春風のキミに   作:SLUM-AS

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二週間ぶり二度目の投稿です
今回は愉快な仲間が登場します
それではどうぞ


2話

 日本でも有数の大財閥である風桜( かざくら)家の一人息子として生まれ育った僕は、実家の息苦しさから抜け出すため都会を離れ、長崎の大学に入学した。元々放任主義で仕事が忙しい父親は特に何か反対することもなく、それどころか合格した際にはお祝いに今住んでいる別荘までくれた。だが、本来であれば家業を継ぐのだからと小言のひとつでも言うのが財閥の当主としてあるべき姿ではないのだろうか。結果として予定通り実家を出ることが叶ったのだから僕としてはありがたい話だが、常々我が家は狂っていると思う。そんな出来事から一年が経ち今の生活や地域環境にも馴染んできたが、その一方で一度乗り遅れると次の快速電車が一時間後だったり、車での移動が前提になるような山道が多かったりなど、慣れない事もたくさんある。しかしそれもまた楽しさのひとつだ。毎朝凛咲に送迎してもらうことも最初は目立つため断っていたが、今となれば当たり前のように受け入れてしまっているのだから。そんな少し前のことを考えているうちに、気が付けば今日も無駄に目立つ黒塗りのリムジンが大学の敷地に到着した。

 

「今日はサークル活動あるから少し遅くなるかもしれない、また連絡するね」

 

「はい、新学期も楽しんで」

 

 車を降りて少し背伸びをしてから凛咲に向き直る。

 

「今晩のお食事はマグロのお刺身にする予定です、いってらっしゃい」

 

「すごく楽しみにしてる、いってきます」

 

 小さく手を振り車が見えなくなるまで見送ってから足を進める。既に頭の中はマグロの刺身と甘口醤油に支配されていたが、まだ始まったばかりの今日を頑張らなければ。そんなことを考えていると、後ろから突然肩を組まれる。

 

「よぉ想夜、久しぶりだな!春休みの間俺に会えなくて寂しくなかったか?」

 

「春休みの間も何かしら理由付けて呼び出してた奴がどの口で言ってんだ」

 

 筋肉質な体格と迷惑なほど大きな声、人目も気にせず僕の名前を叫ぶこいつは鳴海隼斗( なるみはやと)。ひとつ上の先輩で所属しているサークルの創設者にしてリーダー。常に明るく元気で、校内外を問わずその人柄からみんなにアニキと慕われている。特に地域の小学生からはとてつもない人気を誇り、以前発熱で寝込んだ時にはお見舞いの手紙やお菓子などが小学校から大量に届いたほど。春休みは三日に一度のペースでアニキの遊び、改めサークル活動に呼び出されていたので本当に久しぶりなどではない。

 

「朝から何の罰ゲームだよ、さっさと離れろ」

 

 肩に乗せられていた腕を振り払うと、アニキは笑いながら言う。

 

「相変わらず酷い言いようだな。まぁそれはこいつも同じか」

 

「なんだ、花音も居たのか」

 

「ちょっと!なんだとは何よ!」

 

 ひょこっとアニキの背後から出てきた小柄な女子、汐凪花音( しおなぎかのん)。短めの金髪をツーサイドアップにしており、指先で弄っている姿が印象に残る。気が強く負けず嫌いな同級生で、すぐに張り合ってくるが別に嫌な気はしない。勉強はあまり得意じゃないらしいが、運動神経がとても良く、高校時代にテニスの全国大会にも出場経験があると本人が自慢気に話していた。サークルも同じで結構仲は良い方だと思うが、気が付くと何故か凛咲とも仲良くなってたのは驚いた。凛咲はアニキや花音に誘われて、時々サークル活動に参加することがある。きっとその時に仲良くなったのだろう。凛咲からもたまに連絡を取っていると話を聞くことがあるが、とても楽しそうに話してくれるので僕も嬉しい気持ちになる。あんなにも楽しそうに友人と話す姿など今まで見たことはなかったので、実家を出て本当に良かったと思うし花音にも感謝している。本人には絶対に言わないけど。

 

「そんなに怒るなって、アニキが大きすぎるせいだから」

 

「そうよ、あとでジュース奢りなさい」

 

「俺が悪いのかよ!?」

 

 普段は少し面倒だと感じる見慣れたやり取りが、三人で笑い合う騒がしい日常が、結局好きなんだなと改めて感じる。そして今日、もしかすると新入生の誰かが、この輪に加わるかもしれないのだ。普段は大人数での関わりを好まないのに、今回は柄にもなく楽しみにしている自分がいる。このあとは新入生歓迎会でサークル紹介があるはずなのだが、そういえばアニキから何も聞いていない。なにか嫌な予感がしたので聞いてみることにする。

 

「そういえば今日の新歓どうするつもりでいるんだ?」

 

「あれ、言ってなかったか?想夜にはステージで話してもらうぞ」

 

「初耳だな……」

 

 相変わらず無理難題を押し付けてくるが、実にアニキらしい。

 

「衣装も用意してあるからな、うまく紹介してくれよ」

 

「まさかとは思うが、僕に全部やらせるつもりか?」

 

「想夜も大変ね、まぁ私が応援してあげるから頑張りなさい!」

 

 隣で心底楽しそうに笑っている花音にどう仕返しをしてやろうかと考えていると、アニキが花音の肩に手を置きながら言ってのける。

 

「花音の衣装も用意してあるからな、がんばれよ!」

 

 呆気に取られている花音を横目に、俺は笑いながら煽る。

 

「がんばろうな、二人で」

 

「何でこんなことに……」

 

 アニキが息を切らして笑っているのが納得いかないので今度何かお礼でもすることにして、今は目先の新歓を成功させなければ。きっと新入生が入らなくても今までと変わらず、アニキに振り回されたり花音と張り合ったりして楽しい時間を過ごすのだろう。だけどせっかくなら新しい出会いにも期待してみたいと今は思える。それはきっとここでこいつらと出会えたおかげだから。こんな突然の理不尽だって乗り越えればきっと笑える。そう信じてイベントホールの舞台袖に足を踏み入れた。




サークル紹介をする事になった二人
一体どんな紹介をするのか
そもそも何のサークルなのか

それはそうと隔週金曜日の投稿を目指すことにしました
よって次にお会いするのはまた二週間後です
気長に待っててくれると嬉しいです
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