「今日についてだけど、朝食を食べたらアビドス高校に行くわよ」
「ほえ? なんで? 襲撃は取りやめたんでしょ? まさかアルちゃん、騙し討ちしに行くの?」
「カタギ相手にしないわよそんな事……名刺にも書いてる便利屋のアドレス宛に、『あの子達をお願い』ってメッセージがホシノから深夜に送られてたの」
「……社長が調べたアビドスの状況を考えると、ロクな事じゃなさそうだね」
「でしょう? 嫌な予感がするから、状況を把握しておきたいの」
「なるほど……ですがアル様、まだ体調が万全ではないのでは……」
「安心して。みんなの介抱のおかげで一晩寝たら治ったわ」
「……アルもヒナのこと言えないくらいには大概だよね。迫撃砲直撃にその他諸々の被弾もあったら普通はもう数日寝込むものなんだけど」
「アルちゃんの絶好調って追い詰められた時に出るものだけど回復力にも影響してるのかもね……」
「わ、私ももっと、鍛えないとですね……」
「とりあえず、異論が無いなら行くわよ」
「「「了解」」」
休憩を挟んだ後、私達は再びベルの過去を知ることを再開した。
休憩の間の雑談で、この過去について話すことは無かった。要所要所で思う所はあれどそれは部分的なもの。そしてベルの本質について言及できる程でも無かったから。
―――語れるはずも無かった。
最初は『知識』にある私の姿を理想として演技しているのだと、嬉しい気持ちがあったのだ。アウトローの姿として私が参考にしたいものだってあった。
けれど、見ていくにつれて痛々しさが募っていく。私が過去にした言動と対比するにつれてそれはどんどん浮き彫りになっていった。『知識』にある過程から外れないように―――そんな声なき声が聞こえてくる程に。
私は、便利屋の四人だけではアビドスを攻め落とせなかった。当時は本気で攻め落とす気でいたのにだ。
しかし"彼女"は、あちらのムツキ曰く本気ではなかった。その割にはかなり際どいところまで攻め込んでいたとは思うが―――アレもまた、思い返せば『知識』に縛られての結果だったように思う。
"彼女"は縛られていた。
そして同時に、怖れていた。
破滅の未来を遠ざけようと一人で藻掻き、足掻いていた。
―――未だにムツキ達を名前で呼ばないのがその証拠。
その孤独な戦いへの覚悟をあちらのムツキは『社長モード』と評したのだろう。その気合が受けた仕事の達成ではなく、その先にある別の何かで仕事に対してのものではないと見抜いていた。
何度、それを見ていたのだろうか。
何度、そうならざるを得なかったのだろうか。
きっとベルに訊いても答えは返ってこない。彼女にとってそれが常だったから自覚は無い。
けれど無自覚だったからこそ、ムツキ達は入れ込んだのだと思う。彼女は自身の在り方を『陸八魔アル』としての演技で覆い隠していたけど、口にする言葉や取る行動に偽りは無いから。
それは、ただ一部を見ているだけでも理解できた。
『アビドスの最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノが退学した。アビドスの生徒会は、もう存在しないも同然―――君たちはもう、何者でもない』
ホログラムが動き出す。
高級なスーツに身を包んだ大柄なロボット―――カイザーPMC理事が、アビドス廃校対策委員会に対して威圧するように告げる場面。
捨てられた砂漠へ向かい、跳ね上がった金利で追い詰められ、小鳥遊ホシノが身売りのために退学届を提出したことを契機に連邦生徒会が自治を認めた組織『アビドス生徒会』の消滅を判断し、アビドス高校を乗っ取ろうと動き出したところだ。
『公的な部活も委員会も、生徒会も、自治区すらも無いアビドスは学園都市の学校として自立・存続が不可能だと判断……であれば仕方ない。この自治区の土地のほとんどを持つ我がカイザーコーポレーションが、あの学校を引き受けようではないか』
計画の成就が間近故か、意気揚々と理事は語る。
『な、なにを言ってるの……!? 生徒会が無くても、アビドスには対策委員会がある! 私達がまだいるのにそんな言い分が通じるはずないでしょ!』
『―――対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない……』
セリカの激昂を、諦観を滲ませたアヤネの言葉が止めた。
『対策委員会』は連邦生徒会の認可を受けていなかった。それが出来た時には、アビドス生徒会は存在していなかったのだという。
副生徒会長らしいホシノは在籍したままだったけど、手続きをしていなかったということ。
なぜしなかったのかは分からない。その辺の事情は、私達も未だ知らなかった。
それに、話の要旨はそこではない。『対策委員会は非公認である』という事実により、シロコ達の言い分は全て通らないものとなっている状況が、今の問題だ。
『だが喜べ。アビドス高等学校が無くなれば、君たちはもうあの借金地獄から解放されるのだからな』
『そんな……そんなことになったら、今までの私達の努力が……』
理事の言葉に、声を震わ、僅かに俯きながらノノミが呟く。
そんな彼女に、「ほう?」と興味深いとばかりに理事が声を上げた。
『まさか、本気だったのか? 本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったと? これは驚きだ。てっきり最後に諦める時「でも頑張ったから」と自分を慰める言い訳をするために、程々に頑張っているのだと思っていたが……』
本気の疑問。それから続く予想。そこに殊更な悪意は見受けられなかった。
だからこそ、シロコ達には余計に刺さる。
先生も言葉に詰まっていた。あの人は生徒の想いを尊重するけれど、同時に大人として、現実的か否かも考える人だ。理事の言葉は偏見だとかシロコ達を苦しめるためだけの嫌がらせのそれではない、ある種誰もが考える意見の一つと思ったのだろう。
実際……私も、どうしてそんなにお金に困る日々を彼女達は送るのかと疑問を抱いた事が無いわけじゃない。
私は自らこの道を選んだ。数々の失敗も自分の責任によるものだ。だからこそ様々な苦悩も背負ってきた。それは全て、自分自身の選択の結果だから。
彼女達はどうだろうか。
少なくとも、借金を負う事になった事態は彼女達の責任ではない。
アビドスの生徒になった以上、返済義務は発生する。そういう契約だ。だが転校し、アビドスの生徒でなくなればその義務からは逃れられる。
彼女達は、彼女達自身の責任ではない義務によって苦しめられている。
突破口自体はある。途方もなく遠く、相手の悪意一つでズラされるゴールで、決して希望になり得ない突破口が。
『いったい君たちは、どうしてあんなに努力していたんだ? 何のために?』
『あんた、それ以上言ったら……』
『撃つ』
『……ですが、今ここで戦って、何かが変わるんでしょうか?』
それに、ブレーンとして多くを考えてきたアヤネが真っ先に折れた。昨日まではまだ抗う気力もあっただろう彼女も、ホシノの退学という衝撃もあって抗う気力も喪っていた。
『今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています……』
『たとえ、戦って勝てたとしても……その後はどうすれば……』
『学校が無くなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私達にはまだ大きな借金が残ったまま。取引された土地だって戻って来ません……』
『なにより、ホシノ先輩もいない、生徒会も無い。こんな状態で……私達みたいな非公認の委員会なんかに、これ以上一体何が……』
自分達を証明する立場が無い。
言い分を保証する承認が無い。
仮に学校を守れても、莫大な利息と借金がある。
なにより―――そこに、彼女達にとって大切な先輩が居ない。
1年のアヤネにとって当たり前の存在だった『小鳥遊ホシノ』が居ない未来を前にして、戦う程の気力は残されていなかった。
座り込んだアヤネが、眼をきつく瞑る。その目の端には涙が浮かんでいた。
『どうして、どうして私達だけ、こんな……ホシノ先輩……私達、どうすれば……』
『そういう時こそ、助けを呼ぶのよ!!!』
アヤネの絞り出すような声での、迷子の子供同然のそれに、"私"の声が高らかに応えた。
直後、PMC兵達が来た方角のそこかしこで爆発が立て続けに起きる。
『ほ、報告! 北の方で大きな爆発を確認! 合流予定のブラボー小隊が巻き込まれました!』
『東の方でも確認! マイク小隊も、大量のC4の爆発で……!』
『西から合流予定だったアルファ小隊も同じく! 壊滅状態です!』
そして一挙に雪崩れ込む被害報告。
それまで意気揚々と勝利の気分に酔っていた理事も、今の爆発と被害報告で醒めたようで驚きを露わにした。
『なんだと……!? 一体だれが……いや、さっきの声には覚えが……』
『理事、上です!』
依頼や報告での電話のやり取りで聞き覚えはあったのだろう理事が考え込んだその時、辺りを見回して下手人を探していたPMC兵の一人が上を指し示す。
それにつられ、全員の視線がビルの上へと向く。
7階ほどの高さのビルの屋上で、紅のコートをばさりとはためかせ、大地を睥睨する悪魔がいた。
『便利屋68、陸八魔アル! 貴様の仕業かァ!!!』
『ええそうよ! こうして会うのは初めてね、カイザーPMC理事様!!!』
『貴様、我が社を攻撃するとはどういう了見だ!? 貴様に出した依頼はアビドスの攻撃だ!』
『そのアビドスが無いからと占領するカイザーが、今はアビドスなんじゃないかしら!?』
自身が依頼を出した相手が下手人と知り理由を問う理事に、ビル上から睥睨する"私"は凄絶に笑いながら答えを放った。
それに理事が怒りを露わに天を見上げ咆哮する。
『詭弁に過ぎる! そんな理論で依頼主を攻撃する奴が居るか! それにまだ占領していないわ!』
『であれば、その子達はまだ『アビドスの生徒』ね!』
そう叫んで、"私"はビルから飛び降りる。
『"な、アル、危ない……!?"』
先生が慌てふためくも、飛び降りた当の本人は全身を使って軽やかに落下の勢いを殺し、着地を成功させた。
『だから何だ!? 生徒会が無いのでは最早学校とは呼べん!』
『―――それを判断するのは連邦生徒会であって、企業ではないわ』
『ぐ……!?』
理事の怒声に、地上に降りて近くなった"私"の静かな声が返される。そこに込められた冷たさ故か、理事がたじろいだ。
ゆっくりと身を起こした"私"は、今日初めて見る冷徹な目を理事へ向けていた。
そんな"私"に、驚きで涙が引っ込んだらしいアヤネが瞠目を向ける。
『あ、アルさん!? どうして……!?』
『借りを返しに来たわ』
『え……? ど、どういうことです?』
混乱の極みといったアヤネに、"私"が真剣な顔ながらも和らげた表情を向けた。
『昨日の風紀委員会との戦いでの共闘、シャーレの先生とのコネクションは、カイザーに
『も、モットー……って……?』
『あら、先生に『魂に刻むわ』と伝言をしてもらった筈だけど? ―――目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。それがあなた達の先輩が言ったモットーでしょう? 無法には無法を、すなわち私達が適任じゃない……とはいえ、その不安も分かるけれどね』
そう言った"私"が一歩踏み出す。カッ、と靴音を響かせながら、カイザーPMC理事とアヤネ達の間へと進んでいく。
その顔は少し俯き気味で、茫洋とした虚空を見つめていた。
『何をすればいいのか分からない』
『どうすればいいのかも分からない』
『やる事為す事、ぜんぶ失敗に終わる』
『自身の行いは事態を余計に悪化させる』
『先の見えない闇の中を明かり無しに進む』
『"そこ"をくぐり抜けたところで、その先の未来に希望は無い』
それは、私もかつて口にした事。
けれど後半は違っていた。
―――それは、"彼女"自身の言葉だった。
『知識』がある"彼女"は、未来を知っている。けれどそれは刻一刻と変化する自身の未来そのものではなかった。
"彼女"にとっても未来は未知なもの。なまじ知っているからこそ、失敗した時の恐れは大きい。
それは、今のベルを見てもよく分かる。
『理事、火力支援が到着します!』
『む、来たか……!』
そこで、遠くからヘリのプロペラ音が響いてきた。ガトリングやミサイルを搭載した武装ヘリが
アビドスを押しつぶさんとする意志の塊。
『それが何なのよッ!!!!!!』
その意志を、"彼女"は自身の恐れもろとも吹き飛ばすように声を張り上げ、長銃を片手で構えた。即座に引き金が引かれる。
その弾丸は中央を飛んでいた武装ヘリに着弾し―――一瞬後、爆発。大破した。
『闇を見つめて目を閉ざし、恐れに竦んで歩みを止め、諦観で心を折って何になるの!?』
『奪われたなら奪い返せ!!! 誰が何と言おうと自分を貫け!!!』
近くを飛んでいた二台の武装ヘリも、"彼女"の強烈な意志と共に放たれた爆発弾が命中し、遅れて大破。空中で爆散したヘリの残骸は集まっていたPMC兵達の隊列目掛けて慣性に従って降り注ぎ、部隊を壊滅に追いやる二次被害を齎していく。
それから逃げ惑う理事が、脇に抱えていた折り畳まれたホシノの盾を取り落とした。
その盾を拾った"彼女"は対策委員会へと向き直り、翳して叫ぶ。
『仲間の危機を前にして戦いもしないほどあなた達は情けない集団ではないでしょう!!!』
『―――あはは!
そこで、路地から姿を見せたムツキが笑いながら声を上げた。そのまま流れるように座り込むアヤネの元まで行き、彼女の赤縁のメガネを取って自分に付ける。
眼鏡を取られたアヤネは眼を白黒させながらムツキを見つめた。
『ど、どうして……』
『あはっ。アルちゃんも言ってたけど、最初の襲撃のお詫びだよ!』
にこやかに応えながら眼鏡をアヤネに掛け直したムツキが立ち上がる。
『それに~、私の可愛いメガネっ娘ちゃんが泣かされてるからねぇ。だからもうこれは―――ぶっ殺すしかないよねぇッ!!!』
そして、振り返ると共に理事やPMC兵達に凄絶な笑みを向けた。瞳孔が縮まっているから本気の感情だ。
そこで、ムツキが来たのとは別の路地からハルカとカヨコが姿を見せた。
『増援部隊はさっきの爆発で粗方無力化したよ。あとは敵の指揮官を無力化して、指揮体系を崩壊させるだけ……つまり、そこの理事を仕留めれば終わり』
『アル様。爆弾の準備、完了しています。たとえ増援が追加で来ても、ご指示一つで吹き飛ばせます……』
『素晴らしい仕事ぶりよ、二人とも』
二人の報告を聞き、満足げに"彼女"は頷く。そのまま先生の前まで歩いて行き、手に提げていたホシノの盾を差し出した。
『さぁ、先生。今は無法に無法を以て返す時。つまり、アウトローの私達の道が、あなたやこの子達の道と交わる協業の時よ―――この手を取るかしら?』
『"勿論!"』
"彼女"の問いに、先生は一も二も無く頷いた。握手を交わす代わりのように差し出されたホシノの盾を受け取る。
その潔さに気を良くしたように"彼女"は―――朗らかに笑った。
『即断即決、素晴らしい返答ね! 今回は私も指揮下に入るわ!』
それから"彼女"は理事たちの方へ向き直り、前へと進んでいく。その隣に並ぶようにムツキ、カヨコ、ハルカも続く。
その背を、シロコ達は呆然と眺め続けていた。
『対策委員会。かつては敵だったけど今日は味方よ。今こそ私のハードボイルドの力を見せてあげる』
『ハード、ボイルド……?』
"彼女"の宣言に、呆然とシロコが呟く。
それが聞こえた彼女が肩越しに目を向けて頷き、笑った。
『そうよ。何者にも縛られず、何者をも恐れず、自らを貫く在り方。己が信じるものを決して譲らない孤高の信念―――故に、何者もこの私は止められない!!!』
それは、私が覆面水着団を介して像を結んだ、アウトローの姿。追い求めるハードボイルドの在り方だった。
―――おそらく"彼女"のそれは、私のものとは意味合いが違うだろう。
私は憧れからそれを目指した。
"彼女"は義務感や恐怖心からそれを目指した。
それでも―――その背中は、信念を貫かんとする人のものに違いなかった。
『便利屋ァ……! 飼い犬の分際で、よくも!』
『はっ、そもそも私達を飼い慣らせると思った浅はかさを恨みなさい!』
『そーそー。クライアントは
『ムツキ、それだとシャーレの権力目的で擦り寄ってるように聞こえるからやめな……』
『分かってるって~。ただこの情けな~い大人が分かりやすい表現で言ってあげてるだけー』
『こんな奴がアル様の素晴らしさのカケラも理解できるとは思えませんが……』
『うわぁお、ハルカちゃん火力高ーい♪ でも同感!』
『……ま、それはそうだね』
『ぐ、く、貴様らァ……!』
"彼女"を軽んじた理事に対し、四人が揃って反論する。ハルカの火力が特に高いのはこちらのハルカとの共通点を見出した気がした。
『ん……そうだね』
その変わらない調子を見てか、気落ちしていた対策委員会の心に火が灯り始めたようだった。
最早何者でもない―――それは法による庇護も無くなったという絶望の宣告だけど、彼女達に法の外で己を貫くアウトローが味方をしたから。
アビドスは大事だろう。思い出のある学校も大事だろう。けれど何より―――その大事だと思えるのは仲間の存在があってこそなのだと。
『たしかに、悪党としては正解』
まず最初に、最もアウトローに近しい心を持つシロコが奮い立つ。
『お蔭様で、目が覚めました。私達に今こうして迷っている時間はありません』
続けて、迷いを振り払ったノノミが。
『そうだよ! 何よりもまず、ホシノ先輩を取り戻さないと!』
更に、怒りを原動力にセリカが。
『はい―――はい! 対策委員会がたとえ非公認だとしても、不法組織と言われても! ホシノ先輩を助け出すこととは関係ありません!』
そして、仲間の熱に当てられてアヤネも奮い立った。
一度は理不尽な現実と法に心が折れそうだった対策委員会が、いま再び立ち上がる。
『くっ、この期に及んで無意味な抵抗を……! よくも……!』
今にも潰せそうだった存在が奮起する光景にPMC理事が歯噛みするように声を吐く。
『"……よくも、私の大事な生徒を"』
『シャーレの、ぽっと出の……!』
『"ホシノのこと、返してもらうよ"』
そう言って、先生は盾を持ち上げ、翳した。その場に来た時は理事が持っていたもの。それのように、ホシノの身柄も返してもらうと。
『先生ッ! ふざけるな、貴様にそんな権利があるとでも―――』
理事が罵倒の言葉を続けようとしたが、それは尻すぼみとなる。先生と理事の間に立つように対策委員会と便利屋68が並び、全員の敵意ある視線を纏めて受け止めたからだった。
PMCの理事を務めているからといって戦いが強いとは限らない。戦いも茶飯事な生徒相手、しかも少数精鋭のグループ二つを前に丸腰では勝てる筈も無い。
即座に庇うようにPMCの兵達が理事の前に並び、隊列を作った。
両者が見合う形で数瞬の静けさが辺りに満ちる。
『ぐぬぬ……こうなったら"アレ"を使う! PMC全隊、時間を稼げェッ!!!』
『"みんな、総攻撃だ!"』
『わかった!』
『行きます!』
『逃がさないわよ!』
『援護します!』
『
『『『―――了解!!!』』』
そうして、『便利屋68』とカイザーPMCの残存兵力の全面対決が始まった。
・『陸八魔アル』
16年間の苦悩とその答えも魂に刻んでいる社長
かつて持っていた悩み*3に対して出した答え*4が奇しく?も覆面水着団のモットー*5に近しかった事もあり、発破を掛ける時はほぼ素
対策委員会を助ける理由も、未来のためとはいえ襲撃を仕掛けた本心からの罪悪感
名刺のメアドに届いたホシノのメッセージを読んだ事もありやる気は天元突破。更に今はやるべき事とやりたい事が完全に一致していて過去最高のポテンシャル
なおホシノのメッセージを読んではいるが受け入れてはいない
自ら先生の指揮下に入ることでカイザーPMC理事を裏切った事を更に当てつけているがその自覚は無い
・(故)ムツキ、(故)カヨコ、(故)ハルカ
名前呼びされてやる気が限界突破している社員達
対策委員会のモットーは初耳だが特に気にしない方向
社長のやる気も天元突破している上に全力の指示も出たので加減無しでPMCを襲う
『仲間の危機を前にして戦いもしないほどあなた達は情けない集団ではないでしょう!!!』が後に『アル』の未来を切り開く原動力の一つとなった
・(故)対策委員会
何者でもなくなったが、だからこそアウトローの助力が力になった子達
風紀委員会との共闘でかなり心を許していたのと土地の情報をちゃんとくれたのもあって許しており、学校を襲ってきた事をそこまで引き摺ってたのかと逆に驚いた
・(故)先生
『アル』を初めて指揮する人
目には目を、歯には歯を。すなわち法には法を、無法には無法を。ローとアウトローが正しく交差した
心強い生徒が味方になってくれたと頼もしく思っている
・陸八魔ベル
復讐者
死という
捻じれて歪んだと知って尚歩み続けた者
取り返しがつかないと分かって尚足掻き続けた者
奪われたが故に奪い続ける者
―――対話により、己を曲げた者である
『どうすればいいのかも分からない』
『やる事為す事、ぜんぶ失敗に終わる』
『自身の行いは事態を余計に悪化させる』
『先の見えない闇の中を明かり無しに進む』
『"そこ"をくぐり抜けたところで、その先の未来に希望は無い』
『奪われたなら奪い返せ!!! 誰が何と言おうと自分を貫け!!!』