復活!陰陽寮!   作:かりん2022

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総理視点 覚悟

2004年の占いが終わった。

 

脱線が起きる、水害が起きるとはっきり断定口調で言ってもらえるのは助かる。

 

別に起こらなくても、その時は占いが外れる前例ができるだけだからいいのだ。

 

水害に関係なさそうな場所に農協の倉庫をぶったてて種芋等を放り込む。

学校にエアコンをつけまくる。

水害警戒地域のご家庭に緊急水害用ボートを配る。

防災企業の株が爆上がった。

 

税金が上がってもしゃーないな、で済んだのは後にも先にもこの時だけだろう。

初期費用だけが高額で、後はそうでもないのだが、予算はこっそり同レベルで継続予定である。政治家はそういうとこある。

 

打ち合わせを終え、陰陽師の教育計画に目を通す。

補助金は相当入れたつもりだが、増やす人数はたったの20人。メインの陰陽師に至ってはたったの5人だ。

いや、全体で5倍、陰陽師の数で2.5倍と考えればそうでもないか。質のいい人材を育てるのにはコストが掛かる。それはお金も物も時間もだ。センシティブな分野だから、尚更だろう。総理が欲しいのは有象無象の占い師ではなく、災害をピンポイントで日付つきで断言してくれる予報士だ。だからこそ補助金を注ぎ込むのである。じっくり育ててほしい。

 

計画書を見ると、秘密の修行場で修行を行うという男の子の心揺さぶる言葉が書いてあった。

陰陽寮をセンセーショナルに育てればそれは総理の手柄となる。

 

そして、あまりブラックボックスは作りたくなかった。

わからない分野だからこそ、理解するべきだ。

上に立つものに専門家ほどの知識は必要ないが、専門家が出した方針を判断できる程度の知識は必要なのだ。

 

そんなわけで、マスコミに修行を公開できないか、人数を増やせないか打診する。

 

どうやら、修行場の関係で今でも厳しいらしい。

ならば修行場を増築は出来ないか。

 

こちらが押し付けた陰陽寮計画もそうだが、彼らは占いやお祓いなど、さまざまな依頼が押し寄せて大変らしい。

ただ、市井の占いやお祓いなど、今しか出来ないかもしれないので、出来るうちに下積みもしておきたいと言っていた。若いのに出来た者たちだ。

大きな野望を持ち、有能でやる気もあり、努力家な彼らを総理は気に入っていた。

 

彼らのような若者が日本を明るくしていくのである。

 

そして、そんな彼らが他国に潰されないように、陰ながら守るのが政治家の仕事だった。たまに差し出す時もあるが。

 

2月10日、夜。

会議が終わり、少し仮眠を取っていると、秘書が電話を受けた。

 

「総理。お休みのところ、申し訳ありません」

「いや。何があった?」

「警察庁から連絡がありまして、陰陽師達がお祓いから戻ってきてないとかで、警察に届出をしたそうです」

「なんだと?」

 

 まさか、もう海外勢力に誘拐されたというのだろうか。

 あそこの事務所は陰陽師を除けば女の子と寝たきりから回復した少年だけのはずだ。

 

「次の会議は悪いがキャンセルだ。報道記者の友人に電話して一緒に行ってもらう。マスコミが大々的に報道すれば、見つかりやすくなるかもしれない」

 

 総理はすぐに立ち上がった。

 誘拐されたとしたら、もう既に時間が経っている。

 ……ダメかもしれないな。

 けどそれは、見つける努力をしない事にはならない。

 またもや総理はヘリを動かした。

 

「晴良兄!? あ、総理……」

「晴良くん達が戻ってきてないと聞いてね。駆けつけてきた」

 

 私達は晴彦くんについて中に入る。

 中は相当混乱しているようだった。

 

 葵くんが、大きな宝石を青年にぶん投げる。

 ハッとして報道陣が暴力の決定的な瞬間の写真を撮った。

 

 大きな宝石は青年の胸に沈んだ。えっ 死!? 刺さったのか!?

 

「ふおおおおおおおおお!」

 

 そして、葵くんは手から宝石をジャラジャラと出す。

 それは宙から現れ、宙へと消えていく

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!

 

 ビリビリビリ。

 

 狼の遠吠えの幻聴が聞こえ、体が痺れたと思ったら、金色の光で出来た大きな狼がいた。

 SPが総理を守る。

 マスコミが混乱に陥りつつも写真を撮る。

 

「なんだこれは!?」

「凄い、なんて霊力、実体化するなんて!?」

「乗って! 2人の位置を教えてください! 2人が殺されちゃう!」

 

 青年もうっすらと光り輝いていた。

 青年は急かされて葵くんと共に狼にまたがる。

 私は慌てて声を掛けた。よくわからないが、探しに行くというのなら海外の狼藉者が相手だった場合のことを考えて、警察の力が必要だ。

 

「携帯を忘れず持って行きたまえ、すぐに警察に向かってもらおう!」

「ありがとうございます、総理!」

 

 狼は、屋根の上に飛び上がって、飛ぶように空を駆けて行った。

 マスコミは激写し続ける。

 

「一体、あれはどういうことですか!?」

「祓い屋の……職員の秘密の必殺技です」

 

 晴彦くんが言う。

 そして、私は警察庁に指示を出す。

 110番が掛かってきたら、力になってあげてほしい。圧力が掛かったとしても、私がなんとかする。

 相手がアメリカではないといいのだが……。留学生の話も通していたのだ。

 私に黙ってそんなことをされるとは思いたくなかったが、向こうもまた一枚岩ではないのを知っていた。

 

『総理。110番が二件来ています。海外の名士の方からと、善良な市民からです。どちらを優先なさいますか?』

『君は徹底的に調べればいい。判断は私がする。ただ、派手に動いて欲しい』

『かしこまりました』

 

 私は、その名士の名前を聞いて、大統領に電話をした。

 海外にも関係のある名士だった。根回しをせねばならない。

 さらに、秘書に頼んで噂を流してもらう。掲示板で、人間を2人も乗せた、空飛ぶ光る狼について語るのだ。

 それはあっという間に炎上した。

 後はどれだけ騒げるかだ。日本の立場は弱い。公にできなかったら負ける。

 

 警察はよくやってくれた。

 葵くんが掲示板で怪しげなあれこれを写メって流出させた為、オークション等の悍ましい犯罪の全てがなし崩しに明らかになり、隠蔽は不可能となった。

 

 京都の空を、狼が飛んだのだ。目撃者は腐るほどいた。それらが一斉に騒いでいるのだ。黙らせるなんて無理だ。私は覚悟を決めた。

 幸い、大統領は即座に切り捨てを判断して、私にお見舞いの言葉と、協力の申し出をしてくれた。

 

「日本が失った神秘の凄さに感動した! 霊能者保護も含め、陰陽寮は復活させたいと思う!! 是非彼らの特殊技能を保護し、次世代に残して行きたい!! とはいえ、まずは被害者に寄り添って、立ち直れるよう支援していく! そして、この日本で悍ましい犯罪が行われていた事に驚愕した!! 警察の予算を倍増させ、このような痛ましい事件を防いでいきたい! まずは被害者のケアに力を入れていく!」

 

 ほら、不思議な狼の秘密が欲しいだろう? 陰陽師達は必要だろう?

 助けてくれるなら力の秘密も何もかもくれてやる。私と組んだ方が圧倒的に得をする。そう訴える。どのみち、悪党とばれたもののの味方はできないだろう?

 

 他国に、マスコミに、訴える。

 

 結果、判断は一致した。

 

 ファンタジー万歳! 誘拐は悪いことです!

 そうして、彼は動いてくれた。

 

「今回の誘拐劇をとても心配している! 誘拐のケアの専門家を派遣しよう! だが、陰陽寮プロジェクトはこんな卑劣なことで頓挫していい計画ではない。留学生は予定通り受け入れてほしい」

「大統領も視察に来てくれるそうだ。その時にポチくんに挨拶をしてほしい」

「こちらとしても、こんな事で弟の夢であった陰陽寮復活への道が閉ざされるのは望んでいないのですが……今はそっとしておいていただけませんか。それに、オークションにはたくさんの名士たちが参加していたという話です。彼らを敵に回してしまいました。今、目立つことをするのは……」

「だからこそ、手を出せないように足場固めをするのだよ、アメリカも出来うる限り援助しよう! それとも、異能者は日本人だけの存在だと?」

「あの不思議な石は日本人以外に使えない?」

「いえ。他国は他国の形式で異能者はいると思います。石も通用するでしょう。同じ人間ですから。日本と同じく、数は少ないでしょうが……実際、そちらにも捜査協力をしている霊能者達がいるのでしょう。修行もどの異能者も共通するであろう鍛え方もあります。ただ、力を増幅する石や覚醒を促す道具がとても貴重で使うとなくなるのです。量産もとても難しくて」

「買おう」

「えっ」

「ひとまず我が国の大統領をもてなすのに必要な金額を言いたまえ。ポチくんの視察に必要なだけの金額を言いたまえ」

「いや、それは日本で出します。ですが、日米共同で伝統霊能芸能の復活・保存を宣言させてほしい」

「ああ、ESPにはわが国も興味がある。大統領は承認されるだろう」

「両国が、今回敵に回してしまった偉い方々から守ってくださるというのなら、私達も出来る限りの事はさせていただきます。ただ、神事系統の調査はやめてください。神様……少なくとも、そう呼ぶに足る上位存在は本当にいるので、無礼は本当に祟りを呼びます。それと、才能のある人を強化する事はできますが、無を有へは出来ませんし、才能のある人は日本全体でも数百人いるかどうかだと思います。留学生を全員目覚めさせられるとは考えないでください」

「もちろんだとも。そちらの宗教には配慮を行うし、選定にはこちらが責任を持つ」

「出来る限りの保護を行おう」

 

 こうして、アメリカとの同盟強化はなったし、アメリカが後ろ盾になってくれた。

 私は胸を撫で下ろした。

 産業を潰されるよりも、利益をささげて保護を得る方がずっといい。

 

 国の宝となる彼らには警備員も配備され、神主含め、外でのお祓いは自重してもらった。

 修行場の建て替えも大々的に行った。

 技術者を育てるための施設というならデカければデカいほどいい。

 それに、修行以外の生活をサポートする職員も配備。

 もちろん、彼らはスパイでもある。

 

 今回は綱渡りだった。

 これから荒れるかもしれない。裏の者達とことを構えることとなってしまった。

 彼らがこのままやられっぱなしというのはあり得ない。

 だが、この「産業」は国の宝となるだろう。危険を冒す価値はあるのだ。

 私は、この産業を育てる覚悟をした。




マシュマロ
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