陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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ムツキ、ハルカを書き終わった後にドレスムツキ、ドレスハルカ実装予告だなんて……!
こいつぁ運営からのご褒美に違いない!!!(なお石残数)



今話はハルカ視点です
地の文含めてほぼ全部がですます口調で見辛いかもしれませんが、ご了承ください




奇跡へ繋げる敬愛

 

 

 アル様が率いる便利屋68に新しい仲間が加わって暫くが経ちました。

 

 陸八魔ベル様。

 初めてお会いした時は、アル様と二人きりでお話しした直後。今にも倒れそうなくらい顔色が悪くて、それでも微笑んで、便利屋に籍を置くことを受け容れてくださった時のこと。

 並行世界のアル様だという彼女は、未来の知識を持って生まれ、破滅を避けるために奔走した方と聞きました。

 それからも多くのことを知りましたが、ベル様に抱く印象はあまり変わっていません。

 とてもお強いこと。

 とてもお優しいこと。

 ……そして、とても悲しそうな方だと。

 

 ベル様は私をよく撫でられます。

 撫でてから気付いて謝られることが多いので、多分無自覚。手癖になっているのでしょう。ベル様の世界の"私"をよく撫でていた頃の癖が、10年経っても続いているようでした。

 私はそれを拒みません。

 撫でている時のベル様が、とても安らかなお顔をされるから。

 最初は並行世界のアル様のため崇敬し、ムツキ室長が名付けた『幸せアレルギー』で倒れていましたが、今は――外食するとちょっとお腹が痛くなりますけど――倒れなくなりました。

 

 私はアル様を崇敬しています。あの方に救われていなければ、今頃生きていなかったと確信しているからです。

 並行世界の"私"もきっとそうで、"彼女"を救ったベル様のことも同じくらい崇敬しています。

 ですが―――違うのです。

 ベル様は、アル様じゃない。

 アル様が未知()を拓いて進むなら、ベル様は知識()を辿ってきた方。似ているようで違うのだと、うっすらと理解しました。

 知っているからこそ、深く悲しんでいる人なのだと。

 出会ってからの日々で理解しました。

 

「ハルカは、戦闘面の吸収が本当に早いわね」

「ベル様の教え方が分かりやすいからです。私なんて……」

「なら、両方という事にしておきましょう」

 

 多くの学びを与えていただきました。

 効率的な制圧の仕方。人体の弱点。人の心理。戦闘における駆け引きというものについて、幾度も教えを賜りました。

 その多くが加減されたものであることは理解していました。

 

 ―――人を殺さないようになるには、まず人がどうすれば死ぬかを理解しなければならない。

 

 初めて教えを賜る時、ベル様は最初にそう仰いました。

 それは、初等学校などで銃の扱いを学ぶ時のそれとは、少し異なっています。

 学校では銃器の扱い、整備、運用について学びます。より細かく専門的なものになると専門課程の受講や独自の勉強が必要になりますが、一般的なものであれば教育を受けるものです。

 その中には当然対人戦における心得も含まれますが―――

 

 殺しに特化した教えは、ありませんでした。

 

 忌避するものであり、そして必要でもない。

 だからカリキュラムから外されている。

 ベル様は、そう仰いました。

 

「ですが……ベル様は、ご存知なんですね……」

「必要だったからね」

 

 私の指摘に、ベル様は表情も変えずにそう言いました。

 動揺も、嘆息も、諦観も悲観もない自然体。

 ……ベル様の世界がどれほど荒れていたのかは、推し量れないのでしょう。

 ベル様がそれを知ったのは、誰かから学んだのか、あるいは経験から学びを得たのか、そのどちらであるかは定かではありません。

 ですが―――とても、()()()でした。

 鋭く、冷たく、無駄のない技術だと思いました。様子を見学していたカヨコ課長たちが、表情を強張らせていた辺り、この所感は間違っていないと思います。

 訓練に際して喉元に触れられた手のひやりとした感覚は、今でも鮮明に記憶しています。

 撫でてくださる時の熱は、一切ありませんでした。

 

「どうかしら」

「……とても、冷たいです」

「そう、冷たいのよ。これを知った上で、こうならないようになさい」

「はい」

「自分の選択がいつ思わぬ方向に転ぶかは分からない。だからこそ、自分の選択の影響を理解し、致命的な過ちを()()()()()()よう制御する……いついかなる時もこれを覚えておいて」

「はい」

 

 それは、よく暴走する(迷惑を掛ける)私への注意であり、私を想っての言葉でした。

 

 同時に―――過ちを起こした誰かを唾棄するようなものも感じました。

 

 ……もしかしたら、それはご自身のことなのかもしれません。

 "私達"を喪った哀しみにより反転し、砂狼シロコを討ったこと。

 砂狼シロコを操り、"私達"を手に掛けた者達への憎しみにより反転し、嚮導者として数多の並行世界の司祭達を滅していること。

 烏滸がましいかもしれないけれど―――自分と似ているな、と思ったのです。

 ベル様が抱くそれはアル様を侮辱された時に私が抱く怒りよりもずっとずっと深くて辛いもので、喪った事実に哀しみ続けていますが……

 

「ベル様」

「ん、なに?」

 

 名前をお呼びすると共に近付けば、ベル様は私を見て、頭を撫でてくださいます。

 その時は、表情が柔らかくなります。

 

「今日の訓練はどうしましょう?」

「今日は社長命令で休むよう言われていてね。あなたもゆっくりなさい」

「わかりました。では、家事でお手伝いできることは……」

「なら、干していた洗濯物を皆で取り込んでおいてもらえる?」

「わかりました」

 

 ご指示を受けて頷くと、私に微笑んで、一際強く撫でてから朝食の準備に向かわれました。

 その背中は、色濃い陰りが少しだけ薄れているように感じました。

 僅かでも心が軽くなっていただけたのなら……

 こんな自分でもお役に立てて、嬉しい限りです。

 

 私にはベル様が苦悩していることの理解も、解決も、きっとできませんから―――

 

 

 

 

「さぁ、昨日も言った通りお昼は外食よ! さっそく割引券を使うわ!」

 

 ベル様が用意してくださった朝食を摂り、家事を終え、銃の整備を済ませた後のこと。

 懐から取り出した5枚のチケットを掲げ、太陽のように輝く笑顔でアル様がそう宣言されました。

 掲げられたのは昨日の依頼の報酬とは別に依頼人の方が譲ってくださったファミリーレストランの割引券。ベル様が財務管理されてからはめっきり減った外食の機会として、早速使われるとの事でした。

 ほんの少しお腹が痛みますが、顔には出しません。せっかく楽しい雰囲気でいるところに水を差すような真似は本望ではないからです。

 

「あと昨日言った通りベルは社長命令で一日休みだから、家事もさっきみたいに皆で分担するわよ!」

「りょうかーい。というかぶっちゃけ普段から分担で良くない? 前はやってたんだし」

「同感。依頼がまばらな私達より忙しくしてるよね、ベル」

 

 アル様のお言葉にムツキ室長とカヨコ課長は頷きつつ、同時に提案をされていました。

 私も言葉にはしないものの同意とばかりに頷きます。

 通信課程でゲヘナ学籍を持っているベル様は、当番や自主的な手伝いでシャーレに向かった際や、経費で落としたノートPCを使って学業に取り組まれています。

 それに加えて嚮導者として『外』を回られています。これの時間や期間は疎らですが、定期的に帰ってきては家事をして再度出向かれていて、一人で依頼に従事している事も考えればかなりの重労働です。

 その上で便利屋の財務管理の一環で書類業務や在庫管理、家事、任務のオペレーターをされていて、私の訓練にもお付き合いいただいてます。おやつのお菓子も手作りで出してくださいます。

 ……正直いま一番働いていると言っても過言ではないと私も思います。

 隙を見て家事や在庫管理は手伝っているのですが、経験の差故かベル様が一人でやる方が早いので邪魔になってないかと気が引ける時もあります。

 

 私がするのは烏滸がましいかもしれませんが―――心配でした。

 

 何かに追い立てられているような忙しさは、見てて不安になります。

 アル様もムツキ室長達と同感のようで、頷かれました。

 

「実は私もそう思ってたのよねぇ……良い機会だし、当番を決めて持ち回りでやりましょう」

「私としては特に苦じゃないのだけど」

「社長命令で休ませないといけない状態なんだから、改善しないとでしょう?」

「……昔より楽なのだけどね」

「言っておくけど、それは感覚が麻痺してるだけよ」

「ベルちゃんって実はあんまり先生のこと言えないんじゃない?」

「私はあの人ほど誰かの助けがないとマズいほど仕事を抱えてないわよ」

「いや、ボロボロだった人が何言ってんのさ。『外』って簡単に言ってるけど世界単位なんだからどう考えても先生以上でしょ」

 

 アル様達の指摘に、ベル様はうぐっとたじろがれました。心当たりがあるのか反論する様子が見られません。

 私もアル様達と同意見です。

 ムツキ室長が昨日言われた指揮に関してだけでなく、私達を助けようとしてくださる素振りがどことなく似ています。

 それが先生の影響を受けて大人になったからなのか、それとも私達を大切に想っているからなのかは分かりません。

 多分両方です。

 その気持ちはきっと良い事なんでしょうけど……

 それで無理をされるのは、とても、心苦しい。

 

「ハルカ、あなたはどう思う?」

 

 そこで、ずっと黙っていた私に求めてくださいました。

 どう思うか。

 それに思考を巡らせて、私はすぐに反射的に言葉を発していました。

 

「心配です」

「――――」

 

 その瞬間、私を撫でてくださっていたベル様の手が凍りついたように止まり、アル様も、ムツキ室長にカヨコ課長も、少し瞠目されて動きを止めました。

 その様子に、あれ、と私は不安に駆られました。

 

「え……あの、な、なにか、間違ったでしょうか……?」

 

 不安いっぱいの気持ちでアル様に伺うと、すぐに首を横に振って否定されて、にこりと笑顔を浮かべました。

 

「いいえ、最高の答えだったわ」*1

「ハルカちゃんがお伺いやへりくだりも無く端的に言うのってマジの時だからねぇ」

「ふぇっ、あ、あの……?」

「慌てなくていいよ。アルも言ったけど、最高だった」

 

 カヨコ課長が微笑みながらそう言って、私の困惑を収めてくださいました。返答としては間違ってなかったようです。

 にへ、と笑みが浮かんでしまいました。

 

「ベル。今の気持ちは?」

「……過去一で効いたわ」

「効いてるだけマシね。そしてそのショックの大きさは……あなた、自覚はあるようだけどいま相当危ういわよ。忙しさを理由に何かから目を逸らしてるでしょう」

「…………」

 

 アル様の鋭い言及に、ベル様は唇を噛んで口を噤みました。

 私でも分かるくらいあからさまに、苦悩、苦悶、懊悩……およそあらゆる悩みと苦しみの表現が浮かぶだろう表情で俯かれました。私の頭からも手を下ろし、膝の上で両手を重ねています。

 

「……余裕が、出来ると。考えてしまうの」

 

 ポツリとベル様はそう零しました。

 罪を告白するようなその声音に、私を含めて誰もが耳を寄せました。

 

「私が生まれた世界。渡り歩いてきた無数の世界。そしてここ、プレナパテスが来た事で救われたあまねく奇跡の特異点。それらの差異を考えてしまう」

「何かが引っ掛かって、思考を回しているのね。それが何かは分かる?」

 

 ベル様の茫洋とした呟きに、アル様が鋭く追及されました。

 何を考えているのか。

 何のために、考えてしまうのか。

 

「……嚮導者だからこそ、避けられる破滅を」

「嚮導者だからこそ、避けられる……ですか……?」

 

 オウム返しに、私は呟く。頭の中は疑問でいっぱいでした。

 『色彩の嚮導者』は破滅を齎す者だと伺っています。哀しみと憎しみの果てに反転したベル様を『ベリアル』と名付けた無名の司祭達と、"先生"を爆殺した地下生活者とを破滅へ導く者なのだと。

 勿論やろうと思えば世界を滅ぼす事も可能だそうですが……

 

「赤い空だね」

 

 私が疑問符を浮かべていると、カヨコ課長が助け舟を出してくださいました。視線を向けると、静かな、それでいて少し鋭くて怖い表情で、話し始めました。

 

「昨日の話だよ。赤い空があればカイザーは引き揚げて、赤い空が無いとカイザーは作戦を続行する。そこがベルは引っ掛かってるんだ。聞いた限り、キヴォトス大乱は無名の司祭も地下生活者も無関係の、内的要因の破滅だから」

「ベルちゃん、『繰り返させないために世界を渡っている』って言ってたからね*2……本当の意味では繰り返しを止められてないって思っちゃったんだね」

 

 カヨコ課長に続いてムツキ室長が言いました。眦を下げて、悲しそうな顔です。

 

「傲慢だと、分かっているわ。抱えきれないものであるとも。これまで『イレギュラー』だからと不干渉の姿勢を取り続けてきた身で、何を今更とも思う」

 

 懺悔するように、ベル様が言いました。

 ―――いや、おそらくは懺悔そのもの。

 ベル様自身はそう考えていると、私は思いました。許されない事だと自身を責めているのだと。

 

「だから……ベル様は、自ら忙しく……?」

「何かしていないと、考えてしまうから。たとえ並行世界の別人だとしてもあなた達を守りたい気持ちは、この世界に根を下ろした今も変わらない。この世界だけでも守り抜くと思っても……それでも……」

 

 私の問いに、震える声音で、尻すぼみになりながらもそう答えられました。

 その答えを聞いて、私は何も言えませんでした。

 あまりに忙しく働かれているから心配だと言いましたが、休むことの方がベル様にとっては苦痛なのだと知ってしまっては、私は何も言えないのです。

 心配で休んで欲しい一心だったから。

 どうすればいいのかと視線を彷徨わせますが、カヨコ課長も、ムツキ室長も、難しい顔で黙ってしまっていました。多分私と同じ理由で。

 

「話は分かったわ」

 

 ただ、アル様だけは冷静な表情のままでした。

 任務を遂行するために敵を打ち倒す時の冷徹な顔です。

 

「まず正直に話してくれた事はありがとう……―――そして、馬鹿ねあなた

「ばっ……!?」

 

 そして冷徹なまま、ベル様を糾弾し始めました。

 ただあまりに直截な言い方は予想していなかったらしく、ベル様は眼を白黒させて驚きの顔を向けました。

 私とムツキ室長、カヨコ課長も同じですが。

 

「馬鹿よ、大馬鹿。自分なりに自制しようとしてたのは偉いけどね? それで思い悩んでドツボに嵌って苦しむのは馬鹿でしょう」

「こ、この短時間に4回も言ったわね!?」

「なんなら5回目も言ってあげるわ、この超馬鹿」

「なんでよっ!?!?!?」

 

 並行世界の自分相手だからか、とても遠慮がない。

 アル様がここまで真っ直ぐな罵倒を他者に向けられることも中々無いと思います……

 ―――あるいは、同じ自分だからこそアル様はあっさりと答えを出せたのかもしれません。

 

「ベル、あなたは復讐者として司祭達を滅ぼしていたけど、同時に並行世界のムツキ達を同じ目に遭わせないようにとも考えていたわよね? 今まではそれ以上を考える余裕が無かった。余裕が出来たから、気付いた。そしてその気付いた事も、やるのは今までしてきた事の延長線上のものなのでしょう?」

「え、ええ……」

「なら悩む必要は無いわ」

 

 サラリと、アル様がそう仰いました。

 不敵で、大胆な、アウトローの顔で。

 

 

「傲慢? いいじゃない、アウトローや悪にはピッタリよ。むしろあなたはそれくらい許される立場だと自覚なさい。復讐とは言うけど同時に明確に世界を救ってもいるのだから。赤い空が無いと破滅に向かう要因はキヴォトス内で完結している以上、慈悲を与えるくらいのつもりでどっしりと構えなさい」

 

「抱えきれない? 問題無いわ、抱えられないものは降ろしてしまえばいい。『外』の事情の全てをあなたが負う必要は無く、あなたが罪悪感を感じる必要も無い。あなたが勝手にやった事で救われるだけの事で、仮に失敗しても誰も責めないし、あなた自身の自責だとしても私が責めさせない。悪いのはあなたではないのだから」

 

「そして、不干渉を止める事が何を今更ですって? 自分を『偽物』だと思っていた頃の判断と、『本物』だと受け入れられた今のあなたの判断が全く同じになる訳ないじゃない。心境が変われば結論も変わる。引き摺る必要はないわ」

 

 

 ひとつひとつ丁寧に、アル様はベル様が零された懺悔の言葉を否定していきました。

 それはアル様が掲げる、法の外で貫く信念に基づいた言葉。

 

「躊躇う必要は無いの。あなたは、あなたがやりたい事を既に見出している。ただそれがやっても良いことなのかと迷っているだけ。誰にともなく、許しを求めている」

 

 だから、とアル様は言葉を続けます。

 冷徹な顔から一変して、私達に向けてくださる不敵で、優しい笑顔で。

 

「便利屋68の社長として副社長の、悪たるアウトローとして嚮導者の背中を押しましょう。好きなようにやりなさい。()()()()わ」

「――――」

 

 アル様のその許しを聞いて、凍りついたようにベル様が固まりました。

 顔を見つめること数秒。

 

「……ありがとう」

 

 ベル様は、とても安らかな表情を浮かべられました。

 

「悩みは晴れたかしら?」

「ええ……初めて会った時と同じよ。まったく。本当に、自分が情けないわ」

「自分をそう責めなくていいわ。悩んで当然の事だったし、あなたのそれは自制が効くという点で長所なんだから。悩み過ぎて自分を否定し過ぎるところは短所だけどね」

「そうだよ!」

 

 苦笑と共にアル様が言われたのに続いて、ムツキ室長が同意の声を上げられた。

 

「人知れず世界を救ってきてるんだからさ、ベルちゃんはもっと胸を張って欲張っていいんだよ? というかやりたい事も結局世界を救うことなんだし堂々としちゃいなって!」

「ベルにとって後悔の無いようにすればいいと思うよ。きっとそれが、一番大切な事だから」

 

 微笑みながらカヨコ課長が言われた後、その赤い瞳が私に向けられた。

 まだ発言していない私も何か言えという事だと判断し、隣に座る大きな人を見上げ、顔を見た。アル様よりも大人っぽくて―――でもどことなく、あどけない面持ちの女性を。

 

「ベル様」

「……なに、ハルカ?」

「私は……アル様とベル様が笑っていてくだされば、嬉しいです」

 

 それは、心からの願い。

 笑っていてもどこか悲しそうなベル様の心に、少しでも安らぎが訪れて欲しいと思います。

 

「他の世界の"アル様"も笑っていて欲しいです。その世界の"ムツキ室長"や"カヨコ課長"、そして"私"も……きっと同じように考えると思います」

 

 ベル様とアル様が違うように、他の世界の"アル様"も、私が知るアル様とは別人です。たとえキヴォトスの時間軸が揃っていたとしても、それは変わりません。

 ―――それでも、笑っていて欲しいと思います。

 こんな私をも想ってくださる方々の幸福を、私は願います。

 

「ベル様が、想ってくださっているように」

 

 私の言葉を聞いたベル様はまた固まっていましたが、数秒の後、天を仰ぎました。

 

「……私が末っ子って先生に言われた理由、初めて理解したかもしれない」

 

 そう仰ったベル様のお顔は、少し前にあった憑きものが取れたように晴れやかな笑顔が浮かんでいました。

 そのお顔を見て、私はとても嬉しく感じました。

 ベル様の笑顔は、とてもきれいです。

 

 

 


 

 

 

・陸八魔アル

アウトロー社長

ベルが隠し事を出来ない相手

自分のやりたい事を追及する立場なので、悩む時は大抵物理的に解決できない事柄であり、大抵の問題は金銭面。現在はベルの財務管理によってそこが解決している事もありパーフェクトメンタルを維持している

仮に問題を抱えていても肝心な時は外さないので相談される限りベル関連でミスする事は無いと言っていい*3

 

・浅黄ムツキ

幼馴染室長

深夜の一件からベルの内心を察しており、踏み込んでいいか迷っていたので発言回数も控えめ。ベルの悩みもどうしたものかと悩んでいた

そこでアルがキッパリと言ってのけたので惚れ直している

また観察に回っていたハルカがガッツリと根幹に言及していたので内心舌を巻いている

 

・鬼方カヨコ

参謀課長

昨晩の話からベルの悩みにおおよそ当たりはついていたが、何と言うべきか迷って発言回数が少なめに

ムツキ同様にアルに惚れ直し、ハルカの成長ぶりに内心驚いている

正直背負おうとし過ぎとは思っているがベルの罪悪感の一つと考えると止めるのも酷なので、「後悔の無いように」とエールを送った

 

・伊草ハルカ

社長副社長の信奉者兼平社員

アルへの崇敬がパーソナリティの多くを占める関係上、ベルの影響を最も受けている

アルだけでなくベルに対しても崇敬を向けており、悲しい顔をしてほしくない想いで寄り添っていた

観察に回っていたこと、度々撫でられていたことからベルの心情はともかく表情の機微には敏くなっており、訓練や常日頃の撫で行為で耐性が付いたこともあって自己肯定感の低さは健在ながらベル関連となると少ししっかりする

 

・陸八魔ベル

末っ子副社長の嚮導者

自己肯定感などの面から末っ子ポジに位置する

『赤い空を齎さなければ真の意味では繰り返しは防げない』ことが、『偽物(イレギュラー)』などを理由に目を背けていた事実の一つ*4

様々な仕事を担って日々を忙しく過ごしていたが、それは考え事をしないための逃避行動。傲慢で許されない考えだと自制と自責で戒めていた結果

社長に許され、便利屋一同に背中を押されて今回吹っ切れた

引き換え(?)に家事は分担し、財務管理やオペレーター業務頻度、シャーレの当番と手伝い頻度を強制的に減少させられた

 

 

 

 

 

 

 

 

・(故)ハルカ

ベル世界のハルカ

『知識』について知らず、敬愛する人が何に追い立てられているかもわからないまま、ただ安らぎと幸福を願って傍に侍り続けた

全てを知ったのは全てが手遅れになった時のこと

終ぞ、彼女は晴れやかな笑みを見なかった

いつか心が晴れる日を願いながら、最期まで戦った

―――その願いは、異なる世界の自分自身によって叶えられることとなる

彼女の献身があったからこそ、その願いは達せられた

彼女の敬愛は今も確かに敬愛する人の中に息づいている

 

 

 

 

 


 

 

 

奇跡(いま)へ繋げる敬愛

 

 

奇跡(これから)へ繋げる敬愛

 

 

 

*1
アルとしては家事分担について聞いたつもりだったが、問題の根本部分をハルカが追及したため大満足

*2
4話にて、対先生での言葉

*3
ベルが抱えている悩みの相談は全部ヤバいとアルからも認識されている

*4
赤い空=最終編が無ければカンナ生存の他、アリス・ケイの和解、リオの許しなど後のデカグラマトン編に繋がる要素が無くなって確実に詰むので、ベルとしては『他世界のムツキ達を守りたい』という決意もまともにこなせてないと考えていた

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