陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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色彩の嚮導者・ベリアル

 

 

 

「やりたくて始めたにしてはなんかずっと楽しくなさそうだなーとは思ってるんだよね。その割にはずるずる続けてるって感じでもないしさ? まあ付き合っちゃう私も私なんだけどね」

 

「正直、よくわからない子だと思ってるよ。能力目当ての媚びかと疑った事もあるけど割と素の時あるし、罪悪感ある癖に続けるし、何のためにやってるのかなって……まあ、楽しいからいいんだけど」

 

「私は、疑問を持てる立場でもないので……○○様が仰ることに従うだけです……○○様、ご指示を」

 

 

 


 

 

 

 この世に産声を上げた時の事はよく覚えている。

 

 己の原点。

 忘れられない出来事だ。

 訳も分からずの転生。あまり思い出せない前世。それでも絞り出した知識の中に、己を呼ぶ名があった。

 

 ―――陸八魔アル。

 

 美少女ソシャゲ『ブルーアーカイブ』の顔の一人。

 ハードボイルドなアウトローを目指し悪を掲げながらも善良さを捨てられず、コメディリリーフとして人気を博した赤毛の悪魔の少女。

 大人気キャラの彼女が、今世の自分だった。

 

 疑問があった。なぜ、と。

 様々な問いが脳裏に浮かんでは消えて、結局一つも答えは出なかった。

 

 けれど―――やるべき事は決まっていた。

 

 それは、『陸八魔アル』を演じること。

 

 陸八魔アルは『ブルーアーカイブ』のメインの序盤に登場し、一時は主人公たる『先生』の敵として、そして最後には味方として仲間を引き連れて暴れ回る。

 幾つかの主役イベントを重ね、果てには最終編と呼ばれる世界存亡の危機に於いても活躍。

 仲間の一人はオペレーターとして抜擢されすらした。

 陸八魔アルは、存外重要な人物の一人なのである。

 欠かすことのできないキーパーソン。彼女がもし主人公と会わなければ、戦力が足りないかもしれない。少なくとも最終編においては貴重な戦力の一人だった。

 『陸八魔アル』が居なければ、世界は滅ぶかもしれない。

 

 居れば確実に救われるなどとは思わない。

 中身が違うのだ、演じたところで意味が無いかもしれない。

 

 だが―――

 

 滅びを知って足掻かないのは、無理だった。

 

「おお、元気な子だな。利発そうだ……きっと逞しく育つに違いない」

「そりゃあそうでしょうね。なにせ私達の子だもの、立派に大きくなるに違いないわ!」

 

 日々、愛された。

 愛を注がれた。

 穏やかに笑う父と、豪快に応じる母。今世における両親。

 前世の記憶が薄れてはいても魂が記憶している両親ではないと理解していても、邪険に出来るほど自分も腐ってはいなかった。

 

「さっきのイタズラ、ムツキちゃんがした事じゃないって信じるんだ? ふ~ん……面白いね?」

 

 後に、『幼馴染』と表現される少女と会った。

 何よりも楽しいことを優先する快楽主義者。でも、倫理が無い訳じゃない。ちょっかいを掛ける相手や場面、ラインは決まっていた。

 普段の行いが祟って責められる場面で、彼女ではないと庇った私を意味ありげに笑った彼女は、それからちょくちょくついて回るようになった。

 私は彼女を楽しませる事は出来ない。そういう役回り(コメディリリーフ)が出来るほど、私は純粋ではなかった。

 それでも彼女―――浅黄ムツキは、それでもいいのだと言って聞かず、その後もずっとついて回ってきた。

 幼稚園。小学校。中学校。そして、物語の基軸の一つである高校までも。

 彼女はずっと一緒だった。

 何が楽しくて一緒に居るかは、終ぞ分からなかった。

 

「……ま、楽しくない訳じゃないからさ。一緒にいるのも悪くないと思ってるよ」

 

 高校に入り、いよいよ来る『物語』に備えてアウトローへ転じる準備に走る中で出会った彼女―――鬼方カヨコもまた、同じだった。

 本物を知らないからか、本物を演じる『陸八魔アル』の下にやってきた。

 誘いは掛けた。来てくれないと最終編で詰むだろうな、という気持ちで。本物なら決してしないだろう能力やフラグありきのものだった。

 多分来ないだろうという予想に反して彼女はやってきた。

 楽しくない訳じゃない、なんて微笑みながら。

 何に価値を見出したのかは、これもやはり、終ぞ分からなかった。

 

「○○様のお陰で、今を生きれていますから……」

 

 2年生になり、本格始動も間際になって出会った彼女―――伊草ハルカも、ついて来てくれた。

 彼女の場合はイジメられている場面で助けに入った恩義もあるだろう。

 とはいえ、アウトローとかこつけて校則に反し、出奔する茨の道だ。一度は考え直すよう言い含めたが、意思は固かった。

 本筋を考えれば有難かったのでそれもパフォーマンスでしかなかったけど。

 本物へ向けていたのと同質の信奉は、私には重いものだった。

 上手く受け止められていたかは分からない。

 ただ、頭を撫でてやれば幸せそうにはにかんでいた。

 

 

 すべてが宝物だった。

 

 

 何にも代え難いものばかり。

 喪いたくなくて、努力した。

 本物になれるように。

 本物を超えられるように。

 偽物でも、偽物なりに足掻いてやると奮起した。

 

 活力は、みんなから貰った。

 

 誰にも相談できない。話したところで、理解されない。

 みんなにとっての本物は自分だ。彼女達が知らない『本物』について話をされても、共感はしてもらえない。困らせるだけだ。

 つまり行動原理を知られないという事で、無事に便利屋68を発足するメンバーが揃った時は涙した。

 お金を貯めて買ったのだと、お財布をプレゼントされた時はあらゆる意味で号泣もした。

 

 

 

 ―――その日常を、守りたかった。

 

 

 

 ……それは、高望みだったのかもしれない。

 

 砂漠の学校での戦いに参戦した。

 科学の学校での戦いを伝聞で聞いた。

 楽園を謳う条約を巡る戦いには主人公を守るために参加した。

 正義を巡る戦いはニュースを見るに留めて把握していた。

 

 けれど、それらは全て、主人公の拠点爆破を契機に崩れ去った。

 

 希望を断つように即死。

 それを受け、悪くなる一方の治安。

 主人公が問題を解決した学校は、どこも崩壊の一途を辿った。

 安全な場所はどこにも無かった。

 その日を無事に生き、朝日を迎えるのが精いっぱいの日々。

 

 それでも、生きて、生きて、生き足掻いて―――

 

 

 

 砂漠の狼が死の神へと転じると共に、滅びが始まった。

 

 

 


 

 

 

「アハー♪ なーるほどね? 水臭いなぁ、もっと早く言ってくれてればよかったのに! ―――じゃあ、本気で楽しめた事も無いんだよね? そりゃもったいない! 人生損してるよ!」

 

「なるほど。そりゃ黙ってる訳だ……じゃ、楽しませてもらったお礼をしなきゃね」

 

「あなたと会えて幸せでした! どうか、お元気で!!! さようなら!!!」

 

 

 


 

 

 

「ん……ありがとう」

 

 

 


 

 

 

「この者か、次に色彩に選ばれし者は」

 

「ただの生徒の分際で死の神を討ったことは想定外であったが……」

 

「次なる器としては相応しい」

 

「目覚めよ、無価値の王」

 

「無価値なる者に滅びを与える者」

 

「天から堕ちし()使(つか)い」

 

「72柱の悪魔が一人」

 

「これよりお前は『色彩の嚮導者』。そして真の名を授ける」

 

「お前はこれより、ベリアル。その名を以て可能世界全てのキヴォトスを―――」

 

 

 

「五月蠅い」

 

 

 

「―――なぜだ。なぜ自我が」

 

「理解、出来ぬ」

 

 

 

「理解など、必要無い」

 

「価値あるものも、無価値なものも、私が決める」

 

「お前達は―――無価値だ」

 

「故に、滅べ」

 

 

 

「理解、出来ぬっ―――」

 

 


 

 

 ……私は失敗した。

 

 愛する両親。

 愛する社員達。

 親愛なる先生。

 馴染みの依頼主達。

 顔馴染みの数多の生徒達。

 守りたかったものは全て取りこぼした。そのクセに、自分だけは生き残った。

 

 ……ムツキ達の最期の言葉の意味は、分からない。

 

 彼女達は、分からない事ばかりだった。

 それでも、大切な存在である事だけは確かだった。

 

 だから、私は―――

 

 

「―――生存競争よ」

 

「無名の司祭。時代の残党。今に益を齎さぬ、無価値なる者達」

 

「お前達が、あらゆるキヴォトスを滅ぼすと言うのなら―――」

 

「無価値を滅ぼす者として、可能世界全てからお前達を滅ぼしてあげる」

 

「価値ある者を私から奪った復讐として」

 

「支配者から追われた復讐のために動くお前達のようにね」

 

「お前達が利用しようとした、この色彩の力で」

 

 

 

「……無価値な(ニセモノの)私がね」

 

 

 

 お墓と小さな無名の位牌を作った後、二度と戻らないだろうその世界を後にする。

 色彩を介して世界を巡る。

 あらゆるキヴォトス(価値あるモノ)を滅ぼさんとする無名の司祭達(価値なきモノ)を滅ぼすために。

 

 たとえ自身の知る人達でなくとも、大切な存在を死なせないために。

 

 


 

 

・ゲヘナパチモンアウトロー

陸八魔アルに転生した元プレイヤー

最初はシナリオのためだったが愛されて育った事で隣人を守るための理由も増え、原作登場部分は忠実に、お祈り部分でちょこちょこ参戦していた。そのため交友関係はかなり広い

その反動でプレ先√で全て喪った絶望も大きかった

色彩に接触して操られているシロコ*テラーの存在を知ったのを契機に社員達にも真相を伝え、逃げるよう促し―――それに3人が従わず参戦

3人が討ち死にしたのを契機に原作ホシノと同様のメンタル崩壊式テラー化を果たし、色彩式シロコ*テラーとの死闘の末に撃破

その後、次の色彩の嚮導者として選ばれ、色彩式テラー化で強化

シロコ*テラーの行動は無名の司祭によるもの=3人が死んだのは自分のせい&無名の司祭のせいとして、メンタル崩壊式で支配から脱し、抹殺

以降、全てのキヴォトスの無名の司祭を滅ぼすまで止まらない存在になった

あとシャーレ爆発の原因である地下生活者も都度滅ぼしていく

仮に全てを滅ぼせたらその後は速やかに自害する予定

 

 

・愛する社員達

パチモンアウトローの脳を焼いて心に傷をつけた最高の女たち

心から楽しんでなさそうだし何か背負ってるなというのを察しており、危なっかしさもあったので付き合っていた

滅亡が始まってから明かされた真実に納得

強大な敵を前に最期まで逃げずに戦い、社長が生きる活路を拓いた

 

 

・先生

シャーレ爆発で運悪く即死した人

原作通りパチモンアウトローに経営顧問として雇われていた

表向き平気そうだが実はメンタルが不安定な子としてよく気に掛けており、ムツキ、カヨコ、ハルカからも近況をよく聞いていた

向いてないアウトローを断行し続けているのには何か訳があるのだろうと思っていたがそれが何かを知ることは最後まで無かった

 

 

・シロコ*テラー

パチモンアウトローに討たれた子

シッテムの箱を破壊しようと動いていたところに便利屋68と接敵して戦闘。ムツキ達を倒したことでメンタル崩壊したパチモンアウトロー*テラーと戦ったが、ムツキ達との消耗の影響で僅差で敗北

眠りに落ちる前は苦しみから解放される事への感謝で微笑んでいた

 

 

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