ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第十一話:正義のファミリア

「昼間から外の風に吹かれて飲むお酒も、また格別ねぇ」

 

黄昏の館からほど近い、オープンテラスのカフェ。

私はうららかな日差しを浴びながら、よく冷えた白ワインとチーズを楽しんでいた。

昨夜の歓楽街での大立ち回り(と大爆発)のおかげか、周囲の客は私を遠巻きに見ているが、遊び人にとっては他人の目など酒の肴にもならない。

 

「失礼。相席、いいかしら?」

 

ふと、テーブルの向かいから声をかけられた。

見上げると、そこには見事な真紅の髪を揺らす少女と、その後ろで険しい顔をしている若葉色の髪のエルフの少女が立っていた。

二人とも、純白を基調としたお揃いの団服を着ている。オラリオの治安維持を担うもう一つの要――『正義』を司るアストレア・ファミリアの団員たちだ。

 

「ええ、空いてるわよ。座れば?」

 

「ありがとう。私はアリーゼ・ローヴェル。こっちはリュー・リオンよ」

 

アリーゼと名乗った赤髪の少女が人懐っこい笑顔で席に着く。

一方、エルフのリューは私のバニースーツと網タイツを見るなり、顔を真っ赤にして非難の声を上げた。

 

「な、なんて破廉恥な格好だ……! 真昼間の大通りで、そのような露出は慎みたまえ!」

 

「アハハ、リュー、そこは個人の自由でしょ。ほら、座って座って」

 

「しかしアリーゼ、この者は……!」

 

宥めるアリーゼに渋々従い、リューも席につく。ただし、私の胸元や太ももから目を逸らすように、明後日の方向を向いたままだ。エルフというのはどこも真面目で潔癖らしい。ロキ・ファミリアの保護者(リヴェリア)を思い出す。

 

「で? 正義の味方さんが、しがない遊び人に何の用かしら。ワインなら奢らないわよ?」

 

「それは大丈夫よ。私達も勤務中だからね」

 

アリーゼはひらひらと手を振り、少しだけその瞳に真剣な光を宿した。

 

「昨日の夜、歓楽街で起きた騒動の事よ。トロール三頭が跡形もなく消し飛んで、イヴィルスの連中も全員黒焦げになって気絶てたそうね。巨大なクレーターと一緒に」

 

「ああ、あれ。私のお酒を邪魔してきたから、ちょっとやり返しちゃったのよね」

 

「ちょっと、の規模ではない! あわや周囲の店まで巻き込むところだったのだぞ!」

 

リューがテーブルに身を乗り出して抗議してくる。

 

「大丈夫よ、魔法の範囲は完璧にコントロールしてたから。実際、誰も巻き込まれてないでしょ?」

 

「それは結果論だ! ロキ・ファミリアが君のような危険人物を野放しにしているとは……」

 

「まあまあリュー、結果的に被害が抑えられたのは事実なんだから」

 

激昂するリューを、アリーゼが再び宥める。

彼女はアストレア・ファミリアの団長なのだろう。正義感に溢れながらも、どこか柔軟で、底抜けの明るさを持っている。

 

「あなたがロキ・ファミリアの新しい客分だってことは知ってるわ。私たちはただ、少し顔を見ておきたかったの。この暗黒期のオラリオで、そんなふうに笑ってお酒を飲める人がどんな人なのかってね」

 

アリーゼの言葉に、私はワイングラスを傾けながらクスリと笑った。

彼女たちは毎日、この殺伐とした街でイヴィルスと血みどろの戦いを繰り広げている。正義を掲げるがゆえに、常に気を張り詰め、死と隣り合わせの日々を送っているのだ。

 

「私、魔法使いの前に『遊び人』だからね。楽しく遊ぶのが一番大事なの」

 

私はチーズを口に放り込み、リューの方を見た。

 

「あなた、アイズちゃん……ロキ・ファミリアの小さな剣士に少し似てるわね。いつも肩に力が入ってて、今にも張り詰めすぎて千切れそうな糸みたい」

 

「……私とあの少女が? 一緒にするな。私は正義のために……」

 

「そうやって『正義』とか『強さ』に縛られすぎると、いつかポキッと折れちゃうわよ。たまには息抜きしなさいな。美味しいもの食べて、適度にサボるの」

 

私の言葉に、リューは信じられないようなものを見る目を向けたが、アリーゼは「あははっ!」と声を上げて笑った。

 

「言われてるわよ、リュー。私もいつも言ってるじゃない、たまには休もうって」

 

「アリーゼの休もうは、ただ怠けたいだけだろう!」

 

「えー、そんなことないわよ? でも、お姉さんの言う通りかもね。私たち、少し肩の力を抜いた方がいいのかもしれない」

 

アリーゼは楽しそうに笑い、立ち上がった。

 

「今日はご挨拶だけ。でも、もしまた街中でド派手に暴れる時は、少し手加減してね? 始末書を書くのは私たちなんだから」

 

「善処するわ」

 

「行くよ、リュー」

 

「……失礼する」

 

リューは最後まで私のバニースーツに複雑な視線を向けながら、アリーゼと共に去っていった。

純粋で、真っ直ぐで、危うい正義の星たち。

彼女たちの背中を見送りながら、私はもう一杯ワインを頼むため、ウェイターに向かって軽く手を挙げたのだった。

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