アクロス   作:AG-67

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第一話:世界の真相

 

時にして、それは人の感覚を麻痺させる。

 

それは私も例外ではなかった。

 

「どうして...!私はあなたのことを───」

 

セレスディア王国騎士団長、アメリア。それが私という存在であり、恋という精神疾患を患った存在だった。

 

「わかりきってるんだろ?俺は騎士団長になりたい。それにはお前の存在が邪魔だから消すんだ。そうすればなし崩し的に俺が騎士団長になれる」

 

とても丁寧に、けれど私が見たくなかった現実を説明してくる。心というものは厄介だ。頭ではわかっていても、それを否定するときがある。

 

「...考え、直せないの?」

 

「アメリアは不慮の事故により転落死し、一番親しいハヤトがその意志を継いで王国騎士団長となる。我ながら完璧なシナリオだ」

 

マナはなくなり、剣も折れ、崖に追い詰められた。冷たい夜風が、私の終わりを告げるように私の肌を撫でる。

 

「じゃあな、アメリア」

 

そうして、私は崖から突き落とされた。

 

「あぁ...」

 

その瞬間、私は気づく。

 

欲望のコントロールが出来ていなかった、と。

私があの人間の傍に居たいという欲望を抱かなければ、私は彼の計画に気づけた。ハヤトの王国騎士団長になりたいという欲望をコントロールできれば、私は崖から突き落とされなかった。

 

結論からして、私は心に振り回されていたわけだ。

 

「はぁ...」

 

もっと早くに気づいておきたかった───否、向き合いたかった。ハヤト───開拓者たちは総じて欲が強い。良い装備が欲しいだの、一緒に寝ないかだの、自分の欲望を隠そうともしない。

 

「そろそろかな」

 

底が目視で確認できる。つくづく、現実に目を向ければよかったと思っている。

少し優しくされたから惚れて、それが原因で魔の手に気づかず殺される。我ながらちょろい人間だ。

 

「」ドゴォ

 

 

...痛い

 

体中の関節が軋んでいる。右足の靭帯が切れている。右腕が潰れている。

 

「うっ...はぁ。ここは───っ!」

 

脳内に電流が走り、忘れていた記憶(破損していたデータ)が蘇る。

 

 

そして、私は情報の海にさらされた。

 

 

 

 

 

「これは...」

 

インベーダー:地球を侵略してきた宇宙文明。私が奴らの超感覚的ネットワークに侵入し、脳回路を内側から焼き切った。

 

「マナ...どういうことでしょうか?」

 

この世界の大気に含まれているマナ。正体はインベーダー型生命体の体内に存在している、精神エネルギー(ルーシュ)を動力源とする()()()()()

 

しかし、このナノマシンは私が跡形もなく消したはずの文明の産物。

 

 

一体何が起こっている?

 

 

「この世界の正体は...」

 

記憶が蘇った今ならわかる。開拓者たちが言っていた『ステータス』『イベント』『アイテム』『プレイヤー』。このような単語は全て、ゲームにおける単語。それらを日常的に発する彼ら彼女らがいるという事実は

 

この世界がゲームであることを示唆している

 

「...母船の次元爆発に巻き込まれたんでしょうね」

 

インベーダーを滅ぼしたとき、私は地球侵略用のマザーシップ内にいた。大方、その際にマザーシップの機関が暴走して次元爆発に巻き込まれたのだろう。

 

「...」

 

普通なら信じられない話だ。しかし、インベーダーはあらゆる次元を侵略する文明。それがもたらす次元爆発となれば、ゲーム世界への転移───いや、転生もあり得る。

 

「だとすれば...不味い状況では?」

 

感情のあるNPCは存在する。しかし、現実世界を認識しているNPCなど存在しない。この状況や今後の行動を監視され、運営に目を付けられた場合。

 

私は削除される可能性がある。

 

「そもそも、この世界(ゲーム)は誰が造ったのでしょう?」

 

答えを知る方法は...

 

現実(リアル)に目を向けましょうか」

 

マナを使用し次元間通信機を作成する。感情の起伏が少なく、ルーシュ生産量が少ない私でもこれぐらいはできるのだ。

 

「...異質ですね。NPC、生態系、全てが科学に基づいている」

 

現実世界のネットワークにアクセスして情報を搔き集めた結果、作者は現時点ではわかっていない。

 

しかし、このゲームのクオリティが飛び抜けて高いことが分かった。まず、基本的にVRMMOには感情のあるNPCや、生態系、経済システムなどは存在しない。

 

ここまで聞くと、ただの高クオリティなゲームに見える。しかし、ある事実を踏まえると事態は急変する。

 

「エネミー...動きには見覚えしかありません」

 

ドラゴンやゴブリンなどのエネミー。それらの一部が()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どう見ても、インベーダーの常套手段である飽和物量攻撃にしか見えないのだ。

 

「インベーダー...」

 

しかし、十数体ほどの群れや個体で活動するエネミーも見受けられる。おそらく、これが運営の用意した本物のエネミーだろう。結論からすると、

 

インベーダーの残党がこのゲームに紛れ込んでいる

 

ということだ。

 

「つまり、たまたまあった高クオリティなゲームをインベーダーが隠れ蓑に───え?」

 

改めて、作者を知るためのセカンドプラン───機密ファイルを見ていく。最終的に、国連の機密情報を漁っているととんでもない情報を見つけた。

 

 

『アクロスプラン』

 

 

内容は、『インベーダーへの対応策』

 

「人類はインベーダーを知って...?あ、レジストされてしまいました」

 

このゲームの名前はアクロス。そして、国連の機密情報の名前も『アクロスプラン』。

 

 

ここから導き出される答えは、このゲームを造ったのは国連という事実。

 

 

アクロスは国連主導で開発されたゲームで、その開発計画の中にある『インベーダーへの対応策』という言葉。

 

「と、いうことは......消されない方法がわかりました」

 

推測だが、このアクロスというゲームは『世界中の国が一丸となって作り上げたインベーダーへ対抗する唯一の手段』。なぜゲームなのかは分からないが、私という対インベーダーの専門家はその中にいる。

 

それらを踏まえ、私が運営に消されない方法を導き出すことに成功した。

 

その方法とは、私の正体を明かすことである。

 

インベーダーを滅ぼした存在がインベーダーへの対応に協力するとなれば、国連に私を消すメリットはない。

 

今!

 

真夜中の森、少女が虚空に話し始める。

 

私は立ち上がる!

 

反応はない。

 

私はセレスディア王国騎士団長のアメリアではない!

 

満身創痍の状態で、砕け散った岩の上から立ち上がる。

 

地球防衛軍、第304アサルトフレーム大隊所属。ラピットファイア型アサルトフレーム:プレデター!

 

それは、かつて瓦礫から立ち上がった人類を彷彿とさせる。

 

かつて、インベーダーを滅ぼした存在だ!

 

折れた剣を虚空に掲げる。

 

私は再び戦う!未来ある子供たちのために!幸せな日常のために!碧き我が故郷(地球)のために!

 

それは、まだ暗い空に向いていた。

 

 

「EDF!EDF!E D F!」

 

 

 

 

 

NY市 国連本部

 

『そもそも、この世界は誰が造ったのでしょう?』

 

同 インベーダー対策室

 

「Holy shit!マジかよ!」

 

一人の職員が異変に気付く。そこには血を垂らしながら疑問符を浮かべる銀髪の少女がいた。

 

「Hey bro.どうしたんだ?」

 

「これを見ろ!」

 

『...異質ですね。NPC、生態系、全てが科学に基づいている』

 

「おいおい、今こいつNPCって言ったよな!プレイヤーじゃない..よなぁ!?」

 

「は、早く伝えねぇと!...」p,p,p,prrrrrr

 

ピッという軽快な音と共に、相手は電話に出る。

 

『なんだ?君が美女でないなら切るぞ』

 

「しゅ、主任!これを聞いてください!」

 

 

[インベーダー...]

[人類はインベーダーを知って...?あ、レジストされてしまいました]

 

 

『なっ───ゴンッ、あぁもう...!』

 

「主任!アメリアですよ!アメリアがこちら側の世界を認識して、我々の情報を覗き見したんです!おまけにインベーダも知ってる!」

 

『チッ..ああっクソ!今行く!』

 

────

 

「主任が到着しました!」

 

「一体どうなっているんだ?」

 

「わかりません!ただ、急にこちら側を認識している様な言動をし始めたんです。それに、この通信機を使ってこちら側のネットワークに侵入して着々と情報を吸収してます」

 

「何か原因は?」

 

「それがわからないんです!あ、しかし、十数分前に彼女が恋していたプレイヤー:ハヤトに崖から落とされました」

 

『『『...』』』

 

「どう考えてもそれが原因だろうが!もういい!モニターに現状を映し出だせ!」

 

『と、いうことは......消されない方法がわかりました』

 

モニターの中の彼女。彼女は痛みに顔を歪めることもなく、突如として()()()()に視線を向ける。

 

『今!』

『私は立ち上がる!』

『私はセレスディア王国騎士団長のアメリアではない!』

『地球防衛軍、第304アサルトフレーム大隊所属。ラピットファイア型アサルトフレーム:プレデター!』

『かつて、インベーダーを滅ぼした存在だ!』

『私は再び戦う!未来ある子供たちのために!幸せな日常のために!碧き我が故郷(地球)のために!』

 

『EDF!EDF!E D F!』

 

 

「これは...!」

 

「今、地球防衛軍と言ったような...」

 

「間違いない!それに、第304アサルトフレーム大隊ってのは、インベーダーを滅ぼしたアトアレイターがいた部隊だ!」

 

「ホワイトハウスに連絡しろ!それと、各国首脳を招集して会議を行う準備をしておけ!」

 

大型のモニターが表示されている暗い対策室。

 

「はぁ....」

 

主任と呼ばれた男はため息を吐く。

 

 

 

 

「えらいことになりそうだ」

 

 

 

 




今回のまとめです↓


1.アメリアがインベーダーを滅ぼしたことを思い出す

2.アクロス内のエネミーの動きがインベーダーに酷似していることに気づく

3.アメリアがアクロスは国連に造られたインベーダーに対する切り札であることを知る

4.国連に自分が地球防衛軍所属であることをアピールする

5.国連とインベーダー対策室が大慌てになる
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