星と魔術師   作:ワンダ・プレイア

20 / 32
星と塔

 隣の空き教室で風間と森野と対面し、緊迫した空気に包まれている。那須家さんがDキューブを探しに行っている間、私達の間に会話はない。ただお互いに睨みをきかせているだけだった。

 

 その静寂を終わらせたのは、意外にも森野だった。

 

「まだ那須家は戻らないな……川村アミ、せっかくだから余興のひとつでもしてやろう」

 

 カッコつけた言い回しに思わず身構えるが、森野が取り出したのは自身のLBXのオルテガだった。

 

「オルテガ……あなたの愛機ね。なに、自慢したいの?」

 

 にやりとあくどい笑顔を見せながら床に置き、武器を構えさせた。この前はランチャーだったのに今は両手銃を持っている……スコープがあるってことはきっとスナイパーライフルね。でも余興って?

 

「風間、いつもの」

 

「あれやんのかよ。楽しみだなぁ」

 

 森野がなにをするつもりか分かっている風間は、ポケットから五枚のメダルを取り出した。

 

「見ておけ川村アミ!これが、ミソラ一中の最強スナイパーの実力だぜ!」

 

 風間が教室の向こう側にメダルを放り投げた。メダルはそれぞれの方角に散らばり、空を回転しながら舞っている。

 

 ふとメダルに意識を取られ目線を逸らした時、CCMの操作音が響いた。直後、一枚のメダルがなにかにぶつかりキィンと音を立てて跳ねた。それを合図にするかのように他のメダルも同様に軌道を変えてそのまま地面に落ちた。

 

 静かになった教室で、オルテガが構えたライフルから煙が上がっていた。

 

「……上々だ。おい川村アミ、悪いが拾ってきてくれ」

 

「なんで私よ」 

 

「ヒヒヒ、そのほうが面白いからな」

 

 ふたりに促されるまま散らばったメダルを集めにいく。近かった一枚目を拾おうと手を触れると、少しだけ温かい……まさか。

 

 確信がないままゆっくり持ち上げ、目の前に近づけると。ライフルの弾丸がメダルに食い込んでいる。

 

「うっそ、あのメダルに?まさか――」

 

 急いで他のメダルを集めると、全てのメダルに弾丸が食い込んでいた。メダルに弾かれ傷ができている……というレベルではない。確実に中心を射抜き、めり込んでいるのだ。

 

「ヒューさすが!『鷹の目』と恐れられた森野の射撃、いつみてもスゲーな!」

 

「まあな、誰も俺の狙撃からは逃げられない……ダイキ以外は」

 

 最後は吐き捨てるように言葉を口にしていたが、私の手に乗っているメダルに目を奪われそれどころではなかった。

 

「動く標的を正確に……仙道もその腕は見込んでいたってわけね」

 

 なにも知らないまま戦っていたら、考える間もなく蜂の巣だったのかもしれない……手の内を見せて貰えたのは幸運だった。こちらはスピードと機動力で相手を翻弄する、でも……それは、このふたりに通じるのだろうか?

 

「急に黙って、まさかこれだけでビビったのか?」

 

 風間が下劣な笑みを浮かべるのもお構いなしに考えに耽る、きっとこのふたりは仙道を倒す……それだけを目標にしているから、ちゃんと対策はしていると思う。じゃあ尚更、俊敏なLBXには強く出てくる可能性がある。じゃなきゃ手の内を最初から見せて来ない筈だから、なら私はどうすれば……。

 

「こういう時、仙道なら……どうするんだろう?」

 

 道筋が見えない時は別の視点で考える、私の戦いのスタイルなら……一番参考になりそうなのは仙道だ。

 

 フルパワーで振り回されるハンマー、桁違いの命中力のスナイパーライフル。どちらも機動性の高いオルテガで立ち塞がってくる……対してこちらはパンドラ一機、それを仮定して考えてみよう。

 

 もし私がナイトメアなら……俊敏さと機動力、残像を生み出せるスピードでどう翻弄する?どちらから倒せばいい?……ずっと隣で戦ってきたんだから、なにかヒントが絶対ある。落ち着いて考えなきゃ、こいつらの好きなようにはさせたくなんかない。

 

「やはり、所詮は臆病……仙道がいないとなにもできないんだな!」

 

「おく……びょう?」

 

 風間の言葉に乗っかり、森野も煽るような言葉を選び口にした。

 

「諦めるのなら、今のうちだぞ?大事なLBXを壊される前にとっとと降参するんだな」

 

 臆病……そうか、臆病!

 

 ふたりの煽りなんかそっちのけで、風間の言葉に頭が冴えわたっていく。

 

 思い出した……武器を失ったのに足蹴りで攻撃を続け、最終的にプロトゼノンを踏み台にして高く飛翔した……ネオアポロンでジンと戦った時、仙道がやっていたあの動き!あれを真似できるのなら、このふたりを欺いて勝率を大きくこちらに向けられるかもしれない。出来る自信は……ない、でも一か八か。賭けるっきゃない!

 

「す、すんません!お待たせしやした、滝ステージは……こちらに」 

 

 肩で息をし、汗だくになりながら那須家さんは教室に戻ってきた。相当探すのに苦労したのだろう、頭や肩に埃を被っているのが分かる。

 

「おせーぞ那須家!日が暮れちまうってんだ……たくっ、おれ達が番長に返り咲いたら絶対可愛がってやる」

 

 風間に叱責されながらDキューブを手渡す。疲れでちょっとやつれた気がする那須家さんが、今度は私の方に近寄ってなにか差し出してきた。

 

 掌に乗せられたものをよく見てみれば、どうやらLBX用のスタングレネードのようだった。でも明らかに私のじゃない……だって使わないしそもそも持ってきていないもの。

 

「か、川村様。すいやせん……こちら、あっしの部屋に落ちてましたぜ。忘れないうちにお受け取りくだせぇ」

 

「私そんな真似するような戦いは――」

 

 言葉を遮るように那須家さんは顔をぐっと近づけ、風間と森野に聞こえないように囁いた。

 

「こちら、市販物より威力がちょいとばかり高めて御座います。どうか、あいつらをぎゃふんと言わせて頂ければ幸いです」

 

 またウィンクに失敗して両目を閉じている、那須家さんの仕草から察するに、ズルしてでも勝って欲しいってことみたい……随分と舐められたものね。

 

 ふと、ネオアポロンで森野に言われた事を思い出す。アルテミスでバンに隠れて大した活躍もしていない……とかなんとか。

 

 そうだとしても私は弱くない、少なからずそんな卑怯なアイテムを使わなきゃ勝てないことは絶対にない。那須家さんなりの気遣いなんだろうけど、その優しさは私にとって怒りのスイッチを入れるだけでしかなく。ついカッとなって言い返してしまった。

 

「人違いよ!私そんな卑怯なアイテム使うほど落ちぶれてない!」

 

「ちょ、声が――」

 

「と!に!かく!人違いですぅ!そんなの無くっても私、こいつらに負けないから!」

 

 絶望しているせいか、目を白黒させて冷や汗をかき始めた。小さく「どうしよう」と呟いた那須家さんを押しのけ、ふたりの前に立つ。少しだけ仙道をイメージして虚言を張りながら宣言した。

 

「大道芸を披露できて満足かしら?ごめんなさいね、生憎投げるお金も誉め言葉もなくて」

 

「な、なんだと!?実際凄いことだろ!」

 

「そうね、すごいわ。私の知り合いにも遠距離で戦うプレイヤーはいる。だから凄さはわかる、でも……」

 

 緊張で喉が焼け、このふたりに歯向かうことに恐怖してしまう。でも言ってやらなきゃ、じゃないと気持ちですら勝てないかもしれないから……そう意を決して大きく息を吸い込み、自分を安心させる意味でも言葉を口にする。

 

「私のパンドラは負けない、軌道が分かって撃てたメダルなんかと一緒にしないでよね!」

 

 言い返されて顔を真っ赤にする風間を留め、森野が私を見下してくる。その巨体と圧で、若干怯んで後ろに下がってしまいそうになった。

 

「減らず口だな、ダイキに影響されたか?」

 

「さぁ、試してみる?」

 

「元々その予定だ……そのお高く止まった自惚れに風穴を開けてやる」

 

 目を細め、殺意を膨れ上がらせた森野が風間に合図をする。

 

 頷いた風間がDキューブを投げ、無事に展開される……中心に大きな滝が存在感を放つ高低差がはっきりしているジオラマ。圧倒的こちらが不利なステージだ。それでも――。

 

「ルールはアンリミテッドだ、さぁ始めるぞ」

 

「ギッタギタにそのLBXをぶっ壊してやる!」

 

 風間と森野のオルテガがセットされ、パンドラも投入しようと取り出し少し見つめる。

 

「仙道がいなくても、きっと……いや絶対勝つんだ!」

 

 少しだけ強く握りしめ、ジオラマにパンドラを投入する。

 

 余裕の笑みを見せる風間、神妙な顔でCCMを睨む森野と対峙する中で、開始の合図を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 湿地特有の植物が目につき、強く滝が落ちる音が響いている。そんなジオラマの中で湿った大地に足をつけて、目の前のオルテガと向き合った。

 

 足元はぬかるんでいて踏ん張りが効きにくい……大きく動き回れば転倒する危険もある。パンドラやナイトメアのような、スピードを生かしたストライダーフレームが最も得意とする立ち回りを……LBXの長所を奪いに来ている。

 

 ジオラマ選びから始まって、ストライダーフレームの対策はバッチリって所ね。

 

「行くぜぇ……川村アミぃ!」

 

 『バトルスタート』の音声が流れた。それと同時に森野が滝の上に上がってライフルを構え、風間のオルテガが早速ハンマーを振り上げて迫ってきた。

 

 ぬかるみをものともせずに、力強い歩みでこちらに近づいてくる。でもパンドラが避けられないスピードじゃなかった。

 

「そんな攻撃じゃ、パンドラには当たらないわ!」

 

 すかさずパンドラが後ろにステップをとり、大振りなハンマーを避ける。でも油断していた、本命が次の攻撃だった事には気が付けなかった。

 

「甘いぞっ!」

 

 森野のオルテガが引き金を引き、鋭い破裂音と共に弾丸が飛び出して、下がりかけたパンドラに直撃した。

 

 慌てて防御しようにも間に合わず、風間のハンマーがまた襲いかかってきたのをなんとか捌き切る。ちょっとかすりはしたものの、高威力の攻撃による反動で大きなダメージを負った。着地場所に合わせて発砲してきたのね、さっきのメダルと同じように……推測して的確に当てに来た。

 

「ちゃんと連携は、取れているってわけね」

 

「強がりか?いつまで持つかな、オラァ!」

 

 隙を見つけた風間のオルテガが、ハンマーを振り回しながらパンドラを攻撃する。防御に専念しなんとか受け止めてはいるものの、攻撃全てが重くのしかかる。しかもぬかるみに足を取られて思うように踏ん張れない……このままじゃ、いつバランスを崩して膝をついてもおかしくはない。

 

「これじゃあ耐えられない……とりあえず一旦撤退を――」

 

「逃がすか……よ!」

 

 風間のハンマーから距離を取ろうとすれば、遠くからの援護射撃によってパンドラを掠めていく。射撃に構えれば、また風間のハンマーがパンドラに重くのしかかる。駄目だ、完全に相手の策略の内にはまってしまった。

 

 しかも厄介なのが、風間の攻撃は隙を見つければ避けられそうで撤退も容易い。でも一歩下がっても、横にズレても、必ず遠くから森野のライフルがパンドラを掠める……それに一瞬の硬直を見せれば風間が再びハンマーを掲げる。

 

 逃げられるけど逃げられない、まるでアリジゴクに囚われ藻掻けば藻掻くほど底に沈んでいる気分だ。

 

 完全に遊ばれている……森野がいつでもパンドラを射抜けるという自信を見せつけるように、敢えて掠めている。舐めきった態度に思わずCCMを強く握ってしまう。

 

「おい、森野。掠めてばっかでいいのか?おれがトドメさしちまうぜ」

 

「そうだな……こちらのお遊びに付き合ってもらってばかりじゃ悪いな。川村アミ、これが最後の提案だ……俺達に下れ」

 

 風間の攻撃が止み、森野も銃口を下ろし私の答えを聞く体制に入った。

 

「どちらにせよお前に勝ち目はない。その一点モノだろう、珍しいLBXとオサラバする前に答えを出したらどうだ?」

 

 風間はこちらに顔をむけ、意地の悪い顔をしている。それに対し、森野が一瞬だけCCMを見て何かを操作したのが目に映った。

 

「あれって……」

 

 ふと気になってパンドラを通して森野のオルテガを確認する、ライフルの銃口をこちらから完全に逸らして弾丸を入れ替えている。リロード中のようだ。

 

 時間稼ぎの為と、私にどう足掻いても負けるって思わせるように心理戦を仕掛けているんだ。ほんっと姑息な奴ら、私の答えなんかわかり切ってるって知ってる癖に!

 

「どうした?ごめんなさいって謝る口がないのか?アッハッハ!」

 

 ついに大口を開けて笑う風間のオルテガも、余裕そうにハンマーを肩に乗せた……もう勝ったつもりなんだろう。

 

 作戦を考えなきゃ、隙を見つけなきゃって頭があるのに……余りにも風間の挑発に腹が立ってしまう。その余裕そうな姿に我慢できなくなって、気がつけばがら空きになったその腹に大きく蹴りを入れてしまっていた。

 

「なぁ!?こんのガキ――」

 

「ふっざけんじゃないわよ!あんたらになんか……負けてたまるもんですかぁ!」

 

 よろめいて思わず膝をついた風間のオルテガの顔面を思い切り踏んでやり、出来る限り踏ん張ってバネのように大きく跳ね上がった。

 

「畜生!こいつ、ダイキと似たようなことやりやがって!」

 

「ならば、お望み通りにぶち開けるまでだ!」

 

 一瞬の展開に怯むも、森野のオルテガが慌てたようにライフルの銃口を向けた。しかし左手のホープエッジをブーメランのように投げ。ライフルに命中させた。厄介だったライフルから手を離させることに成功した!これで厄介な射撃の心配はなくなった。

 

 考えなしな思い切りの踏み込みがうまく噛みあった、ならばこの勢いを止めてはいけない。

 

「はぁ!」

 

 足場を飛び継ぎ更に高く飛び上がる、滝の上部にいた隙だらけの森野のオルテガに強烈な飛び膝蹴りをお見舞いする。大振りの攻撃だったけど避けることも間に合わず、モロに喰らった森野のオルテガは崖に蹴り出され滝底に落ちていった。

 

 水柱を発生させる勢いで打ち付けられた森野のオルテガは、ダメージを負いつつもなんとか陸地に這い上がり風間と合流した。

 

 片方のホープエッジを回収したパンドラも下に降りて、また両者睨み合いを再開させる。

 

 まさかのどんでん返し……あまり調子に乗るべきじゃないけど、まさかここまでうまくいくなんて思わなくてちょっと頬が緩んでしまう。

 

「森野!」

 

「心配いらん、かなりダメージは受けたがなぁ……川村アミ、お前まさかずっと俺のリロードのタイミングを読んでいたというのか……」

 

 なんか勝手に勘違いしている、でも効いている……ならばこの川村アミ、乗っかってあげましょう。

 

「ふふん!これぞ、仙道直伝の技『ラビットジャンプ』!どーよ、コーサンするなら今の内よ!」

 

 そんな技なんか教えてもらった事すらない、精々ストライダーフレームは脚部のメンテナンスをマメにしろってアドバイスしかしてもらってない。

 

 でも張りぼてなハッタリでも効果てきめんだったらしく、悔しそうに森野が顔をしかめ、風間の顔が赤くなった。

 

「クソッタレ、ちょこまか動き回りやがって……」

 

 もはやライフルを使えない森野はコンバットナイフのような片手剣を取り出し、風間の横に並び立つ。

 

 二機のオルテガの圧を、CCM越しに感じて指先に力が入ってしまう。

 

「俺達の落ち度だ。だが、次からはこうはいかんぞ!」

 

 先ほどまでの余裕さを捨てた森野は、険しい表情でCCMを睨んでいた。射撃で見せていた冷静さとは程遠い、なりふり構わない荒々しい殺気が溢れ出ている。

 

「いくぞ風間! 挟み撃ちにして終止符にするぞ!」

 

「いよっしゃ、決めてやるぜ!」

 

 ふたりのオルテガが強く屈み、力の限り飛翔して左右から迫ってきた。重量任せのハンマーと鋭利な刃がパンドラ目掛けて牙を向けてきた。

 

 ハンマーが風を裂く轟音と、片手剣が空気を切る音が同時にジオラマに鳴り響く。泥を跳ね上げてがむしゃらに突っ込んでくる彼らの動きが、まるでスローモーションのように見えた。

 

 パンドラが泥の上でステップを踏むように滑る。カメラのすぐ横をハンマーが掠めた風圧、装甲数ミリ先を剣が横切って生まれた火花が見えた。

 

 紙一重の回避を繰り返す。まるで見ている者全てを欺き、掌で踊らせる魔術師のような翻弄だった。

 

 ふたりの苛立ちは頂点に近づいているのがわかった。舐めていた相手がよりによって宿敵、仙道のような操作をする……彼らにとってそれ以上の屈辱はないのだろう。

 

「こいつ……急に動きがよくなりやがって!」

 

「なるほど、とんだ懐刀ってわけか……だが――」

 

 風間がハンマーを振り上げて大振りの一撃を放ち、森野が退路を断つように片手剣で突きの体勢を向ける。

 

「おれ達はお前なんかより!ずっとダイキを倒すことだけを目標にしてきた!」

 

「その邪魔立てだけは、絶対にさせない!」

 

 一瞬だけ足を止めたパンドラに向けて決死の覚悟でふたりが武器を振るっている。これで最後だ、俺達が勝つ!そんな意気込みが嫌でもわかる……だから読みやすかった。思わず口角が上がり、気がつけば仙道のような皮肉にまみれた言葉を口にしていた。

 

「だから甘いのよ、自らの驕りによって……足元を掬われるんだから!」

 

 ハンマーが当たる寸前、パンドラの半身を引いて力を逃がす。残像を掠めたハンマーに続けて迫りくる片手剣の一撃がパンドラを狙う、左手のホープエッジで森野の剣先を誘導し、軌道を強制的に下へと逸らす。勢いを殺された剣は火花を散らしながら刃先を下ろした。

 

 攻撃を紙一重で外され、勢いを止める間もなく風間と森野の武器は鈍い音を立て、地面に突き刺さり泥を纏った。いくらジオラマの中とはいえ、重さに耐えきれないのかズブズブと沈み始めた。

 

「チャンス、ここで決める!」

 

 武器を持ち上げるのに奮闘するオルテガを踏み台にして、上空に大きく飛び上がった。

 

 ジオラマの天井ギリギリまで届きそうになりながらも、パンドラはくるりと振り返ってオルテガに向けてあの構えを取った。

 

「やめろ……やめてくれ!」

 

 まだ諦めきれなく、情けなく命乞いをする風間。諦めによって顔を伏せ、結果を見ようとすらしていない森野。正直いい気分はしない、でも……私は止まるわけにはいかない!

 

「決めてやる、必殺ファンクション!」

 

 CCMから音声が流れると両手にエネルギーを溜め、目にも留まらぬ速さのラッシュで撃ち出した。美しい機動を描きながら流星群の如く打ち出され続け、風間と森野のオルテガに降り注いだ。パンドラのアタックファンクション『蒼拳乱撃』だ。

 

 エネルギー弾の雨を受け、爆発で土煙が舞い上がり視界が悪くなった。必殺ファンクションを撃ち終えたパンドラがゆっくりと地面に着地して、場にいる全員が息を飲んで結末を見届けた。

 

 画面を確認すればうつぶせになったオルテガが現れた、どちらも動かないまま倒れている。

 

 まもなくしてオルテガが二機とも青白い光を放った。ブレイクオーバーだ、無事に勝てたんだ。

 

 二度目とはいえ、今回はひとりで戦った。うまい具合に事が進んだだけで自分の実力だけじゃないのが素直に喜べない……でも勝ちは勝ちだ。

 

 複雑な思いの中、カタンと硬いものが床に落ちる音が響いた。音の方を見ると、余りのショックにCCMを手から滑り落とし、俯いてしまっている風間と、私から目を逸らしている森野。そして重苦しい空気を読めず、飛び跳ねて喜ぶ那須家さんが見える。

 

 混沌とした空気感に戸惑いを隠せず、少しだけ頬の内側を噛んで目線を落とした。今は用が済んだのなら帰りたい……そう思っていた。

 

「風間?お前どうした――」

 

 森野の声に不思議がって顔を向けると、気が付けば風間がすぐ横まできていた。突然の出来事に体が硬直し、顔が引きつった。まさか暴力!?そこまでするの?

 

 森野が止めに入る間もないまま私の肩に両手をガッと置かれた。思わず変な声が出てしまうも身構える……風間の震える唇が開き、顔を上げた風間の顔は懇願し縋るような目をしていた。

 

「お願いだ、おれ達と……ダイキを倒してくれよ。じゃないと……おれと森野は……」

 

 言葉を口にする度に目に大粒の涙を溜めながら願いにも近い言葉を吐き出した。

 

「最後の……アルテミスの思い出が、俺達が最後に見た夢が、終われないんだ」

 

 私から肩の手をどけ、「お願いだ」と頭まで床につけ始めた風間に戸惑いでかける言葉をなくす。

 

「風間、お前という奴は……はぁ」

 

 情けない姿に呆れた森野が言葉を被せた。

 

「すまない川村アミ、俺達が仙道ダイキに執着するにはわけがある……理由だけでも聞いてくれないか?」

 

「わ、わかった……だけど、聞いたからって手助けするとは言わないから。あと風間起こしてあげて、集中できない」

 

 項垂れる風間に森野は肩を貸して、近くの椅子に座らせて。長話になるからと椅子を用意して座るよう言ってきた……中々帰らせてくれないのね、でもちゃんと聞きたいからお言葉に甘えて椅子に腰掛けた。

 

 風間と森野、そして仙道の因縁についての話が始まった。




ここの修正カロリーがエグかった……というか森野達の登場回が修正カロリーがエグいので御座います……

なるべく多く投稿したいけど、しんどい。
キラードロイド狩りたい……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。