とある編入生の日記 作:エアリアルって可愛いよね
あと息抜きなのでどっかで続かなくなるかも()
◯月✕日
僕の名前はニアリス。
ふとしたきっかけから幼馴染のスレッタと学校へ通うことになって、今は日記を書いてるんだ。
そして今日は学校に着く日。
楽しみで一時間前に起きちゃって、お喋りしていたら楽しくなって時間を忘れちゃってたから、はっと我に返って大急ぎで手続きしていた。
ふたりで学生手帳を確認しつつ、スレッタの言う各項目に「よし」って返すのが楽しい。
あ、回線は昨日から繋げたままだよ。
エアリアルの申請も忘れてない?って聞いたら大丈夫、忘れてないよ〜って返ってきたので安心したら、えーとフロント管理社…だっけ?
なんとか終わったところに到着5分前ってアナウンスが来て、間に合ったようで凄い安心した。
それと同時に前を見たら、目の前に現れた巨大な建造物に度肝を抜かれた。
水星には良くも悪くも小規模な施設しかないから、二人して「すっごお……」って、完全に田舎者の反応。学校があんなに大きいなんて、感動しちゃった。
で、その直後に遭難者らしき人をスレッタが見つけて、めちゃくちゃ動揺するスレッタをたしなめつつフロント管理社に連絡。
テンパっているスレッタに代わって、対面で話すのは凄い怖いけど通信上なら話せる僕がフロント管理社に、慣れてるから僕達が行くのでハッチ開けて下さい〜って言ったらちゃんと開けてくれた。
僕が居なかったら、スレッタは多分無理やりにでも出ようとしてただろうから…うん、良かった。
で、勿論救助のプロたる僕達は、フロント管理社を待つことなく真っ先に向かってスピード救助を達成したんだけど…。
コクピットに要救助者だと思ってた人を入れたら、頭突きを喰らった挙げ句邪魔しないでよとか言われた。
脱出したかったって言ってもやり方が悪いんじゃないですかねえ…あれどう見ても漂流してるようにしか見えなかったし。
あーまずいですよお客様、僕は初対面の人と話せるようになるまで時間がかかるのです。
だから無視するなとか言われてもその綺麗な目を見返すことしか出来ないんです。
でも責任取ってとか言われても娶れって言われてるようにしか聞こえないし…圧に屈してアッハイとか言っちゃった。
スレッタがフォローしようとしてくれたけどなんかあんたもよとか言われてるしであーもめちゃくちゃだよ。
まあそんなことがあったものの、学園の中に無事入れたので、一旦スレッタはエアリアルと、僕はメリクシオとお別れ。
そこで、メカニック科のニカさんという人が話しかけてくれた。
僕がうまく返せず無言になってしまい、スレッタがおどおどしているのを見て、彼女は「話すことに慣れてないんだね」って、優しく笑って流してくれた。
水星では僕達以外に大人がいなかったから、同年代の人にこんな風に接してもらえるのは初めてだ。
「よろしくお願いします」って言おうとしてどもってしまうスレッタの背中をさすりながら、僕も一緒に頭を下げた。
いい人そうで良かった。分からないことがあったら、彼女に聞いてみようと思う。
……そしたらその直後、なんだか絡んできた人たちがいた。
人の顔をじろじろ見て、嫌な笑い方をする人たち。直感的に「この人たちはダメかもな」と思って、僕は無言で睨み返した。
ニアリス知ってます!これ多分差別です!
なにこいつ、つまんなとか言われたけど無視。
まあ初対面の人に対して耐性ゼロな僕が言い返せる筈もなく、面白くないから行こって言って彼女達はどこかへ去っていった。
こういう人もいるかも知れないってメリクシオがどこかからか集めてきた漫画を見て思ったけど、まさかホントに居るとは思わなかった。
スレッタのヘアバンドは確かに古いしお母さんに貰った大事な物だけど、侮辱されたのは結構頭に来たから去ってくれて良かったかも。そのまま言われ続けてたら手が出ちゃうかもしれなかった。
まあその直後にミオリネ某さんが来てめちゃくちゃになったけど。
スレッタ、注目浴びるから大声で私達責任取るからなんて言わないでくれないかなあ???
それになんか周りに居た人がミオリネって人を侮蔑丸出しで煽ってきててびっくりした。
ち、治安が悪い…。
そしたら急にMSが飛び出してきて戦いだしてもうびっくり、展開早くなーい?
「決闘」っていうのは、MS同士で戦うものらしいけれど……その余波がこっちまで来て、めちゃくちゃ危なかった。
僕はスレッタの手を引いて立ち上がらせ、全力ダッシュで爆風を回避した。
なんとか助かったけれど、勢い余ってミオリネさんに衝突。
三人でもみくちゃになって転んでしまった。
で、その時手にむにゅっと、柔らかい何かが触れた。多分おっぱい。
顔を真っ赤にして文句を言おうとしたミオリネさん(ぶつかっちゃってごめんなさい)だけど。
でも、それを遮るように悪い声色の人がコックピットから出てきて、MSの上から「お前も会社も全部手に入れてみせるぞ」なんて叫んでいた。
でも……なんというか、その、そこ危なくない?
足場も悪いし、万が一バランスを崩したら……って思ってしまった。
場違いですよねごめんなさい。
でも虫の言葉で謝罪させるって趣味悪いなあとも感じた。
煽った相手も相手だったらしいけどね。
彼女が「ただいま」と呟いた温室のような場所で声をかけたけれど、彼女はまだ怒っているみたいだった。
「転んだことより先に、謝ることがあるでしょ」
そう言われても、僕もスレッタも全く分からなくて、二人揃って首を傾げてしまった。
そしたら、さっき胸を触ったことだと言われてびっくり。
……胸を触るって、悪いことだったんだ。
水星では水が貴重だから、スレッタと一緒にシャワーを浴びて、お互いの体を洗いっこするのは当たり前のことだったし、そこに「恥ずかしい」とか「悪い」なんて概念はなかった。
でも、ミオリネさんが嫌だと思ったのなら、それは謝るべきことだ。
「ごめんなさい」って、二人でしっかり頭を下げた。
それはそうと婚約者の話になったけど、どうやら複雑なお話らしくて…いや単純だなこれ。
まあともかく、自称婚約者なのかと思ってビビったけど、なんかミオリネさんとの婚約は決闘の商品扱い(?)されてるみたいで…うん、イマドキの学校って凄いなあ。メリクシオの中に入ってる古い漫画とかアニメとはぜんぜん違う。
で、話が終わったけど手持ち無沙汰な僕達はなんか真っ赤な…果実?をミオリネさんが収穫しているのを見てるんだけど。
なんだろうねアレって思ってそわそわしてたら水星人って普段何食べてるんだって呆れられた。
トマト味なら、お母さんがちょくちょく送ってくれたお菓子があるよね。
フレッシュトマト味のスナック菓子。アレ美味しいから好き。
なーんて言おうとしたら、派手にお腹がなってしまった。
恥ずかしかったけれど、ミオリネさんは笑わずに、その赤い果実――トマトを僕たちにくれた。
言われた通りにガブリとかじりつくと、今まで食べたことがないような甘い味が口いっぱいに広がって、すごく、すごく美味しかった。
ありがとう、ミオリネさん。
ミオリネさんが言うには、そのトマトはお母さんが作ってくれた特別な品種で、トマトならどれでも美味しいわけじゃないらしい。
スレッタが「私たちも同じです。お母さんが水星を豊かな星にするために勉強してきなさいって、ここへ送り出してくれたんです」と話したら、ミオリネさんのお母さんは、今はもう死んでしまっているのだと、遠回しに教えてくれた。
急に湿っぽくさせてしまったことを謝ろうとしたら、彼女は何も言わずに、僕たちの生徒手帳に学園のマップを転送してくれた。
口は少し悪いけれど、やっぱり彼女は優しい人なんだと思う。
んで僕のを返して貰ってたら、ピンポイントなタイミングでグなんとかさんっていう自称(?)婚約者な人が割り込んできたんだけど。
反発したミオリネさんが、グなんとかさんのことをパパのいいなりって煽った結果表情を変えたところで流石に見ていられなかったから僕も乱入して、投げ技を使いつつグなんとかさんを取り押さえた。
うん、クルって回ったときのグなんとかさんの反応は面白かった。
ごめんミオリネさん、このままだと荒らされそうだったから許して…。
まあそしたら抜け出された挙げ句殴られてびっくりしたけど。酷くない?いや先にやったのは僕だった、もうちょっと優しく投げとけばよかったかも。
続けて殴られそうになったところでスレッタがグなんとかさんのお尻をひっぱたいて助けてくれたから良かった。
でも殴られた拍子に、花をちょっとぶちまけてしまった。ごめんなさいミオリネさん。
俺が誰か分かってるのかって言われたから、スレッタは横恋慕さん、僕は婚約者を自称する変な人って答えたけど(同じく来た女子ふたりは吹き出してた)。
そしたら親切なことに彼はわざわざ教えてくれたんだ。
なんでも、べねりっと?グループの御三家の御曹司(自分で言うのかとも思ったけど)で。決闘委員会の筆頭で、現在のホルダーらしい。
ホルダー…?って聞き返したら決闘で選ばれた学園No.1のパイロットだってこれまた親切に教えてくれた。
もしかしなくてもホントはいい人だよねこの人。
まあスレッタの言う通り、それでも悪いことはしちゃだめだと思うけど。
初対面だとその人に対してなんて返したら良いか分からなくてフリーズしちゃう私の代わりに謝ってって言えたスレッタはえらひ。
でもそれに高慢な態度ながらも決闘で全部決めるって教えてくれたグエルさんも凄い親切。
で、スレッタはその場のノリで決闘するって言っちゃって。
止めないのかってミオリネさんに言われたけど、スレッタは強いから問題ないんだよなあ、これが。
そりゃもう、ね。さっきの戦い見てる限りグエルさんって人よりスレッタとエアリアルのが絶対強いし。
まあ、僕とスレッタは遊びがてら今までシミュレータで何回も戦ってたからね。
その数、1251戦332勝332敗587引き分けである。
ちゃんと覚えてる僕って凄いでしょ。
※
決闘が始まったと思ったら、なぜかミオリネさんが勝手にエアリアルに乗っていて、頭が真っ白になった。
「スレッタのエアリアルを勝手に使うな」とか「そもそも君、動かせないじゃん」とか、いろんな思考が混ざり合って、僕はただ「やばいやばいやばい」とパニックになることしかできなかった。
そこへニカさんが声をかけてくれて、ようやく正気を取り戻したけれど……。
まあ、それで同じようにびっくりしてるスレッタを落ち着かせた後、ニカさんの手助けで、えーっと…スクーターって言うのかな?
それに乗り込んで決闘場まで急いだスレッタがエアリアルに乗ってからは、エアリアルのビーム沢山撃てる武装でグエルさんを達磨にして終了。
グエルさんは瞬殺するって息巻いてたみたいだけど、するのはエアリアルの方だったってオチ。
で、問題はその後。
ミオリネの婚約者がスレッタになった。
なんだろう、相手は女の子だから有耶無耶になるんじゃないかと思ってたんだけど…
「こっちじゃ全然アリよ」
らしい。ミオリネのそれを聞いただけで頭が割れそうだった。
脳細胞がひとつひとつ壊れていくみたいで凄く痛かったから、僕は全速力で画面から離れた。
※
「ね、ねえ!ひ、ひひひひひひひ、人ぉ!」
フロントが見えてきた喜びも束の間、宇宙を漂うノーマルスーツの影を見つけて、私の心臓は早鐘を打ちました。でも、パニックになりそうな私の耳に届いたのは、通信回線越しに響くニアリスの落ち着いた声。
『落ち着いて。フロント管理社には僕から連絡したから。……行くよ、スレッタ』
その声を聞くだけで、不思議と震えが止まりました。ニアリスのメリクシオは、私のエアリアルのすぐ隣で、驚くほど正確な軌道を描いて漂流者へと肉薄していきます。
水星で何度も機体のメンテナンスを交代でやってきた私たちだから、お互いの機体の癖は全部わかっているんです。
ニアリスの動かすメリクシオは、まるで彼自身の体みたいに、迷いなくその人を拾い上げました。
でも、メリクシオのハッチが開いて出てきた、後にミオリネさんと名を知ることになるその人は、何故か開口一番ニアリスに頭突きを喰らわせてました。
「邪魔しないでよ!」
「…………」
あ、ニアリスが固まってる。
彼は相手が誰であっても、初対面の人と向き合う時は、距離感を読むのに時間がかかって石みたいになっちゃうんです。
「責任取ってよね!」ってミオリネさんに詰め寄られて、コクピット内で無言になる彼。私が慌てて「あ、あの、ニアリスは………」ってフォローしようとしたら、ミオリネさんは通信で、「あんたにも責任取ってもらうわよ!」って。
……私も? 責任って何をすればいいんだろう。思わず口を噤んでしまいました。
学園に入ってからも、ニアリスはずっと私の隣にいてくれました。
変な人たちに絡まれて、私のヘアバンドのことを何か言われた時。私は最初、何を言われているのか分からなかったけれど、隣にいるニアリスが、見たこともないような険しい顔で彼らを睨みつけているのを見て、「あ、今のは、私の大切なものを悪く言われたんだ」って、後から気づいて胸がキュッとしました。
ニアリスが怒るのは、いつだって私やお母さんの為なんです。
グエルさんとのいざこざの末に決闘が決まった時、ミオリネさんが不安そうに私を見ていたけれど、私は平気でした。だって、ニアリスが私のことを信じているのが分かっていたから。
私とエアリアルはとっても強いんだって。
決闘が終わって、私はコックピットを降りました。
ミオリネさんが操作するとパイロットスーツが真っ白に代わって、なんだかふわふわした気持ちでいたら、ミオリネさんはとんでもないことを言い出しました。
「ええっ!? でも私達、女の子同士…」
「水星ってお堅いのね。こっちじゃ全然アリよ」
頭が真っ白になりました。それじゃあ、私とミオリネさんが……?
「あ、いやその、そうじゃなくて…私はえっと、そういうのは…ええと!ごめんなさい!!」
「あいつとは別で結婚すれば良いじゃない。丁度いいわ、責任を取ってもらうのはあんただけじゃないし」
「そういうのもアリなんですか!?ってそうじゃなくて、ニアリスとは別にそういう関係じゃ…!」
「別に誰とは言ってないじゃない…でも、そもそも私は結婚するつもりなんてないから」
「私は地球に行く」
そんなミオリネさんの続きの言葉にも反応できないくらい、私はパニックになりました。
そんなのもアリなの!? でも、さっき言った通りニアリスとは別にそういう関係じゃ……!
いや、でも、水星ではずっと一緒に寝て、一緒にシャワーを浴びて、体を洗いっこして。
それって「そういう関係」じゃないのかな。
でも私もニアリスも、そういうつもりでしていたんじゃ…というかそういうつもりってどういう…。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、私はただ赤くなって立ち尽くすしかありませんでした。
ニアリスは、今頃何をしているんだろう。
どうすればいいのか分からなくて、私はフロント管理社に捕まるまでの少しの間、フリーズしていました。
ニアリス・マーキュリー
本作の主人公。青髪に赤金色の瞳を持つ男の娘。
作者のイメージCVは村瀬歩。
趣味は日記を書くこと、特技はプログラミングとハッキング。
人見知りLv99であり、人となりを知るまでは石のように沈黙するものの、知ることが出来た、と本人が判断すればがっつりコミュニケーションを取る。
凄く頭が良いが、性格としては大体普通の男の子。
スレッタとは五歳の頃、プロスペラに養子として引き取られて以来の付き合いで同い年。尚身長はミオリネ以上スレッタ以下。
スレッタの事は半身のように思っており、思われている。
異性としての意識はまだしていない。
が、ひとたび意識すれば即ゴールインする。
しかしそもそも意識すれば二人ともかなり混乱してフリーズするのでそこが難しい。