ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になってダンまち世界に転移してきたよ 作:ポップ
結界が張られたロキ・ファミリアの広大な訓練場。
その中では今まさに、大魔王バーンと八体のオリハルコン軍団からなる『大魔王陣営』と、オラリオを代表する九人の猛者たち『オラリオ陣営』の戦いが始まろうとしていた。
「では始めるとしようか。ゆけ、オリハルコンの兵士達よ」
大魔王バーンが不敵な笑みを浮かべて号令を下す。
その声を聞いて、禁呪法で作られた無機質なオリハルコンの兵士達が、一斉にフィン達に向かって進軍を開始した。
「くっ! 皆! 驚いていても仕方ない! 相手は信じられないけども、オリハルコンで出来た戦士だ! 魔導士の魔法は恐らくかなり不利になるだろうから、前衛のサポートを頼む! ――来るぞ!!」
フィンが長槍を構えながら、鋭い声で的確な指示を飛ばす。
「ちょっと〜! 身体がオリハルコンで出来ているなんて反則でしょ!」
「相手にとって不足は無し……」
「チッ! あの爺ィ、なんでもアリかよっ! クソが!」
アリーゼが悲鳴のような文句を叫び、オッタルが静かに闘志を燃やし、アレンが忌々しげに毒づく。
そして、両陣営が激突し、激しいバトルが幕を開けた。
絶望的な状況の中、オラリオの上位陣であるフィン、ガレス、オッタル、アレンの四人は、その身体能力と技量でオリハルコンの兵士を相手に互角以上に渡り合っていた。
だが、他のメンバーはそうはいかない。ルークの重い一撃を輝夜が刀で受け流すが、手が痺れて追撃ができない。ライラやリューの素早い攻撃も、オリハルコンの硬い装甲の前には決定打に欠け、防戦を強いられていた。
「皆! この兵士達は決して勝てない相手じゃない! 勝てそうにない者は、後方に下がって前衛のサポートを!」
戦況を即座に分析したフィンが、再び声を張り上げる。
その直後だった。
「おぉぉぉーーーっ!!!」
オッタルの裂帛の咆哮が戦場に轟いた。
彼が振り下ろした大剣がキングの装甲を捉え、その絶対的な硬度を第一級冒険者の技量と膂力で捻じ伏せ、見事に真っ二つに両断したのだ。
「そうこなくてはな」
後方で腕を組んで見守っていたバーンが、楽しそうに笑みを浮かべる。
一方、アレンもまた神速の槍捌きでビショップを圧倒し、装甲の隙間を突いて完全に動きを制していた。
「死ねぇっ!」
アレンが必殺の突きを放ち、まさにビショップを突き刺そうとした、その瞬間だった。
どこからともなく飛来した超高温の炎の鳥――大魔王の【カイザーフェニックス】が、ビショップごとアレンの体を一瞬にして飲み込んだのだ。
「アレン!」
突然の出来事にオッタルが叫ぶ。
炎が晴れた後には、炎に焼かれて全く動かなくなったアレンと、無傷のまま佇むビショップの姿だけが残されていた。
「即席で作ったとはいえ、せっかく用意した兵士達をそうやすやすと壊されるのは忍びないのでな。余からも攻撃させてもらうぞ」
バーンが片手に不死鳥を顕現させながら、冷酷に言い放つ。
オリハルコン軍団がやられそうになると、トドメを刺そうとした瞬間に大魔王の恐ろしい魔法が飛んでくるという、あまりにも理不尽な状況であった。
◇ ◇ ◇
その後、リヴェリアの高度な回復魔法によって、ある程度回復出来たアレンも前線へと復帰を果たしたが、戦況は膠着したままだった。
どうにかオリハルコンの兵士を倒せるチャンスが巡ってきても、その瞬間に大魔王の魔法が的確に飛んでくるため、状況は一向に好転しない。
攻めあぐねる最前線から、怒号が飛ぶ。
「フィンっ! どうなっとるんじゃー! 皆で協力して一対九で戦えば勝機はあるって話じゃなかったんか!」
ガレスが敵の重い一撃を斧で受け止めながら、苛立たしげに叫ぶ。
陣形を維持しつつ長槍を振るうフィンも、焦燥感を隠しきれずに声を漏らした。
「くっ! まさか人数を増やしてくるなんてっ! せめて相手が、あの大魔王一人だったら……!」
その言葉を聞いた瞬間、バーンの眉がピクッと動いた。
「ほぅ……」
バーンは面白そうに少し笑うと、右手を軽く伸ばし、人差し指を上向きにして手前へとくいっと上げる仕草をした。
すると、その指先の動き一つで、オラリオ陣営を押し込んでいたオリハルコン軍団がピタリと動きを止め、一斉に後方へと下がっていく。
その異様な動きに、オラリオ陣営は一瞬、警戒して武器を構え直した。
「えっ!? 兵士を下げた?」
アリーゼが目を丸くして驚きの声を上げる。
皆が突然の出来事に困惑する中、バーンが軽く口を開いた。
「よかろう」
バーンは先程の言葉を発したフィンの方へ視線を向ける。
「このまま戦ってみるのも悪くはないが、そこの勇者が今言ったように『相手が大魔王一人なら勝てた』と思われるのも癪なのでな。せっかくの機会だ。そなたら全員、余一人で相手をしてやろう」
その信じられない提案に、フィンは慎重に尋ねた。
「……いいのかい?」
フィンが罠ではないかと警戒し、その真意を探るように大魔王の目を見据えると、バーンは軽く笑った。
「ふっ、今の余は仮初の器だ。せめてこの余興を存分に味わうのが、唯一の慰めよ」
あまりにも見下した態度にオラリオ組が思考を巡らせる。数の有利を手放してまで個の力を見せつけようとするその自信に、皆が警鐘を鳴らしていた。
しかし、バーンはそんな彼らの逡巡など意に介さず、余裕の態度を崩さない。
「ふふっ、どうしたのだ? 魔王軍の側近も交えず、余とこれだけの好条件で戦える機会は中々にないぞ?」
笑いながら挑発する大魔王。
その言葉に、先ほど煮え湯を飲まされたアレンの怒りが頂点に達した。
「舐めやがってぇ! くたばりやがれっ!」
誰よりも速く地を蹴ったアレンが、怒りのままに必殺の槍を大魔王の顔へと突き出す。
――しかし。
バーンは、それをスッと前に出した『人差し指一本』で止めてしまった。
「なっ……!?」
渾身の一撃を指先一つで完全に受け止められ、驚愕に目を見開くアレン。
その光景に、オラリオ陣営の全員が戦慄した。
「……嘘でしょう?」
結界の外で見ていたフレイヤが、思わず扇で口元を覆いながら唖然と呟く。
紛れもなく現オラリオの最強派閥であり、そんな自身のファミリアの眷属内でもオッタルに次ぐ二番手にあがるアレン。そんな彼の本気の槍が、軽く立てただけの人差し指で止められたという事実に、さしもの美の女神も驚愕を隠せなかった。
そして、そんなアレンの隙を大魔王が見逃すはずがない。
バーンはすかさず、空いた左手から凄まじい威力の闘気弾を放った。
「うぉぉぉーーーっ!!!」
至近距離からの一撃をまともに受けたアレンは、悲鳴と共に吹き飛んでいく。
そして結界の最後方の壁に激しくぶつかると、そのまま地面に崩れ落ちて全く動かなくなった。
そのあまりにも理不尽な光景に、オラリオ組は言葉を失う。
「なんやねん、あれ……反則過ぎるやろ……」
外から見ていたロキも、信じられないというように目を見開いて呟いた。
そんな絶望的な空気の中、バーンは倒れたアレンを一瞥してニヤリと笑う。
「あと八人」
(マズい……完全に空気に飲まれている!)
フィンは直感的に危機感を覚え、味方を鼓舞するように叫んだ。
「皆っ! 動くんだ! 確かに大魔王は強いけども、こちらの人数が大きく上回っているのは間違いない! 状況は確実に好転しているんだ! 勝機は必ずある!」
フィンのその力強い声を聞いて、バーンは愉快そうに喉を鳴らした。
「流石はこの世界の勇者よ。それでこそだ。さぁ、来るがよい」
その言葉と共に、今まさに神の眷属達と、本気の大魔王との死闘が始まろうとしていた。
…バーン様が強者ムーブし過ぎて止まらなくなってしまった(・・;)
(だってヒュンケルのブラッディースクライドも指で止めてたし…)
拙い作品ではありますが、皆さん宜しくお願いしますm(_ _)m
(感想や評価を頂ける度に、毎回一喜一憂させて頂いてます)