人類を見守ってきた超長命種が魔法の祖であったなら?を書いています
あとヴァルプルギスの夜らしいので投稿してます
まだ続きは書いてないです
「そこのフードの人、ちょっと顔を見せてもらっても?」
騒がしい繁華街から少し外れた、ゴミの転がる路地裏。ポッケに手を突っ込んだその者は、魔法警察に背を向けたままだった。
「いやぁ最近治安が悪くなったでしょう?簡単な身元確認だけでいいので」
「ケーサツが自分で言っちゃうんすかそういうの」
「まあ事実ですから。さて、協力してもらえませんか?」
「…身分証今持ってないんスけど」
「顔だけでも見せてもらえない?」
魔力を通していつでも術を起こせるようにして、警察──巡検官は歩を進める。もうすぐで手の届く距離になった瞬間、フードの者は振り返った。
「キヒッ」
巡検官は目を見開いた。笑う口から覗く金歯。金に輝く瞳孔。フードに隠れて見えないが、おそらくこの男はスキンヘッドに龍のタトゥーを入れている。
巡検官の脳に記憶された指名手配犯。数日前帝都の大通りの銀行で強盗殺人を犯し、追跡にあたった警備員や警察すらも掻い潜り逃走を成功させ、帝都を混乱の渦に沈めた快楽爆殺犯。逃走したのち、遠隔で爆発させた仕込み爆弾によって銀行を根こそぎ吹き飛ばした、狂気の破壊者。
奴はさらにその顔を歪めて、巡検官の足元へ何かを投げつける。
「爆ぜろォ!」
瞬間、彼は足元からの爆風に巻き込まれた。
『肉爆弾』。先日帝都の銀行で強盗殺人を行った、重罪を犯した犯人の二つ名だ。名の通り、血飛沫をあげる爆弾を扱い銀行を襲った。爆弾の威力は強烈で、1つでも大金庫の扉の施錠装置を破壊するほどだった。
「死んじゃった♪死んじゃった♫」
肉爆弾本人は爆弾の火力を信頼している。そして、爆殺が大好きだ。だからこそ、巡検官を躊躇なく爆殺した。
爆発する寸前の、あの理解が及ばない思考が止まった表情…悲鳴すら上げられずに、全て消し飛ばされた巡検官。
うーむ、実に
誰かの目に留まりたいわけではなかった肉爆弾は、スキップしながら場を後にした。
「まだやりたいことがあるからなァ」
巡検官の名を、アマキという。
まだアマキは捕縛隊に配属されてから2年の若手だが、優秀な魔法士だった。残念ながら信仰心だとか呪術的適正だとかがあまりなかったのでその類の魔法は使えなかったが、魔術の腕に関しては、警察学校の教官をもってして優秀とされていた。
学校の実技試験にて、純粋な戦闘用魔術ではないもので成績トップを掴み取った彼の実力はそれはそれは素晴らしいモノだった。1年次の組み手の試験で相手取った教官を前にして、鈍らない魔術行使で教官を叩きのめしたのだという。入りたての学生はほとんどが試験で緊張して魔術が鈍り、そのまま教官にぶっ飛ばされるのがお決まりだったが、彼はそれに屈しなかったのだ。
また、人柄・性格も良い。小さい頃から人助けを心がけ、小学校で起こっていたイジメを真っ向から否定し、粉砕。中学会では一つ上の学年で起こっていた学級崩壊を武力で持って制圧、改善───という話まである。
加えて、歳の離れた妹がいるらしい彼は子供の扱いも長けていた。幼稚園に通う妹を迎えに行って、他の子供達に揉みくちゃにされているのをよく他の保護者達に目撃されていたらしい。子供達は大層懐いていて、彼が警察学校に行くことになってもう幼稚園に来れないと子供達が理解した時には、号泣と悲鳴の大合唱だったとか。
近隣住民とも仲が良く、休日は庭に集まってBBQを楽しむのが日常だと彼は語る。今でも定期的に実家へ帰り、肉を頬張っているようだ。
彼の実家の隣に住むアラモフさん曰く、彼は『なんでもできちゃう超人』であるらしい。
優しく聡く強い。魔法の腕も素晴らしいときたもんで、配属前の巡検庁では配属先の奪い合いが起きていたとかなんとか。それはもう相当であり、決闘騒ぎが起きかけたとかなんとか。
まあつまるところ。
絵に描いたような彼が。
優秀な彼が足元からの爆発程度で死ぬわけがないのである。
『アマキ!生きてるか!?』
「生きてますよ!くそ、隊服が焦げ…うわ血が付いてる」
『…なんだ、へっちゃらだな。流石首席クンだぜ。ヒュー』
「隊長、言ってる場合ですか!奴は?」
魔法警察に必須とされている基本の魔術、[盾の魔術]。
それと、彼が得意とする[巻き戻しの魔術]の併用によって、彼は致命傷を避けていた。2つの魔術の並行起動は高等技術なのだが、なんなくこなしている。隊長も口笛を吹いて讃えるほどである。
しかし爆発は血煙によって煙幕となり、指名手配犯"肉爆弾"ことアカルガの逃走を手助けしていた。すでにアマキの視界に奴はいない。
『大丈夫だ、ルルーが追ってる。しかし[生物を爆弾にする魔法]、なかなか出力が高く見えるな』
「とっとと止めないと」
『わぁーってる、俺ももう着く。それに今日のアカルガの野郎は運がないからな、休んでてもいいんだぜ?』
「治安保護捕縛隊の隊長が何言ってんすか!」
同僚のルルーから言葉なく送信されてくる位置情報を元に、通信先の隊長に文句を言いながらアマキは路地裏から飛び上がる。身体強化の魔術も練度が高い彼は、瞬間的な強化ですら並の術師の出力を上回る。屋根の上を駆ける彼は、猛進を開始した。
しかし、運がないとはどういうことだ?
「アイツがアンラッキーな話とか知らないんですが」
『違う違う。ほら、向こうの大陸から帰ってきてんのよ』
「…マジですか?予定よりだいぶ早いですよね」
『マジよマジ』
『はじまりの魔女様、調査が早く終わったんだっつってもう帰ってきてんのよ』
現在、魔暦874年。これより約8500年前に、魔法が生まれた。
はじまりの魔女とは、魔法の開発者その人である。
「ご協力、本当にありがとうございます!」
「いいんです。それより、追跡は誰が?」
「ルルー巡検官です!直接発見したのはアマキ巡検官です」
「捕縛隊の
(あわわわ…魔女様にお褒めの言葉を頂いてしまったっ…!しかも名前呼ばれたあー!!なんだ、今日は私の命日か…?)
魔法警察は、1つの隊に1人のオペレーターを就けることを義務付けている。治安保護捕縛隊[氷の隊]のオペレーター、ツツマキははじまりの魔女とのやり取りをしながら、大興奮していた。
なんたってそう。ツツマキは、はじまりの魔女のファンであった。
はじまりの魔女は、様々な役職や階級、特権を持っている。
その中の1つが、魔法警察の特別協力者。帝国の設立と共に生まれた魔法警察と共に、はじまりの魔女は今日まで犯罪者を捕え続けている。彼女に救われた者、魅了された者は多い。ツツマキもそんな1人だった。幼い頃に彼女に救われたツツマキは、善たるを目指すようになったのだ。
帝都の地図に、赤い点が走っている。ルルーの座標を示すものだ。かなりの速度で移動していることから、アカルガも追跡されているのに気が付いている様子。
「随分とすばしこいですね、この者は」
「帝都の銀行を吹き飛ばした奴ですよ?身体強化術の腕も相当でしょうね」
「…銀行を吹き飛ばした…?」
固まるはじまりの魔女。わなわなと震える体から、次第に魔力が溢れ出す。研究者でもある彼女は、最近まで海を渡って別の大陸での調査を行なっていた。だから、つい先日起こった銀行爆破事件に関して何も知らなかったのだ。
「ま、魔女様、落ち着いてください!知ってますから、魔女様のお気に入りの銀行の隣のワッフル屋が気になるんですよね?!大丈夫です吹き飛んでませんから!」
帝都の銀行の横にあるワッフル屋。創立してから歴史が長いわけではないこの店。しかしはじまりの魔女がここのワッフルを気に入り、入り浸っているという話はファンの間では有名だった。
だが、つい先日の爆破事件。隣の建物が全部吹き飛んだというのはワッフル屋にとっても大事件であったのだ。ワッフル屋は今日、臨時休業している。
「そうか…そうだったのか」
「なにがですか…?」
「大陸から帰って食べようと思っていた、私が船の上で待ちに待った、苺乗せキャラメルワッフル×チョコレートクリームが食べられなかったのは…!それどころかワッフル屋が閉じていたのはッ…!!この逃走班のせいだと言うのですねツツマキ巡検オペレーター…!!」
「ハ、ハイ」
あ、なんかヤバそう。────と、ツツマキは直感する。目の前で暴風のようにも感じられる魔力のうねりはさらに激しさを増すばかり。
魔女様すんごい笑顔だけど目が笑ってないよ。瞳に狂気に近い怨嗟が宿ってるよ。
子供に見せられない顔をした魔女は、ツツマキを見つめる。
「出撃許可を」
「えぇっと、ま魔女様?公私混同はよくないっすよ」
「許可を」
「魔女様、ここに来られたのってただの暇つぶしでしょ?!長官を待ってる間の暇つぶしでここに来たんですよね?!」
「許可を」
「え、えっとぉ…ここで許可出しちゃうと後で私が激詰めされちゃうっていうかぁ」
「許可」
「ひぃん…まじょさま、だめだよぅ…居ないって長官にバレたら私…」
「ツツマキ・アラタバ巡検官。好物は味噌ラーメン、苦手な物はパクチー。特技はフラフープとリコーダー演奏。趣味は私のブロマイドブック作りと私の写真集を買い漁ることと私の握手会の思い出を夜寝る前に反芻することと夜寝る前に自作した私の抱き枕に香水をつけてぎゅっと抱きしめて甘い言葉を囁きながら」
「許可ッ!めっちゃ許可します!すっごい許可しちゃう!あぁもう許可ったら許可!出撃許可しますぅッ!!!」*1
1話のくせに魔女様に関して全然書けてないし続きは書いてない
見切り発車はやめろと自戒したのにも関わらず発車した私の罪状はなんでしょうか…