お題感想ありがとうございます。
誤字報告もありがとうございます。
しばらく他者視点が続きます。
「郵政民営化か……」
これは日本の資産を売り渡す行為。
そんな事は、わかっている。当然だ。
マスコミを、そして国民を躍らせて、国を売って。
それで何を売るのか。今後10年の平和とアメリカとの友好だ。
それはセンセーショナルでなければならない。
最大限の利益を得て、影響は直ちに出ないようにして。
ここは魑魅魍魎の巣食う魔窟。
日本が日本である為なら、なんだってする。
少し考え込んでいる時に、秘書が声をかけてくれた。
「総理、気分転換に占いなんてどうですか?」
「占い?」
「マスコミからメールが来ています。凄腕陰陽師が宮城の地震を予知を的中させて、北海道の津波を予知していると。9月26日がその日らしいです」
「ふむ?」
サイトを見る。どうということもない占いの中、地震の日付の明記だけが異様だ。
「総理にだけ占いの詳細を教えるそうです。100万円で。1000万円で対策も立ててくれるそうです。もちろん、テレビ局が費用を出すそうです」
「ほう。なかなか面白そうじゃないか。いいよ受けよう。政権を占ってもらおうじゃないか」
直感的に、面白そうだと思った。占いに頼るわけではないが、気分転換にはなるかもしれない。何より、何の根拠もなく日付を明言して100万よこせと言えるのだ。何かはありそうだ。
そうして、その日がやってきた。
陰陽師らしい服装をした、美貌の若者たちがいた。
一見コスプレしているようにしか見えない。だが、目だ。
片方の目が、深淵を見通すような目だと思った。その若者は、軽い口調で喋った。
「すげー早かったな。いや、助かるけど。5年は下積みつもりだった」
「晴良」
「ああ、俺は陰陽師志望の星海 晴良。こっちは相棒の佐々木 蜜。じゃあ、占い結果の詳細をお伝えする」
「うむ。お願いしよう」
「年末、自衛隊が戦地に出る事が決まる。人道支援。最悪の事態は起きない」
「ほう」
初手からぶん殴ってきた。
圧力は掛かっており、強制されるよりは打って出ないと、と思っていた。
だが、表には出てきていない情報である。
情報が漏れているとでも? 地震発生の装置があるというオカルトがあったな。
様々な可能性を考えつつも、先を促す。
待ってくれと言わなかった総理はかなり胆力があるといえよう。
「11月の選挙はすげー勝ちそう。野球が盛り上がる。阪神が多分快進撃」
「ほほう」
「外国でテロ。自衛隊に大きな被害は出ないが外交官は犠牲になる。11月。多分2人」
「外交官が……」
危険地帯に向かわせた外交官を思い出し、総理の表情は動かないが、外交官についての情報がずらっと脳内を巡る。当然だ。危険地帯に送るのだ。しっかり頭に入れている。大変な任務だからこそ、優秀な者を向かわせた。未来は変えられるのだろうか?
「北海道の十勝沖で大地震。この辺。大きい津波被害が出る。夜……いや朝」
蜜が出してきた地図を出してざっくりと説明する。
「かなり大規模な詐欺のスキームが出来る。電話でお年寄りを騙す詐欺電話。オレオレ詐欺が多いな。名乗らずに俺だって言って息子を装ってトラブルに遭った事にして大金を奪う」
「なるほど」
「占いの情報は以上だ。聞きたい事はあるか?」
「そうだね。1000万渡せば何をしてくれるのかな」
「地震の被害を弱める祈祷をする。すげー大変だし、日付が変わるからお勧めはしずらい。あと、未来ですげー大災害が起きるから、避難の練習はしておくといいぜ」
「北海道地震か。津波はどれくらい?」
「俺の背丈よりは高いだろうな。それに、数百人以上の犠牲者が出る」
「ふむふむ」
正直、細かい占いの精度にびっくりしていた。
しかも、断言口調である。
陰謀か本物の占いか。
「ちょっと電話してもいいかね」
「どうぞ」
総理はその場で、警察庁に電話をした。
最近の犯罪について、俺俺詐欺について問う。
『まさにそのような犯罪が増えています! 総理は物知りでいらっしゃる! 俺俺詐欺はわかりやすくていいですね。この犯罪は増えていきそうで心配です』
……陰謀でもいい。占いでもいい。
ちゃんと裏を取れば、全く問題のない事だ。
ただし、必ず裏をとることを自分に課す。
そうして、総理は決めた。
乗ってやる。
このビックウェーブに!
お前が言い出したことなんだぞとテレビ局を煽り、気象庁と地震学者と組んで津波の範囲の予測をして、避難計画を作る。
毒をくらわば皿まで。完璧な避難計画を作った。
海外のマスコミにも話題を提供した。
住民を避難させ、25日を迎える。
いつでも動ける準備をした後は、何かあったら起こしてくれと頼んで休む。
真夜中にずっと待機していてはパフォーマンスが落ちるからね。
「総理! 起きてください、総理! 起きました! 朝4時50分です! 」
「思ったよりも遅かったね。規模は?」
「マグニチュード8です! 今も揺れています!」
「気象庁に津波の予測を急がせてくれ」
早起きして顔を洗い、服をぱぱっと着替えてヘルメットを被る。
スタッフが整えてくれて、カメラの前へ。
カメラは夜どおし回っていたし、私もマスコミも言い出しっぺだ。
狼狽えてはいられない。
「総理、人々が家に行きたいと」
「ダメだ、避難が間に合うはずがない」
「気象庁から津波の到達予想時刻出ました」
「すぐに周知して。ただし、家に戻るのは許可しない」
災害直後にできることなんてない。
まずは嵐が治るのを待って、被害確認して、それからようやく行動できる。
「住民にココアを配って休ませてくれ。どうせ何もできないのだからね。休んでしまった方がいい。対策会議を発足する」
粛々と手続きをすすめていく。
長くこの国を守ってきた政党だ。災害の際の対策はマニュアル化してある。
時を待って実行するだけ。
「少し時間があるな。現地へ飛ぼう。空に地震はないからね」
ヘリで駆けつけることとする。
地震の渦中に責任者がいてはダメだろうと、東京にいたのだ。
テレビの画面の中で、呆然と人々は水が登ってくるのを眺めていた。
人々は狼狽えた。
「これが超大地震か?」「大地震だろ」
「死者がたくさん出るって話じゃん。0だから外れたな」
「早朝まだ暗いうちから地震に津波だぞ。避難しなきゃ死んでるって」
「本当に当たったの?」
「本当に陰陽師?」
「貴重品持って来てなかった! 本当に地震が起きるなんて思わないし!」
混乱が暴動へと向かいそうなその瞬間、総理は息を吸った。
「感動した! 実は北海道では多数の死者が出ると占いで出ていた! 実際の地震の規模と時間帯から見て、それは事実だと思う! みんなの協力で死者0に出来た!」
人さえ無事ならいいのだ。後は復興するだけ。政府は力になる。
総理は堂々とそれを示した。
そして、郵政民営化の法案をそっと延期した。
それなくとも選挙に勝てるし、アメリカと同盟関係は結べると直感が囁いていた。
アメリカにだって、ESP研究所はあるのだ。国民に影響を与えず、ずっとセンセーショナルにアメリカの関心を買えるだろう。
「総理は陰陽寮を復活させるのですか!?」
「継承可能な技術なら、是非とも陰陽寮を復活させ、オカルト方面の整備をしていきたい。ただし、オカルトへの傾倒の危険性も認識しているし、現時点では晴良くん1人の才能ではないかと思っている。向こうも陰陽師の復興プロジェクトの立ち上げ段階で職員が4人しかいないというし、慎重に判断したい!」
そう、続かなければ意味がない。
晴良くんが引退した後も、出来れば何人かの専門家がいる状態でなければ困る。
一子相伝? 国家事業でそれはナンセンス。
早速話を詰める。アメリカからも、その話題はすでに挙げられていた。
「ということで、君が教育をしっかり行ってこの精度を維持してくれるのならば、陰陽寮に前向きになろうと思う」
「補助金をもらえるなら人を増やす。資金さえあれば教育は行える」
「では頑張ってくれ。君はすでに誰の目にも見える成果を出した。補助金は認可されるだろう。それと、海外の留学生も教育出来るかね?」
「人と地脈にもよるけど、本物なら力添えはできると思います」
「よろしい。陰陽寮というのは、国家付属の占い機関だ。当然、政治のことも色々と呑んでもらう」
「「心得ています」」
2人が頭を下げる。ならばいい。
選挙はめちゃくちゃ勝った。
マシュマロ
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