プロセカの女の子たちと、ひたすら甘やかして甘やかされて溶かされる日常 作:雨風 時雨
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窓の外では、世界を優しく洗い流すような静かな雨が降っていた。
アスファルトを叩く一定のリズム。遠くの街の喧騒を遮断するカーテンのような雨音は、この部屋の静寂をよりいっそう深いものに変えていた。
薄暗い寝室。シーツの海の中で、俺は自分の中に深く沈み込むような、至福の重みを感じていた。
胸の上に、柔らかな青い髪が散らばっている。
俺の腕を枕にして、俺の胸板に顔を埋め、まるで宝物を守るようにしがみついているのは、世界で一番凛々しく、そして今、世界で一番無防備な少女――桐谷遥だった。
「……ん……。……あな、た……」
微かな呟きと共に、彼女の細い肩が震える。
彼女はまだ夢の淵にいるのだろうか。それとも、この微睡みの心地よさに溺れているのだろうか。
俺は空いた方の手で、彼女の柔らかな髪をそっと撫でた。さらさらとした指通り。昨日のメイド姿で見せた、あのヘッドドレスの跡など、もうどこにもない。そこにあるのは、ただ一人の女の子としての、ありのままの彼女だ。
「……おはよう、遥。まだ、眠いか?」
俺が耳元で囁くと、遥はゆっくりと、本当にゆっくりと、その長い睫毛を震わせて瞳を開けた。
潤んだ青い瞳が、焦点の合わないまま俺を見つめる。
やがて、彼女は俺が誰であるかを認識すると、顔を真っ赤に染め、さらに深く俺の胸元に顔を押し付けてきた。
「……おはようございます。……恥ずかしいわ。……こんなに朝遅くまで、あなたに抱き着いたまま寝てしまうなんて……」
「いいんだよ。今日は、世界が止まってしまったみたいに静かだし。……こうして遥の温もりを感じていられるのは、俺にとって何よりの幸せなんだから」
俺が彼女の背中を、服越しにゆっくりとなぞると、遥は「んっ……」と甘い声を漏らして、俺の腰に回していた腕の力を強めた。
アイドル・桐谷遥。かつての彼女なら、こんな自堕落な時間は自分に許さなかっただろう。
けれど今、彼女は自分の意志で、俺という甘い毒に溶かされることを選んでいた。
「……ねえ。……私、昨日のメイド姿の余韻が、まだ抜けないみたい。……あなたの前で、あんなに素直に『お仕えしたい』なんて言ってしまったこと……。……でも、後悔はしていないの。……むしろ、心が軽くなった気がするわ」
遥は顔を上げ、至近距離で俺を見つめてきた。
瞳の奥には、濁りのない深い愛情が、澄んだ湖のように広がっている。
「……ステージの上では、私はみんなに希望を届ける『桐谷遥』。……でも、この腕の中では、私はあなたに愛されることだけを望む、ただの『遥』。……ねえ、……今の私は、あなたにとって、どんな風に見えているかしら?」
問いかけながら、彼女は自分の指を俺の指に絡めてきた。
俺は彼女の指を一本一本、慈しむように握りしめ、その甲にそっと唇を落とした。
「どんな風にって……。……そうだな。……これ以上ないくらい愛おしくて、片時も離したくない、俺だけの可愛い小鳥だよ。……遥、君が思っている以上に、俺は君に依存してるんだ」
「……依存。……ふふ、素敵な響きね……。……私も同じよ。……あなたの温もりがなければ、今の私はきっと、冷たい偶像(アイドル)のままだったわ」
遥は俺の首筋に鼻先を擦り寄せ、深く、俺の匂いを吸い込んだ。
彼女の吐息が熱を帯びていく。
俺は彼女を抱きかかえるようにして、ベッドの中で体を反転させた。
今度は俺が彼女を見下ろす形になる。
シーツに広がった青い髪。その中に埋もれるようにして、遥が頬を染め、期待に満ちた瞳で俺を見上げている。
「……遥。……今日は、一日中こうしていようか。……雨が止むまで。……いや、夜が明けて、また次の夜が来るまで」
「……ええ。……いいわよ。……あなたの望むままに。……今日はもう、……完璧な私なんて、どこにもいないのだから」
遥は俺の首に腕を回し、引き寄せる。
重なり合う唇。
それは、第2話の時の情熱的なものとは違う、お互いの存在を確認し合い、慈しみ合うような、穏やかで深い、蜂蜜のように甘い接吻だった。
「……んっ、……ふ……、……あな、た……」
何度も、何度も角度を変えて唇を重ねる。
遥の小さな舌が、遠慮がちに、けれど熱烈に俺を求めてくる。
彼女の鼓動が、胸を通じて俺の心臓に直接伝わってくる。トクトクと、速く、確かなリズム。
俺はその鼓動を愛おしみながら、彼女の細い腰、滑らかな背中、柔らかな太ももを、慈しむように手のひらでなぞっていった。
営みのような激しさはない。けれど、そこにはどんな肉体的な交わりよりも深い、魂の融合があった。
お互いの境界線が消えていき、一つの温かな塊になっていく感覚。
「……はぁ、……あな、た……、……愛しているわ。……一生、私の隣にいて。……私の希望は、……あなたそのものなのよ」
「遥……。……俺も、愛してる。……君がどんなに遠くへ行っても、俺は必ず君の帰る場所で待ってるから」
俺たちはそれから、雨音が遠のくのを感じながら、断続的にキスを交わし、とりとめもない会話を続けた。
かつて彼女がアイドルを辞めようとした時の苦しみ。再びステージに立つことを決めた時の覚悟。そして、その傍らに常に俺がいたこと。
思い出のひとつひとつを、甘い砂糖菓子を味わうように二人で振り返る。
「……ねえ。……私、アイドルとしての目標はたくさんあるけれど。……一人の女の子としての目標は、たった一つしかないの」
「何?」
「……おばあちゃんになっても、こうしてあなたに膝枕をしてもらって、……『遥は今日も可愛いね』って、言ってもらうことよ」
遥は悪戯っぽく微笑むと、俺の腕を自分の胸元に引き寄せた。
その仕草は、第1話の時のストイックな彼女からは想像もつかないほど、可愛らしく、甘えに満ちていた。
昼過ぎ。雨は小降りになり、雲の隙間から、まるで祝福のような淡い光が差し込んできた。
俺たちはようやくベッドから這い出し、遅い朝食を二人で作った。
エプロン姿の遥――今日は普通の、俺の大きなエプロンだ――が、キッチンで鼻歌を歌いながらパンを焼いている。
その背中があまりにも幸せそうで、俺は後ろからそっと抱きついた。
「……っ、ふふ。……もう、あなたは本当に甘えん坊さんね」
「遥に言われたくないよ。……さっきまであんなに俺にしがみついてたのは誰?」
「……それは、……あなたがそうさせたのでしょう?」
遥は振り返り、俺の鼻を指先でツンと突いた。
その仕草の一つ一つに、言葉では言い表せないほどの親密さが宿っている。
食卓を囲み、向かい合って座る。
なんてことのない食事。けれど、遥は一口食べるごとに「美味しいわ」「幸せね」と、宝石のような言葉を零した。
「……ねえ。……私、MORE MORE JUMP! のメンバーにも、いつか伝えたいわ」
「何を?」
「……私は、世界一幸せな女の子なんだって。……こんなに素敵な人に愛されて、……こんなに穏やかな居場所があるんだって。……それを知っているから、私はステージで誰よりも輝けるんだって」
遥は俺の手を取り、自分の頬に寄せた。
彼女の瞳には、かつてないほど強い光と、慈しみ、そして――揺るぎない覚悟が宿っていた。
夕暮れ時。
世界がオレンジ色に染まり、一番星が空に瞬き始める。
俺たちはサンルームのソファで、どちらからともなく寄り添い、大きなブランケットを二人で被っていた。
「……遥、眠いか?」
「……ええ……。……心地よい疲れね。……あなたの温もりに包まれて、……心が満たされすぎてしまったみたい」
遥は俺の肩に頭を乗せ、ゆっくりと目を閉じた。
「……あな、た。……一つだけ、約束して」
「ああ、何だい」
「……明日、私がステージに立っている時。……もし、私が自分を見失いそうになったら。……今日のこの、甘い空気と、あなたの温もりを……思い出させて。……客席のどこにいても、あなたの愛だけは、私に見えるように……」
俺は、彼女の細い指に自分の指を絡め、誓うように力を込めた。
「約束する。……俺はいつだって、君の最前列にいる。……誰よりも強く、誰よりも深く、君に愛の光を送り続けるよ」
「……ありがとう。……最高の、おまじね。……ふふ、大好きよ……」
遥の呼吸は、次第に深く、一定のリズムになっていく。
俺の腕の中で、完全に脱力し、幸せを噛みしめながら眠りにつく彼女。
その寝顔は、どんなアイドルの宣伝写真よりも、どんな芸術作品よりも美しく、俺の心を救ってくれた。
夜の帳が下り、静寂が再び二人を包み込む。
明日、彼女は再び、完璧なアイドル・桐谷遥として羽ばたくだろう。
けれど、その翼の根元には、俺が注ぎ込んだ特大の愛情という燃料が満ちている。
そして。
また夜が来れば。
彼女は俺だけの青い小鳥に戻り、この腕の中で、世界一甘い休息を貪るのだ。
俺は、愛おしい恋人の額に最後の一吻を落とし、彼女を抱き上げたまま、再び温かなシーツの海へと戻っていった。
二人の物語に、終わりはない。
これからも、もっと甘く、もっと深く、溶け合っていく日々が続いていくのだから。
「……愛しているよ、遥。……ずっと、ずっと」
微睡みの中で、遥が幸せそうに微笑んだ気がした。
二人を包む夜は、どこまでも優しく、どこまでも深い愛に満たされていた。
仕事、勉強、大変な事ばかりだと思いますが
頑張って行きましょ!!!
なんか書きたくなった