陸八魔アルに転生しました   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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副題『希望溢れるエピローグ』




嚮導者の奇跡の日常

 

 

 私がこの奇跡の世界を訪れてから暫くが経った。

 

 

「それじゃ行ってくるわ! 夕方には戻るわね!」

「弁当は持った?」

「持ったよ~! ありがとねベルちゃん!」

「財務状況改善の一環よ。外食は控えなさいね」

「分かってる。行ってきます」

「い、行ってきます、ベル様!」

「はい、行ってらっしゃい」

 

 

 あれから私は、便利屋68の副社長兼保護者として日々を過ごしている。

 

 猫探しなどの平和な依頼であれば参加するが、私が戦闘依頼で出張る事は現状無い。報復のために事務所を襲撃してきた連中を素手で制圧した事が何度かある程度で、それも受動的なもの。戦闘に駆り出される事は無かった。

 まあ銃を使えば人が死ぬとなれば動かす訳もない。

 バックアップ要員―――つまり、偵察やオペレーター等については、する予定ではあるがまだしていない。

 偵察は戦闘要員と同じ理由からだが、オペレーターについては専用の機材が無いためだ。

 誰もが知っている事だが、便利屋68は食事も危うい金欠状態。まずは生活安定のために貯蓄をするところからだった。

 

「ふぅ……掃除は、こんなものかしら」

 

 このキヴォトスに来てから二日目―――先生と『内』と『外』について明確に袂を別ちながら協力関係を結んだあの日、私はこのキヴォトスで学籍と戸籍を得た。

 

 非常対策委員会を結成し、コトに当たった者達の枢軸―――連邦生徒会の会長代行にして統括室主席行政官の七神リンと対面し、事情を説明。

 本来なら私はその場に居ない想定だったので後にゲヘナへも寄る予定だったらしいが、当人の私が居たため更に詳細な話を聞いた七神リンは、その場で即座にゲヘナ学園にも話を共有した。

 

 事が事なので、混乱を招かないためにと呼ばれたのはたったの1人。

 ゲヘナの万魔殿議長―――すなわち、羽沼マコト。

 普段はバカみたいに思える事で風紀委員会に嫌がらせしたり事業を展開したりする彼女も、こと赤い空関連の話ともなると真面目な様子だった。

 

『なるほどな……それで? なぜ我がゲヘナにだけ、この話を? ソイツが元はゲヘナ学園の者だったからだけではない筈だ』

"流石だね。実は、彼女は元の世界で学校を卒業していないんだ"

 

 マコトの問いに、先生はそう答えた。

 反転したシロコには方便だと言ったそれもあながち嘘という訳ではないらしい。

 あるいは私から嚮導者、色彩の話を聞く前で詳細が分かっていなかったからそこまで踏み込むのもという考えで、その時点では本当に方便だったのかもしれない。

 ……多分に、私に青春を取り戻して欲しいという想いもある気はするが。

 気持ちは有難かったが、死に別れた友人達の事も思い出すからあまり通いたくはなかった。

 

『ああ、話の流れからしてそのようだな。ふむ、そういう事か……まあ編入は別に問題無いだろうが、当人としてはどうなんだ?』

「え? ……まあ、学籍があれば身分証明が楽だとは思うけど」

 

 とはいえ―――アル達は指名手配や口座凍結こそ受けているが、学籍という信用情報があるからこそ物件を借りる等が出来ている。

 便利屋という組織の信用のためにも、自分も持っておいた方が良い。

 そのためならデジャブでの苦しみくらい耐える分別はあった。

 

『ならば同意という事だな?』

「……通信課程に出来ないかしら。授業とかに拘束されると、ちょっと困るのだけど」

 

 便利屋として出奔している時点で何をと言われるだろうが、私は時間に拘束されたくない。 

 傀儡化を察知して向かうだけでは何十年掛かるか分かったものではなく、またそれ以上に手を打つべき事があるからだ。

 その一つが、名もなき神々の王女、AL-1Sの存在。

 名もなき神が造り、無名の司祭が外付けでKeyと呼ばれるAIを作った事でキヴォトスに破滅を齎さんとする存在になったもの。今はミレニアムで『天童アリス』『天童ケイ』という生徒として、平和な日々を謳歌している者達。

 アレらが王女として目覚め、司祭の手に落ちたが最後、キヴォトスはアーカイブ化によって否応なく滅亡する。

 絶望し、色彩に触れる間もなく破滅し、アトラ・ハシースの箱舟を新たに作るその存在は、自ら世界を巡らなければ止める事が出来ない。

 彼女達にとっての玉座で旅立つよりも先に潰さなければならないのだ。

 

「滅亡と一口に言っても、それには様々な形があり、過程がある。傀儡化で呼ばれてから動いたのでは遅い場合があるのよ。だから私は出来る限り時間を作り、世界を巡らなければならない」

『ふむ、そのためか……キキッ。ゲヘナで通信課程を取る奴なぞ聞いた事が無いが、制度としてあるにはある。いいだろう、手筈は整えておいてやる。手続きの書類は先生の方に送っておけばいいな?』

"それで問題無いよ。届いたら私からベルに連絡するから"

「手間を掛けさせて悪いわね、二人とも」

『なぁに、並行世界とはいえ我がゲヘナ学園から誉ある者が出て、今もそのために動かんとしているのだ。これくらいの手筈、議長として当然だ!』

"そうだね、これくらい手間じゃないよ"

 

 評判で聞くバカさ加減とは裏腹に、しっかり上に立つ者として応じたマコトの姿をこの目で見るのは初めてだったので新鮮だった。

 ともあれ、そうして私は学籍を得る事が出来た。

 ゲヘナ学園三年、通信課程の陸八魔ベルとして。

 

 そのあとのこと。

 夕方に仕事を終えたアル達と合流した後は、そのまま事務所に戻るのではなく、彼女に連れられて生家―――陸八魔家へと向かった。

 私は当初、抵抗した。

 ……受け入れてもらえるか不安だったから。

 自身が腹を痛めて産んだ子。それの並行世界の同一人物とはいえ、血と死に塗れ、憎しみを以て世界を渡り、死を振り撒き続けている。

 その事実を知っても尚受け入れてもらえるだろうかと。

 

「おお、立派になったなぁ!」

「ほら、だから言ったじゃない! 私達の子なんだもの、当然だって!」

 

 ……まあ、杞憂だったのだが。

 

「……私がしている事、2人はなにも言わないのね」

「言わんよ。間違っていると言うのは簡単だ。だが、じゃあ残る問題はどう解決すればいい? 父さんには分からん。だから言わん。そんな無責任な事は言えないからな」

「勿論、相手がどんな大罪人でも殺しは罪。声を大にしては褒められないけれど……あなたは、苦しんでる。それに追い打ちをかけるような事を親としては出来ないわね」

「だなぁ。一緒に背負いたいとは思うが……」

「それは、ダメ」

「でしょうね。だから私達は何も言わない。辛い時は吐き出しに来なさいって……そう言うくらいよ」

 

 思えば『陸八魔アル』の人格形成に多大な影響を与えている存在である。私がそうで、この世界の彼女もそう。

 私を諭した彼女の親ともなると、なお強烈で当然だった。

 子は親に勝てない。

 どんなになっても、生んだ親にとって私は子供だった。

 

「そうか、もう27に……酒は飲んだか? タバコは?」

「そんな余裕無かったからどっちもまだだけど……」

「そうか、理由はともかく健康なのは良い事だ! アレらは金も掛かるし健康にも悪いから必要に思ってないのは悪くないぞ!」

「この人、どっちもダメだからねぇ。だから会社でもちょっと肩身が狭かったりするのよ」

「タバコ休憩とか業務後に上司と飲みに行くのが面倒だから楽なんだがなぁ」

「そういうところマイペースよねぇあなた。とりあえずベルちゃん、今日はお母さんとお酒に挑戦しましょう。女はね、自分が呑める量を分かってないと大変なのよ。普段飲まなくてもいいから把握だけね」

「じゃ、じゃあ……分かったわ」

 

 私に気を遣ってか便利屋の事務所へアルは戻っていたその日、私は別世界の両親と夜を過ごした。

 

 激動の一日が過ぎてから少しして、正式に戸籍に私の名前も載った。

 書類上の関係は養子。血縁者ではないが―――真実は、実の娘。

 並行世界どうこうの複雑な話は、立場の高い職に就いてたら突っつかれてたかもなぁ、と笑い話で終わる事になった。

 

 

 そうして私は、この世界に根を下ろした。

 

 

 一定の家事をこなした後は自由時間。

 その間に私は世界を巡る。

 先生が生きていて、まだ輝いている世界。

 先生が死んでいて、滅びへ進みゆく世界。

 双方にいる地下生活者と無名の司祭達を滅ぼし続ける。

 

 心が軋むような時間だが、それでも―――

 

 

「帰ったわよ、ベル!」

「ベルちゃん聞いて聞いて! 今日さ―――」

「帰りに食材買ってきたよ。ご飯作ろっか」

「ベル様、お手伝いします!」

 

 

 それでも、価値ある(守りたい)者の存在が、私を繋いでくれている。

 

 

 

 ここは奇跡の特異点。あまねく奇跡が集う場所。

 

 

 

「―――お帰りなさい、みんな」

 

 

 

 今の私が、生きる世界だ。

 

 

 

 

陸八魔アルに転生しました 

嚮導者の後日談   完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

以上です

 

本筋でアルと対話してベルとなって便利屋68に加入し、後日談で元嚮導者のシロコ*テラーを友に、嚮導者としての力を示し、先生とも明確な役割分担で線引きした上での協力関係を結べました

先生は『外』の司祭達を滅ぼす事は止めないが『内』である奇跡世界に関しては止めるという塩梅に。これはベル自身が語る『イレギュラー』『不干渉』という点も押さえた結果です

 

先生は既に成年ながら真っ当に高校を卒業していない子供としてベルを見ている部分もあるため、度々触れたように憎しみに走り手を汚すことを辞めさせたがっていました

しかし憎しみを捨てれば傀儡になり、滅ぼすしかないという事実を最後の最後に知り、『内』に集中しろと言われた事もあり、『外』で動くベルを止める事を諦めざるを得ず、無力に打ちひしがれる事に

それを飲み下した上で出立の見送りで「帰ってくるように」と、大人として、先生として告げる

それを理解して、ベルも約束する

これが究極的には相容れないと理解した上でも手を取り認め合える形だと思っています

 

先生と衝突するとさんざん書いてきましたが、皆さんとしてはどう思われたでしょうか

少ししつこいなとか、ベルが手を汚すのを止めない選択で解釈不一致を起こされていたり、アッサリ引き下がってると感じていたらすみません

ただ個人的には、今後本当の小話を書くとしても引っ掛かりが無い形で終わったと思っています

 

ちなみに『嚮導者の後日談』は5話プレナパテス、6話シロコ*テラー、7話ベル、まとめとして8話で原作主人公の先生、エピローグにベルが対応する内容で構築しています

上手い具合に各人の話を回して纏められたんじゃないかと思いたいところです

 

実質毎日更新になりましたが皆さんのお気に入り、評価、しおり、感想などでモチベが凄く出てきて楽しく書けたお陰です

匿名設定なので同作者作品からの固定ファンなど無いのにルーキーや日間1位を取れたのは本作を楽しんで頂けた見える形としてとても嬉しかったです

まさか深夜テンションで考え付いた1話目から続けてここまで来たとは驚きです。マジかよ

戦闘は地の文でサラッと流したし、ブルアカなのに銃を撃つ描写をしたのも1度だけです。マジかよ……

しかもしかもベル/アル*テラーの詳細な容姿描写もしてません。ウソでしょ……

でも書きたいものを書けたからオッケーです

本作は本当に何から何まで便利屋、先生とプレナパテス、シロコ*テラーの知名度補正にあやかってると思います

 

今後についてですが、また感想読んだり返信したり他作者の作品を読んでネタが思いついたら小話を書くかもしれません

その時はまた開いて頂ければ嬉しいです

この一週間ご愛顧頂きありがとうございました

 

 

 

では最後に、今回はこれで締めさせていただきます

 

 

 

ブルーアーカイブ!!!!!!!

 

 

 

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