陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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『陸八魔アル』の仕上

 

 

 

「敵発見、基地を目指して攻撃を始めています! アビドスの対策委員会です!」

 

「兵力を集結させろ! 北方の対デカグラマトン大隊*1も呼び寄せておけ! 全ての兵器と戦力を総動員して奴らを叩き潰し、我々に歯向かった事を後悔させるのだ!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

「アルちゃん社長、あいつら基地に向かって動き出したみたいだよ」

 

「そう。カヨコ、風紀委員会は?」

 

「ヒナ達は基地に行ってるね」

 

「あ、あと、トリニティの砲撃部隊も基地に向かっていたのを確認しました」

 

「報告ありがとう……予想の範疇ではあるけど面倒な事態になったわね。このままだと大隊が基地に入って乱戦になるわ」

 

「あの最新らしい黒い機体をたった二人で倒された訳だし、そりゃ警戒するよね」

 

「くふふ♪ それじゃあアルちゃん社長、どうする?」

 

「決まっているでしょう? 大隊を足止めよ! 全隊に出撃を伝達してちょうだい!!!」

 

「おっけー! 派手にやっちゃおうかっ!!!」

 

 

 

 

「―――理事! たった今報告が入りました! 北方の対デカグラマトン部隊に襲撃です!」

 

「何だと!? 所属と数は!?」

 

『こちら、対デカグラマトン大隊部隊長! 襲撃者の所属は不明! 数はおよそ百人、一個中隊規模!』

 

「所属不明だと、装備に特徴は無いのか!?」

 

『多数のトラックを使っていますが識別不可、搭乗者はいずれも砂漠越え用の外套装備でカモフラージュされています! 統一性がありません! おそらく傭兵―――ぐあっ!?』

 

「は、反応、ロストしました……」

 

「このタイミングでアビドスの僻地に傭兵が徒党を組んでPMCの兵士を襲撃だと……!? どうなっている!?」

 

「理事、第3から第5部隊が全滅! ゲヘナの風紀委員会の空崎ヒナと他数名、またトリニティ……と思しき何者かによる指示の榴弾砲によるものです!」

 

「理事、残存戦力が30%を下回りました! 現場から援軍の要請です!」

 

「なに!?」

 

「理事、どうされますか!?」

 

「理事!」

 

「理事、ご指示を!」

 

「―――いいだろう。貴様らだけは私が潰す」

 

 

「私が出る!!!」

 

 

 


 

 

 

 夜のアビドス校舎で先生と"アル(ベル)ちゃん"が別れた後、私達は休憩を挟む事なく次の―――そして、アビドスに於ける最後の戦いの記録を見始めた。

 

 なぜ一人で行動するのか。

 黒服という者とどういう関係だったのか。

 気になるところは沢山あるけれど、その一部分だけではきっと語れない事だ。だからベレナちゃんもあの記録を見せる前に緊張を見せた。彼女でもそして彼女達の"先生"もきっと知らない事だ。

 何かを話すにも情報が足りない。この記録を見ただけで話せることもきっと無いだろう。

 それでも、話すならまず知らなければならない。

 ベルちゃんがかつてどう生きて、どんな傷を負ったのかを。

 

 次に浮かんだホログラムは、砂漠の中に建造されたPMC基地だった。

 そこを突き進むのは対策委員会のシロコ、ノノミ、セリカちゃん、アヤネちゃん、先生の五人。アヤネちゃんと先生の二人がドローンやシッテムの箱で戦況把握やマガジンの運搬指示、前衛三人がPMCの兵士達を倒して突き進んでいた。

 次から次へと出てくる兵士を倒し、展開されたドローンも倒しての快進撃。

 

『げっ、アレって前にシロコ先輩と便利屋が倒したデカブツじゃない!』

『あんなに沢山……! 全部相手してたらキリがありません!』

『でも、倒さないと進めない……やるしかないよ』

 

 道中で出てきたのはまだ塗装されてなさそうな、あるいは砂漠の色に似せた迷彩なのか、茶色の装甲色を持つゴリアテだった。おそらくあれが黒ゴリアテを前に"アル(ベル)ちゃん"が口にした『量産機』というものなんだろう。

 何機もの量産機ゴリアテが出てきて、それを前に身構える対策委員会。

 そこに、遥か彼方から飛来した榴弾砲が量産機達を撃ち据え、撃破していく。

 

『"今のは……"』

『わ、私です……!』

 

 それをしたのは5の数字が書かれた紙袋を被った少女、ファウストだった。

 トリニティの制服を着ているとは思っていたけど、本当にそうらしく、先生が協力を求めた甲斐あって砲撃部隊を『たまたま近くで授業をしているだけ』という体で支援に連れてきたようだった。

 

「な、なんですってぇ!? 覆面水着団のファウストって本当にトリニティの子だったの!? しかも正式に部隊を引き連れてこれる立場!? どういう事よ!?」

「な、なんでそんな人が、ブラックマーケットにいたんでしょうか……?」

「本当に何でなんだろうね……」

 

 その事実に私達は流石に愕然とした。

 まさか本当にトリニティの子だとは思わなかったし、ファウストとして来ている時点で学内の立場とか大丈夫なんだろうかとも思った。多分今の『ファウスト』の名乗りの方が、どこのだれか分からない犯罪者に扮している……という風にトリニティでは解釈されるのだろうけども。

 ベルちゃんの事を知ろうとしたらなんか変な方向の真実を知ってしまっていた。

 

『くっ! ひ、怯むな! 奴らと距離を詰めれば砲撃も誤射を恐れてやってこない筈だ! 距離を詰めろ! どうにか前に出て―――』

『―――前に出れば勝てるとでも?』

 

 砲撃の脅威もとにかくシロコ達との距離を詰めれば恐れる必要は無いと判断したらしい現場の指揮官の指示に被せるように、新たな闖入者が襲撃を仕掛けた。

 その闖入者はイオリ。物凄い勢いで飛び蹴りを横からかまして、量産機のゴリアテを一撃で転ばせていた。

 反動で飛び退いてくるりと一回転し着地したところには、いつの間に駆けつけていたのか後方支援が多いチナツやオペレーターを担うアコ、そして風紀委員会最強のヒナもいた。前衛二人、後方支援二人の少数精鋭は同じでも、ヒナがいる時点で負けはまず無い布陣だ。

 あのデッカいゴリアテを蹴り飛ばしたイオリも相当ではあるけども……

 

『どうにか間に合ったようね』

『ここからは私達も加勢しますね』

『早速ですがイオリ、ドローン部隊が来ました。対処をお願いします』

『オッケー、アコちゃん!』

『委員長、私も行きます』

『任せたわ、チナツ』

 

 追加でやってきて道を塞ぐ兵士や盾持ち、ドローンを見て、ヒナ達も動き出す。

 容赦する必要が無いからかヒナの掃射が遠慮なしにばら撒かれ、頑強だろうゴリアテ量産機が幾つも崩れては大破していく。PMCの歩兵部隊はチナツとアコ、二人のサポートを受けたイオリと、先生の指揮を受けた対策委員会でなぎ倒していった。

 そうして開かれた道へ進むよう、ヒナが先生達に声を掛ける。

 

『ここから先へ進みなさい。小鳥遊ホシノを助けるのでしょう』

『"ありがとう、ヒナ!"』

『ええ。後ろは任せておいて』

 

 その短いやり取りを交わした後、ヒナは踵を返して未だ抗戦しているPMCの兵士達の方へ飛んでいき、先生達は基地中央のビルを目指して走った。

 それを見ながら私は、ベルちゃんいつ来るんだろう? と疑問を抱く。

 私達は成り行きというか、アルちゃんに付き合って基地まで向かう計画性の薄い行動だったから、結果的に遅れはしても肝心な場面では間に合っていた。とはいえ、間に合いこそしてももっと早く行けたのではと言われれば否定はできないし、それまでに先生達が倒されていては意味が無い。

 ベルちゃんはそれを『知識』で知っている筈だし、黒服との対面後に戦いに行くことも宣言している。

 彼女なら先生達が負けかねない可能性を考慮して速攻で来てもおかしくないと思っていたけど、まだ来ていない。

 

「ベレナちゃん。ベルちゃん、まだ来ないの?」

「もう少し先です」

「じゃあこのホログラム、もう少し先から始めてもよかったんじゃ? いやまあ私達と進み方違うみたいだから新鮮で楽しいけどさ」*2

 

 そして気になるのは、彼女の存在が影も形も無いのに、どうしてこのタイミングからの記録が再現されていること。

 

「この間、ベルさんも戦っていたからです」

 

 それを問うと、膝の上に乗せた少女からそんな答えが返ってきた。

 どうやら画面外で戦っているらしい。おそらく後から駆け付けはするのだろう。

 一体何をしているのか気になったけれど、とりあえずベルちゃんが出てくることは分かったので一旦黙っておくことにした。

 そうして意識を向け直したホログラムでは、ボロボロになった黒板やロッカーなどが砂に埋もれている場所に来た対策委員会の前に理事が姿を現したところが映し出されていた。

 

『お察しの通り、ここはかつてのアビドス高等学校。その本館だ』

『あんた……!』

 

 ポン、と理事が黒曜石のような光沢の石に手を置く。それにはアビドスの校章である三角に太陽のマークの文様が、長年の砂漠化や風化にも耐えて残っていた。

 かつて栄華を誇り、キヴォトス最大規模と言われた時代のアビドスの校舎が、基地の中心部だった。

 

『最後の最後までしつこいなぁ、アビドス対策委員会……これまでずっと孤独に戦っていたというのに、ここまで勢いを増すとは。これが風前の灯火というやつか? それとも、そこの大人―――シャーレの先生の手引きだからか?』

『"私の力じゃないよ。この子達の努力が報われた結果だ"』

『努力。なるほど、努力か……ふ、はははは。ハハハハハハハハハハ!!!』

 

 先生の返答を聞いて、思う所があったように見えた理事が唐突に哄笑を上げる。

 

『な、なにが可笑しいのよ!』

『ハハハハハ…………可笑しいさ。ああ、可笑しいとも』

 

 それにセリカちゃんが怒鳴ると、理事は少しして笑いを抑えた。やや俯き気味に、静かに―――けれど異様な雰囲気を纏いながら言葉を続ける。

 

 

『努力。それが報われるというのなら、私とて同じことだ』

 

『お前達が生まれる何年、何十年も前からこの計画は始まった』

 

『この基地だけではない。砂嵐と砂漠化に苦しむアビドス生徒会に融資を持ち掛け、借金を負わせ、何百年もの返済計画を立てさせ、少しずつ土地を切り売りするまで長年堪え忍んできた』

 

『そして、今やアビドスの土地は別館の校舎とその周辺の僅かな範囲を残すのみ。他は全て我らカイザーの所有となった』

 

『アビドス高校の生徒数も一桁まで減り、治安の維持すらもままならない』

 

『それどころかお前達は我らが合法的に事業を営んでいる土地へ無断で侵入し、合法的な契約を悪意ある解釈で曲解し、債権者へ敵意を向け、自ら瑕疵を作った』

 

『次の返済など最早不可能なほどに利子を上げた。一度だけなら可能だろうが、継続的には不可能』

 

『分かるか? 最早詰みの段階だ』

 

『長かった……ここまで追い詰めるのに、どれほどの時間を要したことか』

 

『この積み重ねを、努力と言わずして何と言うのだ?』

 

『なあ、先生』

 

『お前は何を以て、合法的に進めてきた私達と敵対するというのだ?』

 

 

『"私はこの子達から助けを求められたからここに居るに過ぎない"』

 

『"あなたが言うその努力の過程で、子供達を騙し、心を踏み躙り、苦しめてきたから、私はいまここに居る"』

 

『"合法かどうかじゃないんだよ"』

 

 

『ハ―――その結果が、これか』

 

 先生の返答に、肩を揺らした理事が周囲を見渡す。

 ボロボロになった校舎の廃墟の外側に広がる軍事用基地の建物は、今やそこかしこから煙が上がっていた。先生達の襲撃の結果だ。

 

『我々は、合法的に事業を営んでいる。そこにこれだ。なるほど、合法などどうでもいいと言うのも納得だな』

『"どうでもいいとは言っていないよ。ただ―――人命に勝りはしない。ホシノは、まだ「顧問」である私が退学届にサインをしていない以上、アビドスの生徒。アビドス生徒会はまだ現存する状態だ。返してもらうよ"』

『ふん。あの連邦生徒会長が呼び寄せたというだけはある。狂人め。傭兵もお前の差し金か』

『"傭兵……?"』

『そしてそんな奴を、対策委員会(お前達)が呼び寄せた』

 

 話しても意味は無いと見たか、理事の視線は話の推移を見守っていたシロコ達に向けられた。

 ぐっ、と力を籠めるかのように理事の顎が引かれる。

 

 

『対策委員会。この基地へ来た三日前、お前達は言っていたな。この基地にある戦力は自分達を潰すためのものではないか、と』

 

『あの時は否定した。それが事実だったからだ。そこまでせずともお前達は潰せると』

 

『だが……そうするべきだったと、今は認めよう』

 

『少なくとも二日前のアビドス侵攻に於いてはそうするべきだった』

 

『―――本当にお前達が目障りだった』

 

『これまでありとあらゆる手段を講じて、それでもお前達は滅びかけの学校に最後まで残り、繰り返し借金を返済しようと足掻いて……』

 

『あれだけ懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに―――』

 

『毎日毎日楽しそうにィ!!!』

 

『お前達のせいで、計画がっ! 私の計画がァッ!!!』

 

 

 そこで、怒りの沸点が抑え切れないほどに達したか、発狂したかのように声を荒げ始めた。

 何十年も掛けて狡猾に、執拗に進めていた計画、その最後の最後でどんでん返しを食らいそうになっている状況のストレスに耐えかねているようだった。

 そんな大人に、シロコ達が怒りや嫌悪、軽蔑の目を向ける。

 

『ふん、あんたみたいな下劣で浅はかな奴の計画なんて知った事じゃないわよ! どうせロクなものじゃないんだから潰れてしまえばいい!』

『ホシノ先輩を、返してもらうよ』

『はい! あなたみたいな情けない大人に、私達は負けません! 絶対に!』

『これ以上邪魔をさせるものか! 私は早く、アレを見つけねばならんのだ……!』

『何の話か知りませんが、そこを退いてもらいます!』

『クッ、フフハハハハハハハハ!!!』

 

 対策委員会の今のまとめ役であるアヤネちゃんが宣言すると、再び理事は哄笑した。

 

 

『―――やれるものならやってみるがよいッ!!!!!!』

 

 

 そして、一瞬の間をおいて怒号を上げた。同時に理事の背後の地面から物凄い勢いで黒ゴリアテが出現する。

 それを見たセリカがうげっ、と呻きを上げた。

 

『またぁ!? 便利屋が来てないのに……! というかあいつら来るって話だったのに何で来てないのよ!?』

『アルが居なくても、私が何とかする』

『で、ですがシロコちゃん一人では……!』

『一昨日の戦闘データを元に調整は済んでいる! 前と同じと思うなら大間違い―――』

 

 

『なら見せてもらおうじゃない!!!』

 

 

 黒ゴリアテに乗り込み、威圧するようにアームを広げて己を誇示したその時、コックピット目掛けて聞き覚えしかない声を上げながら飛び掛かる人影があった。

 既視感のある形での闖入者は目深に茶色のフード付きマントを被っていて、その容貌はよく分からない。

 その人物は飛び蹴りで黒ゴリアテで蹴り飛ばし、一撃で横倒しにした。

 理事の驚きの声を伴いながら轟音を立てて黒ゴリアテが倒れる中、軽やかな着地で先生達の前に茶マントの人物が降り立つ。

 ただ、コートから見える衣装は"アル(ベル)ちゃん"と同じものだった。

 ……まあ、声の時点で明らかだったのだけれど。

 

『遅くなって悪かったわね! たった今到着したわ!』

 

 その答えを示すように先生達の方を向きながらフードを脱ぎ、赤髪と角を晒した"アル(ベル)ちゃん"が己を誇るように笑いかけた。

 

『あ……あんたぁ!? 格好つけて登場するのはいいけど遅すぎるわよ! 今まで何やってたのよ!? まさか寝坊したんじゃないでしょうね?!』

『それに他の方は……もしかしてアルちゃん社長さんお一人ですか?』

『ムツキ達には別動隊を任せているわ。北の方にいたPMCの大隊が基地に向かって移動していたからそこの足止めにね。私もさっきまでそこに居たのだけど、問題無さそうだったからここへ直行したのよ』*3

 

 "アル(ベル)ちゃん"がここまで何をしていたかを話したことで、なぜベレナちゃんが基地襲撃の初めの方から流していたかがようやく分かった。

 なるほど、確かにこれは戦っている。

 

『―――またか、また貴様かァ!!! 陸八魔アルッ!!!!!!』

 

 その話を聞いてまた邪魔されていた事、そしていまも物理的に倒されたことに怒り心頭らしい理事が怒鳴り声を上げた。ゴリアテの両アームで地面を押し、無理矢理躯体を起こして立ち上がる。

 そうしてコックピットから"アル(ベル)ちゃん"を睨み見下ろした。

 

『貴様が百人の傭兵を雇い、北方の部隊を襲わせていたのかッ!!!』

『"えっ、傭兵を?"』

『傭兵って高い筈ですけど、お金は……』

『とある人達の"忘れ物"のお陰で何とかなったわ』

『『『『―――あ』』』』

 

 サラリと明らかにされた真実に、覆面水着団(対策委員会)の四人がビシリと固まった。

 それで私も理解した。

 

「なるほどね……あの一億、そこに使ったんだ」

 

 私達の世界では柴関ラーメンへの寄付に使った覆面水着団が置いて行った約一億のお金。それで"彼女"はブラックマーケットの傭兵を雇い、彼女達を助けるために使ったのだ。

 雇用時間は分からないが傭兵を百人も雇えば少なくとも半分は飛んでる筈。それも厭わないのは元々があぶく銭で、『知識』で元々使い道を決めていたからだろう。

 この戦いを必ず勝ち抜けるように。

 

『貴様……貴様ぁっ! 飼い犬の分際で、何度も何度も邪魔をしおってェッ!!!』

『ハッ―――同じことをやり返されているだけじゃない! 傭兵を雇って襲わせて! 法を盾に襲って! そうして大事な物を奪ってきた! それが今、あなたの身にも降りかかっているというだけのこと! 己の悪因悪果を怨むことね!!!』

 

 怨嗟を向けられた"彼女"が悪辣に、そして酷薄に笑いながら言い返す。

 かつてカタカタヘルメット団や便利屋68など素性が分からないようにしながらアビドスを襲い、合法的な契約を元に利子の増額で心を追いつめ、そうしてホシノを奪った。

 それと同じように自身も傭兵を雇って襲撃を仕掛けたのだと。

 ―――目には目を、歯には歯を。

 無法には無法で返していた。

 なら、法は……

 

『さぁ先生、対策委員会。今のあなた達にとってはコイツも私も全ては些事でしょう? あなた達の目的のために―――』

 

 そこで言葉を区切り、"彼女"は先生達に完全に背を向けた。同時、それまで纏っていた茶色のフードマントを脱ぎ捨てる。

 ばさり、と紅蓮のコートがはためいた。

 両肩部分にある便利屋のエンブレムが陽光を浴びて鮮烈に浮かび上がる。

 

 

 

『ここは私に任せて、先に行きなさい!!!』

 

 

 

 その宣言と共に、流れるような動作で片手で構えた銃の引き金を引き、戦いの火蓋を切った。空気を鳴動させるほどの凄まじい轟音と爆発が理事と黒ゴリアテを襲う。

 明らかに市街地攻防戦の時よりも火力が増していた。

 

 

『ぐぅっ……!?』

『そっちが調整したように、私も装薬量増やして火力を上げてきてるのよ! どっちが上か勝負といきましょうか!!!』

『おのれ……許さん、絶対に許さんぞ陸八魔アル!!!』

 

 

『"―――ありがとう、アル!"』

『ん……ありがとう』

『このご恩は必ず!』

『ほんっと……! 全部終わったら、その時はあんた達と私達で一緒にラーメンでも食べに行くわよ!』

『ありがとうございます、アルさん!』

 

 道を塞ぐように立ちはだかっていた理事の怒りを一身に買い、引き付けるように戦い始めた"彼女"へ先生達は口々に礼を言いながら走っていく。

 それへの返答は、絶大な爆発の連続だった。

 

 

 


 

 

 

・『陸八魔アル』

方々手を尽くした便利屋社長

覆面水着団が置いて行った一億円は洗浄しようが出処が黒い金なので表沙汰にならない形にしつつ、『大隊が呼ばれるがヒナ達も基地に居る』場合の足止め要員、『大隊が呼ばれるがヒナ達が足止め』と『大隊は呼ばれずヒナ達が基地に居る』場合の対策委員会の補助戦力として、法の助けになる手を取った

最初の方は傭兵の指揮も取っていたが問題無いと見て走って基地に駆け付けた

 

・(故)ムツキ、(故)カヨコ、(故)ハルカ

別の場所で戦っている便利屋社員達

場合によっては基地までもつれ込んでの大乱戦も想定されていた

カヨコが指揮を執り、約百人の傭兵達と一緒にムツキとハルカが暴れ倒す方向で、所属が分からないようにカモフラージュしながら対デカグラマトン大隊の足止めをしている

 

・陸八魔アル

期せずしてファウストを知った奇跡世界の社長

ファウストに関しては服装の変装と思っていただけに本当にトリニティの子とは思わず心底驚いた

1万超えの馬力を持つ黒ゴリアテを蹴飛ばした事に内心引きつつ、その上で「ここは任せて」を決めて大暴れを始めたのを見て「恰好いい……!」と興奮している

 

 

*1:
アプリでは風紀委員会のヒナ、イオリ、チナツとサポートのアコに止められた部隊。アニメでは呼ばれていない

*2:
アプリでは風紀委員会は基地へ呼び寄せようとした北方部隊の襲撃、トリニティ砲撃部隊は対策委員会が基地へ入る手前の支援を担い、基地内に入って理事が出てきた時に便利屋が駆け付けた

アニメでは北方部隊は呼ばれないため風紀委員会が基地内で暴れ、砲撃部隊は基地の外から基地の中へ向けて砲撃し、理事が登場して黒ゴリアテを出してきたタイミングで便利屋が駆け付けた

基本的に奇跡世界は前者だったが、ベル世界は後者軸で進んでいて進み方に違いが出ている

*3:
走って来た




 
 
長くなってまた分けたので次話も回想が挟まりますが、次話でアビドス回想は終わりです

戦闘回は次話には無いです
シロコと共闘したり限界まで暴れさせたりで満足してますので……(ホクホク)
ん、楽しい

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