ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第十七話:遊び人の就職活動と、正義の眷属の要請

「――というわけで、何かアルバイトかお金稼ぎをしようと思うの」

 

昼下がりの黄昏の館。

執務室で書類仕事に追われていたフィンは、私の唐突な宣言を聞いて、持っていたペンをポトリと落とした。

 

「……珍しいね。明日は西から太陽でも昇るのかな?」

 

「失礼ね。いくら私でも、ガレスやアイズちゃん達が毎日泥だらけになってダンジョンに潜ってるのに、自分だけ昼間から高いワインを開けてゴロゴロしてるのは、ちょっとだけ……ほんの数ミリくらい罪悪感が湧いてきたのよ。一千万ヴァリスの臨時収入も、なんだかんだお酒代で減ってきたし」

 

「数ミリでも湧いてくれたなら、団長としては嬉しい限りだよ」

 

フィンは苦笑しながら、書類の山をトントンと揃えて脇に置いた。

 

「それで? バニー自身は何かやりたい仕事の候補はあるのかい?」

 

「そうねぇ……やっぱり、私の得意分野を活かして『酒場でのアルバイト』なんかどうかしら! まかないでお酒も飲めそうだし、情報収集もできるし」

 

「却下だね」

 

「即答!?」

 

「バニー、君が普段飲んでいるお酒のランクを分かっているのかい? 酒場の時給や日給では、君が一日で飲むワインのグラス一杯分にも満たないよ。給料日よりも前に、君自身の飲み代で赤字になるのが目に見えている」

 

フィンの冷静すぎる計算に、私は「あ……」と声を漏らした。

確かに、オッタルたちから巻き上げた慰謝料で舌が肥えてしまった今の私にとって、普通のアルバイトの給料はあまりにも安すぎる。

 

「ちぇっ。給料が安いなら酒場はパスね。やっぱり冒険者らしく、ダンジョンに潜るしかないかしら」

 

「それが一番手っ取り早くて稼げると思うよ。君の魔法なら、下層のモンスターの群れでも一掃できるだろうし、ドロップアイテムだけでも相当な額になるはずだ」

 

フィンが頷くが、私は少しだけ顔をしかめた。

 

「でも、ダンジョンって基本ずっと薄暗いし、毎日毎日同じモンスターを倒すのって、ただの『レベル上げの作業(レベリング)』みたいで飽きちゃうのよね。服も汚れるし」

 

「……君のその、たまに飛び出す謎の単語には目を瞑るとして。ダンジョンが嫌だとなると、オラリオで手っ取り早く稼ぐ方法は限られてくるな」

 

フィンは顎に手を当てて少し考え込むと、ふと何かを思い出したように、引き出しから一枚の羊皮紙を取り出した。

 

「……そうだ。バニー、少し毛色の違う仕事になるけど、一つ提案があるんだ」

 

「なに? 割のいい仕事?」

 

「『アストレア・ファミリア』への出向……というか、応援要請に応えてくれないか?」

 

アストレア・ファミリア。

正義の女神アストレアが率いる、このオラリオの治安維持を担う派閥だ。

今は『暗黒期』と呼ばれる不穏な時代。イヴィルスと呼ばれる闇派閥の暗躍によって、毎日のように街のどこかで事件が起きている。

 

「応援要請って、向こうは人手が足りてないの?」

 

「全く足りていないそうだよ。アストレア・ファミリアの団長であるアリーゼをはじめ、彼女たちは非常に優秀で強力な冒険者揃いだけど……いかんせん、ファミリアの規模が小さすぎる。イヴィルスや、それに便乗するゴロツキたちの対応で、彼女たちはまともに睡眠も取れていない状況らしい」

 

フィンは羊皮紙を机に広げた。そこには、アストレア・ファミリアからの切実な『協力要請』が書かれていた。

 

「僕たちロキ・ファミリアも、今は遠征の準備や迷宮探索で手一杯でね。中堅層を街の警備に回す余裕がないから、断るしかないと思っていたんだが……今の君なら、完璧に適任だ」

 

「なるほどねぇ。街の警備と、悪党の討伐か」

 

私は腕を組んで考えた。

酒場でのバイトは給料が安い。ダンジョンでの作業は飽きる。

だが、街のゴロツキやイヴィルス相手の戦闘ならどうだろうか。

 

「……フィン。一つ確認なんだけど」

 

「なんだい?」

 

「その、治安維持で襲ってきた悪党を倒した場合……そいつらが持ってる武器とかアイテムって、私が『没収』して、ギルドで換金しても法的に問題ないわよね?」

 

「…………」

 

私のRPG的思考(倒した敵からのドロップアイテム回収)全開の質問に、フィンはこめかみを押さえて深い深いため息をついた。

 

「……一応、犯罪者から押収した武器は、ギルドに持ち込んで正当な手続きを踏めば、討伐報酬として換金できる規定にはなっている。アストレア・ファミリアもそうやって活動資金を得ているはずだ」

 

「よっしゃ! じゃあ決まりね! ゴロツキをボコボコにして、身ぐるみ剥がしてお金に換える正義のお仕事! やってあげるわ!」

 

「バニー。……お願いだから、オッタルたちにしたみたいに、下着一丁にして路地裏に放置するのだけはやめてくれよ? アストレア・ファミリアの品位まで疑われるからね」

 

「善処するわ!」

 

私は満面の笑みで親指を立てた。

こうして、数ミリの罪悪感から始まった私の就職活動は、『アストレア・ファミリアの臨時助っ人』という形で幕を開けることになったのである。

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