はじまりの魔女様   作:TRTRMG

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 最近本当に暑い。
 私の部屋のカブトムシ幼虫ちゃんも辟易していることでしょう…
 読者の皆様も、体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。


 あとこの小説に本当に全く関係ないどうでもいい話なんですけど、モンハンに雪原マップを実装してほしいです。セクレトでもガルクでもいいので、雪っぱらを駆け回りたいのです。ついでに涼しそうなので。




3:あの、すごく赤いんですけど

 日が登って、日付が一つ進んだ。

 

 結局、爆弾に変えられた人達は日が変わる前に旅立っていった。魔女様も勿論協力してくれたが、極短時間の生命活動を許されていただけのようで、すぐに魔女様ですら手がつけられない程にまで衰弱し、息を引き取っていった。

 

 今まで人を見送った経験がないわけではなかったが、魔術…ではなく呪術によってヒトとしての形を歪められて、手のひら大の大きさにされた人を見送るのは流石に初めてだった。

 被害者の方々は、魔女様が今日のうちに巡検庁管轄の墓に埋葬するのだと伝えられた。昨日の魔女様の言葉が気になるが、多忙なお方だ。すぐには会えないかも。

 

 

 アマキも隊長も、肩を落としてたな。特に隊長。ここまで非道な呪術師だったことを誰も知らなかったし、そもそも昨日の隊長は非番だったんだし、仕方のないことだった部分もあるとは思うのだけれど、それでも悔やんでいる。

 

 

 

 

 それはそれとして、強盗殺人犯を捕まえた手柄はある。捕縛した時騒ぎになっていたのも助けたのか、被害者の遺族や銀行員達からはすぐに感謝の文が届いた。ありがとうありがとうと、直接庁舎に来られて感謝を伝えられた方もいらっしゃった。

 

 アカルガの拘束で救われた方がいる一方、素性すら分からない被害者がいることが判明した今回の騒動。身元不明の被害者の照会や、アカルガへの尋問、そしてアカルガにこの呪術を伝導した謎の人物。

 未だ収束を見せないこの事件は、私の心に蟠り(わだかまり)を残していった。

 

 

 

 

 昨日爆弾に感じた違和感というのは、爆弾が魔力を保有する人で作られていたからだった。私の座標の魔術の座標操作は、対象物に私の魔力を纏わせて操るもの。その対象が他者の魔力や魔素に浸されているものであればその魔力ごと覆うように纏わせる必要がある。

 

 だが、自分から魔力を生み出すような人間や魔因性生物の場合は、覆った魔力の内側から対象物の魔力が突き破ってきてしまい、操作に粗が出て座標操作が不可能になることがある。

 

 座標停止自体は、対象に明確な抵抗を含む魔力の流れがなければ打ち破らない。そのために空中で停止させた時点で気付かずに、人だと思わずに魔力を纏わせた結果、私の魔力が突き破られて思い通りに座標の魔術の対象にできなかった。

 

 

 

 その時点で、私は気づくべきだったんだ。ただの血を詰めた嫌がらせに近い血袋爆弾などと思ってしまった。愉快犯に近いものと、そう思ったんだ。

 

 

 

 爆弾にされた人たちは、どこまで意識があったのだろう。

 

 爆発するその瞬間まで、手のひらサイズにまで小さくされた体で震えていたのではないか?

 

 泣くための機能も器官も奪われて、どれほど苦痛だったろう?

 

 子どもであったのか大人であったのか、どんな人間だったのか。どんな友人が居て、どんな家族と暮らしていたのだろうか。それすら分からない死に方で、どれほど寂しいだろうか。

 

 

 私はもっと、何かできたんじゃないかと。

 昨日はよく眠れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルルーさん、アマキさん。準備はできてますか?」

 

 

 あれ?多忙なのでは??

 

 

 

「魔女様、なんで家に…てか被害者の埋葬は終わったんですか?」

「夜のうちに済ませましたよ。私が不眠なのはご存知では?」

「そうだった…人外なんだった…待って、なんで家知ってるんですか」

「…てへ?」

「表情変えずにそんなこと言われても恐怖は引きませんよ」

 

 

 

 何千年も生きている魔女なら、知り合いの住居の特定くらい朝飯前。ただし、使ったのは魔法ではなくコネ(皇帝の権限)だが。

 今日は捕縛隊統括隊長が『疲れたろうし、少し休んできなさい』と言い渡してきたので、氷の隊の皆は休日となっている。ルルーは休みたい気分だったのでちょうどいいと、だらだらしていたのだった。

 

 

 

「そもそも、なんの準備なんですか…私まだ眠いんですけど」

「昨日火炎唐辛子を貰ってきたと言ったじゃないですか。あれですよ」

「…冗談じゃないんですか?」

「沢山あるので隊員の皆にも分けようかと!」

「……冗談ですよね?」

「?」

 

「ルルー、誰か来てるの?」

 

 

 

 冗談と言わずに笑顔を崩さない魔女に呆然とするルルーの背後から、アマキがのそのそと現れた。彼も同じく疲弊し、ルルーと一緒にだらだらしていて寝癖がついたまま、素足でペタペタ歩いてくる。

 

 あくびをしながらぽやぽやとした表情で玄関を見やるアマキの視線が、眩しい笑みを浮かべる魔女を捉える。

 ほぼ寝起きの彼の脳が瞬時に覚醒した。前にこんな笑みを浮かべた魔女が珍味と称した謎のトカゲの尻尾を食べさせられ意外と美味であることに感動していたら全身の毛という毛が発光し始めたことがあったなとか、こんな笑みを浮かべた魔女様が手に持つ何かをイナサ隊長の口にヘッドロックをかけつつねじ込んだ結果、イナサ隊長がぶっ倒れるのを見たことある気がするなとか、なんか嫌な予感がするなとか、色々頭に浮かんだ結果。

 

 

 

 

 瞬時にルルーに駆け寄り、お姫様抱っこの要領で持ち上げる。と同時に、魔女の傍を通り抜けて脱出した。

 

 女の子みたいな悲鳴をあげ抗議の声まであげるルルー*1を一旦無視して、全力で逃走を開始した。

 

 

 

「何かわかんないけど遠慮しますーッ!」

 

「…」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「その後即捕まってこの有様ってわけですか。全く、魔女様のお誘いを断るからですよ!」

「ツツマキ先輩は怖くないんですか?!あの鍋やばい香りしてますよ?!」

「刺激的でいい匂いですね!」

「アマキくん、諦めなさい。ツツマキは魔女っ子*2なんだから」

「お、おわった…」

 

 

 

 巡検庁舎、食堂のレンタルスペース。近くを通る食堂の利用者がギョッとして見るほどに、異様な空気と匂いが生産されていた。

 つい昨日指名手配犯を捕縛した氷の隊の面々が、オペレーターを除いて全員縛り上げられ、絶望の表情を浮かべている。そして、魔女とツツマキが鍋を囲んでいるのだが、そこから凄まじい匂いがしているのだ。ひたすらに鼻をつく、危険な匂い。

 

 哀れなり、被害者一同。見慣れた者にはいつもの光景だが、その中でも体験したことのある者(元被害者)は目を逸らしたくなるメイビー地獄絵図。

 

 魔女の創作料理。世界に充満する魔素と魔力によって、植物を含めて生物は魔因性突然変異を起こすようになった。つまりは、世界各地でオンリーワンな存在が出現するようになったということ。

 何千年も生きている魔女は、そんな生物(食材)を使った料理を趣味としていたのだった。

 

 

 

「よーし、いい感じですね魔女様!」

「ではイナサ。口を開けなさい」

「俺何か悪いことしましたっけ?!」

 

 

 

 魔女の持つ椀から、狂気的な刺激臭が漏れ出ている。魔女が大陸の土産として貰ってきた唐辛子がふんだんに入ったそれは、煮え立つマグマの如き様相を成していた。

 食べたら火を吹いて死ぬ。そういう魔法をかけた食べ物だよと言われても嘘とは到底思えないような凄みが溢れ出している。

 

 

 

「ほら私直々のあーんですよ口を開けなさい食べなさいよ」

「受け取ってください隊長!魔女様の料理ですよ!」

「本当に心当たりがないんですけど?!」

「…本当に?」

「ない!!」

「イナサ、貴方私のお菓子食べたでしょう」

「…」

「ポップコーン」

「……」

「数量限定の、苺チョコ味」

「………」

 

 

 

 キスしそうな距離で無表情でガン詰する魔女と、無言でそっぽを向いて冷や汗を滝のように流すイナサ。と魔女に便乗して、鼻歌を歌いながら魔女のスープを人数分よそい始めたツツマキ。

 

 アマキは魔女の菓子の恨みに巻き込まれることを察し、困惑と怒りが混ざり合った顔でイナサに絶対零度の視線を突き刺し、一方ルルーは絶望し天井を見つめながらシミを数えることにした。

 

 

 

 混沌(カオス)と化す場の空気。ちらほらいた野次馬はとうの昔に逃げ出した。もはや仲裁者も妨害者も、救済者もいない。

 

 

 

 

 

「作りすぎちゃったので、皆さんもどうぞ召し上がってくださいな」

 

 

 

 これはハラスメントでは?涙を流しながら、ルルーは絶望を口に突っ込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「全く、魔女様も無茶苦茶なさる」

 

 

 

 捕縛隊統括隊長、バルトローグが遅めの昼食をとりに食堂に来た時には、氷の隊は(ノリノリで食べて辛さに悶絶していたツツマキまで)()()()()()()()()()()()()()()()()

 全員が魔女の魔法で作られた、綿のような雲の上で静かな寝息を立てている。

 

 ピークを過ぎた食堂の数少ない利用者達は、昨日の捕獲劇を把握しているのだろうか。

 大きな音や声をたてないように、距離をとって食事していた。

 

 

 

「そうかしら?」

「どうせ催眠の魔法か何かでもかけてたんでしょうが…そのまま食べさせたんですか?」

「折角の私のスープよ、辛さまで味わってもらわなきゃ。味覚鈍化なんてさせないわ」

「はは、手厳しい」

 

 

 

 バルトローグは焼き鮭定食をチョイス。カリカリの皮がお気に入り。

 

 

 

「彼らへの気遣い、感謝します。ですが、あれらはきっとそれぞれでも乗り越えられたでしょう?」

「私はお節介で心配性なの。伊達に何千年も魔女やってるわけじゃないわ、過去にこうやって潰れた人を何人も見てきてる。貴方も見てきたでしょう?」

「…まあ、確かにその通りですがね。ですが氷の隊は強いでしょう」

「全くもって、ね。1番最初にバテたアマキくんですら、あのスープ3口いけたしね」

「そういうことではなく…」

「冗談よ」

 

 

 

 

 魔女はバルトローグの隣で、茶を飲んでいた。器用にティーカップを浮遊させ、同じく浮いている自身の口に器用に運ぶ。その顔は、遥か遠くを見つめている。

 遠いあの日を思い出しているのを感じたバルトローグは、自身も思考をあの日に飛ばした。

 

 退路を絶たれた、戦争末期の血と鉄と死骸で彩られた戦場。魔女達を逃すために囮になると言い出した彼女の顔が、脳裏に焼きついている。

 故郷に子を残したままあの場に居た、彼女の覚悟の言葉と共に。

 

 

 

「あの呪術が、まだこの世に残っていたとは」

「とっくに失伝したと思っていたのだけれど。逃亡兵か、重症で後ろに下げさせた彼か…かしらね」

「そうは思いたくないですね。あの時の彼らの決断を愚弄する行動ですよ」

「顔を真っ赤にして怒りそうね、彼女なら」

「懐かしいです。今でもありありと思い出せますよ」

 

 

 

 飲み終わったティーカップを時空の狭間に放り込み、魔女は身支度を始めた。そこまでの荷物を持っていないので、話をしながらでも、ものの10秒ほどで済んでしまう。味噌汁を飲んでいたバルトローグは、反応が遅れた。

 

 

 

「もう行かれるので?」

「ええ。さっさとやらないと鮮度が落ちてしまうだろうし」

「頼みます。本業もお忙しいでしょうが、お願いします」

「いいのよ。我が子からの頼みですものね?」

「…ヒプノがなにか言ってましたか?」

「『兄さんに暇なら帰ってくるよう言って』──って。いつでも帰って来なさい、私も歓迎するわ」

「…善処します」

「あはは、300年前にも同じこと聞いたわね?」

「今回は嘘でも冗談でもないですよ?」

「良い事聞いたわ」

 

 

 

 

 


 

 

 ────その呪術、臓物を火薬とし、肉体を弾殻とする────

 

 

 己のみにかけるが良い。他者に自爆を強要させるな。

 そんな腑抜けは私の前に来い。

 爆薬に変えてやる。

 

 人生最後をどう締めくくるかだ。故郷へ迫る火の手を振り払えるのは、最前線の私たちだけだ。

 覚悟を決めろ。

 魔力を回せ。

 

 お前達はなぜここに居る?

 なぜここまで戦った?

 行動の理由を見失うな。

 

 存在証明を、ここで果たせ。

 

 

 

 

─────古びた手記に掠れた文字が書かれている

 

 

*1
きゃあ!…って、彼女をいきなりお姫様抱っことか遠慮とか配慮とかないのか君は!だいたい、化粧もできてないし部屋着のままだし、抱えられたままで外に出るのは恥ずかし…そもそも相手魔女様だよ?逃げきれないって!今から戻って従いましょう?!え?魔女様の笑顔が怖い?そんなこと言っても何も解決しな(以下略)

*2
はじまりの魔女のファンの名称





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視点に関して、少々悩んでおります。読者の皆様はどうお考えでしょうか?

  • 一人称視点メインが良いだろう
  • 三人称視点メインが良いだろう
  • 一人称三人称混ぜ込んだ視点で良いだろう
  • 気にせんでええからはよ続き書け
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