、悲鳴を上げるかのように大地が動いた。
パンドラも負けじと両手に青白いエネルギーを纏わせ、空高く舞い上がり。空中で構えると同時にエネルギーが最大級に輝きを増す。
「これで終わりだ!」
「私は、負けない!」
CCMのボタンを押したのはほぼ同時、貯めに貯めたエネルギーを解き放った。
振り上げたオベロンで地面を叩き割り、地面から巨大なエネルギーの柱が噴き出し空間そのものを飲み込み勢いを増していく。プロトゼノンの必殺ファンクション『ブレイクゲイザー』。
パンドラは両手に集めたエネルギー弾をラッシュで撃ち出し、美しい機動を描きながらプロトゼノンが放ったブレイクゲイザーに当てていく。流星群の如く打ち出され続けるパンドラの必殺ファンクション『蒼拳乱撃』。
互いが放った最大級の攻撃がDキューブというあまりにも小さすぎるステージでぶつかり、激しい爆発と発光に包まれ。思わず目を逸らしてしまった。
光が弱まりジオラマ内でなにが起こっているかが明らかになっていく。吹くはずのない風がジオラマに吹き荒れ、その風の中央に影がふたつ立っている。
怒涛の展開に会場全体が静寂の波に包まれ、皆が固唾を飲み誰もステージから目を離さない。最後の審判の時を見届けるために。
最初に動いたのはプロトゼノンだった、一歩踏み出そうとして片膝をつく。誰もが結果を察したのだろう、皇帝が片膝をついたのだ。だから会場が大きくざわめいた。
ジンがCCMを操作しようと画面を見ていた。一方で私は腕を下げ、わかってしまった事実を口にする。
「完敗よ……ジン」
立ったままのパンドラが青白い光を放って前のめりに倒れた、ほんの僅かな差でパンドラは負けたのだ。
顔を下げ、観客に見えないように唇を噛む。仙道が命がけで繋いでくれたバトルを、こんな形で終わらせてしまったのが今は悔しくてしかたがない。
「しょ、勝者!海道ジンくん!……しかし皆さん、この言葉にできない程の感動と情熱を我々に届けてくれた彼女、川村アミさんにも盛大な拍手を!」
司会者の突拍子もない発言に思わず顔をあげ、反論が自然と口に出ていた。
「ちょっと仙道が――」
仙道がいたからここまでこれた、心からの私の叫びは観客の熱気と歓声によって呆気なくかき消されてしまった。ステージ外から「凄かったよ!」「ありがとう!」「感動したよ!」との声が上がってくるが、全て私とジンに向けられているものであまりいい気はしない……仙道が蔑ろにされているのは正直違うと思う。
「川村アミ、どこを見ている」
仙道が私の肩に手を置き、前を向かせるよう語りかけている。その顔は負けをあんなに恐れていたのに、今は清々しいほどに完全燃焼しきった後のような穏やかさだ。
「今はお前が讃えられている。思うことはあるだろうが今は胸を張れ、お前が居たからここまでこれたんだ」
「でも……」
「いいんだ、俺は」
小言や嫌味を口にすることもなく、それだけを言って一歩後ろに下がる。謙虚な姿を見せる仙道に戸惑いつつも前を向き、軽く頭を下げる。すると更に拍手の勢いが増していく。いい気はしない、私だけが褒められるべきじゃないのに。
「凄かったよ。アミさん、仙道君」
手を叩くジンが私達に労いの言葉を掛けてきた。戦う前の暗く沈んだ表情とは打って変わって、全てを出し切って満足したような、清々しい表情をしていた。
「今日のどのバトルよりも楽しかった、我を忘れるほどだったよ。本当に……僕は心から――」
口から感情を零す程に口角が上がり、声が震えていく。少し俯いて肩で大きく息を吸って最後の言葉を伝える。
「本気で君達と戦えてよかった。ありがとう」
いつも見ていた無表情で孤高に居続けたジンが、右手を差し出してきた。握手を求めているのはわかった。
「え、えっと……」
戸惑いながら仙道を見る、そっぽを向いていた仙道が違和感に気が付き目があった。心情を察したのかはわからないけど、いつも通りに目を細めた。
「してやれよ、最大限の敬意を皇帝が示してる。次はないぞ」
「やっぱムカつく、私ばっか持て囃されるなんて」
「ま、お前の性格ならそう思うだろうな。諦めろ」
困り気味な私に皮肉を込めつつ背中を押してきた。正直目立つことは好きじゃない、でも今は避けられなさそうだ。
渋々ジンに歩みを進め、右手を合わせる。会場全体が一段と歓声に包まれた、結果はどうであれ無事に大成功したようで良かった。大団円の中、安心と疲労でため息が漏れた。もう……帰りたい。
こうして怒涛の大会は幕を閉じたのだった。
閉会式も終わり、会場を後にしてしばらくふたりで目的地もなく歩いている。
夕日が沈みかけている空の下。大きく伸びをして思い切り空気を吸った。一日ずっと建物の中に居たのに、久々に外にでたように感じた。今日はよく眠れそう、明日も学校が休みで良かった。
「あー疲れた、長かったわね」
「そうだな、ようやくシャバに出られた……と言った感じだな」
「サバ?」
「お前、なになら知ってるんだよ……1960年代の洋楽は?」
「知らない。LBXなら、一応ね?」
「……そりゃ良い事を聞いた」
今日一日で仙道とは軽口を叩きあえる仲まで発展していた。いくつもの山場を越え、壁を登り切った。
そこまで辿り着くまでにぶつかって削りあって、弱さを認め合って歩いてきた。その結果が今だ、紆余曲折あっての距離感。前よりも洗練された信頼が築けたことが、今日一番の報酬だ。
歩きながら隣の仙道の顔を見る、今は澄ました顔をしてなんかの洋楽の良さを語りだしている一方。ノイズのように『あの仙道ダイキ』が過る。
勝利にしがみつき、負けることを極端に恐れ震えて今にも壊れそうだった仙道。ナイトメアの不調、ジンの圧で崩れたメンタル。全て「負けるかもしれない」という恐怖より「存在意義が崩れる」という恐怖が見えていた。
いつも見ていた皮肉屋で傲慢さは影すら見せず、別人のように変わっていたあの姿……あれは一体何だったのだろうか。
「……おい、おい!川村アミ。聞いているのか?」
「え?あ、ごめん考え事……なに?」
「あれ、どうする」
眉間に皺を寄せ、キッと睨みとある一か所を指さす。そこに目を向け、不本意ながら顔をしかめた。今日二度目の光景がそこにあった。
「アミたーん!仙道くーん!」
「お疲れさまなんだなー!」
道の先で大きく手を振るふたりと、その隣に静かに佇むひとりの合計三人が見える。
「オタレッドとオタイエローと……えっと」
「海道ジンだ、変わった組み合わせだな」
「で、なんであいつらこっちに手を振ってるのよ」
「俺だって知りたいね……あの野郎、こっち来やがった」
対応に困っているとオタレッドが走ってきた、かと思えば何かに躓いて大きく転んだ。あんなに大会中は格好良かったのに、LBXが関わらなければなんでああも情けなくなるんだろう。呆れによって仙道と目を合わせ苦笑いをし合う。
「グ……ゲホ、お……お疲れ様。あ、あのね。よかったら、これから食事でもどうかな?」
「ちょっと、大丈夫?」
「う、うん……多分」
腹部を強打した痛みに悶えながらもこちらに近づいてきたオタレッド、息を切らしながらも会話を続けようと口を開いた。
「えっと……この近くに美味しい喫茶店があるんだ、イエローが言うにはね。だからさ、そこでジン君とみんなで打ち上げとかどうかな?」
「あ?なに言ってんだ、失せろ鳥野郎」
またオタレッドに威圧的な態度を取っている……別に今はただご飯に誘ってくれているだけなのに。
「いいんじゃない?どうせそのまま帰る予定だったからご飯食べてから帰りましょうよ」
「なんで乗り気なんだよ。はぁ……しょうがないからついてってやる」
小言を言ってはいるけど、仙道もついてくるようで良かった。
「じゃあ決まりだね、今日は僕の奢りだから。好きなだけ食べて飲もうよ……さあ案内するよ!」
浮かれる足取りで先陣を切るオタレッドに続いて私達も歩みを進める。
「めんどくせぇな、俺様の洋楽の話の方がいいとは思わんか?」
「ピー……なんとか?また今度聞かせてね、今は美味しいもの食べに行きましょうよ」
歩幅を合わせ仙道と横並びに歩く、穏やかな街の中で吹き荒れた熱風の渦のような大会『ネオアポロン』、持ちうる全てを出し切った私達は束の間の休息に向かった。