陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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『陸八魔アル』の全力

 

 

 

 "アル(ベル)ちゃん"とシロコの共闘が成ったと同時、その勢いのまま進もうとばかりに上がったシロコの銃火が黒ゴリアテに乗った理事との戦いの火蓋を切った。

 

『効かんと、言っているッ!!!』

 

 シロコの八連装ミサイルに対しても言った事を再度叫びながら理事が接近を続ける。

 狙ってはいてもあちらも大きく躯体を動かしながら走ってきているため剥き出しのコックピットにいる理事本体に上手く当てられず、とうとう目の前まで接近を許した。

 それでも二人は余裕な様子で肩越しに後方―――先生とアヤネがいる方へ視線を向けた。

 

『先生、こいつは私達が相手する!』

『その間に兵隊達をお願いね!』

『"分かった! 気を付けて!"』

『無駄だァッ!!!』

 

 ぐおっ、とオノマトペが聞こえてきそうなくらい大振りの、けれど絶大なパワーと分かる振りかぶりの後にアームが振り下ろされる。

 それを"アル(ベル)ちゃん"とシロコは余裕を持って飛びずさって回避。

 二人は視線を交わしてから左右に分かれて展開しながら理事狙いで銃撃を浴びせていく。

 

『ちょこまかと鬱陶しいッ!!!』

 

 銃撃は全て弾かれていたけど、強化外骨格―――つまりロボットの理事にとっては体そのもののような扱いで、たとえ蚊のようなものでも感覚が伝わっているのだろう。言葉通り鬱陶しそうに、喜悦よりも苛立ちを露わに腕を振り回した。

 左右に分かれた二人の内、理事が追ったのは宣言通り執着しているらしい"アル(ベル)ちゃん"だった。

 "彼女"の後を追うように躯体を動かし、アームを突き出して大口径三連ガトリングガンを回し始め、ほぼ間を置かず間断のない斉射が始まった。

 

『ふふはははははははは!!! 穴だらけになるがいい!!!』

 

 狙いがブレブレだけど、それでも連射力が極めて高いそれに"彼女"は晒される。走るのは止めず、適宜遮蔽を使うけどどうしても被弾は避けきれない。

 どんどん被弾する"アル(ベル)ちゃん"を見て喜悦混じりに理事が勝ち誇りながら次から次へと遮蔽に使われる車を穴だらけにし、"彼女"を追い詰めんと勢いを絶やすことなく銃撃を続けた。

 

『後ろががら空き』

 

 それに水を差すようにシロコが静かに呟きながら動いた。"彼女"を倒そうと躍起になるあまり移動を止めている黒ゴリアテの背面にポイと手榴弾を放る。

 大きな砲台を持つ頭部の後面でそれは起爆し、爆発に伴う衝撃波が黒ゴリアテを襲った。

 理事の驚く声と共に少しだけ躯体が前のめりになる。その『少し』が、"アル(ベル)ちゃん"を襲っていた銃弾の雨を遠ざける。

 

『ナイスよ、シロコ! これでも―――食らいなさい!』

『ぐぉ!? ぬぅ……!』

 

 その隙に飛びずさって距離を取りながら"彼女"が理事を狙い撃つ。放たれた銃弾は真っ直ぐ理事の顔面を強かに打ち、爆発と共に大きく仰け反らせた。

 けれど理事はその執念故か意識を飛ばすことなく再び前を向く。

 

『効かんと、何度言わせる気だァッ!!!』

 

 一際大きな怒号と同時、コックピット横の肩部分のフレームがガパリと開く。そこには片方八連装、計十六のミサイルが収まっていた。

 狙いはやはり、"アル(ベル)ちゃん"だ。

 シロコが使うドローンミサイルの倍以上の大きさのそれが連続で全て発射される。それは何十メートルもの上空を飛んだ後、すぐに"彼女"が居る方へ弾頭を向けた。

 

『吹き飛べェッ!!!』

 

 理事の勝利を確信したかのような咆哮。

 それはたしかに、人に向けるには過剰なくらいの威力と数。風紀委員長みたいな外れ値以外でもなければ勝ちを確信してもおかしくない。"彼女"がその外れ値ではないと知っているからこその確信だろう。

 

『お生憎様、そ(・)う(・)い(・)う(・)の(・)は対策済みよ!』

 

 けれど、"彼女"はそれを聞いた時には手榴弾を黒ゴリアテに目掛けて勢いよく投擲して、嘲笑うように笑みを浮かべていた。

 それは、アビドス襲撃の折にも使われたもの。

 

『あれは……!』

『シロコ先輩のミサイルを誘導した……!』

『手榴弾型チャフ!』

 

 周囲の兵を倒しながら様子を窺っていたシロコ以外の三人が瞠目しながら答えに行きついたと同時、黒ゴリアテの装甲に手榴弾が衝突し、破裂。爆発の代わりに詰め込まれていた大量の金属製の薄片が空気中に散布された。

 その途端、"アル(ベル)ちゃん"の方角から理事が駆る黒ゴリアテへと、上空から飛来するミサイルの挙動が変わった。

 

『チャフだと!? ということは……な、なにぃっ!?』

 

 その正体を理解した理事が驚きを露わにして上空を見る。

 そして装甲に付着したチャフ目掛けて落ちてくるミサイルを見て、慌てたように両アームを頭上に掲げた。

 

 つまり―――コックピットの守りが、手薄になる。

 

『これで―――』

 

 その隙を突かんと、長銃が向けられる。

 並ぶように、白い小銃も向けられた。

 

『終わり!!!』

 

 そして、引き金は同時に引かれた。

 片方は連続で引かれて絶え間なく爆発弾が、片方は引きっぱなしでマガジンに詰められた弾の限りの銃弾が、剥き出しのコックピットに座る理事へ間断なく叩き込まれていく。

 

 

『ぐぅぅぅぉぉぉおおおおおああああああああああああああ!!!!!!』

 

 

 それに耐えようと理事は気迫の籠った声を張り上げ、意識を保とうと足掻いた。

 それは、自身が放った十六発ものミサイルが降り注ぐまで続いた。

 もうもうと立ち込める煙によって躯体や理事の姿が見えず、声も聞こえなくなったのを契機に戦場にいる誰もが再度動きを止め、辺りは静けさに包まれた。

 私達も知らない展開だから固唾を呑んで見守っていた。

 

『……終わったよね?』

 

 シロコが銃を下ろし、不安げに呟く。

 その呟きに、隣に立つ"アル(ベル)ちゃん"が肩を竦めた。

 

『見えないから何とも。どちらにせよ、戦場にいる以上気は抜かないべきよ』

 

 そう言って油断なく、爆炎と煙で姿が見えない理事の方向を見ながらマガジンを交換していく。同じようにシロコもマガジンを交換した。

 ガチャリ、と新品のマガジンをシロコが差し込んだその時、薄れゆく黒煙の中で赤い光が瞬く。

 

『"二人とも、まだだ!"』

『チ……ッ!』

『ん―――!?』

 

 先生が鋭い声で警戒を促すのとほぼ同時、"アル(ベル)ちゃん"がシロコを突き飛ばしながら反対側に飛び退く。

 直後、二人が立っていた場所を極太の赤い閃光が奔(はし)り抜けた。

 光に切り裂かれた黒煙の向こうからは、煤汚れながらも大破はしておらず、またコックピットで依然執念に身を焦がして意識を保ち続ける理事が駆る黒ゴリアテが姿を現した。赤い光は頭部からリーゼントのように突き出された砲門から射出されたようで、その砲門にはその証とばかりに赤い電光が硝煙の如くバチバチと走っていた。

 

『フン、躱したか。勘の鋭い奴らだ』

 

 そう理事が零すと同時、"アル(ベル)ちゃん"がはー……と深いため息と共に肩を落とす。

 

『予想はしていたけど、まだ意識があるとはね。十発以上の爆発弾、シロコの連射、ミサイルの爆撃も全部耐えるその執念はいっそ感服するわ……』

『しつこい。いい加減アビドスから出て行って』

『クク、ハハハハハ! 先の一撃を見て尚逃げもせず言ってのけるとは、良い度胸だ!!!』

『褒められても嬉しくない』

 

 多分皮肉抜きだろう理事からの賞賛にシロコが憮然と拒絶を返す。

 それに肩を揺らして理事が声も上げず笑った後、唐突に黒ゴリアテが動き出した。

 

『あとは頭脳さえあれば良かったのだがなァ! せめてあの、ホシノとやらのように!』

 

 あっという間に距離を詰めた理事の機体が、また大きく腕を持ち上げ、振り下ろす。その一撃は先のように二人が飛び退いた直後、ゴシャァッ! とアスファルトを殴り砕いた。

 万が一にも殴られれば良くても欠損、最悪圧死を免れられなさそうなその威力に、過去のものだというのに内心で戦慄する。

 

『貴様ら如きの体躯では、この12860馬力を超える機体は止められんぞォ!!!』

 

 理事の攻勢はそれで終わらず、今度はシロコを追うように反対の腕を振り下ろした。更に反対。もう一度。そうして交互に腕を振り下ろしながらシロコを追い詰めていく。

 何度も何度も飛び退いて躱していくシロコに体力的な余裕はまだありそうだけれど、その面持ちは険しかった。

 視線は黒ゴリアテの頭部にある砲門に集束しつつある赤い光に向けられていた。理事は遠距離からでは避けられると見て、しかしただ棒立ちでは攻撃されるからと、インファイトで殴り掛かっている間にチャージを済ませようと考えたらしい。これなら一度仕切り直そうと距離を取った瞬間、あの赤い極光に晒されるだけだ。

 けれど距離を取らないと、黒ゴリアテの質量に晒される。加えて下からではコックピットに座る理事に上手く攻撃できない。

 ずっと後退を強いられている中で狙いを付けて撃つのは至難の業に違いなかった。

 

『いい加減諦めたらどうだァッ!?』

『うぁ―――っ!?』

 

 そして、チャージが完了したのか両アームで殴り掛からず、ガトリングガンの斉射で無理矢理シロコを押し下げた。唐突な斉射に対応しきれず諸にそれを食らった彼女が吹っ飛ばされ、地面を転がる。

 その彼女へ、赤い光の狙いが定まる。

 

 

 

『これで、終わりだァッ!!!!!!』

 

 

 

『ええ―――あなたがね!!!!!!』

 

 

 

 その時、盾兵を蹴り飛ばした時の速度で黒ゴリアテの股下を潜り抜けた"アル(ベル)ちゃん"が割り込んだ。

 左手一本で構えた長銃で赤い光を収束させた砲門へ弾丸を撃ち込み、右手一本で倒れ込んだシロコの体を抱え、その勢いのまま黒ゴリアテから離れていく。

 それが一秒足らずの僅かな時間で起きた事。

 ―――遅れてドゴンッ、と爆発弾の音が響くと共に、バチリ、と理事の頭上から不穏な音が響いた。

 

『な、なんだと……ッ? ば、馬鹿な―――!?』

 

 引き攣ったような声を上げながら理事が唖然と頭上の砲台を見上げる。

 その間にも黒ゴリアテは黒煙を噴き上げ、赤い電光を砲門はおろか砲台、躯体へと範囲を広げながら激しく走らせていく。

 そして、光と炎が機体から吹き上がった。

 

 

『ぐああああああああああああああ!?!?!?』

 

 

 理解できない、なぜだ、という驚愕100%の爆発に優るとも劣らない断末魔が、理事が駆っていた巨大な躯体の大爆発と共にアビドスの街に響き渡った。

 

『ふん。私から目を離したのが運の尽きよ』

 

 それを背で受け止めながら道路を走り抜けた"アル(ベル)ちゃん"が、ゴリアテの無力化を確認して足を止め、毒を吐く。視線は爆発元に駆け寄るPMC兵達と、爆発元にいるだろう理事へ向けられていた。

 

『ん…………あの。そろそろ、降ろして欲しい』

『ん? ああ、そうね。ごめんなさい』

 

 そこで、右腕で小脇に抱えるように運んでいたシロコから降ろすようお願いされ、思い出したように――実際切羽詰まっていてそれどころではなかったのだろう――"彼女"はシロコをその場に下ろした。

 自分の足で立ったシロコは少し恥ずかしそうに眼を逸らしたけど、"彼女"は依然変わらず理事達の方へ視線を向け続けていた。

 視線の先では、スーツがボロボロになった理事が爆散した機体のコックピットから救出されたところだった。

 

『理事、傷が……! すぐに治療を!』

『ぬぅっ……だが……!』

 

 兵士の言葉に、しかし理事は執念を未だ絶やしていないのか頷かない。

 そんな彼らの下へ"アル(ベル)ちゃん"が近づいた。

 

『まだやるというならとことん付き合うわよ。最新兵器を喪い、兵力の過半も倒れて尚、打つ手があるというなら驚きだけれど』

 

 小首を傾げながら、笑みすら無い真顔で言う。

 その酷薄な顔に、私は思わずゾクリと寒気を覚えて背筋を震わせた。

 それは理事達も同じだったらしい。理事はぐっと押し黙る程度だったものの、肩を貸したり最低限の防衛とばかりに傍にいた兵士達はあからさまに身を引いていた。

 

『くっ……一度退却だ! 兵力の再整備に入れ!』

 

 最新兵器をも破壊した相手、更に気圧されて揺れる士気を見て、これ以上はもう無理と判断したらしい理事が退却を宣言する。

 一度退却、だなんて言っている辺り諦めていないのは丸わかりだった。

 そんな理事の指示を聞いて、兵士達がすぐ退却命令を通信で伝達していく。その声を背景に肩を貸された理事が少しずつ来た道を戻るように去り始めた。

 

『覚えておけ、この代償は高くつくぞ……!』

 

 そして去り際、三流悪党と言わんばかりの捨て台詞を残していった。

 徐々にPMCの兵達が基地がある砂漠へ向けて去っていくのを見送るように、分散して戦っていた対策委員会とあっちの私達、先生が"アル(ベル)ちゃん"とシロコの下へと駆け寄る。

 

『敵兵力、退却していきます……終わりましたね』

『ふぅ……なんとか、なりましたね……』

『すっごい疲れたわ……』

『"皆、お疲れ様。あの追い詰められた状況から本当によく奮起してくれたね"』

『ん……アル達のお陰』

 

 さっき小脇に抱えられたからか少し恥ずかしげにシロコが言う。そんな彼女に先生は微笑んだ後、並んで立つ"アル(ベル)ちゃん"に顔を向けた。

 

『"そうだね。便利屋のみんなも、危ないところを助けてくれて本当にありがとう"』

『礼には及ばないわ。風紀委員会相手に共闘してくれたあなた達を襲撃した汚点を雪ぐための行為だったのだから』

『くふふっ♪ さっきのアルちゃん、サイッコーにハードボイルドだったねぇ♪ 見てて痛快なくらいの大暴れだったよ! しかもあの最新兵器を狼ちゃんと二人でやっつけちゃうなんてさ!』

『ホントにね。援護する気でいたのに必要無かったのは予想外だった。それにあの手榴弾型チャフも、まさかここで役立つなんてね』

『す、すごかったです……アル様の素晴らしさ、私、まだまだ分かってなかったと痛感しました……』

『ハードボイルドなアウトローを目指して昔から鍛えていたからね。その賜物というやつよ。まあ最後の最後は流石にヒヤリとさせられたけど』

『私も、あれは終わったと思った。ありがとう』

 

 改めて、顔を見ながらのシロコの礼に、"アル(ベル)ちゃん"は微笑みながら頷いた。

 

『ふふっ、そのお礼は受け取っておきましょう……それで、どうだったかしら? 私のハードボイルドの力は?』

『ん……凄かった』

『飾り気のない感想ね』

 

 "彼女"からの問いに、シロコは言葉に窮したように一瞬眉根を寄せてから端的に言った。

 同じように"彼女"も簡素に応じるけど、その顔は満足気だった。

 

『けれど……ええ。無駄に飾られたものよりも遥かに価値のある、何よりの賛辞だわ』

 

 そして、そう言って"彼女"は笑った。

 それから幾らかのやり取りを経て、『ホシノ先輩を助ける方法を探そう』という結論を出してその場は解散。先生と対策委員会はアビドスの校舎へ行き、"アル(ベル)ちゃん"が率いる便利屋は帰路に就いた。

 

 

 そこで、短くも濃密なアビドス攻防戦の回想ホログラムが終わった。

 

 

「いかがでしたでしょうか」

「……やっばぁ……」

 

 私がずっと膝に乗せているベレナちゃんからのいの一番の問いかけに、私は素直な感想を疲れた頭から馬鹿みたいな語彙で吐き出した。

 

「あの発破を掛けるところとか最高だなって思ってたけど次から次に予想を超えていくじゃん。あれがベルちゃんの素で、全力なんだね……」

 

 その疲れの大半は満足感。

 ずっと『知識』で知っている姿や過程に沿おうという意志が見える痛々しさを見ていただけに、根底の恐怖を吐き出してでも全力で戦う姿はとてもどきどきするものだった。

 変に抑えようとせず、ただただ真っ直ぐ。

 それはアルちゃんが時たま見せる姿と根底を同じくするものだった。

 その上で、『陸八魔アル』としてではない"彼女自身(ベルちゃん)"としてのありのままの姿であることが、とてもよかった。

 

「アルちゃんはどうだった? やっぱりー……」

 

 その満足感を分かち合いたくて水を向けるも、その声は尻すぼみになった。

 アルちゃんの顔が浮かないものだったからだ。

 

「アルちゃん? 浮かない顔だけどどうしたの?」

「……思ってたより、ベルはシロコと仲が良かったんだなと思うと……」

「…………あー……」

 

 憚られるような様子のアルちゃんが言わんとする事を察した私は、浮かれていた気持ちが一気に沈んだ。

 私達がいま見た回想は過去のもの。

 あの時系列の先の未来でベルちゃんは、絶望して色彩に触れ傀儡になってしまった嚮導者としてのシロコを手に掛けた。

 今まで私達は、こっちの私達と同じくらいの関係性なのだろうと思っていた。共闘はしたし仲も悪くはない。でも、いま見たベルちゃんの過去程でないのは確かだ。

 なにより―――

 

「ベルちゃん、名(・)前(・)で(・)呼(・)ん(・)で(・)た(・)ねぇ……」

 

 苗字含めてだとヒナやアコも呼んでいたけど、下の名前だけに限れば呼んでいたのは便利屋を除けばイオリとシロコの二人だけ。

 あっちの私達すらも理事に啖呵を切ったさっきの戦いの直前だった。

 

「認めた相手しか呼ばないのでしょうか……?」

「それもあるかもだけど、多分『社長モード』中というか『知識』に沿おうって意識も関係してそう」

 

 ハルカちゃんの疑問に、私は予想で答える。

 シロコの名前を呼ぶ時の様子を見るに『認めた相手の名前を呼ぶ』のは確かにあると思う。何かしらの特別な意味を持たせている印象は受けた。

 でもそれは、相手を名前で呼ばない理由にはならない。そしてこちらはあっちの私が言っていた『社長モード』という時限定で、更に言えばベルちゃんは無自覚の、『知識』に沿うために人間関係もその範疇に留めようとするブレーキがあるのではというのが私の見立てだった。

 とはいえイオリとヒナ、呼んでなくても距離感がこっちのアルちゃんよりも近いシロコとのやり取りを鑑みるに、その辺の距離感は何かミスってそうな気はする。

 あっちの私達の名前を中々呼ばないのは付き合わせてたという意識から来るものなんだろうけど……

 そしてその積み重ねを更にここから見る事になると思うとほんの少し気が重くなる。

 ……そもそもの話、彼女の世界の末路を考えれば避け得ない事だけど。

 

 ―――でも、知りたい。

 

 気が重くなるのは確かだけど、それでも知りたい気持ちはそのままだ。

 彼方の私のことも、彼女を介してベルちゃんのこともたくさん知りたい。夜に魘されて起きる姿を見ている身としては、少しでも悩みや苦しんでる事で助けになりたいと思うから。

 その思いを秘めながら、次は何だろうと思考を回す。

 

「とりあえず次に先生と会うのはー……カイザー基地だっけ?」

 

 たしか次に先生と関わるのは今のアビドス市街地での戦いの翌々日、小鳥遊ホシノ救出の決戦だった筈。*1

 記憶を掘り返しながら問うように言うと、アルちゃんとハルカちゃんもこくりと頷いた。

 けど私の膝の上に座るベレナちゃんはゆっくりと首を横に振った。

 

「いえ、その前に一度会いますよ」

「ほえ? そうなの? どこで?」

「それは……見た方が、早いと思います」

「うん……?」

 

 ここにきて初めて歯切れをやや悪くする少女の様子に、私達は怪訝な顔で互いに視線を交わす。

 まだ破滅は先の事なのにどうしてここでベルちゃんの過去を見せる時に躊躇うのか分からなかった。

 

「とりあえず……それなら、見ましょうか。ベレナ、お願いできるかしら?」

「……はい……日時は、先ほどの攻防戦と同日の夜です」

 

 アルちゃんの促しに緊張の雰囲気を纏いながらベレナちゃんが応じる。程なくナラム・シンの玉座の闇の中にホログラムが浮かんだ。

 映し出されたのは、夜のアビドス校舎で対面する先生と"アル(ベル)ちゃん"の対面の光景。

 

『"アル? どうしたんだい?"』

『先生と話をしたがっている人から、指定の場所までの護衛と案内(エスコート)を頼まれてね。そういうわけで先生、今からどうかしら? ―――彼女と関わりがある人よ』

 

 そう言って、"彼女"は黒地に白い罅が入った封筒を翳し、薄く微笑んだ。

 

 

 


 

 

・カイザーPMC理事with黒ゴリアテ

専用機に乗って暴れ倒した人

アニメより無駄行動は減って全ての武装をフル活用し、戦闘中あらゆる被弾に遭っても執念一つで意識を保って戦い続けたが『アル』とシロコの二人に敗北

最後はアニメのレーザー砲→連続パンチ&→バックステップで転倒→レーザー砲→盾バリアの流れの中で『パンチ部分がガトリング斉射になって仰け反らされたら詰みでは?』の発想から採用。引き付ける相手が一人か先に『アル』を倒した上でガトリング斉射をやっていれば勝てていた

 

・『陸八魔アル』

ゲヘナハードボイルドアウトロー

アビドス攻防戦MVP。爆発弾の消費量は過去最多で、自身のそれにシロコの攻撃も含めて耐え抜いて尚執念を燃やす理事に内心引きつつ本気で感心した

黒ゴリアテのことは『知識』由来で把握済み。手榴弾型チャフも黒ゴリアテのミサイル対策の一環だが、偶然対策出来ていた体で通せる言い回しで知らないふりをしている

『知識』に沿っている間は相手をアルと基本同じ呼び方で呼んで距離感も合わせようとする無自覚なクセがあるが、無自覚なので『知識』に無い部分でのやり取り含めて諸々狂っている事にも自覚が無い

 

・(故)シロコ

アビドスピュアオオカミ

最後のレーザーの照準を見た時は死を覚悟したが、直後には抱きかかえられて運ばれていた上にゴリアテは大爆発していたので理解するまでにちょっと時間が掛かった。ちょっと昔を思い出した

きっとホシノ先輩救出にも駆け付けてくれると信じている

 

・陸八魔アル

ゲヘナモノホンアウトロー

自分の時には無かった理事専用機に白目を剥いて驚いていたが、シロコとベルの大暴れと大金星に内心拍手喝采。でもシロコとのやり取りを見るにつれて心苦しくなっていっている

ベルの大暴れを見て自分もあれくらい鍛えようかなと思案中

 

・浅黄ムツキ

ゲヘナアウトローズファンガール

自分を抑え付けるよりも正直に進む姿の方が大好き。『陸八魔アル』として振る舞っているよりも自身の苦悩と出した答えに従い暴れるベルの姿の方が好み

ベルの影響で生じた戦力差や敵の有無は察せたが、なぜベルがエスコート役に選ばれて来ているのかは分かっていない

 

 

*1:
時系列は以下の通り

①昼、市街地攻防戦(今ここ)

②夜、先生が黒服と対話

③翌日昼、トリニティ、風紀委員会、便利屋68に協力要請

 なおアプリだと風紀委員会には足を運んでいるものの、トリニティにはヒフミに連絡を取っただけか足を運んで頼み込んだかは明示されず、便利屋に関してはこの時に屋台として再開した柴関ラーメンを食べての行きがかり上のことで先生達と会っていない

④更に翌日朝、カイザー基地決戦

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