陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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引き続きアル視点です
ほぼほぼ戦闘回です



『陸八魔アル』の残影

 

 

 

 かつてのベルが率いる便利屋68がアビドス高校襲撃を進める中、"私"の狙撃による武器破壊を警戒したアビドス勢は後退を余儀なくされた。

 即席の地雷が遮蔽から身を出しての応戦で留めはするが、ドンドン中央の遮蔽は壊されていっている。

 あと数分もあれば突破されるだろう。

 

『ん、やり辛い……』

『弾があっても銃を壊されたら意味がないですし、壊されたらそっちにお金も掛かりますからね』

『純粋に戦力も落ちるわ! ヤバいわよこれ!』

『こりゃあ参ったねぇ……』

 

 ムツキの遮蔽越しの爆弾投擲を警戒し、校舎の下駄箱(エントランス)前の一際大きく横に広い遮蔽まで先生を伴って下がった4人が苦い顔で見合う。

 もう校舎の手前。それ以上下がることはできない。

 それまでどうにか敵を退けて守り抜いてきただけに、一気に最終防衛ラインまで押されて士気が酷く下がっているようだった。余裕の無さや焦りがそれぞれの顔に浮かぶ。

 

『"―――でも、諦めるにはまだ早いよ"』

 

 けれど、今の彼女達には先生がいる。

 

『先生、何か作戦があるんだね?』

『"うん。でも説明してる時間は無い。矢継ぎ早になるけど私の指示で動いてほしい。いいかい?"』

『『『『『勿論!』』』』』

 

 作戦の概要すら話さず、ただただ信頼を担保にした音頭。

 普通ならそれに従うべくも無いけれど、そこまで長い期間ではなくともあの人の指揮を受けて戦った積み重ねがあるからだろう。

 先生の一声で、挫けかけていたアビドスの面々の顔に戦意が少し戻っていた。

 

『"ホシノ、ショットガン使いを押し返して!"』*1

『任せてよ! さっきのお返しだー!』

 

 一番に、やはり盾持ちのホシノが飛び出た。即座に"私"の弾丸が飛ぶも構えた盾に弾かれて意味を為さなかったが、それを狙っての選出だろう。

 そうして至近まで迫っていたハルカがホシノと交戦を開始。

 ハルカのショットガンの射撃は素早い身の逸らし方で躱され、お返しとばかりに展開した盾をお腹にぶち込まれた。

 そこにカヨコが迫るが―――

 

『"シロコ、セリカ、フォロー!"』

『ん』

『お返しよ!』

『チッ……!』

 

 すかさず指示が飛び、警戒を続けていたシロコの即座の反応と射撃がカヨコを襲う。

 フォローするようにまた"私"の射撃が飛ぶが、予想していたようにシロコは再び遮蔽に隠れ、不発に終わる。

 ……まあ軌道を見るに遮蔽から出ていた体の部分狙いだったから、そもそも銃狙いではないのだが。予想はしていたがやはり銃破壊は脅しに留めるつもりのようだ。

 

『"ノノミ! 横薙ぎで遮蔽ごとマシンガンの子を攻撃!"』

『ありゃ、こーれはマズいかも?』

『逃がしませんよ~♧』

 

 ガガガガガガ、と耳を劈くほどの号砲が連続する。慌てたように遮蔽にムツキが隠れるが、その遮蔽諸共ぶっ壊していくように横薙ぎに連射していく。

 同時、"私"からの銃狙いの一射が飛んだ。

 

『あっ、弾帯が……!』

『流石にそれはマズいからね……!』

 

 その一射はノノミのガトリングの弾倉から飛び出て、側面から弾を送り込んでいく露出した弾帯の連結を飛ばした。弾同士を繋ぐベルトが千切れたせいで弾が補給されなくなったガトリングが虚しい回転をするだけになる。

 けれどそれまでの横薙ぎで、ハルカ、カヨコ、ムツキが一か所に集められていた。

 

『"―――シロコ、ショットガンの子を押さえて! セリカはマシンガンの子を! ノノミはハンドガンの子を! そしてホシノ、リーダーの子を攻撃!"』

『『『『了解!』』』』

 

 好機と見た先生が更に指示を出した。

 ハルカを押さえていたホシノを"私"に回し、その穴埋めにシロコを宛がう。

 ガトリングの給弾ベルトが千切れたノノミは、ハンドガンで接近戦が多いと見てかカヨコへ。

 マシンガン使いのムツキには、アサルトライフル使いのセリカを宛がって爆弾投擲の牽制を。

 

『"アヤネ、ミサイルドローンは!?"』

『用意出来ました! いま飛ばします!』

 

 そして後方支援のアヤネは、シロコが使っているミサイルドローンを窓から飛ばした。どうやら端末で指示を飛ばしていたらしい。

 程なくボシュウ! と火を噴いて8連装の小型ミサイルが連続して射出された。

 

『それじゃ行くよ~! たっぷりお返ししちゃうね~!』

『い、行かせな―――』

『あなたの相手は私!』

 

 ミサイルの射出音に合わせてホシノが動き出す。

 押さえようとハルカが動くも、それはシロコの射撃で阻まれた。更に射撃の合間に接近して蹴りなどの格闘も始める。

 ハルカも蹴りを受けつつ、その場で踏み止まってショットガンのバレルを握り、ストック部分で殴りつけるように応戦した。

 

『覚悟して下さいね~!』

『それはこっちのセリフ』

 

 援護に向かおうとするカヨコをノノミがガトリングの振り回しで押さえる。弾帯が千切られ、ガトリングを撃てなくなってもその重量は脅威だ。

 とは言え、逆にカヨコがその相手をすることでノノミが給弾し直してガトリングを使える状態に出来ないようにしているとも言える。振り回される砲身を紙一重で躱しながら反撃でハンドガンで銃撃。それをガトリングで防ぎ、再度振り回し―――とこちらも一進一退の攻防が続く。

 

『アルちゃん社長、そっちいけそー?』

『想定内よ!』

『人の心配してる場合かしら!?』

『いやー怖い怖い』

 

 ムツキはと言えば、セリカと遮蔽からの撃ち合いをしながら"私"を心配する言葉を投げていた。それにセリカが舐められてると見たか激昂するも、ケラケラ笑いながらマシンガンを撃ちつつ、もう片方の手で手榴弾を上へとポイと放る。

 間を置かず『うわぁぁぁ!?』とセリカが悲鳴を上げると同時、ボンッ! と爆発が起きる。

 直情的な部分を逆手に取ってあしらうムツキにセリカは相性が悪いようだ。踏んだ場数の差もあるかもしれない。

 

「撃ちながら遮蔽越しに手榴弾放るの、あんな綺麗には出来ないんだけど……」

「えっ」

 

 そこで、こちらのムツキが引き攣った顔で戦慄を滲ませながら言った事に、ベルが繰り広げた戦いに集中していた私は意識を引き戻された。

 割とポイポイやってた覚えがあるのだけど……

 

「出来ないの?」

「あんな綺麗にはね? 大体は銃撃止めてる間に投げて、爆破地点から逃げないよう牽制するのが基本だもん。やる時は大抵急いでるか焦ってるし、遮蔽に隠れて撃ちながら正確に投げるってまずやらないよ」

 

 聞いてみれば、そんな答えが返ってきた。出来なくはないけどまずやらないという事らしい。

 つまり……あの"ムツキ"は綺麗なフォームになるくらい練習や実戦で繰り返しているということ。内心焦っているかは定かではない。落ち着いているから綺麗なのか、焦っていても綺麗になるくらい繰り返しているかまでは分からなかった。

 見た目は同じ幼馴染のムツキだけど、でも確かな差異を感じた。

 その差異の原因は、間違いなく"私"にあるのだろう。

 

『想定内かぁ、自信満々だねぇ?』

『あなた程じゃないわ!』

 

 校門脇に位置取りしていた"私"の下へ、上空からは8発の小型ミサイルが迫り、地上からは盾を掲げて身を隠しながらホシノがダッシュで迫る。

 どう対処したのだろうと思った矢先、"私"はバックステップで校門から離れた。そのまま後ろに下がりつつ、右手が何かを下投げで宙から迫るミサイルへ放り投げた。

 投げられたのは手榴弾。

 間を置かずミサイルが当たって爆発するが―――残るミサイル達が、突如として最初の爆発地点へ吸い寄せられるように集まり、共食いのように自滅した。

 

『"今のは……"』

『まさか、手榴弾型チャフ……!? ですがあんな小型でレーダーを攪乱できるなんて!?』*2*3

『……へぇ。随分準備が良いんだね』

 

 ミサイルとの同時攻撃を狙っていたのだろうホシノが足を止め、背後を一瞬振り返った後、盾から少し顔を出して言う。笑みが消えた真顔のそれは、空崎ヒナを思わせる冷たさを滲ませていた。

 あんな顔、赤い空の下でビナー相手に一緒に戦った時も見なかったのだけど……

 そんなホシノに対し視線を返しながら、"私"が長銃を携え、笑みを浮かべる。

 

『あらゆるリソースを総動員して臨む……それが、『便利屋68』のモットーなのよ』

『そっか』

『ええ』

 

 私も掲げ、さっきムツキにも言ったモットーが出てきた事に内心喜びが浮かぶ。

 

 ―――その瞬間、銃火が弾けた。

 

 展開した盾で半身を隠しながら一瞬で突き出された散弾銃の銃口と、同じく一瞬で構えた長銃が同時に火を噴く。

 ホシノは顔面に弾を食らった。ゴンッ、と人体か疑う音と共に弾が弾かれたそれは、数瞬後に爆発。辺りが砂塵に呑まれる。

 "私"は胴体に散弾を食らった。特別でもなんでもなく、おそらくハルカも使っている普通の散弾だが、その一発で彼女は大きな衝撃を受けて仰け反っていた。

 歴然とした能力差。

 理不尽とすら思える、生まれついた力の差だ。

 私はその場にいないのに、まるで私自身がヒナと対峙したかのような錯覚を覚えるほどに、ホシノはヒナに似ていた。

 アビドス襲撃は何も知らなかったからできた事だったな、と今更ながらに思う。

 

『不思議な弾だねぇ、爆発するなんて』

 

 その状況を、なんて事も無いとばかりに柔らかい声音が引き裂いていく。味方は安心するだろうその声は、敵には力の差と共に畏怖を抱かせるだろう。

 

『特別製だからね。たっぷりと味わってもらいたくてオマケも付けたのよ』

 

 それに、"私"は気丈に言葉を返していた。脂汗を滲ませながらのそれは私でも―――いや、私だからこそ分かるほどのやせ我慢。

 ものすごい痛いのを我慢している顔だ、あれは。

 そのやせ我慢の顔に、不敵ながらも呆れたような微苦笑が浮かぶ。

 

『とはいえ、アレは一応奥の手なのだけどね。知ってはいたけどピンピンしてるの見ると自信無くしそうだわ』

『……知っていた? 君、おじさんのこと知ってるの?』

『ターゲットの事は徹底的に調べ上げる主義でね』

『ふぅん……じゃあ実力差を知った上で、それでもやれると思ったんだ?』

『あなたを無理に倒す必要は無いし、実際やれる公算は高かったのだけどねぇ……』

 

 言いながら、"私"の視線が一瞬校舎の方に向いた。姿こそ見えないけど、指揮をしている先生のことを差して言っているのは明らかだ。先生さえ居なければ実際追い出すまでいけてたと思う。

 まあ追い出した後、ホシノ単騎で取り返されたとは思うけど。

 そしてこの予想は、裏を返せばアビドス高等学校の戦力はその程度と言っているも同然。

 そう察したらしいホシノの目元が少しひくついた。

 

「ベ、ベル、なんかめちゃくちゃ挑発してない……? アレは素なの? 狙ってなの!?」

「いやぁ……本気出されたら負けると分かってるだろうから素なんじゃないかなぁ……」

「ベル様のことですし、何か考えがあっての挑発なのでは……?」

「ベルちゃんって戦いに関しては割と考えなしなトコある気がするから無いと思うな」

「ムツキ、なんだかいやに辛辣ね……?」

「なんだかねー。多分アルちゃんを知ってる私だからなんだろうけど、あのベルちゃん見てても楽しくない」

「どういう基準よそれ……」

 

 ムツキの答えに私は呆れた。

 というかそれは私は見てて楽しいという事で面白がっているという事なのだけど……

 

『ま、とりあえずやれるだけやってやるわよ―――引き剥がせたしね』

 

 そこで、"私"がにやりと笑い、そう言った。

 『引き剥がせた』という言葉の意味する事が何かはすぐに察せた。

 『知識』で様々な事を知る彼女は、ホシノの役割や性格もよく知っている。後輩が大事。学校が大事。守るために力を尽くす。

 だからこそ、窮地に陥れば前に出てくる。

 なまじ能力があり、盾という分かりやすい防御手段もある。銃破壊という不可逆かつ強者であっても避けたいダメージを防ぐには盾が有用。

 だから自然と誘き出せる。

 

『く―――ッ!』

 

 それはホシノにも分かったのだろう。瞠目した一瞬で意図を察したらしい彼女は、取って返そうと踵を返した。

 その足元に、カラン、と物体が転がる。

 閃光手榴弾だった。

 

『しま―――!?』

 

 驚きの声を上げたのも束の間、暴力的な光が発生し、ホシノの目は焼かれた。前後不覚になっただろう彼女の背後から"私"が襲い掛かる。

 足払いを仕掛け、ホシノをうつ伏せに転倒させる。そのまま長銃を背負い、フリーにした両腕で流れるように両足首を掴んだ。

 

『こ、このッ、離しなよ!』

『離すわけないでしょ!? ただでさえ強いんだから! そーらこれでも食らいなさい!』

『う、うわわっ、目が回る!?』

 

 "私"が言い返しながらその場でグルグルと回り始める。ジャイアントスイング―――なんとなく聞き知ってるプロレス技*4を掛け始めた。

 その勢いは凄まじく、一秒で二回転、三回転とどんどん加速する。

 あれ自分の目は回らないんだろうか……?

 

『ん……ホシノ先輩が、負けそうになってる……』

『あら~……ホシノ先輩が遊ばれてるのは予想外ですね……』

『ホシノ先輩!? ちょ、嘘でしょ!? 狙撃は封じれてるけどそれ先輩が無力化されてるじゃないの!』

『こ、この状況でこれはマズいのでは……!? いえ、でもあちらの戦力も一人実質無力化されてるわけなのでイーブンなのでしょうか……!?』

『ア、アル様、凄いです……!』

『おお、アルちゃん社長もやるね~! じゃあこっちもプロレス仕掛けちゃおっかな~!』

『また変なの齧ったな社長……それは近接格闘とはまた違うよ……』

 

 その様子を、中央が開けた校庭で戦っていた面々は片や困惑や焦り、片や称賛や呆れで見ていた。

 まあキヴォトスでありふれてはない戦闘風景だから手が止まるのも分からなくもない。私も実際に見たら手を止める自信しか無い。

 ちなみにあちらの"ムツキ"は面白がっていたが、こちらのムツキはあのジャイアントスイングを見てもあんまり面白そうではなかった。

 

『そーれ、ぶっ飛びなさい!!!』

『ひぇぇぇぇええええええ!?!?!?』

 

 そして"私は"物凄い回転によって遠心力がついたホシノをアビドスの校舎目掛けてぶん投げた。困惑に満ち溢れた悲鳴を上げながら上空を山なりに飛んでいく。

 

『総員、離脱!!!』

 

 その直後、鋭く指示が飛ぶ。

 "私"の指示を聞いた途端、それまで交戦していたムツキ達が即座に踵を返し、校門へ向けて走り出した。

 

『なっ、こらぁ!? 襲いに来ておいて逃げるつもり!?』

『戦略的撤退はむしろ当然よ!』

 

 慌てて追いかけようとするセリカに、"私"が三人の撤退フォローのために射撃をしながら言葉を返す。その射撃で銃を破壊されてはたまらないと思ったか、セリカが思い出したように慌ててまだ残っている遮蔽に身を隠した。

 そのタイミングでホシノが地面に落下した。すぐ先生が駆け寄るが、身を起こしたホシノは座ったまま頭や上半身をグラグラと揺らす。

 

『"えーと……ホシノ、大丈夫?"』

『うへぇぁあぁ……? お星さまがチカチカして目が回るぅ……』

『幸い怪我は無さそうですが……うーん。ホシノ先輩は、少しの間復帰出来なさそうですね……銃と盾も散らばっちゃいましたし……』

『ん、ホシノ先輩を倒したなら次は私が相手。逃げないで』

『シロコ先輩、敵を引き留めないで下さい……』

 

 戦意を滾らせるシロコを、通信越しにアヤネが呆れながら諫めた。

 その間にムツキ達が校舎を越え、"私"と合流する。

 

『いやーちょっとヒヤッとしたね。さっきはありがと、流石の狙撃だったよ! でも離脱の判断早くなーい?』

『同感。私達、まだやれたよ?』

『ま(・)だ(・)や(・)れ(・)る(・)は危ないのよ、特に今回は。ここで引くわよ』

『は、はい……アル様がそう言うのでしたら……』

 

 まだ戦えたのに、と不完全燃焼や疑問を向けるムツキ達に、"私"は有無を言わせない雰囲気でそう言って再度撤退を指示した。

 そんな彼女達を、シロコ達は警戒で銃を向けながらも追おうとはしない。先生も迎撃こそすれど追撃はしないのか指示を出す様子は無かった。遅れて回復したホシノも、すぐ取れる位置に銃が無いからか、あるいは目を回した影響がまだ残っているのか追う様子が無かった。

 そんな彼女達に、"私"が去り際に振り返って言葉を投げる。

 

『今回は威力偵察よ。勿論、あわよくばとは思っていたけれど……私が得意とする士気をへし折る速攻戦術に一気に切り返してきたのは、流石ね。"イレギュラー"を甘く見ていた事は認めるわ』

『ん……イレギュラーって……』

『"……それって、私のことかい?"』

 

 "私"の言葉にシロコが銃を構えながらも視線を先生に向けた。アビドスにおけるイレギュラー要素と言えば、まあ地元民ではないし、生徒じゃなくて大人の先生しかこの場合は無いだろう。

 その推測を肯定するように"私"が不敵な笑みと共に頷く。

 

『ええ。流石は、シ(・)ャ(・)ー(・)レ(・)の(・)先(・)生(・)ね』

『"……私、自己紹介はまだの筈だけど……"』

『それも、ターゲットを調べ上げるってやつの内なの?』

『言ったでしょう? "イレギュラー"と。想定外ってやつよ。まぁ、それもある程度分かったから―――』

 

 先生とホシノの追及にそう返した"私"が背中を向け、肩越しに視線を向けた。コートのファーで口元は見えないが―――

 目は、真剣なそれだ。

 

『"次"は落とす。覚えておきなさい』

 

 その言葉を最後に、"私"は視線を切り、帰路に就くべく悠然と歩き出した。

 

『またねー』

『じゃあね』

『では、さようなら……』

 

 その背を追ってムツキ達も歩いていく。

 それをシロコ達は追わず、攻撃もせず、ただ緊張の面持ちで見送るばかり。ベル達が道の角を曲がり姿が見えなくなってから各々は大きく息を吐いた。

 

『"……終わったみたいだね"』

『これは、勝ったって事で良いのかなぁ? なんか負けた気分なんだけど』

『ホシノ先輩、ぶん回されてたものね。私達の中で一番いいようにされてたんじゃない? もっとしっかりしてよね!』

『うへぇ……』

『ん。"次"は、私が勝負する』

『あらあら。シロコちゃんに目を付けられちゃったみたいですね、あのアルちゃん社長さん』

『あはは……『アルちゃん社長』にさん付けなんですね、ノノミ先輩……普通にアルさんで良いと思いますが……』

 

 そうして、戦いを終えたアビドス組が談笑しながら後片付けを始める。

 ―――そこでホログラムが終わった。

 

「これが、先生とベルさんの初めての邂逅でした」

 

 投影に集中するためかほぼずっと黙っていたベレナが口を開いた。その言葉で、私達の集中の糸が緩んだことを示すようにソファに座り込む。

 いつの間にかやや前のめりで見ていたようで、少し体が凝っていた。

 

「いかがでしたでしょうか」

「なるほどね……いや、随分と違うわね……」

「ですね……本当に、全然違いました……」

「むしろ同じところの方が少ないよねベルちゃん」

 

 ベレナからの問いに、私達は三者三様の反応を示した。

 私としては『知識』の影響か展開が随分と違うなぁと思う程度だった。知っている事を前提に動いていれば、同じ私でもあんな風に異なるのも当然だと思うから。

 何となくムツキが言っているのは違う気もするけど。

 

「まあ、本当に同じ人間なんて居ないからね。ましてやベルに関しては生まれつき『知識』のせいで私と明確に違う。同じところがある方が凄いんじゃないかしら。というか、そこを見つけるムツキも凄いわよね」

「んー? まあ、私はアルちゃんの幼馴染だしねー。昔から見てると色々と分かるものなんだよ」

 

 私の指摘に、ムツキは意味深っぽいことを言いながら微笑んだ。その視線は、さっきまでホログラムが投影されていた闇に再度向く。

 何を考えているかは分からないが―――

 何となく寂しそうな目をしている気がした。

 

 

 


 

 

 

・『陸八魔アル』

ホシノ相手にやり返した人

ヒナの攻撃も受けた事があるのでホシノの攻撃を一度は耐えた

戦っても銃じゃ傷付かない、でもやれるだけはやろうの結果、小さい体をジャイアントスイングで投げ飛ばして無力化する方法を実行した。なおヒナにやろうとしても羽で抵抗されるので意味が無い

曲がりなりにもホシノをやり込めたので勝負シロコにロックオンされた

『"次"は落とす』と決めているが、その『"次"』は遥か未来―――アビドス唯一の生き残り(傀儡シロコ相手)の時になる

 

・陸八魔アル

差異があれば別人になると受け入れている人

『知識』という明確な差異を知っているのでベルと自身の中身や歩んだ過程は別物という意識で見ており、ベルによる変化そのものには驚きは無い

ただ自分がやらないだろうなと思う事をやる姿に驚きはする

自身と別人ではあるが、同じ便利屋を率いて、同じ作戦もした身なので何となく意図を察しやすい

 

・浅黄ムツキ

過去の戦いを見てちょっと面白くないと感じている人

ベルへの理解度が高く、高いからこそ自分を偽って演技をしている姿があまり面白くない

『アルちゃん社長』の呼び方をするあちらの自分の意図を何となく察している

なおジャイアントスイング部分は「あれ多分素だなぁ」と内心笑っている

 

・伊草ハルカ

先生とベル両方を慕っている人

どっちが勝っても泡を吹いていたが何となく痛み分けに終わったので落ち着いた

これ落ち着いていいのだろうか? とも思っている

今度からプロレス技(ジャイアントスイング)をやろうかと少し考えた*5

 

 

 

 

 

 

 

 

・(故)ムツキ

『陸八魔アル』の幼馴染

出会った頃から『理想のアウトロー』を志していた『陸八魔アル』についていっていたため、踏んだ場数は本編ムツキ以上

片手間に銃撃と爆撃をこなすくらいには器用

社長が徹底的にやる素振りが無いためセリカ相手も結構手を抜いており、撤退指示も体裁上文句を言っているだけで不満は無い

『社長モード』の気合の入り方がそれまでと異なっている事を察している

 

 

*1:
ベルが役職と名前を明かしていないので先生は名前をまだ知らない

*2:
『チャフ』はレーダー電波発射体であり、金属が電波を反射する特性を利用した妨害手段として使用される金属薄片

ミサイル誘導形式の『レーダー誘導型』に対して用いられる

ちなみに『赤外線(熱)誘導型』場合は『フレア』を使う

シロコのミサイルドローンはアプリ・アニメ描写共に対象を捕捉してから射出し、ホーミングするが、誘導方式が何かは明言されていない。しかし対人かつアビドスの高温環境では熱源誘導で相手を狙うのは不備が出ると考え、レーダー誘導型とした

*3:
なおチャフの個人携行は可能だが、効果を発揮するほどの散布は上空から専用の放出装置を使うことが必須なので、現実では『手榴弾型チャフ』なんてものは作れはしても意味が無い

ただキヴォトスは対人ミサイルがある世界なのでまあ対策としてあってもおかしくはない

勿論原作には出ていない

*4:
厳密には仰向けに倒れた相手の両足首を掴み、自分の体を軸にして遠心力で相手ごと回す技

*5:
ベルには隙が大き過ぎるしあまりダメージ無いからとやんわり反対される

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