とある編入生の日記   作:エアリアルって可愛いよね

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水星ガンプラ引っ張り出して来たんですよ。でも当時の私は何故かダリルバルデとキャリバーンを買ってませんでした。ほちい……でも買えたとして金がない……


第二話 ガンダムって何……?

今僕は、独房の中で日記を書いている。

 

一応室温は丁度いいくらいなんだけど、ベッドみたいなのは硬いし布団もないからこれを書くか寝るくらいしか出来ることがないんだ。

 

 

 

 

頭の痛みを抑えながら歩いていると、知らない人達に捕まった。

 

フロント管理社らしい。でもなんで?

 

そのまま連れてかれて、独房にぶち込まれて事情聴取を受けた。日記はなんとか取り上げられずに済んだけど…。

 

あ、一応言っとくと僕の学籍番号はLP042です。

 

実の両親は5歳の頃に死去。現在の母親に引き取られ、その母親は現在ラグランジュ1に赴任中…うんまあ公的な記録として間違っては居ない。

 

必要なのは分かるけど、プライバシーを暴かれるのはあんまり好きじゃないなあ…それに、そう何度も聞かれても同じことしか答えられないから困る。

 

 

あとガンダムってなんだよ。

 

禁止されてるとかヴァナディースとか言ってるけど、そんなもん初耳やねん。

 

あと初対面の人とあんまり話せないんですよこちとら。目は合わせられるけど、でも話すことすら出来ないのかとか言われるのは、うん…僕のコミュニケーション能力の問題だったわ。

 

はいといいえしか答えられねえよ!

 

 

 

スレッタのことも聞いたけど、答えてくれなかった。

 

でも目の動きから察するに、多分スレッタも捕まってるし…きっかけはおそらくあの決闘。

 

 

スレッタがガンダムっていう禁止されたMSを使ってるって疑惑が出て、その結果スレッタと同じ水星から来た僕も拘束されたんだと思う。

 

 

でも僕のメリクシオもガンダムかどうかなんて分からないしなあ…。

聞かれても現状いいえとしか答えられないよ。

 

 

でも、こうなったら多分お母さんが動くはず。

 

 

私達に身動きが取れなくても、今回のことの説明をさせる目的できっと呼ばれる。

 

あ母さんは頭が良いから、きっと解決出来ると思うんだ。

 

 

でも、スレッタは大丈夫かな。きっとお母さんがなんとかしてくれると思うけど、それでも心配。

 

 

そうやって同じ質問に同じ質問で返すことを続けていたら、僕から有益な情報は聞けないと悟ったのか事情聴取は終わった。

 

 

で、今日記を書いているのに繋がるんだけど。

 

お腹すいたなあ…。

 

 

あれ、ブザー?誰だろ。

 

 

 

 

 

ドアが開くと、ひとりの男の子が来た。

 

緑色の髪に、これまた緑色の瞳をした人。

 

 

「お腹すいてないかな」

 

 

「あ……」

 

 

あああいつものが発動してしまった。何も言葉が返せず見ることしか出来ない…。

 

でもありがたいことに向こうから自己紹介してくれた。

 

 

「僕はエラン・ケレス。キミと同じアスティカシア生。係の人に代わってもらった」

 

 

わざわざここに来ることが出来て、係の人に代わって貰える…妙だな。

 

もしかしなくても偉い方の企業の生徒だよね…。

 

 

「もしかして、いらなかった?」

 

 

反応が薄い僕を見て首をかしげるエランさん。

 

いやそうじゃなくて…って首を振ってありがたく貰う。

 

うん、美味しい。

 

 

ひとりで食べるのは寂しいと思うし、こうしてエランさんが居てくれて良かったかも。

 

 

「キミは泣かないんだね、スレッタと違って」

 

 

??????

 

 

夢中になって食べてたら、爆弾発言が投下されたの巻。

 

 

「スレッタは…」

 

 

うん、スレッタとしか声が出なかったけど、、同じようにお弁当を届けてくれたんだよねって僕は聞きたかった。

 

そうだ、そうに決まってるよね。

 

 

「君のことも、教えて欲しい」

 

 

「???」

 

 

えーっと、そう!

 

ニアリス知ってます!口説いてるんですね!

 

自分で言うのもアレだけど、僕は見ただけじゃ男に見えないような容姿をしてるから…。

 

スレッタはこんな面の良いだけで僕のことを男と知らずに口説いてくるような男なんかに渡さないから!

 

そう、だからここは僕は男だと伝えつつはっきりと問い質す必要が…

 

 

「…僕、男」

 

 

ああ、二語しか出なかったよ…でもこれで誤解は解けるはず。あとスレッタのガード役は僕って主張も…。

 

 

「知ってる」

 

 

えぇ!?もしかして両方とも好きになれるタイプの人なの!?

 

 

「それは、なにを書いているの?」

 

 

「…日記」

 

 

あーもしかしてこの人、僕のことを質問攻めにするつもりだな?

 

 

 

 

 

 

 

「これより、審問会を始めます」

 

 

重苦しい沈黙が支配する、無機質な広間。

 

灰色一色に塗りつぶされた薄暗い空間の中で、唯一、鋭いスポットライトが照射されている中心点に、仮面の女…プロスペラは立っていた。

 

 

「シン・セー開発公社代表、レディ・プロスペラに問う」

 

 

高壇から見下ろすのは、ベネリットグループ総裁、デリング・レンブラン。その周囲には、グループを構成する企業の代表たちが冷徹な法官のごとく居並んでいる。

 

この場はもはや会議ではなく、形式ばかりを整えた魔女裁判であった。

 

 

「――お前は魔女か?」

 

デリングの重い声が広間に響き渡る。並の人間であれば、その威圧感だけで膝を屈してしまいそうなプレッシャーだ。しかし、プロスペラは仮面の奥で表情一つ変えずに答えた。

 

 

「いいえ」

 

 

「ヴァナディース機関とのつながりは?」

 

 

「いいえ」

 

 

迷いのない即答。窮地に陥った我が子、スレッタとニアリスへの愛ゆえか、あるいはすべてを見越した不遜ゆえか。彼女は余裕を崩さない。

 

 

「では、どうやって『ガンダム』を作った」

 

 

「エアリアルはガンダムではありません。我々シン・セーが開発した、次世代ドローン技術の実証機です」

 

 

エアリアルがガンダムであることを前提としたデリングの問いに対し、彼女はドローンであると主張することで、その前提自体を否定した。

 

その言葉に、グループ幹部たちの間に、どよめきが広がる。

 

 

 

 

「シャディク」

 

「はい、義父さん」

 

 

御三家の一角、グラスレー社CEOサリウス・ゼネリが、傍らに控える養子に促した。

シャディク・ゼネリは、普段の軽薄な着こなしとは一転、公の場に相応しい端正な装いで、記録されたデータから判明している事実を読み上げる。

 

 

「先の決闘において、あの機体は……パーメット流入値の基準を越えていました」

 

「これは、ガンダムの基幹システム…GUNDフォーマットの特徴を表しています」

 

 

しかし、プロスペラはその反論をあらかじめ予測していたかのように、穏やかな声で返した。

 

 

「もしあれにGUNDフォーマットが搭載されているのであれば、当然、データストームが検出されるはず。……いかがです?」

 

 

「……検出は、されていません」

 

 

シャディクの返答に、プロスペラは満足げに微笑む。

 

「従来のパーメットリンクを基にした操作技術です。グループの技術条項にも沿ったものと自負しております」

 

 

「それだけでガンダムでないとは言えないわ」

 

 

そこにペイル社CEOの一角、ニューゲンが割り込む。

 

 

「ですが、断言も出来ないでしょう」

 

 

「ならば、共に持ち込んだ『メリクシオ』というMSについてはどう説明するのかしら。エアリアルがドローンの実証機だと言うなら、この機体は?見る限り、極めてスタンダードな対MS戦用の設計に見えるけれど」

 

 

「メリクシオは、有人機における柔軟さを兼ね備えた高性能フレーム、及び高効率な機動制御のテストベッドです」

 

 

プロスペラは淡々と、淀みなく語る。

 

 

「水星という過酷な環境下で、いかに効率的に、柔軟に、かつ安全に採掘事業を行えるか。その基礎体力を突き詰めるための別ラインの試作機となります」

 

「エアリアルで培った技術を、既存の有人機へフィードバックするための基盤と言い換えても良いでしょう」

 

 

「笑わせるな」

 

ヴィム・ジェタークが鼻で笑った。

 

「採掘事業に特化させるなら、作業用MSを改良すれば済む話だ」

 

「わざわざ戦闘用の高機動機を造り上げ、あまつさえ学園に持ち込む必要がどこにある? 」

 

 

 

「レディ・プロスペラ。あなたはただ、エビデンスの欠落部分を言い訳にしているだけだ」

 

「黒を白と、言い張るつもりかね?」

 

 

そしてそこにサリウス・ゼネリからの追及も重なる。

 

 

「我々も末席とはいえ、ベネリットグループの一員です」

 

「カテドラルの協約も勿論存じております。ご信用頂きたい」

 

 

 

「その風体で信じろとでも?」

 

ヴィムが吐き捨てるように言った。顔の半分以上を覆う異様な仮面、それ自体が不信の象徴だった。

 

 

「――んん……?」

 

 

プロスペラは一呼吸置き、ヴィムを一瞥すると、おもむろに外套を脱ぎ捨てた。露出したのは、無機質な金属光沢を放つ右腕。

 

カシュ……という機械的な接続音と共に彼女はその義腕を外すと、あろうことかヴィムへと勢いよく放り投げた。

 

「おっと……!」

 

ヴィムの腕の中に収まった義腕は動力源との接続を断たれ、死んだ肉塊のようにだらりと脱力している。

 

 

「この腕も。仮面の下の顔も。すべて水星の磁場に持っていかれました」

 

 

プロスペラの声に、今度は明確な熱が宿った。

 

 

「水星は、あなたがたが想像する以上に死と隣り合わせの星です」

 

「しかし、エアリアルのドローン技術、そしてメリクシオで培った高効率な機動制御技術……それらを応用できれば、危険に身を晒すことなく、安全にパーメットの採掘が可能となります」

 

「どうか、エアリアルとメリクシオの開発を認めてください。我々には、グループの支援が必要なのです」

 

 

 

切実な訴え。広間には一瞬、毒気を抜かれたような静寂が流れた。

 

 

しかし――その沈黙を、デリング・レンブランは冷酷に断ち切った。

 

 

「いや。……あれらはガンダムだ」

 

 

「なぜでしょう」

 

 

「私がそう判断したからだ」

 

「異論がある者は居るか?」

 

 

圧倒的な独裁。しかしそこに口を挟むことの出来る者は居ない。

 

 

「決まりだ。あの二機は廃棄処分。操縦者の生徒二名は抹消とする」

 

 

だが、その時だった。

 

 

「……何の用だ」

 

 

コツコツと、静まり返った広間に硬い足音が響く。

 

 

「ミオリネ」

 

 

現れたのは、デリングの実の娘、ミオリネ・レンブラン。

彼女は居並ぶ重鎮たちの視線を撥ね退け、総裁席に座る実父を真っ向から睨みつけた。

 

 

「あんたに一言言いたくてやって来たの」

 

「自分で決めたルールを……後から勝手に変えるな!」

 

「この、ダブスタクソ親父!」

 

実に見事な、そして子供にしか許されない直球の罵倒である。

 

実のところ、彼女は最初からここへ来るつもりなどなかった。

 

この審問会が行われているその隙に、地球へと逃げ出すはずだったのだ。だが、あの赤毛の少女が発した言葉が、逃げようとした彼女の背中を無理やりこの場へと押し戻したのだ。

 

 

デリングは娘の叫びを、価値のない雑音として切り捨てた。

 

 

「ここに立てるのは……ベネリットグループの、それも上位企業の力ある者のみ。だがお前は違う。何の力も持たない、ただの学生でしかない」

 

 

「あんたっていつもそう。上から目線で説明もなしに勝手に決める!」

 

 

全くもってその通りである。

 

デリング・レンブランという男は、経営者としては一流でも、父親としては「報・連・相」の概念すら欠落した三流以下の不器用者なのだから。

 

 

「説明も相談も必要ない。私が決め、お前が従う」

 

「娘だからといって、私と対等に物が言えるとでも思ったか」

 

 

公の場ゆえの厳格さと取ることもできるが、あいにくこの男、プライベートでもこの調子である。

 

仕事は超弩級にできる癖に、育児に関しては「落第点」という言葉すら生ぬるいほどに無能であった。

 

 

ちなみに、彼の言葉を分かりやすく翻訳してやるとこうなる。

 

 

『娘だからといって特別扱いはできない。もっと分別を弁え、思慮深く行動してほしい』

 

 

最初からそう言えば済む話だが、その親としての歩み寄りが絶望的にできないからこそ、この父娘関係は修復不可能なレベルまで拗れきっているのである。

 

 

「何それ……あんた王様?」

 

 

「そうだ」

 

 

デリングは一切の揺るぎなく断じる。

 

 

「私には力がある。だがお前にはない。力なき者は黙って従うのが、この世界のルールだ」

 

 

理屈としては至極正論。だが、娘に掛ける言葉としては間違いなく論外だろう。

 

ここが他企業の経営者も集まっている場所であるとしても、この物言いはひどいと言わざるを得ない。

 

 

退出を促す側近の手がミオリネの肩に掛かる。だが、その指先を振り払い、彼女は心の中に火を灯した。

 

 

(進めば、二つ……)

 

その呟きは小さく、誰の耳にも届かなかっただろう。

 

だが、その言葉との出会いは、確実に彼女の魂を塗り替えた。

 

 

「だったら、決闘よ」

 

 

「……ん?」

 

 

「私たちが勝ったら、スレッタを私の婚約者として認めること。それと――ニアリスの退学処分も、機体の廃棄も、全部白紙にしなさい。負けたら全部、好きにすればいいわよ」

 

 

「……私の話が理解できなかったのか?」

 

 

確かにある意味ではその通りだ。力のない学生が何を言ったところで、システムの前では無力に等しい。

 

だが、娘の人生を左右する婚姻関係よりもルールの整合性を優先するあたり、本当に親として気にすべきポイントがズレきっている。

 

 

「あんたが決めたルールで戦うって言ってんのよ! 自分が決めたルールくらい、責任持って守りなさいよ! 大人なんでしょ!」

 

 

これもまた、ぐうの音も出ない正論であった。

 

ろくな説明も対話も拒んできたデリングの独裁は、ミオリネの視点から見れば、ダブルスタンダードを極めた横暴な「クソ親父」の振る舞い以外の何物でもなかったのだから。

 

 

 

 

 

…重苦しい沈黙を切り裂いたのは、ヴィム・ジェタークの声だった。

 

 

「意見、よろしいでしょうか」

 

 

「……」

 

 

「偶然とはいえ、あれは我が社の誇るディランザを撃破した機体です。今しばらくの間、運用を検討してみてはいかがでしょう」

 

 

提案するヴィムの顔には、隠しきれない野心の笑みがべったりと張り付いている。

 

 

「どういうことだ」

 

 

「近年の市場では、他社のモビルスーツにシェアを奪われつつあります。あの機体は、グループの業績を回復させる起爆剤になり得るかと」

 

 

そこへ、床に落ちていた外套を拾い上げ、何事もなかったかのように身に纏ったプロスペラが滑り込むように追撃する。

 

 

「学園での決闘は……エアリアルの、そしてメリクシオの実証試験として極めて有用と考えます」

 

 

「機体の技術情報は提供してくださるのでしょうね?」

 

 

ハイエナのごとき嗅覚でニューゲンが食いつき、プロスペラは「もちろんです」と、微笑んで即答した。

 

 

だが、ガンダムの呪いを誰よりも忌避するサリウス・ゼネリだけは、冷徹に難色を示す。

 

 

「何を勝手に……。カテドラルの協約を破る気か?」

 

 

御三家それぞれの思惑が衝突し、広間にどよめきが伝播していく。まさに魑魅魍魎の巣窟だ。サリウスは瞳を細め、さらなる懸念を口にした。

 

 

「……エアリアルはともかく、メリクシオはまだ決闘の場に立ってすらいない。その価値、どう証明するつもりだ? レディ・プロスペラ」

 

 

「でしたら……」

 

 

プロスペラは、仮面の奥で楽しげに目を細めた。

 

 

「御三家からそれぞれ一機ずつ機体を出していただき、メリクシオとの特別決闘を行うのはいかがでしょう? 三対一、制限時間内にメリクシオのブレードアンテナが残っていれば、こちらの勝利ということで」

 

 

この狂った提案に、まずヴィムが、次いでニューゲンが即座に乗った。

 

 

「我がジェターク社は賛成しましょう」

 

「ペイル社も同じく」

 

 

カテドラルの守護者であるサリウスだけが、呆れたように吐き捨てる。

 

 

「正気か? あまりにも無謀なハンデだぞ」

 

 

サリウスの指摘は至極まともだ。いくら回避に専念できるとはいえ、一対三の包囲網を凌ぎ切るなど、普通ならならまず不可能である。

 

……が。

 

 

「問題はありませんよ。勝ちますから」

 

 

プロスペラは、まるで明日の天気を予報するかのような軽やかさで言い放った。

 

 

(……何よ、この仮面女。頭おかしいんじゃないの!?)

 

 

先ほどまで啖呵を切っていたミオリネが、あまりの身勝手なハードルの上げっぷりに、ドン引きどころか恐怖すら感じていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

エラン・ケレスが去り、再び静寂に包まれた独房。

 

無重力空間に逆さまに浮きながら、ニアリス・マーキュリーは淡々と日記にペンを走らせていた。

 

その時、扉がカシャっと解錠され、スレッタとミオリネがなだれ込むように入ってきた。

 

 

「ニアリス!」

 

 

「あ……スレッタ。ミオリネさんも……?わっ」

 

 

勢いそのままに、スレッタが、そしてミオリネまでもがニアリスを抱きしめたような形でぶつかった。二人分の熱量と重みを受け止め、ニアリスは数回、ゆっくりと瞬きを繰り返す。

 

 

「……何書いてるのよ、こっちが死ぬ気で交渉してた時に!」

 

ニアリスをぎゅっと抱え込んだまま、ミオリネが恨めしそうに声を上げた。

 

 

「……二人とも。外、出られるようになったの?」

 

 

「……っ、あんた、普通に喋れたのね。というかこっちは必死だったってのに、そっちはのんびり何を書いてるのかって聞いてるのよ」

 

 

その返答に、ミオリネが呆れるのも無理はなかった。

 

ニアリスという少年、初対面の相手には貝のように口を閉ざす癖がある。だが一度その相手の人となりを理解すれば、驚くほど滑らかに言葉を紡ぎ始めるのだ。

 

彼が沈黙するのは、膨大な情報から相手の本質を読み解こうとする際、脳内の処理能力が限界を迎え、一時的な処理落ちを起こしているようなもの。

 

温室で見せた彼女の孤独と反発、決闘で見せた意志の強さ、そして今、おそらくすべてを賭けて自分たちを助けに来たであろうその優しさ。

 

それらを繋ぎ合わせ、ニアリスの中で「ミオリネ・レンブラン」という人間のプロファイルが完結した。だからこそ、彼はもう彼女の前で言葉を止める必要がなかった。

 

 

「えっと……日記だけど」

 

 

「日記? こんな場所に閉じ込められてて、書くことなんてあるの?」

 

 

ミオリネは首を傾げる。だが、ニアリスは至って真剣に、その深い瞳で彼女を射抜いた。

 

 

「あるよ。……例えばミオリネさんが僕たちのために動いてくれて、こうして助けに来てくれたこと、とか」

 

「ありがとう、ミオリネさん」

 

 

 

「……っ!」

 

 

不意打ちだった。

 

真っ向から、自身の行動に感謝されたミオリネは、急速に頬が熱くなるのを感じ、慌てて視線を泳がせた。

 

 

「変なこと書くんじゃないわよ、バカ!…別に、あんた達の為にやったことじゃなくて、これは…」

 

 

「?」

 

 

「と、とにかくいい? 決闘よ。スレッタはグエルと一対一で、あんたは御三家それぞれのパイロット科から選出された精鋭と、三対一でやり合うことになる」

 

 

単純にスレッタのものと比べると、敵の数が三倍に増えている辺り、無理難題を極めているだろう。そう自ら提示しておきながら、ミオリネは喉の奥が引き攣れるような不安を覚えていた。

 

 

「勝ちなさい。負けたら全部、終わりよ」

 

 

「うん、分かった」

 

 

「……ちょっと、本当に自分の置かれた状況分かってるの!? あんた、三対一なのよ。負ければ退学、機体は解体、スレッタだって……本当に、勝てるの?」

 

 

ミオリネの問いは、祈るように震えていた。

 

だが、ニアリスは手帳を閉じると、口角を上げ、笑みを浮かべた。

 

 

「勝つよ」

 

 

勝てるか勝てないかではない。彼は「勝つ」と宣言した。

ただの妄言ではなく、現実を見たうえで、彼はそう言ったのだ。

 

その勝利を確信した笑みがミオリネにはあまりに眩しく、そして得体の知れないほど頼もしく映った。

 

 

「……そう言うのなら、絶対勝ちなさいよ!…これは、取引だから」

 

 

ミオリネは吐き捨てるように背を向け、逃げるように独房を飛び出した。

そこを後ろから、スレッタとニアリスが話しつつ付いてくる。

 

 

頬の赤らみが引かない。心臓の鼓動が、先ほどまでの焦りとは別の理由で速まっている。

 

 

(何よあいつ。あんな風にちゃんと喋れるなら、最初から言いなさいよ……)

 

ミオリネは動揺を隠すように動きを早めながら、あの日記に今の自分の顔まで書かれてしまうのではないかと、妙な気恥ずかしさに身を焦がしていた。

 




メリクシオ

型式番号:X-VX02
全高:18.2m
重量:38.2t
所属:シン・セー開発公社
パイロット:ニアリス・マーキュリー

武装
ビームライフル
ビームサーベル×2
頭部ビームバルカン×2



シン・セー開発公社が建造した試作MS。

エアリアルとは別ラインで製造されたMSであり、対外的には高効率な機動制御及び柔軟なフレームの実証機とされている。

その為エアリアルのようなオールレンジ兵装は搭載しておらず、極めてオーソドックスな武装構成となっている。

尚、エアリアルにはニアリスも乗れるもののメリクシオにスレッタが乗ることは出来ない。


因みにメリクシオはエアリアルと仲が良い。

昔のアニメやら漫画やらをどこかからかダウンロードしたりして二人に見せることも多々あるが、エアリアルがふたりの教育に悪いと怒るので性的な描写のある作品は意図的に排除していたりもする。

その結果、スレッタとニアリスには性知識がほぼない。
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