ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第二十六話:決着!?オラリオの勇者vs大魔王

「ふむ。では、小手調べといこうか」

 

バーンが余裕の笑みを浮かべたまま、すっと右手を上げる。

その指先から放たれたのは、ほんの拳ほどの小さな火球だった。

 

「これが大魔王の魔法か? 大層な名に似合わず、可愛らしいもんじゃわい!」

 

ガレスが鼻を鳴らし、巨大な盾でその小さな火球を蹴散らそうと前に出る。

だが、その異常な魔力密度にいち早く気付いたリヴェリアが、血相を変えて叫んだ。

 

「待て! ガレス、よけろっ!」

 

しかし、警告は一瞬遅かった。

その盾に火球が触れた瞬間、それは耳を劈くような大爆発を起こし、ガレスの巨体を猛烈な炎の渦が呑み込んだ。

 

「ぬおおおおおおおおっ!?」

 

業火の中で重戦士の叫び声が響き渡る。

だが、第一級冒険者でありオラリオ屈指の耐久力を誇るドワーフは、全身を黒焦げにしながらも、屈することなくその場に踏みとどまっていた。

 

「ほぅ……流石にメラでは倒せんか。では、今度はこれはどうかな?」

 

バーンの掌から、先程とは比較にならないほどの莫大な魔力が溢れ出す。

それは瞬く間に具象化し、巨大な不死鳥を模した炎へと変貌を遂げた。結界内を支配する圧倒的な熱量と神々しいまでの存在感に、その場にいる全員が息を呑む。

 

「受けてみよ。カイザーフェニックス!」

 

大魔王の放った絶望の炎が、凄まじい速度で三人に襲い掛かる。

 

「散開するんだっ!」

 

フィンの鋭い指示により、三人は間一髪で不死鳥の軌道から飛び退いた。

灼熱の風が吹き荒れる中、回避行動からそのまま反撃に転じたガレスが、大地を砕くほどの踏み込みでバーンへと肉薄する。

 

「お返しじゃー!!」

 

ガレスの渾身の力を込めた大斧の一撃。

しかし、バーンはそれを顔色一つ変えず、スッと差し出した片手だけで受け止めてみせた。

 

「ハァッ!!」

 

そこへ、死角から回り込んだフィンの鋭い槍撃が放たれる。だが、バーンは僅かな体捌きだけで、急所のみを穿つ小人族(パルゥム)の超速の連撃を、涼しい顔ですべて躱していく。

二人が前衛で息もつかせぬ猛攻を仕掛ける中、後方に陣取ったリヴェリアが、静かに、そして力強く詠唱を開始した。

 

「――間もなく、焔(ひ)は放たれる。忍び寄る戦火、免(まぬが)れえぬ破滅……」

 

王族の杖の先端に、途方もない魔力が集束していく。

それを横目で見ながらも、バーンは全く焦る素振りを見せない。

 

「フンッ」

 

バーンの身体から黒いオーラ――暗黒闘気が爆発的に膨れ上がり、その衝撃波だけでフィンが大きく後方へと吹き飛ばされる。

 

「どれ、今度は余の武器も見せてやろう」

 

バーンが虚空に手を入れると、歪んだ空間から一本の禍々しい杖が引きずり出された。

大魔王が片手から魔力を注ぎ込むと、杖の先端から凄まじい輝きを放つ光の刃が形成される。『光魔の杖』の出現に、フィンたちが驚愕の表情を浮かべた。

 

「おおおおっ!!」

 

気にせず体勢を立て直したガレスが再び大斧を振り下ろすが、バーンは光魔の杖でそれをあっさりと弾き返した。

パキンッ!! という甲高い音と共に、絶対に砕けないはずのガレスの斧の刃が呆気なく砕け散る。

 

「わしの斧が折れたじゃと!? 不壊属性(デュランダル)付きの斧なんじゃぞ!?」

 

オラリオの常識を覆す光景にガレスは驚愕し、即座に後方へ飛び退いてフィンと共にリヴェリアの護衛へと回る。

 

「……大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣――我が名はアールヴ! 【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

リヴェリアの詠唱が完了した瞬間、大地の底から無数の巨大な炎の柱が突き出た。

それはバーンを完全に飲み込み、結界内はたちどころに紅蓮の火の海へと変貌する。オラリオ最強の魔導士が放つ、広域殲滅魔法の真骨頂だった。

 

「やったか!」

 

燃え盛る炎を見つめ、ガレスが期待を込めて声を上げる。

 

「……いや、どうやらまだみたいだね」

 

だが、フィンは冷や汗を流しながら、炎の中心を凝視していた。

やがて、荒れ狂う炎の渦がまるで王に道を開けるかのように真っ二つに割れ、中から全くの無傷のバーンが姿を現した。

 

バーンは自身の衣服に付いたわずかな煤を払うと、感心したようにリヴェリアを見遣った。

 

「ふむ……これは余も見た事のない魔法であるな。広域殲滅魔法としては素晴らしいのではないか? ただ、残念ながら火力が少し弱いがな」

 

その言葉に、結界の外で見学していたロキ・ファミリアの面々は言葉を失った。

 

「嘘やろ……」

 

「リヴェリアの魔法が、効かない……?」

 

ロキが呆然と呟き、アイズが信じられないというように目を見開く。

 

「これはまいったね……」

 

「……流石は大魔王じゃわい」

 

フィンが乾いた笑いを漏らし、ガレスが忌々しげに息を吐き捨てた。

彼らの全力が、最高の武器が、そして最強の魔法が、大魔王には文字通り何一つ通用しなかったのだ。

 

「どれ、今度は余の攻撃する番かな?」

 

バーンが光魔の杖を静かに構え直す。

次の瞬間、杖から放たれた目に見えないほどの超高圧縮の衝撃波――カラミティウォールが三人を飲み込み、結界内に爆発的な破壊の嵐が吹き荒れた。

 

「「「がはっ……!!」」」

 

その一撃で、オラリオの頂点に立つ三人は成す術もなく弾き飛ばされ、地面に叩きつけられたのだった。

 

「……マジでやばかったかも。時間制限で逃げられるようにしておいて、本当に助かったわ」

 

結界の外からその惨状を見届けていたバニーは、顔を引き攣らせながらポツリと呟いたのだった。

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