ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ   作:ポップ

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第二十八話:大魔王vsアストレア・ファミリア&フレイヤ・ファミリア

「くっ……これほどまでですかっ! 大魔王!」

 

ロキ・ファミリアの広大な訓練場。

そこをすっぽりと覆う特殊な結界の中で、エルフの少女――リュー・リオンが、息を荒げながら必死に地面を蹴って逃げ回っていた。

 

「ふっ、そらどうしたのだ? 逃げてばかりでは勝てんぞ」

 

余裕の笑みを浮かべる大魔王バーンは、自身は一歩も動くことなく、片手で強力な爆裂魔法【イオラ】を次々と放ち続ける。

ドンッ! ドガァァァンッ! と、結界内のあちこちで凄まじい爆発が連鎖し、訓練場の地面がクレーターのように抉り取られていく。

 

「ちょっ! このおじいちゃん、無詠唱で魔法を連発し過ぎ! ちょっとは手加減してよー!」

 

アストレア・ファミリアの団長であるアリーゼが、爆風に吹き飛ばされそうになりながら涙目で喚き散らした。

 

「泣き言を言うな、団長! 嘆いても奴は止まってはくれんぞ!」

 

極東出身の少女、輝夜(かぐや)が飛んでくる瓦礫を刀で弾き落としながら、鋭い声で檄を飛ばす。

 

「簡単に強くなれるって聞いたから来たのにー!」

 

小人族(パルゥム)のライラも、短い足をフル回転させて必死に爆発から逃げ惑っている。

 

ロキ・ファミリアからの「ちょっと試しに大魔王と戦ってみないか?」という誘いを受け、バニーの素性と、オラリオでは聞いた事のない大魔王という存在に高い興味を持って意気揚々と乗り込んできたアストレア・ファミリアの面々だったが、結果はこの有様だった。

彼女たちは結界内を走り回りながら、大魔王バーンの放つ理不尽なまでの弾幕からただただ逃げ続けることしかできなかったのだ。

 

「これが正義の眷属の力とは恐れ入る。些か拍子抜けだな」

 

バーンが呆れたような顔になり、その明らかな挑発の言葉に、アリーゼたちアストレア・ファミリアの面々はカチンときて、思わず足を止めてバーンを睨みつけた。

誇り高き『正義の眷属』として、悪の親玉にこれ以上コケにされるわけにはいかない。

 

しかし、彼女たちが足を止めたその瞬間

 

「どれ、今度はこれを受けてみよ」

 

バーンが静かに片手をかざすと、その掌の上に、神々しいまでに輝く巨大な炎の鳥が顕現した。

ただの炎ではない。空間そのものを焼き尽くすような、圧倒的な熱量と魔力の塊――大魔王の絶大なる魔法【カイザーフェニックス】である。

 

「げっ!」

 

そのあまりの魔力密度と絶望的なスケールに、アリーゼは引きつった顔で間抜けな声を漏らした。

自身も炎の魔法を扱うアリーゼだったが、目の前の炎の鳥が放つ熱量は桁違いだ。自分が使う魔法の炎とは威力が全く違うと一瞬で理解させられ、戦慄する。

 

この魔法を見た瞬間、一同は防御も回避も不可能だと、冒険者としての本能が警鐘を鳴らしていた。

 

「消え去るがいい」

 

大魔王の冷酷な声と共に、巨大な炎の鳥がアストレア・ファミリアの面々へと放たれた。

 

「「「「きゃあああああっ!!」」」」

 

少女たちの悲鳴は、全てを呑み込む業火の轟音にかき消され――アストレア・ファミリアは、為す術もなく全滅(撃沈)したのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

結界が解除され、訓練場の光景が元に戻ると同時に、擬似的な死から解放されたアリーゼたちが激しく咳き込みながら地面にへたり込んだ。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

一部始終を見守っていた主神のアストレアが、心配そうな顔で駆け寄ってくる。

 

「いやいやいやいや、あんなの絶対無理でしょ! 私も魔法で炎を使うけども、根本的な力がもう全然違うし、とにかくあれは無理!」

 

アリーゼはブンブンと首を横に振りながら、先ほどの圧倒的な熱量の恐怖を思い出したように大声で叫んだ。

輝夜もライラもリューも、口々に今戦ってみた大魔王の理不尽さを嘆いている。

 

そこへ、新たな来訪者が訓練場へと姿を現した。

 

「ロキ、来たわよ」

 

蠱惑的な声と共に現れたのは、美の女神フレイヤ。

そして彼女の背後には、オラリオ屈指の第一級冒険者――『猛者(おうじゃ)』オッタルと、『女神の戦車(ヴァナ・フレイア)』アレン・フローメルの姿があった。

 

「やぁ、オッタル。君も来たんだね」

 

フィンが気さくに声をかけると、オッタルは重々しく頷き、鋭い視線を私に向けた。

 

「フィン……以前に会ったあの娘が大魔王を倒した勇者一行の元賢者で、ここにくれば更に別時代の大魔王と戦えるというのは本当か?」

 

訝しむように問いかけるオッタルの反応は、当然と言えば当然だ。

なにせ『大魔王』などという存在は、おとぎ話の中でしか聞いた事がない。それを、以前戦って返り討ちにあったバニーガールの娘が倒したという話も、更に別の大魔王と戦えるというのも、長年オラリオで冒険者をやっている彼でさえ初めて聞くような荒唐無稽な話だからだ。

 

すると、オッタルの横にいたアレンが鼻で笑って前に出た。

 

「御託はいい。あんな可笑しな格好をしたやつが賢者っていうのも笑い種だが、俺はその大魔王とやらも信じてねぇ。フレイヤ様の前で化けの皮を剥がしてやるぜ」

 

以前私に負けた屈辱からか、鋭い殺気を放ちながら私を睨みつけてくるアレン。

私はそんな彼を気にする事もなく、いつも通り明るく手を叩いた。

 

「は〜い、二名様ごあんな〜い! 入場料は1人一日十万ヴァリスだよ」

 

私が手を叩いて案内しようとすると、アレンが苛立たしげに片手を上げて待ったをかけた。

 

「…ちょっと待て。俺はそもそも大魔王とかいうのを信じちゃいねぇ。だからまだ金を払うつもりもない。俺が戦ってアッサリと勝てたんじゃ、金を払う意味もないからな」

 

アレンが不機嫌そうに言い放つ。

 

「あ〜、まぁそうだよね。不良君が勝てたら確かにお金払う必要ないもんね。いいよ! それでも」

 

私が微塵も彼の勝利を信じていない様子で軽く笑って応じると、アレンは青筋を立てて怒りを露わにした。だが、私はそんな彼の怒気など全く気にした風もなく、どこ吹く風でケロッとしたままだった。

 

「不良言うな! 俺の名前はアレン・フローメルだ! 覚えとけ!」

 

「了解! じゃあアレン君、ごあんな〜い」

 

私が満面の笑みで結界を展開すると、周囲の風景が特殊な闘技場へと変貌し、アレンの目の前に再び大魔王バーンの幻影が姿を現したのだった。

 

◇ ◇ ◇

 

「今度の相手はそなたか」

 

ゆっくりと振り返ったバーンを見て、アレンは鼻で笑いながら槍を構えた。

 

「はっ、お前が大魔王かよ。見た感じ、ただ背の高いエルフの爺(じじい)じゃねえか! ちょっとは楽しみにしてきたのに、これじゃあ拍子抜けだぜ!」

 

大魔王はアレンの暴言にも一切顔色を変えず、ふっと小さく笑い声を漏らした。

 

「ほぅ、それは頼もしいではないか。では、余の魔法を受けてみる勇気はあるかな?」

 

バーンがすっと指先を向ける。

その先端から放たれたのは、小さな火球――初級呪文の【メラ】だった。

ふわりと、ゆっくりとした軌道で飛んでくる小さな火を見て、アレンは苛立ちを露わにした。

 

「馬鹿にしてんのか、てめぇっ」

 

アレンは持っていた槍で、その小さな火球を力任せに振り払おうとした。

だが――そのメラがアレンの槍に着弾した途端、凄まじい爆発を引き起こし、あっという間に巨大な炎の渦となって彼を包み込んだ。

 

「うぉぉぉーーーっ!!!」

 

全身を焼かれる激痛に、アレンが絶叫を上げる。

それを見ていたオッタルが、血相を変えて地を蹴った。

 

「アレン!」

 

結界内の闘技場へと猛スピードで参入したオッタルは、大剣を上段に構え、渾身の力を込めて跳躍する。

 

「おぉぉぉっ!」

 

咆哮と共に叩きつけられる第一級冒険者の重い一撃。

しかしバーンは、それを全く意に介する様子もなく、迫り来るオッタルを見上げた。

 

「ふむ……こうしてこの世界に呼び出されるようになってからは、そなたは最も強者の気配がするな。ならば、余も相応の武器を持って応えようではないか」

 

バーンが虚空に手をかざすと、そこに杖が現れた。

大魔王の膨大な魔力を吸い上げ、先端から凄まじい威力の光の刃を形成するロン・ベルク作の武器――【光魔の杖】である。

振り下ろされるオッタルの大剣と、バーンが掲げた光魔の杖が激突する。

 

パァァァンッ!!

 

甲高い破砕音と共に、絶対の強度を誇るはずのオッタルの大剣が、いとも容易く真っ二つにへし折られた。

 

「馬鹿なっ……!」

 

「悪くない一撃であったぞ。相手が余でなければな」

 

驚愕に見開かれたオッタルの目。バーンは不敵に笑うと、片手から暗黒闘気を放ち、巨漢のオッタルを吹き飛ばした。

 

「舐めやがってぇっ!【金の車輪、銀の首輪……】」

 

そこへ、炎の中から復帰したアレンが、全身に火傷を負いながらも怒りの形相で迫り、平行詠唱で魔法を紡ぎながら神速の槍を放ってくる。

しかし、バーンはその神速の突きを僅かな身のこなしで躱すと、そのまま光魔の杖で反撃に出た。

アレンは咄嗟に槍の柄でそれを受けたものの――オッタルの大剣すら折る光の刃を防げるはずもなく、槍は粉々に砕け散った。

 

「なっ!?」

 

得物を失い、力の差を悟った二人は、本能的に後方へと大きく跳び退いた。

しかし、大魔王の追撃は甘くない。

 

「【カイザーフェニックス】!」

 

バーンの手から、再びあの絶望の炎の鳥が顕現し、猛烈な勢いで二人へと襲い掛かる。

しかも今度は魔法だけではない。バーン自身も、炎の不死鳥と全く同じタイミングで光魔の杖を構え、恐るべき速度で突進してきていたのだ。

逃げ場を塞ぐ魔法と物理の同時攻撃。

 

「【……駆け抜けよ、女神の神意を乗せて】グラリネーゼ・フローメル!」

 

アレンは素早く魔法を完成させて極限まで敏捷を上げ、咄嗟の判断で横へと飛び去り、なんとか直撃を避ける。

一方のオッタルは、残された折れた剣を盾にしてバーンの光魔の杖による強烈な一撃をなんとか受け止めた。

だが、防御に回った彼に、バーンの背後から迫るカイザーフェニックスを躱す術は残されていなかった。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 

全てを焼き尽くす業火に呑み込まれ、オッタルは撃沈する。

離れた場所へ逃れたアレンは、オッタルが一瞬で焼却される光景を目の当たりにして、愕然とした表情になった。

そんなアレンに、大魔王バーンは光魔の杖を横薙ぎに振り抜き、

 

「【カラミティウォール!】」

 

闘技場の地面を削り取りながら迫る、圧倒的な破壊の力を持つ全方位への衝撃波。

もはや逃げる事も防ぐ事もできない死の壁を前に、アレンはギリッと歯を食いしばった。

 

「クソが……」

 

そのセリフを最後に、アレンもまたカラミティウォールの衝撃に呑み込まれ、為す術もなく撃沈したのだった。

 

♢ ♢ ♢

 

次回!「皆で戦えば怖くない!?遂にあのバーン様に一撃が?そして…」




お話の作るのは、楽しいけども難しい…
昨日はダイの大冒険のアニメを見て、お話の参考にさせてもらってましたー
違和感あったらごめんなさい。
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