ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第二十七話:皆も大魔王様と戦ってみない?

そして、その後も何度か戦ってみたものの、フィン達は大魔王に一撃すら入れる事が出来なかった。

全員がボロボロに打ちのめされた後、フィン達は一旦休憩を入れるべく、団長室へと場所を移していた。

 

「……あれは無理だね。僕とガレスの攻撃は躱されるか武器を破壊されるかだし、魔法を使われてかわしそこなったら、それだけでもうこっちは瀕死だ……それに、これまで必殺の一撃だったリヴェリアの魔法を受けても、あの大魔王はピンピンしていたし、本当に参ったよ」

 

ソファーに深く腰掛けたフィンが、疲れ切った様子でため息をつく。

 

「そうじゃな……あの男に攻撃を当てるとなると、儂らが更に強くなるか、より強力な武器を手に入れるか、もしくは人数を増やすかせんと、どうにもならんかもしれん」

 

ガレスの言葉に、リヴェリアが腕を組みながら首を振った。

 

「そうはいうがガレス、下手に人数を増やしても、あの御仁が相手では全く意味をなさないぞ。最低でも私達に近い実力を持っていなければ、仮に人数を増やしたところで文字通り足手まといになるだけだ」

 

一瞬の重い沈黙が部屋を包む。

そして、ロキが一つ息を吐いてから、頭を掻きながら口を挟んだ。

 

「……厄介な問題はまだあるで。バニーのレベルアップの件や。ギルドにどない説明するか……流石に半月でレベルアップはなぁ……。このままなんも説明せえへんかったら、絶対うちらがチートやらかしたって疑われるで」

 

ロキの言葉に、部屋の中に再び重い沈黙が落ちる。

誰もが頭を悩ませる中、私は沈黙を破るように口を開いた。

 

「ふっふっふー。実は私、これのとってもいい解決方法を思い付いちゃったんだよねー」

 

私が笑ってみせると、ロキはジト目でこちらを見てきた。

 

「ほんまか〜? これまでの最速レベルアップは、アイズの丸一年やってんぞ? 半端な考えでギルドの連中が素直に納得するとは思えへんけどなぁ」

 

「このバニーちゃんに任せなさい!」

 

私は得意げにふんすっと鼻を鳴らし、自信満々にバニースーツの胸を張って宣言した。

 

「まずさ、さっきバーンと戦った後で、三人ともステイタスを更新してたでしょ? どう? 結構上がってたんじゃないの?」

 

フィンは少し考えた後、頷きながら答える。

 

「そうだね。実際は死ぬ事もない結界内での模擬戦みたいなものだから、流石に本物を相手にするのとでは得られる経験値(エクセリア)も少ない筈なんだけど……それでも、停滞してきていたステイタスが一気に伸びていたよ」

 

フィンの声には、確かな喜びが滲んでいた。

高レベルになればなるほど、ステイタスは上がりにくくなるのがこの世界の常識だが、幻影とはいえ大魔王との戦闘経験値は、そんな常識をあっさりと覆してしまったのだ。

 

「私の魔法が全く通じなかったというのは、本当に得難い経験だったと思う。ダンジョンのボスでも、私の魔法が全く通じない相手など、これまで出会った中ではついぞいなかったからな」

 

「ワシもじゃわい。とりあえず、不壊属性(デュランダル)の武器でも壊れる事があるというのが分かっただけでも進歩じゃな。……あれが結界内で、戦闘後に武器の損傷が元に戻らなければ、ワシとフィンは今頃借金地獄じゃったかもしれん」

 

ガレスが豪快に笑うと、フィンも「そうだね」と苦笑した。

 

「あんなにアッサリと第一等級特殊武装が壊されたのは、確かに初めての経験だったよ」

 

そこでフィンは言葉を切り、不思議そうに首を傾げた。

 

「だけどバニー、その話がどう関係しているんだい?」

 

フィンの問いかけに、ロキやリヴェリアたちも不思議そうな顔で私へと視線を向けてくる。

私は皆の顔を順番に見渡してから、一つ頷いて話し始めた。

 

「あのね、私が半月でレベルアップしたっていうのは、そもそも私の事をなんにも知らないから怪しむんだと思うの。だからさ、いっそ公開しちゃおうよ。勿論、一部の神様や上位のファミリアだけだったり、ギルドだけとかでもいいんだけどもさ。私は街の人に知られても全然気にしないし、これを言わずにコソコソ怪しまれちゃう方が嫌だと思うのよね」

 

私の突拍子もない提案に、室内には再び思案するような空気が流れた。

隠し事を持ち続けることの危うさと、それを明かすことで生じるメリットを天秤に掛けるように、誰もが真剣な表情を浮かべている。

 

「う〜ん、なるほどなぁ。バニーの素性を公開するか……。確かに、隠し立てして妙な探りを入れられるよりは、それもありかもしれへんなぁ」

 

やがて、ロキが顎に手を当てて納得の表情を浮かべた。

 

「それともう一つ! 今はイヴィルスが活発になってて、オラリオは暗黒期と言われてるんでしょ? そんな時なんだから、他のファミリアの人達も『もしかするとステイタスが伸ばせるかもしれない』と思ったら、絶対無下にはしないと思うんだよね〜」

 

その言葉を聞いた瞬間、フィンがハッとしたように顔を上げた。

 

「そうか! なるほど、バニーの言う通りかもしれない」

 

フィンは口元に手を当て、頭の中で急速に思考を巡らせるように目を細めた。

 

「僕たちでさえあれだけの経験値を得られたんだ、実力に行き詰まりを感じている他ファミリアの上位陣にとっては、喉から手が出るほど欲しい環境かもしれないね。それに、オラリオ全体の戦力底上げは、巡り巡ってイヴィルスへの最大の対抗策になる……」

 

「そして! そこに、私が自分の魔力を使って環境を提供するんだから、参加するファミリアの人達から『入場料』を取っても全然問題はないはず! というか、これだけの特訓施設を提供するんだから、これはもう当たり前の事だよね!」

 

私がビシッと指を突き付けて宣言すると、団長室の面々は呆気にとられた。

 

「全く……お前という奴は」

 

リヴェリアが呆れたように、けれどどこか感心したような表情でため息をつく。やがてフィンが吹き出すように笑い始めた。

 

「あははっ! バニー、君は本当に……いいだろう、勿論君に魔法を使わせるんだから、それは当然の権利だと思うよ。その案でいこう」

 

フィンは立ち上がり、団長としての引き締まった表情で皆を見渡した。

 

「まずはギルドに、バニーの素性の説明と魔法の事を正式に報告する。そして、フレイヤ・ファミリア、アストレア・ファミリア、ガネーシャ・ファミリアといった信頼出来る有力派閥にも声をかけてみよう。『別世界の大魔王と戦ってみないか? もしかすると、ステイタスも飛躍的に上がるかもしれないよ』……とね」

 

「フレイヤのとこにも伝えるんか?」

 

ロキが訝しげに眉をひそめると、フィンは静かに頷き返した。

 

「あぁ。ロキ・ファミリアとフレイヤ・ファミリアは、確かに競争関係にあるけども、今は何よりも闇派閥(イヴィルス)への対処が先決だ」

 

「……まぁ、それもそうか」

 

ロキも渋々と、だが納得したように同意した。

 

こうして、オラリオの歴史に名を残すこととなる前代未聞の計画が、ロキ・ファミリアの団長室で産声を上げたのだった。

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