星と魔術師   作:ワンダ・プレイア

55 / 55
それから、これから

「……という訳で、私達。付き合いましたって話になったの、色々みんなには心配かけたわね」

 

 ミソラ商店街の二階にあるカフェテラスに、いつものメンバーを集めて雑談をしながらちゃんと報告をしているとある日の昼時。

 

 特にこれといったやることもないのに、理由なく声を掛けられたから集まったって感じ。

 

 なのでせっかくだからと仙道との関係を話してみた、ミカは素直に喜んでくれたし、きっとみんなだって……と思っていたのは数分前。結果は――。

 

「アミが……仙道と……」

 

「おいアミ、あの野郎に脅されたのか?そうじゃなかったら、彼女置いてひとりA国行く馬鹿がどこにいる」

 

 コップを持つ手が小刻みに震え出したバンと、信じられないと言いたそうに直球な酷い仙道への評価をひけらかす郷田。元から全部知っていて、観客みたいな態度でコーラを飲むカズがいる……そんなおかしなことなのかな?

 

 見ての通りであまり歓迎はされなかった、一応最後のひとりに視線を向ければ、大きく肩がビクつきながらもお祝いの言葉をくれた。

 

「そうか……確かにいいコンビネーションを披露するとは思っていたが。その……うん……おめでとう……アミさん」

 

 気まずさにカップを持ち上げて、言葉の続きをコーヒーと一緒に飲み込んだジンも信じてはくれない。こっちに用事があると一旦帰って来たらしく、丁度いいからとバンが誘ったらしい。

 

「ひっどい!ジン以外おめでとうの言葉もないの!ちょっとは祝ってよ!」

 

「諦めろよアミ、これが世間での仙道の印象だ……前にも言ったけど、彼女になったならずっと付いてくるからな。ま、お幸せにって奴で」

 

 コーラを飲みきったカズが悪態をつきながらも改めて祝福してくれた。でも全然嬉しくない、カズの癖に皮肉っぽい言い方までして。

 

「もーなによ、LBXで面白い話があるって誘ったのはみんななのに!」

 

「正確にはカズからだったね……なんなの、面白い話って」

 

 バンにすら理由を伝えていないらしいカズは、得意げに鼻の頭を掻いてから頭の上で腕を組んで余裕そうにしている。その意味は分からないけど、なにかを待っているような気がした。

 

「そうだな、まだちょっと時間が早いんだよなぁ……」

 

「というと、誰か待っているのかい?今日は休日と言えど近くに催し物もない、開催中のLBXの大会もない……となれば人を待っているんだね」

 

「え、あ。ちが――」

 

「分かった!拓也さんだろ、それか八神さんだな。なんだよ……ただのシーカーの集まりだったのか、最初からそう言えって」

 

「もしかして、父さんが言っていた最新型のLBXの話!?うわぁー!楽しみだなぁ」

 

 ジンの放った推理にカズが反応したせいで、郷田とバンが早押しクイズの解答者みたいに勝手に結論付けをしてしまった。

 

 なにかを言おうと慌てて席を立ったカズを冷ややかに見ながら、カップに残っていた紅茶を飲み干した。

 

「特になにもないなら、私帰るね……テストが近いから勉強しなきゃ」

 

「おいおい、一番にこの話を聞かせたい人物が帰んなって。そんな短気だと、仙道に愛想尽かされるぜ?」

 

 カズはただ、いつもの軽口のつもりだったのかもしれない。余計な一言が余計過ぎるのはいつもの事だけど……さすがに見過ごせず、出来る限りの怒りを露わにして言い返そうとした。

 

 でもこれは違うって思って考えてみろよ、もっと有効なものを思いついてしまい小さくほくそ笑み、ポケットからCCMとパンドラを取り出した。

 

「ちょ、ちょ!ストップ!悪かった言い過ぎたって。一旦落ち着け――」

 

「減らず口のカズこそ、自分のLBXの心配でもしたら?時間潰しが必要なんでしょ?なら相手してあげる」

 

 青ざめていくカズが、バン達に助けてと小声で囁いていたけど。バンが見ないようにして、ジンは目を瞑って知らんぷり。郷田に至っては席を立って、お店を出てDキューブを投げて展開させた。

 

「……カズ、腹を括れ。骨は拾ってやる」

 

「ちょっと、まって俺――」

 

「さぁバトルよ!パンドラでギッタギタにしてあげる!」

 

 なにかを言いたげに口が動いたけど、観念したようにDキューブ内にフェンリルを投入した。私も続いてパンドラを入れる。

 

「勝負はストリートレギュレーション……ズルはしてないか俺が見といてやる。頑張れよ、アミ」

 

「もちろん!これでも仙道に鍛えられてるから、カズに五連勝……いや十連勝決めちゃうわよ!」

 

「だ、誰か助けてくれー!」

 

 なにもまだ始まっていないのに、泣き言を口にしたカズの声に続くように。『バトルスタート』の音声が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ジオラマの中を縦横無尽に駆け回るパンドラを狙い、引き金を引き続けるフェンリル。今回の勝負では上手いこと隠れられたフェンリルに、どこかから狙われてしまっている現状だ。

 

 ここで逆転できたら凄いけど、それでも一発食らってしまえばそれまで……そこは気をつけなきゃ。

 

 なにかが動く音と、ビーム弾が発射される音が聞こえた。どこにいるかは分からないけど、どこを狙ったか分かれば避けられる!

 

 だからその軌道を読むことができて、頭部を狙ったであろう弾丸をスレスレでなんとか躱せた。

 

「今のは、高所からじゃない……平行に弾が飛んできたって事は……そこね!」

 

 絶壁が広がるジオラマの、とある岩陰に隠れたつもりだったフェンリルを見つけた。狙いを定めて踏ん張りを効かせ、思い切り跳ね上がった。

 

「飛んだ!?的になりにいくようなもんだろう……よ!」

 

 フェンリルは岩陰から出てきて、空中に漂うパンドラに照準を合わせた。きっと、空中で避けにくい場所なら上手く狙えるだろうって考えたから。でも甘い、私はそんな単純じゃないの!

 

「的になったのはどっちよ、必殺ファンクション!」

 

 空中に飛び出したのなら、油断し切ったカズはフェンリルを岩陰から出す……そう読んで正解だった。

 

 両手に青白いエネルギーを溜め、ラッシュで撃ち出し、フェンリルが引き金を引くよりも先に繰り出していく。パンドラの必殺ファンクション『蒼拳乱撃』はフェンリルに見事直撃し、近くのジオラマを巻き込んで爆発した。

 

 地面に着地して、土煙が晴れるまで様子を伺う。でも待つまでもなかった、カズがCCMから目を離して肩を落としたのが見えたから。

 

「本当に十連勝決めるなんて……もう……勝てないって……」

 

 段々と晴れていくとフェンリルが倒れていて、その後青白い光を放っていた。

 

 唐突に宣言したとはいえ、宣言通り達成出来た喜びに小さくガッツポーズしてしまう。

 

「動きが良くなってんじゃねーか、仙道によっぽど扱かれてんだな。あいつが人に教えるなんざ、想像なんか無理だけどよぉ……」

 

 パンドラ達を回収して、Dキューブが縮小されたのを回収した郷田に褒められた。

 

 腰に手を当てて「フフン」鼻を鳴らすと、観客だったバンとジンからも労いの言葉が飛んでくる。

 

「ほんとに決めちゃった、少ない動きで勝負を決めにいく……段々ものにし始めたんだ!すごいね、アミ」

 

「ネオアポロンでの動きよりだいぶ成長したね。この調子だと、僕でも勝てるかどうか……」

 

「ちょ、流石にお世辞が過ぎるわよ。そんな気遣い出来るなら、最初からやってよ」

 

 ムッとしつつ頬が膨れてしまうものの、あのバンやジンに褒められたのが嬉しくてちょっと顔が赤くなってしまう。ふと意識しなかったけど、つい空を見上げて考えてしまう……あいつは今、何してんだろうって。

 

 今頃神谷コウスケとか、色んな有識者に扱かれているのか。時間帯的に眠っているのか、はたまた時間も忘れて作業に没頭しているのか……たまに電話は掛けてみるけど、タイミングが悪くてメールのやり取りしかしていない。

 

「元気かな……」

 

 カズやみんなは集まって次のバトルの話を始めたけど、私はどうしても考えてしまう。

 

 あと半年近くあいつの顔は勿論、声も聞けるかどうか分からない……なのにこうして待っているだけってのも辛いものね、もしかしたら向こうで美人に言い寄られてるだなんて。いやあいつに限ってそんなことは――。

 

「浮気とかしてたら、許さないんだから……」

 

「するかよ、俺に似合う女がA国に居てたまるか」

 

「え?」

 

 聞き覚えしかない声に振り返ろうとしたら、顔面を埋め尽くすような柔らかいなにかに覆われた。

 

 突然の出来事の連続で、混乱しながらもとりあえず目の前のものをどかそうとするけど、謎の力で外れない。

 

 ひとり悶絶しながら格闘していると、後ろから驚いたような息づかいが聞こえてきた。

 

「せ、仙道!?……なんで、確かA国に行ったんじゃ」

 

 バンの言葉になんとしても真実を知りたくて、無理やりに剥がして上を見上げた。

 

 いつも通りのすまし顔で、気だるそうに私を見下ろして、メタモの大きなぬいぐるみを持っているあいつが居た。

 

「あ、あれ?おかしいわね……すごいわね最近のホログラム、リアルね」

 

 試しに腕に触れてみると、布っぽい感触を感じる。確認するように顔や全身をベタベタと触ってみても本物っぽい……知らない間に科学が進化していたのね。もっと勉強しなきゃ。

 

「感触も本物!科学の力ってすっごい!」

 

「寝言は寝てから言うべきだぜ?まあその……ただいま、アミ」

 

 ちょっと照れくさそうに、それでいて素直な仙道が目の前に存在している。半年間会えないとか、置いていってごめんとか、そんな事を謝ってA国に旅立った筈なのに。

 

 なんでとか、どうしてとか、色んな言葉が出てくるのに。声に出したのはもっとありきたりで、いつも通りの言葉だった。

 

「か、帰ってくるなら……そう言いなさいよぉ……お、おか……おかえ……うわぁああああん!!」

 

 ほんと、私は素直になれない。でも、そんないつも通りの悪態をつけるのが嬉しいって思ったら涙が止まらなくなりそう。

 

 酷い顔をしているかもだから、隠すように仙道に抱きついて。逃さないように、仙道の背中に腕を回した。

 

「ただいま、電話に中々出られなくて悪かったな……泣くなよ。もう居なくなったりしないから」

 

「おい仙道、カレンダーはA国には無いのか?向こうじゃ半年ってのは、時間の流れが違うのか?」

 

「A国にもカレンダーはあったぞ、そのガサツで芸がなくとも悪態はつけるようになって嬉しいな。郷田ぁ」

 

 郷田との憎み合いも変わらず、郷田が歯を軋ませて睨んでいるのだろう映像が見える……今は見えないけど。

 

「仙道君……だよね?みんなの話じゃ君は……」

 

「ん?海道ジンも来ていたのか、聞いていた話と違うな。おい、どうなってる青島カズヤ」

 

 仙道から飛び出した意外な人物の名前に、私も含めて一斉に視線が集中した。

 

 当のカズ本人は、急に話題を振られてあたふたしつつ言い訳を話しだした。

 

「ジンはたまたま、バンが誘ったんだよ。サプライズで驚かせたいって案に乗ってやっただけなのに、俺が悪者みたいにみんなで睨むなって……」

 

 小さくなっているカズはともかく、仙道が本物なら……なんでここに居るの?

 

「それで結局なんで帰ってきたの?話を聞く限りだと、帰れてももうちょっと先だったよね?」

 

 バンの不意の質問に、仙道は嫌なものを思い出したようで眉間に皺が寄って唸りだした。

 

 抱きついたまま見上げている私の頭をちょっとだけ撫でて、動きにくかったからか腰に回していた手を解いて、自分の代わりにメタモのぬいぐるみを抱かせてくれた。結局このぬいぐるみはなんだろうと頭の隅で考えてたら、仙道が事の経緯を語り始めた。

 

「神谷コウスケは、ロクデナシだった。それだけ」

 

「それだけって……なんだよ、お前ら喧嘩でもしたのかよ。ははーん、似た者同士だからな」

 

「あんな!……送った書類もまともに読んでない奴となんか一緒にするな!あいつ……俺を……高校生だと思ってたらしい……あの野郎、覚えてやがれ。いつか呪い殺してやる」

 

 顔を両手で覆い、やっちまったと踞っていた。

 

 郷田が言った似た者同士ってのはきっとそうなんだろうけど、あの神に選ばれたっていう神谷コウスケがねぇ……いい加減そうっちゃ確かにそう見えるけど。

 

「その……つまり、年齢制限が掛かってカリキュラムに参加出来なかった。そういう事なんだね……神谷重工には、確かにLBX工学を学べる合宿システムはあるが……それは、あちらに全責任があるだろうね」

 

 呆れつつも補足を入れてくれたジンのお陰で真相が理解は出来た、でも酷い話ね。色々覚悟してA国に行ったってのに、年齢制限でなにも学べずに帰ってきたなんて……。

 

「でも、無事に帰ってきて良かったね!他にはなにをしたの?オメガダインとか行ってきたの?」

 

「ほとんど神谷と箱詰になってソロモン……俺が作りたいLBXの設計をしていた。一昨日ようやく解放されて、観光ほっぽり出して慌ててお土産を買い漁った……青島カズヤ、成功とは言えんが労力の報酬だ。夜更かしはお互い程々に……な!」

 

 さっきまで引きずってきたキャリーケースからなにかの紙袋を取り出して、カズに投げて渡した。男の子特有の反射神経の良さでちゃんと受け取り、早速中身をみていた。

 

「おうサンキュー!深夜に電話掛かってきた時はチビりそうだったぜ……『バンボール戦旗』の海外版パッケージ!『イナビカリナインズ』、『クトゥルフの掛け時計』まであんじゃん!ナイスセンス!」

 

 お目当てのものに目を輝かせるカズを筆頭に、バンと郷田には海外版のLBXのフィギュアと色の濃いお菓子の袋を渡していた。

 

「その頭のボタン押せば七色に光る……要はゲーミングブルド。そっちのは色んな味のポップコーンが電子レンジで簡単に作れる奴だ、目についたから選んでおいた。感謝しろよ」

 

「……急に俺達のだけやる気下がってねぇか?」

 

 早速ゲーミングブルドを光らせて「カッケー!」喜ぶバンを横目に、ボソリと「親父は知ってんのかな」と言って色んな角度から観察を始めた郷田。

 

 なんだかんだ言いつつ喜んでいるようで良かった、変なもの買ってて喧嘩するんじゃないかってちょっと思っちゃったから。

 

「で、海道ジンは……知っていればなんか買ってきたんだが。とりあえずこの茶菓子いるか?ふらっと寄ったパン屋に売ってたんだ。紅茶味のパウンドケーキ、好きか?」

 

「い、いいのかい?……すごく嬉しいよ。君の気遣いに感謝する、ありがとう仙道君」

 

 綺麗に個包装されたケーキをジンに渡していてちょっと驚いた、仙道がジンにも気を回している……成長しているのね。

 

 そしてきっと次は私の番。私は彼女だもの、みんなよりはちょっとだけ良いものの筈。胸の中に収まったメタモのぬいぐるみをさわさわと触って落ち着こうとしてみる。

 

「アミは……ちょっと待ってろ」

 

 本格的に荷物を探すのか、腰を据えるのに道の端まで移動して荷物を漁り始めた。後ろから覗けば綺麗に整頓された衣服の下から、大事そうにしまっていた小包を取り出した。

 

「ほら、お前は好きな方を選べ……そのメタモぬいぐるみとセットでどっちかやるよ」

 

 言われるがまま受け取って、メタモぬいぐるみを抱きかかえたまま開けてみる。中から出てきたのは意外にも可愛くて、でも仙道らしいセレクトの物だった。

 

「こ、これって!」

 

「それを探し回るのに苦労したな……A国(あっち)じゃ転売されるくらい生産量が少なかったらしい。神谷を連れ回して一日中店を梯子してようやくだ」

 

 出てきたのはこの前一緒に観た、『ボロ切れ魔法使いと星の少女』の魔法使いと少女のぬいぐるみ仕様のペアキーホルダーだった。凹凸をはめ合わせてつける小さなボタン……スナップボタンがそれぞれについていて、手を繋げる設計らしい。

 

 マンタもそうだったけど、こういうマスコット系好きなのかな?可愛い、本当に可愛くて選べって言われてもどっちも良すぎて迷っちゃう。

 

「アミのだけ本気出しやがって、仙道の癖にベタ惚れかよ……」

 

「ああ、だから行きたかった観光地を全部キャンセルして血眼になった。結果が報われて、アミが喜んでくれるなら……俺は満足だ」

 

 茶化す意味も兼ねて煽った郷田だったけど、荷物を片付けながらも真顔で反論した仙道に今まで見たことない顔でドン引きしているのを横目に悩みに悩んだ。

 

「……どっちもにするか?」

 

「しない!お揃いがいいの!」

 

 結局私は少女の方を選んで、もう片方を仙道に返した。

 

「せっかくだからCCMにつけちゃおうかな、これでいつでもあんたと一緒ね」

 

「そうか……お前がそれでいいのなら」

 

 もう片方の魔法使いを自分のCCMにつけて満足そうに眺めていた、メタモのぬいぐるみを抱いたままだと付けにくいからお願いしてつけてもらった。ティアラの一部がクリアパーツなのか、太陽に反射してキラリと光っていた。

 

「さて……仙道、電話してくれた通り。もうバッチシ準備オッケーだぜ!」

 

「そうか、手際がいいな青島カズヤ。お前とは今後も仲良くしたいもんだ」

 

 褒められて嬉しそうに頭に手を置いて表情を緩めたカズとは反対に、一瞬目を細めてニヤリと口元をつり上げた仙道を見てしまった。

 

 多分カズは、あの那須家さんや森野達みたいな目に遭わせるんじゃないかと考えが過った……やっぱ仙道はどこまで行っても仙道のままね。

 

 咳払いをして注目を集め、ジャケットの内ポケットから分厚い封筒を取り出して掲げて声を張り上げた。

 

「喜べお前ら。あの神谷コウスケが俺達に労いの意味と、俺への個人的な謝罪を込めて幾らか包んでくれた……今日は俺がお前らに、仕方がないが食事を振る舞ってやる……地面に頭を擦り付けてでも感謝の意を示せ」

 

 つまる話、一緒に食事でもって言葉を仙道なりの照れ隠しで包んで誘ってくれた。でも言い方が酷すぎる、ただの煽り文みたいになってるし。

 

 案の定郷田がもう戦闘態勢に入ってるし、バンもジンも呆れて頭を抱えてる……それは仙道を手伝って動いていたカズでさえ同じだった。

 

 でも私は分かる、素直に「一緒に行こう」はまだ言えないけど。仲間に対しての仙道なりの歩み寄りをしているって事が。

 

 でも言い方が悪いので、しょうがないから助け舟を出してあげる。

 

「私、パンケーキ食べたい!甘くてふわふわの!」

 

「ちゃんとメニューにあるファミレスを選んでいる。じゃあ青島カズヤ、道案内を頼む」

 

「オッケー!じゃあ行こうぜ、みんな。俺の後に続けぇー!」

 

「わわっ、待ってカズ!……行こう、ジン」

 

「うん、また君達とハンバーグが食べられるなんて。夢のようだ」

 

「おいこら走るなって!飯は逃げないぞ、待てってカズ!おーい!」

 

 仙道をあんなに嫌っていたのに、知らない間に接点が出来て、頼られて任せられて……仲良くなれた事がカズの中で嬉しかったんだろう。

 

 それがよく分かる軽い足取りでバンとジンを引き連れて歩き出し、慌てて郷田がその後を追っていた。

 

 もう遠い昔の事に思えるような……あのサターンで夜明けに向けて戦った六人がこうしてまた揃った。

 

 当たり前なんだけど、その当たり前がまた帰ってきた事実に、目元にまた涙を溜めてしまいそうになる。

 

「走ったって、幹事の俺が居ないと払えんのにな……」

 

「フフッほんと……みんなせっかちね」

 

 油断し切っていた左手に、仙道が手を伸ばして繋いできた。ビクッと体が震えたけど、未だ慣れない仙道の体温を指先からほんのり感じた。

 

「行こうよ仙道、みんなで。いつもの居場所に」

 

「少し窮屈にはなってしまったが、まあ悪くない所だけどな……なあアミ」

 

「ん?」

 

 名前を呼ばれて顔を上げれば、ちょっとだけ嬉しそうな顔をして優しく微笑んでくれた。

 

「いつも手を引いてくれてありがとう」

 

 恥ずかしげもなく、らしくない爽やかさで急に言われたものだから。私の顔が温度を上げて赤くなってつい顔を背けてしまった。

 

 でも言われっぱなしじゃ嫌だったから、小さく「こちらこそ、ありがとう」と返した。精一杯返したつもりだったけど、正直まだ言いたいことはある……でも満足そうに鼻を鳴らして歩き出した。

 

 キャリーケースを引きずりながらは歩きにくいのかも知れない、でもこの手を離さず優しく握り返してくれているのが、そんな当たり前が目の前に返ってきたのが嬉しくて……見られないようにまた顔を伏せて口角を上げてしまった。

 

 世界を救った私達の、何もないのに、何もかも大切な……この日常は、きっとどこまでも続いていく。

 

 ずっとは続かないかもしれない、いつかレックスのような世界を本気で変えたいって願う大人や、イノベーターよりもっと強い悪者が現れるのかも知れない。だけど、そうであっても。

 

 きっとこの手は、二度と離すことはない……それだけを強く信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 『星と魔術師』

 

      完





 いやったぜ!完結!ここまでありがとう、じゃねばーいw





 そう言えればどれほど良かっただろうか……だって『ダンボール戦機W』に繋がる伏線投げっぱなしにして全部まるっとエンディングってのは宜しくない。でもやってしまいます。

 と非常に無責任なんで腹は切るとして、ここまで読んでいただきありがとう御座います。
 今、蟹めは白いお着物にくるまれて目の前にはよく切れる刀があります、宛ら切腹ですね。
 完結させず逃げた罪で裁かれてしまうのです……自分の力不足を呪います、それにダンボール戦機Wの復習がしんどくて断念しました……アミちゃんはともかく郷田さん全然活躍しないし。ボイスドラマの仙道は仙道じゃないし、カズはムキムキになっちゃうし。
 個人の小言だけど、ミゼルの取ってつけたようなラスボス感はいつまで経っても納得はしていない。深そうなこと言っているようで中身がない、空っぽなキャラクターに「世界を完璧に」なんて言われても……ってなる。AIだとかそんなの視聴者は知らないんだよ、なんであろうとキャラクターが生きていないのなら。自分は惹かれない、だからストーリーもどんどん面白くなくなっていった。だから観ていて正直しんどくて断念しました。


 今後、特に新しいダンボール戦機の話を書き始めるというより。オリジナルのほうに力を注ぐ予定にしたい、戻ってくるとしたらちゃんとした『星と魔術師』の続編を書いて伏線回収したい……にしてはやる気が欠片もない。
 綺麗に終われるんだから、自分はこれで撤退します。投稿当時、にUA2000越えできなかったのが悔いですが、もういい。
 感想来ないし、正直だよなぁって思いながら書いてましたよ本音はね。所詮ネットに上げている以上、認められたいってのは誰だってあるんですよ。慈善事業なんだから、やっぱ好かれたいは滲むんですよ。
 
 それが叶わないのは、ただの自分の実力不足なだけ、密度の高い文章や濃いキャラクター解釈であっても求められてないのならそれまで。
 だとしても、そんな中でもここまで読んでくれたニキ達。蟹の愛に付き合ってくれて本当にありがとう御座いますm(_ _)m
 あなた達が無言であっても読んでくれたから、ここまでこれました。本当にありがとう……。

 
 次はもう少し日の目を浴びさせて上げたいな、だからといって味気ない作品を作るつもりもない。
 でも、うちの子供や愛してやまないカップリングが。誰かに喜ばれるのなら嬉しく、感染病のように心を痛めてくれるなら感無量とばかりに。

 このワンダ・プレイアは、次こそはと諦めることはないでしょう。

 では、またどこかで
 

 よしなに
















 この『星と魔術師』の前日譚である「仙道がナイトメアを手に入れるまで」のオリジナルストーリーを、オマケ要素として9月頃アップ予定です。お楽しみにノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。