チートを手に入れた。
40歳でTSゲームキャラ召喚され、人族の奴隷になり、危うい所を魔王軍に解放され、40年間解放軍に従軍した。大変な目にあった。でもその甲斐あって、解放軍が勝利すると同時に、財宝を持って帰還させてもらえる事となった。ゲームキャラの力も巻き戻されて、私の中で経験値だけの壮大な無駄エネルギーとなるそうだが、健康にはなるという事だし、戻れるだけでありがたい。何より、TSゲームキャラで現代には帰れない。そして、元の時間、元の場所に戻るはずが、ゲームキャラのゲームスタート年齢まで逆行した。
2000年10月31日。15歳の誕生日である。
今私は、中学3年生だ。
高校受験マジかよ。
若返れた喜びよりもまずこの衝撃が先に来た。
率直に言ってチートは嬉しい。嬉しいとも。
若さ! 情報! それで株を買ってガッポガッポ!持ってきた財宝はいらないまである。いやいるけど。
なお、ポーションなどのご都合アイテムはない。その手の便利アイテムは魔王軍で全て使ったし、渡してきた。それでも、魔石だの果物の種だのと得られたものは多い。果物の種は農林水産省に殴られないようちょっと一手間必要だが。
でも高校受験マジかよ。日本語すらおぼつかねーぞ。
男として40年生きてきて、気分もすっかり男だぞ。
中卒スタート確定はちょっときついっす。底辺大卒でも就職きつかったのに。
マジかー。高校受験かー。
初めははしゃいだり慄いたりしていた私だが、現実は厳しかった。
成績はナイアガラの滝の如く下降し、身振りも変わった私を家族は悪魔付きと罵った。
ガチ目のお祓いをされた挙句、3ヶ月後に京都で改めてお祓いをする事になった。
壺が買わされそうで怖いがどれほど主張しても京都行きは覆らなかった。
勉強があると言ったが、元の自分に戻るだけでだいぶ成績が上がると言われた。
いやまあ、確かに今の学力じゃ小学校も卒業できないけども。
小学校一年生に逆行じゃないのだ。高校受験なのだ。私史上一番賢い時期に差し掛かってるじゃないか。普通に無理。
中卒からのバイト生活の場合、株をやるにも種銭が作れない。
しかも私はオタクでお金を結構使う。金銭感覚も大人のものなのでヤバい。ヤバイ。
あと、ゲームや漫画やアニメが受け入れられなかった。
40年もまともな娯楽のない中世ナーロッパにいたんだから、わがまま言うなと自分に対して思うが、それでも私の中の幼児がこれじゃないと泣き喚くのだ。私の感性はすでに令和である。平成の感性は受け入れられない。
財宝にしたって、そのまま換金はできない。頭を使わないと。
でも頭が悪いから困ってるわけで。
人生、早くも詰んだかもしれない。
京都でのお祓いの日が来て、せめて観光を楽しむか、と母に連れられて電車に乗る。
なんと私の遠い親戚らしい。特別に見てくれるとか。いらない。
いらないが、そういえば前回、神主が親戚にいると聞いた気はする。
どでかい神社の中、いくら掛かるのか、戦々恐々としながら入っていく。
着物を着ためっちゃ凄いイケメンが現れ、私は度肝を抜かれた。
イケメンは私をジロジロ見た。
「神隠し。倒れた時、何かあった? 知らない場所で、戦ったりとか」
「なんで知ってるんですか!? へぁ!?」
私は驚いた。診断もそうだが、するっと思ったことが飛び出たのだ。
精神感応の一種だ! 魔法あるんかい! 元から!? 戻る世界間違った!?
慌てて抵抗する。その抵抗に首を傾げるイケメン。本物だこの人。
「守護はある感じかな……? 招かれたり契約させられたりした?」
「全部解決しました。もう招かれはしないです」
「そうなんだ。でも君、力で満ち溢れているから、憑かれやすくなるかもね。お祓いはいい考えだけど、君と関わった神様の所の神社に行くべきだね」
「いえ、すっぱりお別れしたので、もう神様とは関わりないです。義務がなくて悪いものに憑かれないなら、こちらの神様にお祓いしてもらった方がありがたいです」
「了解。じゃあ、兄貴呼んでくる」
「お兄さん。貴方も凄そうですけど」
「俺は神主じゃないの。陰陽師なんてもうないのはわかってるんだけど、神主になると見えなくなるのが嫌でさ」
「はぇー。陰陽師……」
「自らの鑑定、ありがとうございます。晴良様」
「いや。ここで縁を繋げば、なんか弟にいい気がしただけだ」
「弟さん?」
「晴良様は三人兄弟で、未子の晴彦様はご病気なのよ。それより、貴方もちゃんと礼をしなさい」
母は深々と礼をする。私も慌てて礼をした。
それにしても、こっちの世界でも不思議があったとは。神かー。
異世界の神はめっちゃ助けてくれるけど、めっちゃ祟る神だった。
日本の困った時にだけ祈るのが許されるような神とは違う。
なんたって解放軍の黒幕である。まあ、異世界から召喚して奴隷として消費なんてやらかす人族だ。全力で祟られてもしゃーない。最後全ての奴隷に離反されて大虐殺が起きて可哀想な事になってたが、完全無欠に自業自得である。
発端が発端だし、いかなる理由があろうが奴隷は良くないという神のご意志もあって、皆殺しと略奪で更地になったんだよな。当事国は消滅。周辺国が全力で資料を放棄して貢物して平身低頭して、ようやく許された感じだ。
私達、犠牲者にとっては地獄から救ってくれた文字通り救いの神だったけど。
元々、神様が国の危機に勇者召喚を勧めて、その悪用の果てがこうだったらしい。
都合が悪くなってお告げもガン無視し、邪神扱いするもんだから、まあ仕方ないよね。実際に勇者召喚の魔法を提供するようなあからさまにすごい神様と真正面から敵対するとか何考えてんだって感じである。
怒り狂った神様は被害者である私達や、救出に来てた被害国の人も助命嘆願するぐらい徹底的にやった。混血を被害者と扱うか、加害者と扱うかっていう難しい問題もあったが、神様は一旦殺して、本人の意思を聞いてどっちの世界で転生するか問うとんでもなお沙汰を出した。混血ですらそうなので、まあ大体召喚に関わってた人やそれで利益を得ていた人は死んだ。召喚術は国を問わず禁呪になった。
そして、被害者で帰還できる人は慰謝料を持って帰還という形になったのだ。
報酬だけでなく、加護も与えようかと言われたが、私が提案した過ちを起こしてもわかりやすい警告で許してあげるチケットを全員が希望した。しかもこれ、他の神様にも通じるらしい。元の世界に帰って万一その世界の神様の逆鱗に触れても、神様がまーまーして警告止まりにしてくれるのだ。
これ、本当にありがたい。お仕置きされる前に警告を貰えるというウルトラ素晴らしき効力を持つチケットに解放軍のメンバーは大喜びだった。
もちろん、これがあるから悪い事しても大丈夫だなんて微塵も思わない。
ただ、知らずにやらかした時に、軌道修正のチャンスが欲しいだけなのだ。
話が長くなったが、そんなわけで私が他の神様に加護を受けようがお祓いをされようが問題はない。
神様は確かに怖いが、有象無象の悪霊に憑かれるのも怖い。
いうて現代日本だし、悪いようにはならないだろう。この国の神様はもっと温厚って信じてる。少なくとも、一回加護をしたから一生忠誠を誓えなんて言わない。多分。
「お待たせしました。お祓いをします」
これまたイケメン神主さんにお祓いをしてもらい、私はスピリチュアルについて興味を持った。
オカルトについて軽く調べ、受験勉強をし、日常の常識を再習得した。
神隠し中の事については聞かれなかった。
聞くことで引き込まれることがあるらしい。私の場合は大丈夫だと思うけど。
なお、受験はスルッと落ちた。
4月からフリーターとしてバイト三昧である。中卒で仕事を探すのは大変だった。実家ぐらしだし、扶養を超えない範囲にするなら二十歳までは実家に家賃入れなくていいと言ってもらえたが、大人になったら独り立ちするように言われた。パソコンも欲しいし、携帯電話だって欲しい。株の種銭を稼げるのは何時になるやら。とほほ。あっ株の投資計画、というか25年間の未来の出来事については思い出せる限り書いてあるし、今も思い出せる時につけ足してる。
4月1日。ぱちッと目を覚ますと、頭の中で声がした。
《チュートリアル期間を終了しました。獲得条件を満たしたジョブを表示します》
《陰陽師:理論と術式を駆使します。シックスセンス増大》
《神主:祈祷をする事で魔力を捧げ、奇跡を起こします。霊的防御力極大 神以外への感知力消滅》
《祓い屋:自らに宿る力を使って霊を祓います。本来持つ術式や能力傾向が強化されます》
《クエスト:ジョブを入手しよう!》
《オススメ:術式を持っているので祓い屋がベスト! 神主は信仰力、陰陽師は知力が低いので弱体化します》
えっ ジョブが選べるんですかぁ!? この世界で!
でもステータス的に祓い屋一択かぁ……。術式持っているんですかぁ!?
「祓い屋を選びます!」
《祓い屋になりました》
《経験値が反映されました》
《レベルアップしました》
《霊眼スキルを得ました》
《霊丸スキルを得ました》
《結界スキルを得ました》
《霊刃スキルを得ました》
《霊力譲渡スキルを得ました》
《広域感知スキルを得ました》
《付与スキルを得ました》
《物質具現化スキルを得ました》
《物質創造スキルを得ました》
《クエスト報酬:祓い屋入門セットを得ました》
《クエスト:術式覚醒 霊石を使って体内の術式を起動しよう!》
《クエスト:物質具現化スキルで武器を作ってみよう》
《クエスト:物質創造スキルで霊石を作ってみよう!》
《クエスト:霊眼を使ってみよう!》
《クエスト:霊丸を撃ってみよう!》
《クエスト:霊刃スキルを使ってみよう!》
《クエスト:結界スキルで守ってみよう!》
《クエスト:霊力譲渡スキルで他者の術式を起動してみよう!》
《クエスト:周辺を感知してみよう》
《クエスト:お守りを作ってみよう》
《運命クエスト:古の血を引く三兄弟が始まりました!》
《クエスト:晴彦を助けよう》
《クエスト:晴良を助けよう》
《クエスト:晴人を助けよう》
《ヒント:霊力と魔力、神力は互換可能エネルギーですが、違うエネルギーです。魔力の方が若干物質化しやすいです》
多い多い多い。なんかイケメン達困ってるんか。ギャルゲみたいなイベント始まったが。
私はまずお風呂に入って禊とする事にした。
お風呂に入り、ご飯を食べて、元気は十分。一つずつクエストをこなしていく。
クエストをこなせば、ゲーム通貨やアイテムが増えていく。
ゲーム通貨は0になってたのでとっても助かる。
ショップに移動すると、ショップの内容が変わっていた。
地球タグが増えて、そのタグを選ぶと神主や陰陽師が必要そうなアイテムがある。
一番豊富なのは陰陽師アイテムで、特に占い道具の充実が凄い。翻って祓い屋対象っぽいアイテムは少ない。
でも占いアイテムは私も欲しい。意味がなくとも欲しい。
陰陽師のジョブを得られる陰陽師任命書や陰陽師に必要な道具がバッチリ揃った陰陽師パーフェクトセットがあまりにも豪華で購買意欲をくすぐる。なお、神主のパーフェクトセットは祭壇や神棚が付いていて、祓い屋パーフェクトセットは書籍や手芸セットが主でクエスト報酬で既に結構な量、手に入っている。助けるクエストは一年以内に転職させれば良いらしい。おっとそろそろバイトに遅れる。
後ろ髪引かれながらバイトに向かい、バイトを終えると私は早速母にイケメン陰陽師にお礼に行きたい旨を伝えた。
「晴良様ね。陰陽師じゃないけど……。お礼するなら、お祓いしてくれた晴人様にもでしょ。連絡はとってあげるけど、絶対失礼しないでね。晴彦様に果物持っていきなさい。後、交通費は自分で用意しなさいよ」
「はーい。となると一月はバイトしないと駄目かぁ」
「扶養は外れない範囲にするのよ。月八万円までだからね」
「了解」
バイト頑張ったので半月くらいで稼げてしまった。残りの時間はスキルを調べたり術式を調べたりスピリチュアルな事を調べたり悪霊退治的な常駐クエストをこなしたりした。他にも霊石と魔石については作成を頑張り、ペンダントに細工してそこに生成し、バイト中でも寝てても作れるまでになった。
術式については霊獣召喚であり、異世界から召喚してないかめっちゃ焦った。神様に怒られる。調べた所、異世界召喚ではなく私が作った私の一部分的な感じらしい。良かった。本当に良かった。五感共有出来るのでとても便利。
ということでお金も貯まり、イケメン三兄弟救出ギャルゲクエストの始まりである。この世界が元いた「普通の現代」なのかどうか、私には知るすべはない。
マシュマロ
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