ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第十六話:その遊び人、規格外――(持ち物編)

「……とりあえず、君の魔法がとんでもないという事は痛いほど分かった」

 

深呼吸を繰り返し、なんとか平静を取り戻したフィンが口を開く。

 

「次は、君の持っている装備や道具の能力を教えてもらえるかい?見るからに尋常な品ではないけども」

 

「ええ。これ、揃えるの本当に大変だったのよ。世界中を歩き回って、隠しダンジョンのボスのところから盗み出したり、小さなメダルを必死に集めたり……」

 

「そ、そうか(メダル……?)」

 

フィンの呟きをよそに、私はまず、手に持った『神鳥の杖』を掲げた。

 

「この杖は、普通に魔法の威力を上げるだけじゃなくて、道具として念じながら振ると、私の魔力を一切消費せずに敵一体に強烈な炎の渦を叩き込めるわ」

 

「杖そのものが、強力な魔剣と同じ効果を内包しているというのか……!?」

 

「そしてこの『神鳥の法衣』。これの凄いところは、装備しているだけで『全ての魔法の魔力消費量を三分の二にする』ことね」

 

「なっ……! 魔法の消費魔力を強制的に抑え込む防具だと……ッ!?」

 

リヴェリアがエルフの矜持も忘れたかのように、身を乗り出して法衣を凝視してきた。マインド(魔力)の枯渇が命取りになる魔道士にとって、それは喉から手が出るほど欲しい至高の逸品だ。

 

「次に『女神の盾』と『ほしのサークレット』。こっちはまあ、単純にものすご~く防御力が高いわね」

 

「……ただでさえあのふざけた強化魔法でカチカチになれるのに、装備自体も規格外に硬いんじゃな。そりゃあオッタルでも手こずるわい」

 

ガレスが呆れ果てたように頭を掻く。

 

「それと、これ」

 

私は左腕に輝く『ほしふるうでわ』を指差した。

 

「これをつけている間、私の素早さは『無条件で二倍』になるわ」

 

「……」

 

「……」

 

「ピオリムと合わせて、アレン君の攻撃が止まって見えた理由ね。付けるだけで強制的に加速するから、ちょっと慣れるまで酔うんだけど」

 

もはやツッコミを入れる気力も失せたのか、ロキ・ファミリアの首脳陣は乾いた笑いを浮かべることしかできなかった。

 

「装備はこんなところね。あとは道具袋の中身だけど……ルビスの剣と賢者の石はもう渡したわよね。他には……そうね、『けんじゃのせいすい』と『エルフののみぐすり』。どっちも魔力(マインド)を回復するアイテムで、特にエルフののみぐすりは一瞬で魔力を全回復させるわ」

 

私が小瓶を取り出して見せると、リヴェリアがピクリと眉をひそめ、真剣な顔つきになった。

 

「エルフの飲み薬だと……? 私はハイエルフの王族だが、我が里の優れた薬師たちでも、魔力を一瞬で全回復させるような秘薬など絶対に作れんぞ」

 

「いや、私が勝手に名前つけたわけじゃないから! パッケージにそう書いてあるのよ!」

 

「……まさか、私の与り知らぬところでエルフの禁術が使われているのか? いや、しかし……」

 

エルフののみぐすりという名前に、リヴェリアがブツブツと深刻そうに考察を始めてしまった。

 

「あ、あとは……これね。『変化の杖』。振ると、誰にでも変身できるステッキよ。モシャスのアイテム版ね」

 

私がステッキを取り出すと、興味津々だったロキとアイズが食いついてきた。

 

「なんやそれ! オモロイな! アイズたん、ちょっと振ってみ!」

 

「うん……えい」

 

アイズがコクリと頷いて杖を振ると、ポンッ!という小気味良い音と共に煙が上がり、彼女の姿が『翠色の髪を持つ美しいハイエルフ』――リヴェリアの姿へと変わった。

 

「あ……私、リヴェリアになれた?」

 

自分の手や長い髪を見下ろし、アイズ(リヴェリアの姿)が不思議そうに首を傾げる。

 

「なっ!? あ、アイズが私に!?」

 

「ぶわっはっはっは! アイズたんがリヴェリアになってもうたで! アイズたん、ちょっとオカンの真似して小言言うてみて!」

 

「……ロキ、遊びではないぞ」

 

「ひーっ! 似とる! 腹痛い!!」

 

ロキが腹を抱えて地面を転げ回り、リヴェリアは顔を真っ赤にして杖を震わせるが、中身がアイズなので強く怒ることもできず、ワナワナと唇を噛み締めていた。

 

その微笑ましくもカオスな光景を眺めながら、私は道具袋の奥から「例の二冊」を取り出した。元の姿に戻ったアイズが、トテトテと近づいてくる。

 

「あとは……まあ、前にリヴェリアに怒られたけど、『エッチな本』と『すごくエッチな本』ね。読むと女の子はセクシーギャルになって、最強のステータス補正がかかるやつ」

 

「バニー! お前は、また!」

 

「待ってリヴェリア! ただの本の説明だから! 読ませないから!」

 

私は杖を構えるリヴェリアを慌てて制止する。

すると、これまで黙って話を聞いていたフィンが、ひどく真面目な、そして困惑しきった顔で問いかけてきた。

 

「そもそも、疑問だったんだけど。本を読むだけで『セクシーなギャル』になるというのは、魔法のアイテムだからという事で百歩ゆずってからまぁいいとして……どうして『エッチな本』を読むと強くなるんだい? さらに『すごくエッチな本』を読んだアイズが『賢者になれる』と言っていた繋がりが、全く見えないんだけど」

 

フィンの至極真っ当な疑問に、私は「ああ、なるほど」と頷いた。

 

「別に、エッチな内容そのものが人を強くするわけじゃないの。あれは『本を読んだ者の精神状態を強制的に書き換えて、潜在能力を引き出す魔導書』なのよ」

 

「……精神の書き換え?」

 

「そう。例えば『エッチな本』を読めば、開放的で怖いもの知らずな『セクシーギャル』の精神状態になって、ステータスが飛躍的に向上する。そして『すごくエッチな本』の場合は、その効果が極限まで高められていてね」

 

私はアイズの手の届かない位置に本を持ち上げながら説明を続ける。

 

「強烈な刺激を受けた精神が、一周回って『全ての欲や煩悩を捨て去った、究極に冷静な状態』に反転するように魔法が組み込まれているの。感情のブレがなくなり、完璧な集中状態に至る。だから、これを読めば『賢者』のクラスにもなれるってわけ」

 

「……なるほど。単なる猥褻な本ではなく、極端な精神刺激を利用して、強制的に『悟りの境地』へと至らせる高度な魔導書というわけか」

 

「そういうこと。だから、タダのエッチな本じゃないのよ」

 

フィンが納得したように頷くのを見て、私はふふんと鼻を鳴らし、得意げに胸を張った。

 

「……私、すごくエッチな本を読んだら、強くなれる……?」

 

アイズが、純真無垢な瞳で私を見上げてきた。

 

「ダメよアイズちゃん。これはまだ早すぎるわ」

 

「……読みたい。私、強くなりたい」

 

アイズが背伸びをして、私の手にある本を奪おうとピョンピョン跳ねる。

 

「バニー……ッ!!」

 

地を這うような、恐ろしく冷たい声が響いた。

見れば、杖を握りしめるリヴェリアの腕がワナワナと小刻みに震え、訓練場の空気がピリピリと凍てついている。

 

「ひぃぃぃぃ!! だから読ませないって言ってるじゃない!! 逃げろアイズちゃん!!」

 

私はアイズを小脇に抱え、殺意の波動を放つハイエルフから全速力で逃げ出した。

 

「待て!! その破廉恥な本を今すぐ道具袋の奥底に封印しろ!! そして二度と出すな!!」

 

「ワシらはもう知らんぞ……」

 

「あはは……まあ、元気があっていいんじゃないかな……」

 

ガレスとフィンが遠い目でため息をつく中、訓練場には今日も、遊び人を追い回すリヴェリアの怒号が響き渡るのだった。




十五話と十六話で、何度やり直した事か…
何度やっても違和感が(・_・;)
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