宗助さんの死から二日後、放課後のミソラ第二中学校の屋上でカズとふたり。やることもないので風に当たって黄昏れている。
見える筈もない地平線を眺める。けれど、重苦しい空気を払うまでには至らない。なんとも今の現状を表しているようだ、もうなにもできることがない。
あの激戦の末に守り抜いたはずのエターナルサイクラーが奪われてしまった。勝利の余韻など感じる暇もない、残された者に残ったのは大きな喪失感だけだった。
壁に寄りかかり、CCMをぼんやりと眺めていたカズが重い口を開いた。
「なあアミ……俺達、まだ戦わないといけないのか?」
「うん、多分ね」
「はぁ……これ以上なにすりゃいいんだよ」
カズは空を仰ぎながら深くため息をついた。バンは目の前で宗助さんの死を見てしまったショックが大きかったのか、今は学校にすら来ていない。
無理もない……私達がこれなんだ、当事者のバンはもっと辛いに決まっている。きっと時間しか解決する手立てはない、今はそっとしてあげなきゃ。
「そういやさ、郷田はともかく仙道はどうしてんだろうな」
不意に投げかけられた名前に眉をしかめてしまい、ポケットの中のCCMを握りしめてしまう。
「ま、あいつは学校も違うしほとんど部外者みたいなもんだけどよ。一応は一緒に戦ったんだ、なにしてんだろうな」
「私が余計なことを言いすぎたから……怒っているのかもしれない」
「え?」
不思議そうな顔をするカズにCCMの画面を開いて見せる、そこには私が送った送信済みの数件のメールと電話履歴。改めて確認すると体の奥から虚しさが込み上げてくる。
「あの日からずっと連絡してるんだけど、電話すら出てくれなくなっちゃったのよ」
「俺が郷田に振り回されて酔っていた間に、なにがあったんだよ……」
「た、大した話はしてない。多分」
思い当たる節は多いけど、正直カズには話すべきじゃない。軽く濁して会話を続けた。
「それはそれとして、電話くらいくれてもいいのにね」
「だよな……ま、あの仙道らしいけど」
「ねーそこまで無視しなくてもいいのに。ほんと、人に心配させるのだけは一人前なのよね」
思い出してしまうのは、最後に見た仙道の酷い顔。いつもの余裕なんて欠片も見せない、体調不良とはまた違う。まるでなにかに怯えている表情だった。
そしてそんな顔をした仙道を、私は知っている。あの顔は、なにかを取り繕おうとして空回りしてしまった……そんな仙道だと。
戦いが終わってすぐに私達の前から姿を消してまで、一体なにをひたむきに隠しているのか。いくら考えても答えらしい答えはない……当たり前だ、私は仙道じゃないんだから。
だから私は知りたい、仙道がなにを考えていたのかを。
LBXを通して勝利を証明し、負けることが自己の破滅と捉える位に恐怖している。なのに私達と肩を並べてくれた……通気口を守り切った後に倒れる程に疲弊してまで。
学校から始まり、日常の生活圏だって大きく違う。だから、このままではいけない。いつか……この戦いが終わってしまって、他人に戻る前に、私は仙道と話をしたい。そして、もっと知りたい。
でもどうしよう……仙道はすぐ壁を作って、こちらが近づけば遠ざかってしまうし。話せば普通に仲良くしてくれるのになぁ……。
「あーなんかイライラしてきた。私、ちょっと行ってくる」
CCMをポケットに忍ばせ、カズにそう言って軽く伸びをする。私がなにをするのかが理解できていない……そんな表情をしたカズは、目を見開き固まっていた。
「急になんだよ、どこにいくつもりだよ」
「仙道の所、あのひねくれ者を引っ張り出してくる」
「おいおいマジかよ、あいつの居場所知ってんのか?」
知る知らないの理屈でしか動けない、こういう情けない所はホント嫌い。
「知らないわよそんなもの!だからって行かない理由にはならない」
イライラが頂点に達してしまい、声を荒げて反論してしまった。カズはなにも悪くないのに……でも謝る言葉をパッと出せる程、今の私は冷静じゃなかった。
「だけどよぉ――」
「うるさい!仙道のことなにも知らないなら黙ってなさい!じゃ、行ってくる」
止めようとして言葉を選ぶカズを放って置いて、ひとり屋上を出て行った。
別に無策で歩き回るわけじゃない、とりあえず候補をかたっぱしから探し回るまで。CCMで地図を開いて目星をつけて、それぞれにマークを付けていった。
地図と睨み合いながら仙道が行きそうな場所、そして私達と出会わない可能性が高い場所を考えた。
色々候補があった、でも全て回れるほどのお金も乗り物もない……そして時間も限られてくる。
なら、私が考えるもっとも仙道に出会える場所。そして私達と絶対に出会わないと確信が持てる場所。それに絞るなら一か所しか出てこなかった。
「ここね、ミソラ第一中学校……」
地図を確認し、校門の前に立つ。見上げると建物の構造はほとんどミソラ二中と変わらない、でも郷田のいるスラムがある場所に古い建物が立っていた。
ホームページを読む限り旧校舎のようだ。何人か校門を出る生徒が私を凝視している、普段見慣れない人物だからか悪目立ちしてしまっている……ちょっと恥ずかしい。
「ま、もう帰ったかもしれないけど……」
来ておいて今更な事を考えてしまった。郷田のように学校内のどこか特殊な場所にいるか、そもそも学校には来ていないのかもしれない……ほんと、私は仙道のことなにも知らないのね。カズに啖呵切って飛び出した割には無知もいい所ね。
「考えているだけじゃ駄目、まずは聞き込みからね!」
気を取り直してとりあえず行動に移すことにした。なんだかアキレスを取り返すため、郷田のことを聞き込み回っていた時を思い出した。今はバンもリュウもいないけど、これくらい余裕よ!
「大丈夫、きっと上手くいく」
自分に言い聞かせるよう、小さな呪文のように呟き自然と上を向く。手始めに出てきた女生徒に声を掛けに行った。
「なんて思ってかれこれ30分、分かったことと言えば。仙道が絶望的に人望がないってことだけね」
聞き込みしすぎて仙道に復讐しにきたと勘違いされ、なぜか応援されて差し入れを貰った。とりあえず休憩と称して近くのベンチに腰掛けつつ飲み物を飲んで、駄菓子を頬張っている。
口を揃えてみんな「自分は関わり合いたくない」とか「あの人は関わらない方がいい」、「ファンなら会わなくていい」……なんて最悪な評価をする生徒もいる始末で、郷田以上に手こずってしまった。
かといって勝手に学校に入るのもなぁ……さすがにそれは良心が咎める。
しかも最悪なのが仙道の名前を口にしただけで、私のことを嘲笑ってきた奴らがいるってこと。あー思い出したくもない、もしそうだったらなんなのよ!ほんっと仙道を筆頭に素行の悪さが目立つわね。
「無駄足、だったのかな……」
つい弱音を零し、そろそろ潮時だと帰るため荷物をまとめ立ち上がり、駅までの道を歩き出した。
今日はもう帰ろう、でもこれをあと何回か繰り返せば出会えるかもしれない。電車代はちょっと痛いけど、いつか仙道に請求でもしなきゃね。だから絶対会わなきゃ……。
「もしお嬢さん、魔術師を訪ねていらっしゃるのは貴女様でありましょうか?」
聞きなれない声に振り返ると。目の前には油汚れが目立つ作業着が飛び込んできた、驚いて数歩後ろに下がっても顔がずっと見えない。顔を上げてやっとその人物の顔が見えた……といっても知らない人だった。
ぼさぼさの黒髪に大きい黒縁メガネ、そばかすが特徴的な男子生徒……いや違う、先生なのかしら?と考えが出てきてしまい、頭を下げずにはいられなかった。
「あ、えっと……ごめんなさい!ここの先生ですね?私怪しいものじゃ――」
「いやいや、そう慌てなさんな。あっしは人に物を教えるような年増じゃ御座いません。ここの学び舎の生徒であります、心配には及びませんぜ。ね?」
顔を上げて改めて見てみれば、確かにどこか少年っぽい。早とちりだったのね……よかった。
ウィンクをしようとして両方の目を閉じてしまう、男子生徒は落語っぽい喋り方で話しかけてきた。
帰ろうとした所にまさかの、仙道について有益な情報を持ってそうな人と巡り会えた。よかった!無駄足じゃなかった。
「あっしは
「那須家さん、仙道を知りませんか?」
私の答えにズコッと前のめりに倒れかけた、支えようかとも思ったけど素振りだけのようでそこから動かなかった。しばらくして勝手に体勢を立て直し、軽い咳払いをしていた。たなんなんだろうこの人……ちょっとリュウやオタレッドを思い出して眉間に皺が寄った。
「まぁ気を取り直して……お探しの御仁。魔術師様はあちらに」
那須家さんが掌を向けた場所は旧校舎の方だった、ミソラ二中でいうスラムみたいな場所なのかな?いかにもってたまり場でもあるのかしら。
「さ、あっしについて来ておくんなせぇ。大丈夫、悪いようにはいたしやせんぜ?」
「えっと、一応私部外者なんだけど……?」
やはり他校に足を踏み入れるのには抵抗がある、不安を口にすると那須家さんはアニメの悪党のように歯を見せて「ヒッヒッヒ」とか笑っていた。本当にそんな笑い方する人っているんだ。
「ご心配なせぇ。その辺は『よしなに』、良い感じに取り計らっておきましたぜ。では……どうぞ、川村アミ様」
「え、名前!?私まだ名乗って――」
「そりゃあ……あれです。守秘義務ってもんが御座いやすから」
私の疑問を聞いても、敢えて逃げの姿勢を見せるように、那須家さんは背を向けて歩き出した。
「なんか、前に仙道とも似たようなことやったことがある気がする……」
似たもの同士って奴なのかしら?でも仙道と同じ波長を感じる。ついていくのが正解か分からないけど、ここで引き返してしまえばなにも出来ないままで終わってしまう。
ならば、ついていくのもいいのかもしれない。きっと今までで一番仙道に繋がっている可能性がある、色々聞きたいことがあるし。
那須家さんを追うように足が動く、未だ見ぬ場所へ仙道を辿ってミソラ一中へと向かった。
ミソラ第一中学校を那須家さんの背中を追って、なるべく目立たないよう体を小さくしながら歩みを進める。
息を潜めて歩いているとはいえ、人の目が気になる……先生らしい人に凝視された時は生きた心地がしなかった。
駄弁る生徒が私を見ながらなにか囁きあい、吹奏楽部のラッパの音、運動部の喧騒すら遠くに聞こえてくる場所まで進んできてしまった。
古くなって部室としてさえ使われない旧校舎……そのひとつの空き教室の前で那須家さんは止まった。
「こ、ここは……?」
「さあ、おあがり下さい」
扉には板に『落語研究会』とペンキで書かれた看板?がある。
立て付けの悪い扉に苦戦し中に入ったその背中に続いていく、そこでの光景を見て本来の目的を忘れてしまう程に心が躍ってしまった。
「す……すごい!なにここ」
「お気に召したようで」
机を重ねて棚のように見立てた場所に色とりどりの工具、もうひとつの棚には塗料とグリスが丁寧に並べられている。小さなパーツからLBX用のコアスケルトンやウェポンまで、LBX関係の物が収納してあるのも目に入った。
落語なんてものは、案内してくれた那須家さんの喋り方以外欠片も見当たらない。まるでキタジマ模型店に来たみたいな品揃え、LBXプレイヤーにとって夢のような空間に思わずテンションがあがる。
「すごい!まるで本物の模型店みたい!」
「いやぁ勿体ねぇお言葉で、商人冥利につきやす……ほんと、ありがてぇ。へへっ」
鼻の下を指で擦り、あちこちに視線を泳がせ那須家さんがデレデレとしている。あまりの感動に本来の目的を忘れてはしゃいでしまった、いけない……仙道を探さなきゃ。
お世辞にも広いと言えない周りを軽く見渡してみる、でも仙道どころか人影すら見当たらない。物が多い場所だから隠れるスペースもなさそう……じゃあどこに?
「あ、えっと……あの、仙道は?」
あんなに嬉しそうに表情を緩めていた那須家さんは、仙道の名前を聞いた途端に顔を曇らせ。「お呼びしてきます」とだけ告げて部屋を出て行ってしまった。
急激に変わった態度になにか不穏な気配を感じつつも、大人しく那須家さんの帰りを待つことにした。
「それにしてもすごい場所……ここまでするのにいくら掛かったのかしら?」
本当は触ってみたいものは色々あるけど、危ないから見るだけにしなきゃ。
それにしても本当に充実した品揃え、並みの模型店でもここまで本格的に揃えているのは珍しい……場所も秘密基地みたいだから、スパイとかのガレージとかみたいでちょっとワクワクしちゃう。
「こんな所でカスタマイズできたのなら楽しそうねぇ……キャ!」
夢のような空間に気を取られ、何かに当たって一気に崩れ落ちてしまった。ゆっくりと床に崩れてしまったそれを無我夢中でかき集めた。
「いけない!拾わなきゃ」
どうやらなにかのノートのようで、折れていないかの確認の為にページを開いてみた。
「ああ……ちょっとページ折れちゃった。ん?……これって」
覗くつもりはないのに、好奇心に負けてしまい勝手に目を通してしまう。
どうやらLBXのデッサンやカスタマイズの情報が、事細かに記されているようだった。手を止める間もなく他のノートも開いていく、やはり全部カスタマイズのことばかり……倒したノートだけで十冊くらいはあるのに、元の棚を見ればまだ山のように積まれていた。
「すごい……那須家さんって、見た目よりマメなのね」
パラパラとページを捲っていれば、既視感しかない物を発見し手が止まる。見覚えしかない、この機体のページがそこにはあった。
「これは、ジョーカーMk-2の……設計図?デッサン?」
勉強用のノートに、本格的なジョーカーのイラストが数ページに渡って描かれていた。私は絵は詳しくないけど、すごく上手だ……仙道も上手だったけど。那須家さんも絵がうまいのね。
「こっちは一冊丸々、カスタマイズとチューンナップのことを書き殴っている……」
数あるデザインにバツがされ、一緒に記載されている数式に線が大量に引かれている……かなりの試行錯誤の跡が見ただけで分かってしまう。こんな苦労があってジョーカーMk-2が出来上がっていたのね。でも……なんだろう、この違和感は。
「文字の癖が大きく違う箇所がある……鉛筆?で書いている文字と赤ペンで修正した文字は……明らかに違う、別人なのかしら?」
鉛筆の後を擦って汚れたような跡の黒ずみがページの左側に偏っているのを気にしながら、とりあえず読み進める。そして数ページ開こうとも、疑問の正体には辿り着けない。
「またデッサンだ、ジョーカーの頭部にセンサーを付けたデザイン案が何種類も……これだけが赤い丸で囲っているわね」
アルテミスで見たまんまの頭部デザインが描かれているページがあった、これにしてアルテミスまで仕上げてきたのね。
じゃあデザインは那須家さんが書いて、仙道が赤ペンを?だとしたらまあここにこんなノートがあるのはわかるけど……ここで作っていたのね。そりゃあんな高性能なカスタムができるわけね、納得だわ。
ノートを片付け作業台を確認する、綺麗に整頓された狭い机の上の左側にヤスリやパテの収納棚。ペン立てにスパチュラが保管されている……これといっておかしい箇所はない。那須家さんが使いやすいように設置されているようだ。
「にしても遅いわねぇ……なにしてんのよあの馬鹿は」
時間を確認すれば、那須家さんが部屋から出て行ってから5分以上経っていた。会いたくないって駄々でも捏ねているの?子供ねぇ……。
ガラリと大きな音が部屋に響いた、やっと来たかとため息と共に振り返ったら。居るとは思わなかったその顔に、つい言葉を失ってしまった。
「すいやせん……あっしも立場ってもんがあって……その……堪忍してくだせぇ」
苦し紛れ言い訳をする那須家さんが、彼らの陰に申し訳なさそうに謝りながら、その人物の後ろに大きな体を隠した。
彼が連れてきた人物はふたり、これで顔を合わせるのは三回目となった、仙道と因縁のある相手だった。
「あなた達、たしか風間と森野ね……なんでここに」
暗い会場内で出会った時と同じように、風間はニヤつきながらこちらに近寄ってきた。
「顔を覚えてくれてありがとよ、まさかこんな所までくるなんてな」
風間の後に続いて、体格のいい森野が私を見下すように会話を続ける。
「お前の手はず通りだな……那須家、おびき出してくれてありがとよ」
「あっしは……その……彼女を騙すような真似だけは――」
「うるせぇぞ魔術師の犬!お前みたいなのがダイキに肩入れするからおれ達はいつまでも勝てないんだ!引っ込んでろ!」
風間に凄まれ、大きく肩をビクつかせた那須家さんは、気まずさや恐怖からまた私達から視線を逸らした。
「ちょっと!関係ない那須家さんに怒鳴ってなにがしたいのよ!?それに私は仙道に会いに来たの、邪魔しないで!」
事実、邪魔をされた苛立ちで声を上げて威嚇する。そんな様子に風間と森野は顔を見合わせ、突然声を上げて大笑いした。意味が分からない私と那須家さんが固まり、しばらく笑って満足した森野が口を開いた。
「ハハッ……お前もしてやられたクチだな?ネオアポロンであんな連携までしておいて……やっぱあいつは、人をすぐ裏切りやがる」
「やられたって……なに、どういう意味よ?」
「あー腹痛い……わかってる、どうせお前もダイキに駒にされたんだろう?」
腹部を抑えながら風間が続ける、少し涙目になっているのがなんか腹が立った。
「私、騙されてなんか――」
想像もしていなかった展開に戸惑いつつ、私の存在を愉快そうに見守る風間、哀れむように見つつもどこか喜んでいる森野。恐怖でもう口を開こうとしない那須家さん。
この混沌とした空気感が理解できなくて、今すぐにここから逃げ出したくなる居心地の悪さを覚え、逃げ出してしまいそうだ。
「なあ川村アミ、お前がよければあのキザ野郎に復讐しにいかないか?お前とならあいつに勝てそうだ」
風間がなにかを思いついたようで身も蓋もないことを言いだした。
「なんで……そんな話が飛ぶのよ」
「隠す必要はない。ネオアポロンでの失態が気に入らないのなら謝罪しよう。だから、あの魔術師の首を刎ねにいこうと言っているんだ」
ようは「俺達と戦え」……シンプルにそう言いたいらしい。なんでここに私がいるか、なにが目的かすら知らないで……勝手に都合のいい理由つけて引き摺り込もうとして、ムカつく。
「なにいってんのよ、確かに何回もやられているけど、私は別に仙道のこと恨んでないわ。あんた達みたいな結果だけに縛られてないわよ、復讐なんてくだらない」
私の反撃の一言に今度はふたりや那須家さんが固まった、でもそんなのお構いなしに言われっぱなしだった分の反動で言葉が止まらなくなっていた。
「仙道に勝つことばかり執着して馬鹿みたい、志が低いわね」
「んな……なんだって!?この女、人が下手に出ていればずけずけと……」
「ああ、川村様。なにもそこまで周知の事実を――」
「黙れ那須家!っくそ、ならなんでここに来てんだよ。お前の目的はなんだ!?」
茶々を入れる那須家さんに風間が叱責を飛ばす、口を開かない森野がこちらに怒りの視線を向けてきているのが分かる。だけど怯むことはない、私は本来の目的を口にした。
「ただ仙道に会いに来た……それだけ」
私の答えを聞いたら、またふたりは顔を見合わせて笑いあった。しかもさっきより声を上げての大笑い。
「ハーハッハッハッ!いいこと聞いたぜ!この女、やっぱただのダイキのファンなんだな!あいつの人望はまだ残ってたんだなぁ!」
「いくらダイキが相手でも言い過ぎだぞ風間ぁ、あんなのでも慕われる……笑っちまうがあの野郎は妙にモテるからな。それにしては趣味が……フフ」
「……人を馬鹿にすることでしか自分を保てないのね」
私のシンプルな言葉に、今度こそ笑い声が止んだ。あんなに楽しそうにはしゃいでいた風間と森野の息遣いが荒くなり、顔が赤くなって私を睨みつけてきた。
「意識が低いわ、仙道も顔負けの執着と視野の狭さね。ほんっと下らないプライドね!」
「うるせぇ、やっぱ生意気なガキだな!……やっぱお前なんかと手を組んでなんておれは嫌だったんだよ。森野!こいつ叩きのめすぞ!」
「作戦変更……か、言いくるめて捨て駒くらいにはしてやろうと思ってたが。強情な女だ」
冷たい目を向けた森野は部屋の外を指さし、私に向けて宣戦布告をした。
「勝負だ川村アミ、負けたら俺達と共に仙道ダイキを倒せ」
「なによそれ、じゃあ私が勝ったら?」
「好きにしろ、出来る限りの希望は叶えてやる……ここじゃ手狭だ。隣の空き教室でやるぞ、行くぞ風間」
「絶対メッタメタにしてやる、ネオアポロンの敵討ちだ!」
風間と森野、そして私との間に見えない火花が弾け飛ぶ。唐突に始まったこの戦い、負けられない!
すっかり引け腰になった那須家さんの案内の元、私達は戦いの舞台に向かった。