暗い場所に怪しく光るものが見える、それにゆっくり照準を合わせていく。周囲を見渡すように首が動いたそれを見つめながら、フェンリルは引き金に指をかけた。
「よし……動くなよ……いけぇ!」
弾薬が破裂する音とともに真っすぐ敵に向かって飛んだ弾丸は、見事警備中のデグーの頭を吹き飛ばした。自動操縦だから考える余地なんか元からないにせよ、あっという間にデグーは爆散。後ろをついて来ていた他のデグーが先頭のデグーの異常に気が付き、進行を止めるがその隙を突くようにナイトメアが背後を取り、一気に薙ぎ払って見せた。一瞬で目の前の敵の殲滅に成功した。
「よぉし、いっちょ上がり!どうだ、みんな」
振り返れば物陰に隠れたアミが微笑み、郷田がこちらに向けて親指を立てていた。が、目を吊り上げこちらににじり寄ってきた仙道が不機嫌そうに口を開いた。
「遠距離武器が出しゃばんな、あと狙う時に声出してんじゃねぇ……自動操縦とはいえ音声認識でも積んでたらどうすんだ。あ?」
正直そこまで怒られるとは思ってなくて、小さく体を縮こませながら「ごめんなさい」と精一杯捻り出し目線を逸らす。
呆れて言葉も出ないようで、あからさまな舌打ちをして前を歩き出した。正論に屈して一気に下がったテンションのまま、仙道の背中を追って歩き出す。
「こんなつもりじゃ、なかったのに……」
重い足を少しでも軽くしようと後悔を言葉として漏らして、床で待機していたフェンリルを回収する。
レックスからのメールに書かれていたルートを進み、まあやはりというか……見回りは置いているようで。監視用LBXをなんとか退けながら、俺達は先へ進んでいる。
俺の思いつきで組むことになった仙道と道を切り開いている……つもりだったのだが、滅茶苦茶後悔している。今すぐ強がった過去の自分の口を塞いで、「よし!郷田と仙道で頑張ってくれ」と言葉を訂正してこんなにズタズタにされている事実を無くしてしまいたい。
仙道はものすごい強い、それが仲間になればよくわかる。
狭い空間でも華麗に武器を振り回し、暗い場所でも的確に狙いを定めてフェンリルの射撃を狙いやすいよう敵を誘導するように立ち回っている。
敵や味方をよく観察し、癖を理解して即興で合わせてくれる……直感で動くバンとは違って、戦いの配分の仕方は、周りに配慮してサポートに徹するアミに近いのかも知れない。
だが、それ以上に仙道は言葉がキツい。
標的を外せば嫌味を言われるし、俺が動こうとすればもう終わってる。お荷物だ、邪魔をするなと思いが詰まったプレッシャーを時々感じる……仙道以上に一緒に戦っていて「やりづらい」と感じた仲間はいなかった。クセがある、という言葉だけで片付けられない圧を感じる。
「せ、仙道……このまま進めば梯子があるらしいから。そこまで頑張ろう……な?」
場を和ませる意味合いも兼ねて、言葉を選びながら慎重に話しかける。でも仙道は鋭い目で俺を睨むだけで、これと言って返事はせず再び足を進めた。
後から駆け寄ってきたアミと郷田が、勝手に行動する仙道に呼びかける声もお構いなしに振る舞っている。
「なんだよあいつ……妙に張り切ってんな。気にすんなカズ、よかったぜ」
俺の肩を叩いて郷田から精一杯の励ましのエールを貰った、ちょっとだけアミからの言葉も期待して鼻の頭を擦った。
でも俺の期待を裏切って横を通り過ぎ、仙道のジャケットを掴んで引き留めてなにやら強い口調で責め立て始めた。
「仙道!ひとりで勝手に歩かない、あとカズに酷い言葉使わない!コミュニケーションくらいちゃんと取りなさいよ」
「知るかよ、俺は俺がやりたいように――」
「馬鹿!駄目に決まってるでしょ!ちゃんと仲良くやりなさい、ほら戻るのよ」
まるで狂犬のリードを引く飼い主のように、仙道のジャケットを引っ張って連れ戻してきた。強制的に下がる事になった仙道は、ギロリとアミを睨むものの不満を口にすることもなく、また目線を他所に逸らした。
「なんか……犬と飼い主みたいだな。ハンドラー……だったか?アミは飼い主っぽいな」
空気の読めない郷田の余計な一言が炸裂する。そのせいで四人の張り詰めた緊張感が一気に変わり、言葉では表せないような複雑な空気へと変わった。
「な、なに変なこと言ってんのよ!そんなわけないじゃない……ねえ仙道」
「……ん?なんだ、なんか言ったか?」
下手に取り繕うとして逆に慌てふためくアミと、話を聞いていなかったせいできょとんとしてもう一度聞き返そうとする仙道……なんだ、仙道ってあんな気の抜けた顔するんだな。そんな感じで接してくれれば怖くないのに。
敵地だというのに、いつも通りのじゃれ合いについ頬が緩んでしまった。
「とりあえず、サポートありがとな仙道。お陰でやりやすいよ」
せっかく戻ってきた仙道にさっきもお礼を言い損ねていたので、あまり乗り気ではないが感謝を口にした……実際助けてもらっていたからな。
「なら真面目にやれ、次はそのニヤケ面が出来ない位。切り刻まれたくなければな……」
相変わらずの口の悪さをひけらかし、またそっぽを向いた。今……確実になったことがある。俺は仙道が苦手だ、やっぱりウマが合わない。LBXプレイヤーとしては凄いけど、人としては終わってる。なんでこういう奴が強いんだろうな、俗に言う生まれ持った才能って奴なのは分かってるけど……落差に凹むよな。
軽い雑談を終えて、俺達は再び暗い道を進んで、深い場所まで降りていく。
曲がりなりにも連携を取りつつ活路を切り開いて、レックスが指し示したルートを辿っていく。仙道に……滅茶苦茶な悪態をつかれつつ、なんとか堪えて目的地に近づいていた。
扉を開き、中間地点であると思われる開けた場所に出てきた。なにかの操作盤とガラス張りで工場内が一望できる窓がある……外を見れば流れ作業で機械がなにかを作っているのが見えた。
なにかの製造ラインのようだが、遠くからだとなにを作っているかわからない……どうやら小さいパーツのようだし、肉眼では確認がしにくい。
「随分と大層な設備だな、奴らは一体なにを作っている?パーツの小ささの割にかなり広い範囲を使っているな……」
仙道が興味ありげに機械を眺め、考察を呟いている。アミと郷田は動きそうなパネルを見つけ、手がかりがないかと慎重に操作している。
俺はというと、仙道の隣に並び。同様に工場内の光景を眺めてみる……やはり肉眼では無理か、ならば――。
「ちょっとフェンリルで見れないかやってみる」
取り出したフェンリルでスコープを覗き、ピントを合わせ拡大してCCMに内容を映し出させた。
そこにはかなり小さいパーツを溶接なのか、分解なのか……とりあえず同じ作業をずっとしている機械が並んでいるように見える。
LBXのパーツかと見間違う程に小さく、多分もう最後の段階まで来ている……知識がないから分からないけど、なんとなくそんな感じに俺は見えた。
考えに耽っている仙道にも映像を見せてみたが、やはりこれだけではなにを作っているか予想など立たず。ふたりして眉間に皺を寄せただけだった。
「エターナルサイクラーとか立派なもんを匿ってこれを作る……なんか意味があるんだろうけどな。仙道、なに作ってるか予想とか立てられないのかよ」
「俺はその道には疎くてな、予想も立てにくい……その映像、保存は出来るか?後で頭のお硬い連中にでも送ってやれば解析してくれるかもな」
「送ったら俺達がここに居るってバレちまうだろ?……どうせろくでもないもんだろうけど、一応保存はしておくよ」
まあここで言い合っても結論は出ない、とりあえずフェンリルの映像を保存した。アミ達の所へ行こうと振り返ると、俺達が入ってきていない方の扉が開いていて、そこには見慣れない人物が立っていた。
「おや、こんな所でこそこそと……美しくないね」
「う、うわぁ!?見つかった!」
俺の声にバラバラだった全員の視線が一点に注がれた。
金髪を頭の上で束ね、裸体にダウンベスト、そして右目に眼帯……郷田以上に攻めた着こなしをしている。俺達と同世代っぽいそいつはまるで穢らわしい……または憐れむような目でぐるっと俺達を観察した。そして白い歯を見せて、かなり上から目線な態度で口を動かし語りだした。
「こんにちは薄汚いネズミさん、ダディが言っていたのは君達のようだね……まさか四匹もいるなんて」
「て、てめぇは――」
身を乗り出してアミを隠し、素性を問いただした郷田をちらりと見て、そういえばそうだと目を閉じてまた言葉を続ける。
「『神谷コウスケ』、神谷重工の会長『神谷藤吾郎』の息子さ。ダディに君達を足止めするよう言われて来たんだ」
仙道以上な鼻につく喋り方でそう言い切った、自分はコウスケと名乗ったそいつは。まるで壮大な物語を語るかのようにゆったりとした口調で話を続けた。
「『グラビティポンプ』の製造はもう終わっているというのに、ここまで来るとは驚いたよ……でも、『ドングリ』がこれだけ製造されているから。君達が今更なにをしたって『フェアリーテイル計画』は止められないのにね」
「フェアリー……テイル計画って何?」
「なにも知らないのに、敵地に乗り込んだというのか。哀れだね」
アミの疑問に神谷コウスケは鼻を鳴らしてゆっくりと歩みを進め、ポケットから取り出したDキューブを投げて展開させた……戦えってことか?
「時に、人には天から与えられた才能がある。努力なんかじゃどうしようもない『センス』というものがね」
ポケットからCCMを取り出して、まるで舞台に立った役者のような立ち振る舞いで俺達に持論を語る。
「僕にはそれがある……何故ならば、僕は神に選ばれた男だから」
「なにを言い出すかと思えば、下らない……シェイクスピアの戯曲でも暗唱するステージとして選ぶのには、かなり手狭じゃないのか?」
仙道の挑発的な言葉なんか耳にも入れず、神谷コウスケは自身のLBXを取り出した。
純白の機体をベースに金色のラインが入っており、二本の角と大きな翼が特徴的で神々しい……そう言ってしまいそうになる圧倒的なデザイン。すごい、素人目から見てもかなりのハイスペックなLBXだぞ。
「四匹まとめて掛かってきなよ、相手してあげるから……まあ、薄汚れた君達では、僕に触れることすらできないだろうけどね」
「舐めやがって、破壊されても文句言うんじゃねぇぞ。いくぞ!」
神谷コウスケの言葉に感化され、郷田の合図を皮切りに、それぞれのLBXを取り出しDキューブの中に投入する。神谷コウスケもそれに続いて、純白のLBXを投入する。
ゆったりとDキューブ内に舞い降りたその姿は投入というより、「降臨」と表現するほうがいいのかもしれない。ふわりと地面に足を付け、持っている剣がピンクのネオンカラーにギラリと光りだした。
「さぁ……君達に世界のルールを教えて上げよう。『ルシファー』!」
神谷コウスケが展開したDキューブは『峡谷』。夕日に照らされたようなジオラマの中、川の途方もなく長く強い流れによって形成された、自然界で出来た絶壁がある……そんな世界観をイメージしたジオラマだ。
その一番下、川の流れるその側で機体から電流が流れ。もう動かなくなったハカイオー絶斗が横たわっていた。まだ熱が逃げきっていない胸部から煙を上げたまま、ブレイクオーバーしてしまっている。
「畜生……こんなはずじゃ」
CCMから顔を上げて歯を軋ませながら、恨めしそうに神谷コウスケを睨む郷田。対する神谷コウスケは、事切れたハカイオー絶斗をゴミでも見るかのような蔑んだ目線を向け、期待外れや退屈だと言いたげに欠伸を漏らしていた。
「プロメテウスの技術ってのはこんなもんなんだね、大したことなかったよ……君のお父さんに言っておいてくれ。「三流企業」って」
崖の上にいるルシファーは、満身創痍なフェンリル達を見下ろし。まるで自分が本物の神様であるかのような圧倒的な不気味さを放っていた。
郷田がやられたのはほんの一瞬の出来事だった。先陣を切るように前に突撃して、大振りな一撃を振るった。
だがルシファーは剣だけで余裕で受け止め、その場から一歩も動かずにハカイオー絶斗の猛攻撃を流し続けていた。痺れを切らした郷田が『
俺が瞬きしている間にハカイオー絶斗の身体は傷だらけになっていた。なにが起きたか理解する前に、ルシファーが元の位置に戻ったほんの小さな振動だけで傾いて。遥か下の方へ真っ逆さまに落ちてブレイクオーバーとなった。
「郷田が……あんなあっさり。俺達に勝てるのかよ」
CCMを握る手に力が入り、小刻みに震え始めた。これが武者震いで気持ちが抑えられない……そんな言い訳が出来る事もなく。考えが滝のように流れ出し、恐怖が口から漏れ出してしまった。
ライフルの銃口すら揺らいでしまいそうになるその横を黒い影がふたつ通り過ぎ、佇むルシファーに切り掛かる為に飛び上がったのが見えた。
「お高く止まらないで頂戴、仙道!」
「ああ、切り刻んでやる!」
ナイトメアが杖を空中で構え、石突の部分でルシファーの懐目掛けて一気に突きをし。その更に上に飛び上がったパンドラが体を矢のように構え、飛び膝蹴りをお見舞いすべく急降下を始めた。上と下で挟み込んでいく作戦か。
「ふぅん……これは中々」
攻撃が見えているのに動こうとしないルシファーに、両者の攻撃が近づいた。これならいける!そう思って顔が綻んだ、そして目の前の神谷コウスケがニヤりと白い歯を見せジン以上の指裁きでCCMを入力し始めた。
するとルシファーは構えを変え、ナイトメアの突きを剣で受け止め。パンドラの飛び膝蹴りを盾で弾き飛ばし、その勢いのまま剣を振るい上げナイトメアを地面に叩き落とした。
ルシファーは何事もなかったかのように優雅に俺達を見下ろしたまま……強烈な攻撃を前にほとんど動くことはせず、まるで別次元の存在のように思えてしまう。
「なんて……パワーなの、ハカイオー絶斗以上ね。それに加えて目で追えないスピードなんて」
吹き飛ばされただけで遠くの壁にめり込んだパンドラが、体のあちこちから漏電させつつなんとか立ち上がる。握っていたダガーをなんとか持ちつつ膝を付きながらもまだ立とうとしている、そんな様子をみて次の獲物を決めた神谷コウスケがCCMを確認する。
アミがやられてしまう!そう思ったら無我夢中でフェンリルを操作し、当たるかも分からないルシファー目掛けて引き金を引いていた。エネルギーが凝縮したビーム弾がまっすぐ飛んでいくものの、弾道に気が付いたルシファーは剣を薙いだ。
ブゥンと剣を振り下ろした音と、激しく衝突する音と共に真っ二つになったビーム弾は、勢いそのままに空中に消えていった。
「な、そんな……」
「ん?今なにか飛んできたかな、ジオラマに虫でも居たのかな?最近のDキューブはリアルなんだね」
ほとんど動いていないのに、多方面からの攻撃を全て捌き切っている。郷田の必殺ファンクションも、アミ達の同時攻撃も……俺の狙撃でさえ。
さっきからずっとそうだ、ルシファーはほとんど動いていないのにこの場にいる誰よりも強く、圧倒的であると見せつけてきている。なんなんだよ、イノベーターにこんな化け物が居るなんて聞いてねえよ。ジン以上に強大で人間離れしている、まるで……魔王だ。
「お高く止まりやがって、お望みならば何通りのやり方でもいたぶって貴様を殺してやろう」
「ふぅん、今度は君なのか……お気に召すまま」
また立ち上がったナイトメアがルシファーに単機で攻撃を仕掛ける、仙道が得意技の分身攻撃を披露しつつ接近し、三機同時に殴りかかっているかのように飛び上がる。でもルシファーは仙道の攻撃にビクともせずに剣で力を逸らし、時に盾で防ぎながら凌いでいる。
肉眼でなにをしているか、どうやったらそんな操作が、どんなカスタマイズをしているかなんて。凡人の俺には理解すら出来ない、まるで異次元の戦いを見せられている気分になってしまう。
神谷コウスケの操作はもちろん、すぐ横でCCMに齧りつく勢いで見ながら壊れるんじゃないかって勢いのまま、ボタンを殴るように押す仙道に圧倒され息を飲んでしまう。
「すごい……これが。『箱の中の魔術師』の……本気なんだ」
今が命がけの試合じゃなきゃ、仙道がどうやって強くなったか是非聞いてみたいもんだ。
でもそんな能天気に考えてしまっている俺には目にもくれず、歯を食いしばって。普段のクールで気取った立ち振る舞いからは、とても想像できない程に泥臭く、汗を滲ませる必死な姿に見入ってしまう。
だからだろう、こんな時なのに。今までの仙道への疑問が色濃く浮き上がってしまうのは。
「君との戦いは思ったより楽しめそうだよ……でも」
CCMの手を緩めることもなく、横目でアミを見る。目が合ったアミの肩がビクッと跳ね上がったのを確認すると、杖を振り上げたナイトメアを盾で弾き飛ばし。下で今にも倒れそうなパンドラを見つけ、ようやく地面から足を離し空中に身を乗り出しゆっくり下降を始めた。
「まずは邪魔者を消さなきゃね」
「アミ避けろ、俺が守るから!」
地面に影を落とし、真っすぐパンドラに降り立つルシファーに抗う意味も兼ねてがむしゃらに引き金を引いた。
しかし俺の攻撃は、見もしない癖に完璧に剣で弾かれて近くの岩場に虚しくめり込むだけだった。
ついに弾切れを起こし、急いでリロードしようにも既にルシファーはパンドラの前に降り立ち、淡く輝く剣を高く振り上げた。
「サヨウナラお嬢さん、次は君の番だよ」
「アミー!」
リロードを終えたスナイパーライフルを構え、照準も合わないまま引き金を引いた。放たれたビーム弾がルシファーに真っすぐ飛んでいく、でもわかってしまう……この弾丸はルシファーが剣を振り下ろすまでには間に合わない。その絶望的な事実に思わず目を閉じてしまった。
金属を切り裂く鈍い音がジオラマに響く、そのすぐ後に電気が漏れ出して火花を散らす音が続き。壁に弾丸がめり込む音とアミの縋るような声が響いた。
「仙道……どうして?」
恐る恐る目を開ければ、俺の予想を上回る光景がそこにはあった。
ルシファーとパンドラの間を遮るようにナイトメアが立っていて、右肩に刺さった白刃を、武器を捨ててまで両手でがっちり掴んでいた。
「どこに行きやがる……お前の相手は俺だろ、逃がさねえぞ」
珍しく荒い言葉を選び、CCMではなく神谷コウスケを睨む仙道が居た。
ガッチリと握ったナイトメアの掌から、バチバチと花火が散り始めている。誰の目から見てもナイトメアがもう駄目だとわかる程にボロボロだ。そこまでしてルシファーと戦いたかったというより、アミを傷つけられたくない……そういう行動にしか見えなかった。
「なんで、そんな足手まといを庇うんだい?」
「目の前で切り刻まれるのが許せなくてね……俺以外の、お前のようなペテン師にはな」
なにかを察したのかは分からないが、ルシファーは剣から手を離し、屈んで再び空中に舞い上がった。そして背中に生えた翼を大きく開き始め、その翼にエネルギーを溜め始めた。
「なんとも美しくない……なら、ここで終焉と行こうじゃないか。ルシファー!」
神谷コウスケの掛け声と共にルシファーは更に輝きを増し、ジオラマの中が、目も開けられない程の光で埋め尽くされ。俺達は潰れないよう目を覆うことしかできなかった。
あれが必殺ファンクションだったのかさえ分からないまま、俺達は神谷コウスケに惨敗した。そのまま閉じ込められ、今に至るってことだった。