ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第二十四話:ロキ・ファミリアへの帰還…そして

ピカァァァァッ……!!

 

「あ〜!疲れた〜っ!」

 

目も眩むような光と共に、私はロキ・ファミリアの自室の床に描かれた魔法陣の上に倒れ込んだ。

一歩間違えば命がなかったかもしれないという極度の緊張から解放され、どっと押し寄せた疲労感に大きく息を吐き出す。

床に手をつき、冷たい石の感触を確かめて、ようやく自分がロキ・ファミリアのホームに戻ってこられたのだと実感した。

 

ドタドタドタッ!!

 

「バニー! 戻ってきたの!?」

 

直後、廊下から騒がしい足音が響き、勢いよく扉が開かれた。

心配そうに一番に飛び込んできたのはアイズだ。そのすぐ後ろには、フィン、リヴェリア、ガレス、ロキが続いている。

 

「バニー……! ひどい疲れようじゃないか。一体何があったんだい?」

 

フィンが駆け寄り、心配そうに声をかけてくる。

私はゆっくりと顔を上げた。

 

「……ええ。転移自体は、無事に成功したわ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「どうやら、時間軸が元いた世界からものすごく未来の世界に飛んじゃったみたいでね。しかも、なんとその時代の勇者一行と『大魔王』が戦っている、ど真ん中の場面に出ちゃったのよ……」

 

「なっ……!?」

 

「大魔王、だと……?」

 

私の言葉に、フィンとリヴェリアが息を呑んだ。

 

「そう。しかも、そのお爺ちゃん大魔王……超ヤバかったわ。スキルを使って本気モードになった私の全力の魔法も、何から何まで全く通じなかったんだから」

 

「……なんじゃと?」

 

ガレスが驚愕に目を見開く。

 

無理もない。なんだかんだで、バニーという遊び人はこれまでの戦いを通して、このオラリオの中でも上位に位置する実力があることを示してきた。

第一級冒険者すら凌駕するほどの規格外の魔法。それが『全く通じない』存在など、この世界の常識では計り知れないからだ。

 

「勇者一行がボロ負けしてたから、とりあえずその子達を逃がすのに手を貸してあげたんだけど……ぶっちゃけ、時間になって強制送還で戻って来れて、本当に助かったわ。あと少し遅かったら、どうなってたか分からないもの」

 

私は乾いた笑いを漏らしながら、ベッドの縁に腰掛けた。

部屋の中に、重く冷たい沈黙が降りる。

やがて、フィンがゆっくりと視線を動かし、背後に立つ自身の主神――ロキを見た。

 

神であるロキは、下界の子供たちの言葉が真実か虚偽かを見抜く『神の眼』を持っている。

私が強がりで言っているのか、それとも本当にそれほどの脅威に遭遇したのか、彼女には完全に分かっているはずだ。

 

「……ロキ」

 

フィンの問いかけに、普段はおちゃらけているロキが、真剣そのものの表情になった。

 

「……全部、ホンマや。今の言葉に、一片の嘘もあらへん。バニーが手も足も出んバケモノが、別世界にはおるっちゅう事や……」

 

ロキの確定の言葉に、部屋の空気がさらに一段と重くなった。

あのアイズでさえ、信じられないという表情をしている。

 

「遊び人になってのんびりするつもりだったんだけど……私も、もうちょっと何か考えないとね……」

 

私がため息をつきながらそう呟いた時、ずっと黙っていたアイズが首を傾げて口を開いた。

 

「バニー、ステイタスの更新はしないの?」

 

「え?」

 

「そういえば……バニーはファルナを刻まれてから、一度もステイタスの更新をしていなかったのではないか?」

 

リヴェリアの言葉に、私はハッとした。

思えば、イヴィルスの残党を相手に戦ったりはしたものの、これといった大きな戦闘はしていなかったので、わざわざステイタスを更新する必要もなかったのだ。

 

「なるほどなぁ。よし! どれ、いっちょ背中見せてみぃ」

 

ロキが興味深そうに私の背中へと回り込み、バニースーツの背中のジッパーを下ろした。

そして、神の血である『神血』を垂らし、浮かび上がったステイタスを見た瞬間。

 

「…………はっ!?」

 

ロキが、素っ頓狂な叫び声を上げた。

 

「ロキ、どうかしたのか?」

 

リヴェリアが尋ねるが、ロキは震える手で私の背中を指差した。

 

「レ、レベルアップ出来る状態になっとる……!!」

 

「「「なっ!?」」」

 

その場にいた全員の驚愕の声がハモった。

冒険者になってから、まだ僅か半月。

『大魔王の攻撃を凌ぎ、勇者たちを救った』という経験値(エクセリア)は、それほどまでに莫大だったのだ。

 

「それでバニー、レベル2になれるけども、どうする?」

 

「えぇっ!勿論なるわよ!」

 

私が即答すると、ロキはステイタスの操作を続けた。

 

「よっしゃ! ほな、発展アビリティの選択や。えーと、今回は『対異常』『逃走』『幸運』の三つから選べるみたいやで」

 

「『幸運』で!!」

 

ロキが言い終わるよりも早く、私は食い気味に叫んだ。

『対異常』や『逃走』などという地味なものには目もくれない。

 

「これってさぁ、もしかしてカジノでも大当たりが出やすくなったって事じゃないの!? やったー!」

 

私がガッツポーズをして満面の笑みで喜んでいると、背後からリヴェリアからのお小言が降ってきた。

 

「馬鹿者! 冒険者のアビリティを賭博に使うなど、何を考えているのだ!」

 

「ひっ!?」

 

リヴェリアの容赦のないお叱りが炸裂し、私は慌てて頭を抱えた。

つい数分前まで別世界の大魔王の脅威に驚いていたはずの部屋は、いつの間にか、いつものロキ・ファミリアの騒がしくも温かい日常の空気にすっかり塗り替えられていた。

 

「まあまあリヴェリア、落ち着きぃや。それよりバニー、アビリティだけやのうて、新しい『スキル』と『魔法』も一つずつ出とるで!」

 

「えっ、本当!?」

 

ロキの言葉に、私はお説教から逃れるようにバッと振り返った。

 

「おお。どれどれ……スキルは【魔力覚醒】、魔法は【追憶の幻闘場(メモリア・コロシアム)】やて。効果は…と」

 

ロキが神血によって浮かび上がった神聖文字(ヒエログリフ)を読み解いていく。

 

「スキルの【魔力覚醒】は、攻撃呪文の威力が大きく上がる。重ねがけで効果が重複し、効果時間も延びるみたいや」

 

「魔法の威力が上がる!?」

 

私は驚きながらも、思わず口元がにやけてしまった。

賢者になって、これ以上は頭打ちだと思っていた呪文の威力が上がるというのだから。

 

「魔法の【追憶の幻闘場】は、周囲を特殊な結界で覆い、バニーが過去に倒したことのある魔物の幻影を召喚する…と。幻影の強さはオリジナルのまま。結界内ではどれだけダメージを受けても、結界を解除すれば、あるいは幻影を倒せば、戦闘で負ったダメージや周囲への影響は元に戻る……なんやこれ?」

 

ロキの説明を聞いて、フィン達は驚いたように顔を見合わせたのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

【バニーのステイタス】

 

Lv.2

 

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

発展アビリティ:

【幸運】I

 

スキル:

【賢者の回帰(ルビス・メモリア)】

勇者一行と共に、大魔王ゾーマを打ち倒した頃の「賢者」の姿になる。

 

【魔力覚醒】

攻撃呪文の威力が大きく上がる。重ねがけで効果が重複し、効果時間も延びる。

 

魔法:

【追憶の幻闘場(メモリア・コロシアム)】

周囲を特殊な結界(闘技場)で覆い、術者(バニー)が過去に戦った事のある魔物の幻影を召喚する。幻影の強さはオリジナルのまま。結界内ではどれだけダメージを受けても、結界を解除すれば(あるいは幻影を倒せば)戦闘で負ったダメージや周囲への影響は元に戻る

 

詠唱:

「紡がれるは過去の残滓、我が魂に刻まれし激闘の記憶。星の導きのもと、次元を超え、時を超え、今此処に強敵(とも)の幻影を現出させん。蘇れ、我が記憶の宿敵よ!」

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