「蜜柑うまー」
私は新幹線の中で蜜柑を食べつつ考えていた。
三兄弟のうち、一番助けるのが簡単で難しいのが晴彦様だ。晴彦様はパッシブな術式を持っており燃費が悪い。魔石や霊石を使うと元気になるが、なくなったら元に戻る。祓い屋アイテムを使うと、術式覚醒するがコントロールと霊力生成も出来るようになるので日常生活は送れるようになる。
でも燃費が悪いので、ダンジョンが必要だ。
晴彦様をダンジョンで鍛えてようやくクエストクリアとなる。とことんコストは掛かるがダンジョン出せそうな土地は持ってるようだしクエスト難易度的には簡単だろう。
晴良様は陰陽師になれないことを悲しみ、霊力を生かそうとアングラな所に行くので、一年以内に霊力を生かせる日の当たる所に連れて行かねばならない。国にもっかい陰陽寮を復活させてクエストクリア。馬鹿なの?
晴人様は神主としての力量を上げて、晴彦様や晴良様を清められるようにしないといけない。2人を助けて悪霊化を防げたらクエスト難易度は大幅に下がり、ジョブ転職と倒すことを含めて弟2人のイベントクリアで達成。
うーん、これって一日で出来るやつ? 無理ですよね?
ちなみに二泊三日の旅であるが、移動で2日は完全につぶれている。
あっ一応、晴彦様は病弱なせいで私と同じ中卒、同年代だから時間は取れる。
晴良様はもう高校卒業し、自分なりにお仕事始めちゃってるので早々に手を打たないとヤバい。
3人とも学校で会えないということはないのが唯一の救いだろう。
話し合い上手く行くと良いのだが。
私は3人に1時間置きにアポを取って貰った。
最後に3人揃って話したいとも告げてある。
お告げだとか見てもらいたいものがとか誤魔化してゴリ押した。
順番については、晴人様がトップバッターになることになった。
広いお座敷で、私は荷物を出した。
晴人様が入ってくる。
「なんですか? これは⋯⋯」
「この本、読めますか? 読むならこれ全部お渡しします。弟さんが悪霊になるのを防ぐか、晴人様にその悪霊に勝たせないといけなくて。救出頑張るし、出来るだけ防ぎますけど、準備はしてほしくて」
「本?」
晴人さんが本を読む。
読むの早い。十分程で読み終わってしまい、本は光に溶けて消えた。
「⋯⋯これは。晴彦を助けると?」
「ちょっと土地が必要だったりしますが、ええ、まあ」
「お願いします。晴彦を助けてください」
「頑張ります」
何も考えてないわけではない。不思議を飲み込み、それでも弟の健康を願う兄の顔だった。
私はその思いを受け取る。
アイテムボックスの使い方を教え、部屋に広げた荷物を回収してもらう。
次は予定を変更して急遽晴彦様を呼んでもらった。勿論祓い屋パーフェクトセットは出した。
「僕を助けるって? なんにもできないくせに!」
私は晴彦様の胸に手を当てて霊力譲渡。
いや、吸うの早いな!?
「温かい⋯⋯?」
私は魔石を出して霊力に変換しつつ流し込んだ。
「祓い屋の手引きを読んでください」
次の魔石を準備してお願いする。
晴彦様は手引を読む。手引は光って消える。その間にも魔石を使う。変換する。
本人にもやらせる。
「すぅ⋯⋯」
震えながらそっと深呼吸する晴彦様。
「息が出来る⋯⋯凄い⋯⋯こんなに身体に力が満ちている⋯⋯」
「物を壊したり人を傷つけないよう十分に注意してくださいね」
「僕は祓い屋の才能があったのか。術式が強すぎて霊力が足りなかったのか」
「そう。私はその石を沢山持ってますが貴方の一生分ではありませんし、流石にそこまで渡せません。その石を作るには広大な土地が必要だし、危険な作業が必要になります」
「お父さんにお願いしてみます」
「では土地はそちらが。生産施設は私が用意するということで、生産の労働力と生産物の配分については応相談で」
ひとまずこんもりと魔石を出して、細々とした物をアイテムボックスに入れてもらい撤収してもらう。
最後に膨大な陰陽師パーフェクトセットを出して、晴良様を待つ。
「晴彦が元気に⋯⋯ああっ!? すげー! 本物!?」
広げた占いグッズに興味津々。
「これが読めたらあげますよ」
「なにそれ! 貴方を陰陽師に任命します⋯⋯!?」
陰陽師任命書はぱぁっと光って消える。
「嘘だろ!? 消えた!」
「アイテムボックスの使い方を教えますね」
「なんだよそれ?」
「ドラクエのアイテム欄みたいな」
そういいながら、教える。
「本当に良いのか? 貰っても。君にメリットないだろ?」
「お告げで助けてるので、私にも良いことあるのです。例えば、貴方がアングラな所に行って悪霊化して襲ってくる事件がなくなるとか」
「は?」
「このままだとそうなる運命らしいです。胡散臭いですしね霊能業界。私なんか想像も出来ないくらい大変なんでしょう」
「⋯⋯じゃあどうしろっていうんだ。こんだけ渡して諦めろって?」
「陰陽寮を復活させて日の当たる所を歩かせてやれって。貴方を公務員にするまでがお仕事」
「はあ? どうやって」
「どうしようね? 実績積んで嘆願します?」
「実績」
「陰陽師の主なお仕事って占いでしょ? インターネットに日本の1年の占いを載せて、占いの依頼を受けていくとか。逆に変な何処そこに一人で来てくださいなんて依頼は絶対受けちゃ駄目ですよ。この先、激動の時代になります。のし上がるチャンスはあります。ここまでお膳立てされて日本に求められる人材になれないなら、向いてないのですっぱり諦めましょう。あっ依頼料を頂けるならホームページは私が作りますよ! 1年契約で30万円はいかがですか!」
「兄貴と弟にもおんなじ事した?」
「あの人達は別の試練があるので」
「お前のメリットは? 襲われない以外で」
「貴方が公務員に就いた時点で莫大なショップポイントが貰えます。後、出世払いで報酬も期待してます」
「ショップ⋯⋯? あ、これか。なんかもらえるのか。じゃあ、遠慮なく頼る」
「明日には帰るんで、勉強頑張ってくださいね。実践は来年1月からで、それまでは修行ということで」
「友達にも教えていい? 陰陽師にしたい」
「神主でも陰陽師でも祓い屋でもお好きなように。でもポイントはあなた持ちで勿論秘密厳守ですよ」
そうして、魔石を持って晴良様の胸に手を当てる。変換した霊力を送り込む。
術式起動だ。
「なんか力を感じる」
「ご友人に貴方がやってあげてくださいね」
魔石を少し分けた。
それから、陰陽師セットを片付けて三人と私で集まった。
「これがダンジョンの核です。これを設置すると出来る洞窟に化け物が出て、それを倒すと魔石が取れます。それが晴彦様の命になります」
「確かに預かった」
「寄付した覚えはありません。これは投資です。手助けしますが、きっちり取り立てます。いきなり扶養外れても困るので、今は請求しませんが、5年後にどーんと支払って貰います」
「悪いが、もらった分ほどの対価が払えるとは⋯⋯」
「これを」
私は未来ノートを渡した。
「私の未来視です。未来は変わるかもしれませんが、変わらないこともあるでしょう。これで株を勝って大儲けして5年後に利益をください」
ぶっちゃけ助けるクエストする時点でかなり明かしてるし一蓮托生なんだよね。ダンジョンと陰陽寮復活の時点で未来で株で儲け続けるのは諦めた。やるなら今だが、種銭がない。
どうせ5年くらい動けないし、リスクを代わりに背負ってくれるならチート丸投げでいいや。
アイテムはまだそれなりにあるし、ここまで助けられてそれでも約束破るなら二度と接触しないだけだ。まあ神職だし裏切りはしないと思うけど。
「わかった。貴方に渡すべき報酬で株を運用して5年後にお返ししよう。私達もそれで稼いでも良いかな?」
「手間とリスクを背負うのはそちらです。その程度は手間賃でしょう。ご自由にどうぞ。ダンジョンも5年後になら公開自由です。ただ、ダンジョンでの怪我や未来情報を狙った有象無象の対処に対する責任は持ちませんし、私の事は内緒でお願いします」
「わかった」
こうして、もう少し細かい契約はなされた。
晴人様は5年間、500万円の種銭を使って投資を行い、晴人様の会社で私を雇ってボーナスとしてその代金を払うもしくは株を譲渡する。譲渡税と給料は別で晴人様が払う。業務内容はホームページ制作とする。
晴人様は既に投資をしており、投資会社も持っているそうだ。そこに雇ってもらえる。仕事内容は占い結果を載せるだけ、出社の必要もない。ダンジョンなど別作業が発生したら別計算。
とてもいい条件のように思えるが、陰陽師パーフェクトセットで多分1千万いくんだよね。価値としてそれぐらいはあると思う。魔石も大分渡した。ダンジョン核も譲渡。なのでこれくらいは妥当というか、イケメン&親戚&クエスト価格というか。それは向こうも分かってると思う。本物の消える魔法の道具を使ってアイテムボックスを手に入れてるわけだから。3人とも大分感謝してくれてた。
お昼を食べて、デザートにお土産のメロンを食べ、力の使い方のコツをレクチャーした後は、観光をして、次の日に帰った。
1ヶ月後、ダンジョンを開いたと手紙が届いた。
3兄弟とご両親とイケメンなご友人の写真。
晴彦様は肉が付いて本当に元気そうだった。
私はパソコンとプログラミングの書籍を買い、写真を沢山送ってもらってホームページを作り始めた。
ホームページの勉強、バイト、修行。
受験失敗して良かったとちょっぴり思う。
そして平穏の日々が続くのだった。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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https://odaibako.net/u/karin2022v
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